ワシントン・オペラは今年のシーズン開幕は10月21日のルジェーロ・ライモンディ主演の「ドン・キホーテ」。しかし、いつもオペラに連れて行ってくれる友人が出張の為、私達にとっては「トロヴァトーレ」の初演日がシーズン開幕となった。
指揮は最近、毎シーズン、1つ自分がワシントン・オペラで主演を演じている時に、もう1作、指揮もして歌手引退後に備えているドミンゴ。このパターンはメトロポリタン・オペラでも実行しているが、彼が最初に指揮に登場するだけで毎年、ワシントンでは聴衆の大拍手となる。今回のプロダクションはドミンゴが音楽監督になったロサンゼルス・オペラと、スウェーデンのゴセンブルグ・オペラとの共同の新しいセットで、全体的にシンプルでモダーン。会場に入ると最初からカーテンは上がっていて、戦死者の上に雨が降っているという設定だった。
監督は86年から91年までグラインデボーンの監督だったスティーブン・ローレス。この監督は99年にここで「ボリス・ゴドゥノフ」も手掛けたが、なかなかシャープな演出をする監督で、今回もアズチェーナに重点を置くことで、このありえないプロットに真実味を持たせることに成功していた。この人はメトでも活躍中ですね。
アズチェーナはメトロポリタンでもこの役を演じたことがあるバーバラ・ディーヴァーで大熱演。レオノーラはベテランのキャロル・ヴァネス。メト等で活躍中のヴァネスは今回やっとワシントン・オペラでデビューを飾ってくれた。高音がちょっと厳しくなってきているようだが、全体的に安定しており、流石に貫禄があり、舞台慣れしていて安心感があった。マンリコはファビオ・アルミリアート。手塚さんがご覧になったメトの「トゥーランドット」の指揮者マルコ・アルミリアートとは兄弟でしょうか?この人はテナーにしてはスマートでイタリア的ハンサムさで、ロドルフォやアルフレード、マントヴァ公にぴったりそう。93年のメト・デビューでも演じたマンリコ役だが、柔軟性のあるテナーで、音も正確で今後が楽しみな人物。ルーナ伯爵はユスティーノ・ディアスでこの役にぴったり。私達にとって満足の行くシーズン開幕となった。