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サンフランシスコ・オペラ「シモン・ボッカネグラ」
(2001年6月)

池原麻里子

2001.9.1


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 レイミー様が初挑戦するフィエスコを観たくて、Mさんと何ヵ月も前からチケットを購入していた待望の「シモン・ボッカネグラ」。きっと一人だったら億劫で行かなかったけれど、Mさんの情熱と勢いに便乗させて頂いた。今年50周年を迎えるサンフランシスコ条約の締結場所として有名なオペラハウスも観たかったし、しばらく会っていない親友にも会えるというおまけも重いお尻を上げるきっかけとなった。
 今年はヴェルディ没後100年ということで世界中で色々なヴェルディのオペラやコンサートが上演されたが、サンフランシスコ・オペラもヴェルディ・フェスティバルとして「椿姫」と「アイーダ」も上演していたのでついでに観ることにした。
 まず到着した日に「アイーダ」でウォームアップ。ラダメスはメトだのやたらにあちこちで登場するリチャード・マージソン。アイーダはノルマ・ファンティーニ。アムネリスはラリッサ・ディアコーヴァ。オケ、特に吹奏楽器がひどく、田舎の楽隊みたいな拍子抜けしたピーヒョロロで折角の勝利マーチもずっこけてしまった。セットも衣装もよくなかった。やはりメトのが派手でよい。そうでなければ私は観たことないけれど、エジプトのピラミッドとかヴェローナの野外劇場が似合っている。人気あるオペラだけど、成功させるのが難しい作品だとつくづく思った。

 翌日のマチネーはいよいよお目当ての「シモン」。宿泊先の近所のチャイナタウンで飲茶のブランチで満腹になった後、オペラハウスに向かった。
まず序曲では山高帽をかぶり、ステッキを持った高齢のヴェルディを装った人物が登場し、舞台後方の海辺で遊ぶ少女アメリアを眺めた後に去る。第二幕は25年後グリマルディ家のテラスで横たわっている成長したアメリアをヴェルディが眺めて去るシーンから始まった。
 セット(マイケル・ヤーガン)はシンプルで、左側には数本の白い柱が立ち、後方はシーンによって、フィエスコのパレスだったり、グリマルディ家のテラスだったり、シモンのパレスになる。元海賊のシモンが登場する場面では海を象徴する青い布がとても効果的に使われ、シモンが平民派に推されてジェノヴァの総統になるシーンではこの青布が上から落ちて来て、平民達がこれをマントとしてシモンに着せたり、最後の毒殺される場面では海として後方にある布が前方に押し寄せて来て、横たわった彼を覆ってしまうという演出だった。コスチュームはピーター・ホール。
 シモン役はパオロ・ガヴァネーリ。ヴェルディ・バリトンとして有名だということで、最後に一番の拍手喝采を浴びていたが、私に訴えかけるものはなかった。CDでティト・ゴビのシモンばかり聴いていたので、ガヴァネーリのバリトンは私が好きな音域よりちょっと高めだったせいかも知れない。
 レイミー様のフィエスコはすらりとした姿に黒いコスチュームがよく似合っていた。プロローグで娘マリアの死を嘆くIl lacerato spiritoから素晴らしいスタート。最後のシモンとの対決、和解場面まで彼の登場シーンではオーケストラ席でもオペラグラスが手離せなかった。こういう威厳のある役が年齢的にも本当に似合うようになった。ダークチョコレートのお声にまたまた魅了されてしまった。
 アメリアはキャロル・ヴァネス。77年にサンフランシスコ・オペラでデビューした彼女は48歳ということで高音がちょっときつくなってきているが、なかなかのDIVAで、演技力もあってこの役に適役。ガブリエレ役はカルロ・ヴェントレというウルグアイ生まれのイタリア人テナーだったが、グリマルディ家のテラスに登場する時に舞台横からCielo di stelle orbatoと歌った瞬間から「こりゃ駄目だ、登場せんでもよい!」と思ってしまった。私は依然として次世代のテナーを模索中だ。
 レイミー様のフィエスコが適役だったということ以外にも、これまでに観たことがあるメト(ドミンゴがガブリエレ)や、ワシントン・オペラ(サイモン・エステス主演)のプロダクションよりも全体的に一番よくまとまっており、とてもドラマチックで一番よかった。これだけでもはるばる来た甲斐があった。
 さてMさんと私は実は数年前にワシントンでレイミー様が「ボリス・ゴドノフ」に初挑戦した時のオープニング・パーティーで一緒に写真を撮っている。今回はこの写真にサインをして頂こうと、ミーハーにも楽屋で出待ちしてしまった。Mさんは以前、レイミー様にサインをもらおうと思ってサインペンを取り出した所、インク切れで恥をかいた夢を見たことがあるとメールを下さったことがあったので、私はしっかり新品のサインペンを2本用意した。彼女は音楽、演劇関係のお仕事をしていらっしゃるベテランなので、「こういう時は堂々とどんどん入って行った方がよいのよ。」とおっしゃって、他のファンが楽屋口とか外で待っている所を、我々は楽屋内部で入って待たせてもらった。レイミー様を待っていると、キャロル・ヴァネスが黒い子犬を連れて出て来た。アップで観ると大変なあばた面でちょっと気の毒だった。一応、「とても素晴らしかった。」と伝えると「ありがとう。」とお返事があった。

  そのうちに関係者が楽屋まで行ってもよいと言うので階段を昇りかけた所で、黒のシャツに黒の革ジャン姿のレイミー様が降りていらした!我々は東京とワシントンから来たのだと伝え、早速サインをお願いした。まずMさんとの写真にMさんの名前を書いて下さったのだが、子供みたいな可愛い字だった。サイン中に我々が今シーズン、メトで「トルコのイタリア女」を観たこと、「ナブッコ」をMさんは初日、私はビデオ撮影の日に観たこと、昨年パリで第三幕開幕前に幕が故障した日に「ホフマン物語」を観たことや、その晩はジェラール・デュパルデュが来ていたことなどを伝えた。レイミー様は普段の話し声も低音の響きがとても素敵だった。「毎日、この声を聴いて暮らしている奥様が羨ましい。」と私が言うと、Mさんから「スターは遠目から観ているのが一番。ウォームアップしたり、うがいしている普段の姿などは見ない方がよいのよ。」と含蓄ある答えがあった。確かにスターの私生活というのは興味はあるが、或る程度、謎に包まれていた方がよいものかも知れない。サインをもらって楽屋の外でレイミー様が他のファンに応対しているのを遠目で眺めていると、ちょっと離れて立っている数年前に再婚した奥様の姿が見えた。シカゴ・リリック・オペラに寄付していた地元有力者だか、その妻だったとかいう話をオペラ関係者から聞いたことがあったが、よくこちらでsociety ladiesと言われる雰囲気のすらりとしたブロンド美人だった。

 オペラ座の近くにある有名なオーガニック・レストランで早目の夕食をして、「椿姫」に戻った。ヴィオレッタ役はメトでも同役を演じているパトリシア・ラセット。最近よくあるスマートなカワイ子チャン・タイプで、98年リチャード・タッカー賞受賞者だが、声量はあまりないし、まだ危なっかしい。第一幕Sempre liberaの頭の" Joia, joia"と歌う所で音をはずしてしまった。ただ演技力はあって、死んで行くラストシーンは上出来だった。
 指揮は「アイーダ」がパトリック・サマーズ、「シモン」が92年からサンフランシスコ・オペラ音楽監督のドナルド・ラニクルズ、「椿姫」がマルコ・アルミリアートだったが、誰が指揮してもオケはリズムをはずしたり、あまりに下手くそだったので驚いてしまった。歌手達はさぞかし歌い難かったに違いない。Mさんは「ヴェルディは難しいのよ。」とおっしゃっていたが、そう言えば歌手の人達もヴェルディは難しいと言っていますね。
 Mさんとは来シーズンのメトでレイミー様がフィリッポの「ドン・カルロ」、彼初挑戦の「戦争と平和」を観に行こうと計画中である。「戦争と平和」では我々が次世代の楽しみとして注目して、「ディミトリ君」と呼んでいるディミトリ・ヴォロストフスキーも出演なので楽しみだ。 。

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