リーマン・スチルチェス積分 Riemann-Stieltjes integral

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III. リーマン・スチルチェス積分の性質(その1)


定理:スチルチェス積分の線形性(1)

[杉浦『解析入門I』352.; ルディン『現代解析学』項目6-10;高橋『経済学とファイナンスのための数学』96.]

関数f(x), g(x)が閉区間I [a,b]上で単調増加関数t(x)に関しスチルチェス積分可能ならば
f(x)+g(x)、c f(x) (c:定数)も、閉区間I [a,b]上で単調増加関数t(x)に関しスチルチェス積分可能となり、
  
  
証明:
 杉浦『解析入門I』353. は、リーマン積分の線形性とまったく同じとしている。
 

定理:スチルチェス積分の線形性(2)

[杉浦『解析入門I』352.; Lang, Real and Functional Analysis282; ルディン『現代解析学』項目6-10;高橋『経済学とファイナンスのための数学』96.]

関数f(x)が閉区間I [a,b]上で関数t(x), s(x)に関しスチルチェス積分可能ならば
関数f(x)は、閉区間I [a,b]上で関数t(x)+s(x),t(x)-s(x) ,ct(x)(c:定数)に関しスチルチェス積分可能となり、
  
  

証明:[杉浦『解析入門I』353. ]
 関数f(x)の関数t(x)+s(x)に関する(分割・代表点{ζk}とした際の)スチルチェス和は、
  
  
  
  というふうに、
 (分割・代表点{ζk}とした際の) f(x)のt(x)に関するスチルチェス和と、
 (分割・代表点{ζk}とした際の) f(x)のs(x)に関するスチルチェス和との、和になっている。
 つまり、 S [ f ; t+s ;;{ζk}]=S [ f ; t ;;{ζk}]+ S [ f ; s ;;{ζk}] …@ 
 f(x)が閉区間 [a,b]上でt(x), s(x)に関しスチルチェス積分可能ならば
 分割の幅|處→0で、@の右辺は、
         
         に収束するので、@の左辺も、これに収束する。
 よって、f(x)が閉区間 [a,b]上で関数t(x), s(x)に関しスチルチェス積分可能ならば
 関数f(x)は、閉区間I [a,b]上で関数t(x)+s(x) に関しスチルチェス積分可能となり、
  
 


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定理:スチルチェス積分の部分積分公式

[杉浦『解析入門I』353. Lang, Real and Functional Analysis282 ;高橋『経済学とファイナンスのための数学』97.]
関数f(x)が閉区間[a,b]上で関数t(x) に関しスチルチェス積分可能ならば
関数t(x)は閉区間[a,b]上で関数f(x) に関しスチルチェス積分可能となり、
 
証明:
 杉浦『解析入門』353、Lang, Real and Functional Analysis282 -3を見よ。


定理:スチルチェス積分の単調性

[杉浦『解析入門I』357.; ルディン『現代解析学』項目6-10;高橋『経済学とファイナンスのための数学』96.]
  cf. リーマン積分の単調性
関数t(x)が閉区間[a,b]上で単調増加
かつ、
関数f(x), g(x)が閉区間[a,b]上で関数t(x)に関しスチルチェス積分可能
かつ、
閉区間[a,b]上でつねに、f(x)≦g(x)となるならば

証明:
 杉浦『解析入門I』353 は、リーマン積分の単調性とまったく同じとしている。




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定理:スチルチェス積分の三角不等式

  [杉浦『解析入門I』357;]
  cf. リーマン積分の三角不等式 
関数t(x)が閉区間[a,b]上で単調増加
かつ、
関数f(x)が閉区間[a,b]上で関数t(x)に関しスチルチェス積分可能であるならば
| f(x)|も関数t(x)に関しスチルチェス積分可能となって

証明:
 杉浦『解析入門I』353 は、リーマン積分の三角不等式とまったく同じとしている。


定理:スチルチェス積分の第1平均値定理

  [杉浦『解析入門I』357;]
  cf.リーマン積分の第1平均値定理
関数t(x)が閉区間[a,b]上で単調増加 (仮定1)、
かつ、
関数f(x)が閉区間[a,b]上で関数t(x)に関しスチルチェス積分可能であり(仮定2)、
かつ、
閉区間[a,b]における関数f(x)の上限がM、下限がmである(仮定3)
ならば
 (結論1)
  
  m≦λ≦M
  を満たすλが存在する。
 (結論2) 仮定1〜3に加えて、関数f(x)が閉区間[a,b]上連続であるならば(仮定4)、
  
  a≦ζ≦b
  を満たすζが存在する。
証明:
 杉浦『解析入門I』358.はリーマン積分の第1平均値定理とまったく同じとしている。



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( reference )

高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.93-99;104-106.
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、pp. 129-132;443-445.
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、p.345;pp.349-361.
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第6章。
Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,pp.224-5:Exercisesとして。
Lang,Serge.Real and Functional Analysis(Graduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1993,pp.278-287.
Ross,Kenneth A.Elementary Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1980,pp.203-221.