このプロダクションではドラベルラ役スーザン・グラハムとデスピーナ役ドーン・アップショーが抜群のテクニックを披露。アップショーは声量はあまりないが、この間のワシントンで聴いたソロ・コンサートでも英語、フランス語、ドイツ語と大変に発音がよく、歌詞をとても大切にする歌手だといういう印象を受けた。
フィオルディリージはメト・デビューのドイツ人メラニー・ディーナーという初めて聴く歌手で、自国ではワグナーばかり演じているらしいが、モーツァルトにぴったりなソプラノでとてもよかった。グリエルモはサンフランシスコ・オペラの「欲望という名の電車」でスタンリー役で肉体派として一躍、有名になったロドニー・ギルフリー。この人は背も高く、スマートで見栄えがして、声量もテクニックもあり、なかなか今後が期待できそうだ。フェランドはポール・グローブスだったが、下手クソ。最近、よいテナーになかなか出会わない。マイケル・ヤーガンのセットとコスチュームのはとても明かるいデザインで、ナポリと言うよりニースみたいなきれいさだった。
このプロダクションではデスピーナが登場する時に、家を引っ張って来るのがとてもおかしくて観客に大受けした。数年前にチェチリア・バルトリがデスピーナ役を演じた時も医者や公証人を奇妙な声でとてもおかしく演じていた。「コジ」は最後、元のF&G、D&Fのカップルに戻る演出が多いが、F&F、D&Gの新カップルになるというのもあるし、女性達は最初から男性達の賭けを知っていて、だまされるフリをするという演出もある。今回のは最後にちょっと新しいカップルのままでいそうな気配を見せて元のカップルに戻るというまあトラディショナルな演出だった。
今回はマチネーでラジオ生放送なので、休憩時間にはメト内の別のホールでオペラ・クイズが放送されているのを見に行った。いつもラジオで聴いていると、ちょっとピアノ演奏を聞いただけでどのアリアか当てたり、色々な歌手が同じアリアを歌っているのをちょっと聞いただけでどの歌手だと当てたり、クイズ出演者の知識に感嘆してしまう。
今回はオペラの脇役から観たオペラの筋を聞いてどのオペラの誰かと当てるクイズがあり、「自分が監視している牢獄に入っている女性と恋に陥り、ボスに叱られる」という問いと「兄が暗殺する相手に恋心を抱いたこの女性は兄に別人を殺させてしまう」という問いがあり、私にはすぐ回答が判かったのに何故か出演者は回答できず、嬉しくなってしまった。オペラ好き読者なら正解は「魔笛」のモノスタートス、「リゴレット」のマッダレーナだとすぐに判かったことと思う。
ところで、欧州でも放送されているメトからのラジオ放送、何故日本では放送しないのでしょうね。生だと夜中だから時間をずらして流せばよいのに。ファンは沢山いると思うのだけれど。