指揮 ハインツ・フリッカ
監督 ロフティ・マンスーリ
セット、衣装 ザック・ブラウン
トゥランドット スン・ジュー・ウェイ
カラフ イアン・デノルフォ
ティムール ロゼンド・フローレス
リュー アナ・マリア・マルティネス
アルトゥム ロバート・ベーカー
ピン ダニエル・モッブス
パン マシュー・ロード
ポン コリー・エヴァン・ロッツ
ザック・ブラウンのセットは真ん中に階段がある北京城の城壁が中心で、上にはトゥランドットの謎を回答できず死刑にされた求婚者の生首16個が飾ってあり、ペルシャの王子が死刑されるとその生首が真ん中に飾られる。これは第二幕でピン、パン、ポンが今年だけでも14人が死亡した歌う数と合致していないが重箱の隅をつつくような話だからまあよいか。
さて、本当は今年のメトでもトゥーランドット役を演じたシャロン・スウィートとアレッサンドラ・マークとヘビー級の両人がワシントン・オペラでも交替に主役をつとめることになっていたのだが、スウィートは体調を崩し、出演取り消し。マークはドレス・リハーサルで観たが、階段の昇り降りもままならずはらはらした。初演の2晩前だったので主役のマークとデノルフォはフルボイスでは歌わなかった ので、ここでの両人の歌唱力は判からなかった。
私が観た晩は中国人のスン・ジュー・ウェイがトゥーランドットを演じていた。小柄な女性だがまあまあの声量とテクニックで、体形的にはトゥーランドットに相応しいのだけど、あまり気品のある顔ではなかったので、残念ながら奴隷のリュー役の方が似合っているかも。履歴を見ると実際にリューも演じている。90年代始めにこのプロダクションが初演だった時のトゥーランドットは峠を越したエヴァ・マルトンだったが、貫禄ある氷のプリンセスを観せてくれた記憶がある。
カラフ役のイアン・デノルフォは体形はパヴァロッティを一回り小さくした感じで、声はばかでかいのだが、全くコントロールできておらず、単に聴き苦しいだけ。「ネスン・ドルマ」もひどかった。だけど何故か観客は拍手していた。聴き慣れているアリアだから拍手すればよいってものではないでしょうに。それにしても、父親の懇願もリューの自決も無視して、一目ぼれしたトゥーランドットを追求するという自分勝手なカラフやら、西洋人から見たオリエンタリズムの音楽といい、「蝶々夫人」と合わせて何だかムカつくオペラであります。