その5

いよいようちらのロード男子29歳以下のクラスのスタート。スタートゲートを中心に、扇形に選手の列ができた。 450人以上が一斉にスタートしようとしている。

スタートのカウントダウンが始まる。何度経験しても、スタート前の緊張感がたまらない。 号砲一発。しかし例によってスタートの波が来るまで前に進めない。

ようやくゆっくりと進み出した。隣では立ちゴケしている選手の姿も。最初はまだ左足をリリースしたまま慎重に進むのが吉。 青木君がスタートの姿を撮ってくれると言っていたので探しながら走って行った。右側かと思っていたら左側に発見。ちょっとカメラ目線。
← 写真提供:青木君

北麓公園を出る辺りではだいぶばらけて走りやすくなった。永田君を先頭に、おれ、まーさん、山田さんと続いて走って行った。
→ 写真提供:青木君

記録計測開始地点までは皆ツーリングモードで流していく。まだ周りの選手達も和やかな雰囲気。

スバルラインに曲がるカーブの手前で減速するため、前方ですごい数の選手が溜まっていた。 いきなり渋滞かよ…と思ったが、自分がカーブに差し掛かるときには問題なくスムーズに通過できた。


いよいよ記録計測開始地点のセンサーを通過。直後に8%近い急な坂。永田君は最初からいいペースで走っている。 置いて行かれないようにしっかりと後に付いていった。しかし、料金所を過ぎた辺りから徐々に差が開きだし、 別のターゲットを探すことに。

ちょうどいいペースで走っている2人の後ろについた。しかしその後、おれの前を走る選手がさらに前を走る選手の後輪にハスって落車。 おれも危うく突っ込みそうになったが、なんとか左に避けた。

最後にスタートするグループなので、前にどこまでも選手の集団が見えた。いつもは最初の方にスタートして選手がまばらになるので、 けっこう新鮮な光景だった。いくらでも前に目標物ができるのはいいが、たまに遅い選手が横に広がって前に行きにくいときもあった。

5kmも走れば、だいたい同じようなペースの選手が現れてくる。アソスの牛柄ジャージやUSポスタルジャージ、白ジャージのクロスバイクなど。 かなり終盤まで、後ろについたり抜いたり抜かれたりを繰り返していくことになった。

しばらく走っているとサイスポのカラフルなジャージの選手を発見。サイスポでヒルクライムのコラムをやっていた編集者だろうか。 こっちの方がペースが速かったから抜いたが、抜き際に「サイスポがんばれ!!」と言おうとして、でも限界で走っていたので言わずに抜いてしまった。

似たようなペースのライバル達のうち、白ジャージのクロスバイク乗りは、かなり強敵だった。いかにも安そうなクロスバイクなのだが、 やけに速い。結局は脚次第ということはわかっているが、それにしても彼はかなりの実力の持ち主だろう。ロードに乗ったらもっと速くなるかも。

白クロスはダンシングでペースを上げて、その後シッティングでしばらく走り、ある程度走るとペースを緩めて休息する、という走り方だった。 後ろに付いて走って行くと、休息区間で追い抜く事になり、その後また抜かれて後ろに付いて、また休息区間で追い抜いて…という繰り返しだった。

しかしこれがいい感じで刺激になり、かなり長い間、一人で走る以上の力を引き出せた。中盤になり、白クロスからちぎれそうになると、 「クロスにちぎられてたまるか!!」と意地になってなんとか乗り切った。白クロスとのバトルは終盤まで続くのであった。

今回も27Tを活用して、回すペダリングでガンガン上っていった。レース区間の平均ケイデンスは89だった。 低ケイデンスで走っている選手をガンガン抜いていった。HRは常時180前後で、保てる限界ペースを維持。

ひたすらシッティングだと同じ筋肉ばかり疲労してしまうので、定期的にダンシングを混ぜていった。ここらが去年と違うところだろうか。 しかし、途中から腿の上下運動を意識するのを疎かにしてしまい、踏み下ろるだけのペダリングになっていた。

こうなるとふくらはぎの筋肉を余計に使ってしまい、脚が攣りそうになってくる。終盤になると、何度か脚が攣りそうになった。 やばそうになるとペダリングを止めて脚を伸ばしたりして応急処置。最初は右脚だけだったが、やがて左脚も攣りそうになる。

白クロスは1回目の給水のときには確認できていたが、途中で抜いてからは追いつかれる事なく、2回目の給水の辺りでもういなくなっていた。 ターゲットを次々と換えつつ、上っていく。限界で走っていたために脚が攣る寸前。残りの距離が長く感じた。

ペースを抑えていけば脚が攣るリスクは減るし、後半ペースアップすればそれなりにタイムが出る。 しかし、おれの場合はレースだといつも以上の力を出せることを計算して、自分なりのやや速いペースで上るのが一番ちょうどいい。 ツーリング中に現れる峠と違って、ゴールラインを越えればぶっ倒れてもいいのだ。

第2給水ポイントでは今年も太鼓のビートが闘争心に火を付けてくれた。かなり疲労していたが、太鼓のビートによってさらにアドレナリンが増加。 脚はかなり限界だが、気持ちはまだまだ上を向いている。

19km地点から1kmは山岳賞区間。しかし山岳賞などどうでもいいので、さらにペースアップするようなつもりはない。というかそんな余裕はない。 ここは勾配がきつくなり、たまらずダンシング。しかしダンシングで上ると余計に疲れることに気付き、シッティングで上っていくことにした。 ここまで限界状態だと、ダンシングは逆効果のようだった。

なんとか山岳賞区間の急な勾配を越えると、やや緩くなる。残りは4km。ラストスパートをかけるべく、ペースアップ。 後ろに何人かついてきた。前にちょうどいいペースの選手を見つけると、後ろにつけてマーク。

キヤノンデールにZIPPのディープリムホイールをつけたおじさんを抜くと、必死のダンシングで付いてきた。23T辺りのスプロケだろうか。 かなり力が入っていた。ディープリムは走行音が迫力がある。数人のグループで遅い選手を抜きながら上っていく。

どこからか、牛柄ジャージの選手が出てきて前へ。序盤に見かけた選手だ。ずっと同じようなペースで走っていたのか。 彼のスピードに付いて行けない。彼はラストスパートの脚を溜めていたのだろう。

衝撃的だったのが、下山グループとすれ違った事。今まではスタートが大抵最初の方なので最初の方にゴールして、 先に下山する方だった。それが今回は逆の展開。初めてなので新鮮だったが、自分が遅いような感覚になる。

ようやく残り3kmの平坦区間にやってきた。5人くらいの列車でガンガン飛ばしていった。おれはもう脚が限界だったのでアウターにギアを入れる事が できず、代わりに39x14Tくらいを120rpmで回してスピードを上げた。瞬間的には127rpmまで上がった。

平坦区間が終わると、最後の難関、ゴール前の急坂。選手達は、ここまでに脚を使い果たして、ヘロヘロになって必死になって上っていく。 おれもそんな一人。平坦区間で一緒だった選手のうち2人はかなり走れる人で、どんどん先に行ってしまった。

今にも脚が攣りそうだ。しかしあと少しでゴール。もうどうなってもいい、とにかく全力を出し尽くすのだ。 遅い選手を抜いていき、最後はゴール手前から最後の力を振り絞ってダンシングで走りきり、ゴールラインを越えた。


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