働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について、厚生労働省のHPから一覧で確認することができます。
働き方改革関連法の施行年月日一覧
□ 2019年4月から施行
1 年5日の年次有給休暇の取得を企業に義務づけ
(参考Q&A)年5日の年次有給休暇付与の義務化に伴う具体的取扱い
2 労働時間の客観的把握を企業に義務づけ
(参考Q&A)改正安衛法による労働時間の客観的把握の義務づけについて
3 産業医、産業保健機能の強化
(参考Q&A)改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について
4 フレックスタイム制の拡充
(参考Q&A)フレックスタイム制とは何か
5 高度プロフェッショナル制度の創設
(参考URL)高度プロフェッショナル 分かりやすい解説
6 過半数代表者の選出方法の厳格化
(参考Q&A)36協定などの労使協定を締結する際の過半数代表者の選出方法
7 労働条件の通知方法はFAXや電子メールでも可能に
(参考Q&A)労働条件の通知方法がFAXや電子メールでも可能に
8 大企業への残業時間の上限規制の開始
(参考Q&A)時間外労働の上限規制の概要
[残業時間の上限規制の適用の例外]
新技術・新商品等の研究開発業務については、時間外労働が一定時間を超える場合の医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康管理措置を設けたうえで、残業時間の上限規制の適用を猶予されます。
□ 2020年4月から施行
1 中小企業への残業時間の上限規制の開始
(参考Q&A)時間外労働の上限規制の概要
2 大企業への同一労働同一賃金に向けた取組み
(参考Q&A)同一労働同一賃金を規定する「パートタイム・有期雇用労働法」とは
3 労働者派遣法の改正
(参考Q&A)2020年4月から派遣先・派遣元双方に派遣労働者の待遇の確保が義務へ
□ 2021年4月から施行
・中小企業への同一労働同一賃金に向けた取組み
(参考Q&A)同一労働同一賃金を規定する「パートタイム・有期雇用労働法」とは
□ 2023年4月から施行
・月60時間超残業の割増賃金率引上げに対する中小企業猶予措置の解除
□ 2024年4月から施行
・猶予事業への残業時間の上限規制の開始
(1) 工作物の建設の事業
・法別表第1第3号に掲げる事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業)
・事業場の所属する企業の主たる事業が法別表第1第3号に掲げる事業である事業場における事業(本社の総務、経理、事務作業など)
・工作物の建設の事業に関連する警備の事業(当該事業において労働者に交通誘導警備の業務を行わせる場合に限る)
(2) 自動車の運転の業務
・一般乗用旅客自動車運送事業の業務
・貨物自動車運送事業の業務
・一般乗合旅客自動車運送事業の業務
・一般貸切旅客自動車運送事業の業務
・その他四輪以上の自動車の運転の業務
(3) 医業に従事する医師
(4) 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
(参考Q&A)時間外労働の上限規制の概要
副業・兼業と制度の導入手順
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和2年9月改定)」では、「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。 副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に
支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなけれ ば、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業
を認める方向で検討することが求められる。」として、企業に対し副業・兼業の促進を促しています。
以下に「副業・兼業の促進に関するガイドライン 分かりやすい解説」に基づき、導入手順を整理してみました。
1 兼業・副業を認めるにあたって
STEP1 就業規則等の整備
(1) 就業規則を見直す(分かりやすい解説p6〜8)
(2) 届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設ける→ 副業・兼業に関する届出様式例(分かりやすい解説p9)
2 副業・兼業を始める前に
STEP2 副業・兼業に関する届出/STEP3 副業・兼業の内容の確認
(1) 労働者は就業規則等で定められた方法に従い、会社に副業・兼業の届出を行う
(2) 会社は、労働者の申告により副業・兼業の内容を確認する→ 具体的な確認事項(分かりやすい解説p10)
[ポイント]
・長時間労働にならないよう留意する
・労働基準法や労働安全衛生法による規制等を潜脱するような形態等で行われる副業・兼業は認められない
(3) 労使で合意しておく方法もある→ 副業・兼業に関する合意書様式例(分かりやすい解説p12〜14)
↓
STEP4(A) 所定労働時間の通算(原則的な労働時間管理の方法)or STEP4(B) 管理モデルの導入(簡便な労働時間管理の方法)により、労働時間の通算方法を選択する(分かりやすい解説p15〜18)
【注】具体的な方法は次項を参照
3 副業・兼業が始まったら
(1) 選択した、STEP5(A) 所定外労働時間の通算(原則的な労働時間管理の方法)or STEP5(B) 管理モデルの導入(簡便な労働時間管理の方法)により割増賃金を支払う(分かりやすい解説p19〜20)
(2) STEP6 健康管理の実施(分かりやすい解説p20)
副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について
● 副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について(令和2年9月1日基発0901第3号)
□ 通達の概要
労働基準法38条1項で「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定され、かつ「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むとされています。
1 労働時間の通算
(1) 法定労働時間の通算
通達第1の1のア、イを除き、法定労働時間は、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。また、時間外労働の上限規制が適用除外または適用猶予される業務・事業についても、法定労働時間については同様に通算されます。
【注】通達第1の1のア、イとは、フリーランスなど法が適用されない場合および管理監督者など労働時間規制が適用されない場合をいいます。)
(2) 時間外労働等の通算
ア 時間外労働のうち、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件についても、その適用において、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。
イ 36協定により延長できる時間の限度時間および36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであることから、それぞれの事業場において延長時間を定めることになります。
この場合、36協定においては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間は通算されません。
ウ 休憩、休日、年次有給休暇については、労働時間に関する規定ではないことから、その適用において自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間は通算されません。
2 副業・兼業の確認
使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認することとし、また、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、使用者は、届出制など副業・
兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましいとしています。
3 原則的な労働時間管理の方法
(1) 労働時間の通算の管理
副業・兼業を行う労働者を使用する使用者は、それぞれ、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要があり、その方法は、自らの事業場における労働時間制度を基に、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間と通算することによって行うこととしています。
この場合において、週の労働時間の起算日または月の労働時間の起算日が、自らの事業場と他の使用者の事業場とで異なる場合についても、自らの事業場の労働時間制度における起算日を基に、そこから起算した各期間における労働時間を通算することとしています。
なお、労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも、労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば足りるともしています。
自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が、時間外労働となります。
(2) 所定労働時間の通算(副業・兼業の開始前)
自らの事業場における所定労働時間と他の使用者の事業場における所定労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者における当該超える部分が時間外労働となり、当該使用者における36協定で定めるところによって行うことになります。
(3) 所定外労働時間の通算(副業・兼業の開始後)
自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、当該超える部分が時間外労働になります。
各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間のうち、自らの事業場にお いて労働させる時間については、自らの事業場における 36協定の延長時間の範囲内とする必要があります。
また、各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間によって、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件を遵守するよう、1か月単位で労働時間を通算管理する必要があります。
4 割増賃金の支払義務者
各々の使用者は、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、
・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。
5 簡便な労働時間管理の方法
副業・兼業における労働時間管理については上記のとおりですが、労働時間の申告等や通算管理において労使双方に手続上の負担が伴うことが考えられることから、簡便な労働時間管理の方法として、5ページ以降に管理モデルを作成していますので、ご確認ください。
【解説】このように、労働時間の通算方法は二通りありますが、@原則的な方法は、比較的副業・兼業の頻度が少ない場合、A簡便な方法は、副業・兼業の日数が多い、或いは自社と副業・兼業先の双方で所定外労働がある場合など労働時間の通算管理の手続上の負荷を軽減する方法とされており、実態に基づき、何れかの方法を選択することなります。
なお、通達は直接触れていませんが、法定休日に副業・兼業を行っても休日労働とはせず、あくまで労働時間の通算で処理するとし、また兼業・副業元の労働時間制度が変形労働時間制等であっても、労基法32条による通常の労働時間制(1日8時間、週40時間)により通算処理するとします。この2点については、所轄労基署で確認しています。
労働時間と法定労働時間
□ 労働時間とは
労働者が使用者の指揮命令に服し労務を提供している時間をいい、具体的には、労務の開始から終了までの時間から休憩時間を差し引いた実働時間をいいます。休憩時間を含めた時間は「拘束時間」といい、労働時間と区別します。
□ 法定労働時間とは
1日および1週の労働時間の上限を指し、労働基準法では法定労働時間を、1日8時間、1週40時間と定めています。
週44時間労働が可能な事業場(特例措置対象事業場)がある
労働基準法では法定労働時間を、1日8時間、1週40時間と定めています。
ただし、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、常時使用する労働者が10名未満の事業場(特例措置対象事業場という)は、1日8時間、1週44時間まで労働時間の特例が認められています。特例措置対象事業場においては、1日8時間、1週44時間を超えた労働が時間外労働となります。なお、満18歳未満の年少者にはこの特例は適用されません。
□ 特例措置対象事業場とは
(1) 商業(8号)…卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
(2) 映画・演劇業(10号)…映画の映写、演劇、その他興行の事業
(3) 保健衛生業(13号)…病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
(4) 接客娯楽業(14号)…旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業
【解説】常時10人未満の労働者を使用する事業場とは、会社全体ではなく、工場・支店・営業所等の個々の事業場単位となります。例えば、店舗を数か所持っている商業のケースでは、各店舗ごとに使用する労働者が常時10人未満であれば、全ての事業場で1週44時間労働が認められます。しかし、本店は10人以上、各支店は10人未満の労働者であれば、本店のみ1週40時間労働、各支店は1週間44時間労働となります。労働者数は、正社員だけでなくパートタイマー等も含めカウントます。
また、特例措置対象事業場において1か月単位の変形労働時間制の採用は可能ですが、1年単位の変形労働時間制および1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合の適用は認められず、これらを採用する場合は原則の週40時間労働となります。
就業規則で日曜日以外の日を1週間の起算日として定めることもできる
1週間は、特に定めがなければ日曜日となりますが、就業規則等で他の曜日を起算日として定めることも可能です。
●(参考通達)S63.1.1基発第1号
1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。
勤務が2暦日にわたる場合の労働日のカウントはどうする
●(参考通達)S63.1.1基発第1号
1日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とすること。
(参考Q&A)休日は暦日で与えなければならないが例外もある
出張の移動時間は労働時間ではない
特段の業務指示を行わない限り、出張中の移動時間は労働時間ではないというのが通説です。例えば、月曜日に出張先で業務を行うために前日の日曜日に出発しても、特段の業務指示がなければ休日労働の問題は発生しません。
この場合、出張旅費等の名目で別途手当を支払って従業員の不満解消を図っている会社が多数と思われますが、別途、旅費規程等を定めておけば万全と思われます。
●(参考通達)S23.3.17基発461号
出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の他は休日労働として取り扱わなくても差支えない。
研修や資格取得の時間は労働時間か
業務上必要な研修などの教育訓練や資格取得のための外部研修などについて、会社の業務命令であれば労働時間とされます。一方、会社が奨励している自己啓発としての資格取得や外部研修などを労働者が自主的に受講するようなケースや、研修などの教育訓練が自由参加のものであれば業務命令ではありませんので労働時間とはなりません。要は、労働時間とされるか否かは、会社の指揮命令があったか否かに左右されるということになります。
ちなみに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインでは、「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務上必要な学習等を行っていた時間」は、労働時間であるとしています。
●(参考通達)S26.1.20基収2875号
労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。
始業前の着替え時間も労働時間
始業前の制服や作業服等の着替え時間が労働時間か否かについては、三菱重工長崎造船所事件(H12.3.9最判)が有名ですが、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインにおいても、「使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装へ着替え等)や業務終了後の業務に関連した(清掃等)を事業場内において行った時間」は労働時間としています。
事業外労働とは何か
「みなし労働時間制」には、事業場外労働と裁量労働の2つがありますが、ここでは、一般的な「事業場外労働」について説明します。
「事業場外労働」の対象となるのは、外勤の営業社員や記者など労働者が労働時間の全部、または一部について事業場外で業務に従事する場合で、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間が算定しがたいときに限られます。ただし、行政通達では次のような場合は「事業場外労働」の適用はないとしています。
●(参考通達)S63.1.1基発1号
事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合にあっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。
@ 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
A 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
B 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合
□ 「事業場外労働」を適用する場合の2つのパターン
1 原則として所定労働時間労働したものとみなす場合
この場合は、労使協定の締結も届出も必要ありません。
2 通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は、その必要とされる時間労働したものとみなす場合
例えば、その業務が通常9時間必要とするなら1時間は時間外労働になり、業務の繁閑に関わらず、常に1時間の割増賃金が必要となります。この場合は、事業場外労働に関する協定と36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
届出様式は「時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9の5号)」です。この場合、事業場外で従事する業務の遂行に通常必要とされる時間を様式第9の5号に付記する場合は、事業場外労働に関する協定届を省略できます。
在宅勤務を事業場外労働とすることは可能か
在宅勤務について、事業場外労働のみなし労働時間制を採用することも可能ですが、随時、使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことが条件となっています。
具体的な取扱いは「テレワークの適切な導入及び実施の推進ためのガイドライン」の8ページに記載がありますが、@情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、A随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、が要件とされます。
この場合、事業場外労働のパターンとしては、所定労働時間労働したものとみなす「所定労働時間みなし」を採用するケースが多いと思われます。この所定労働時間みなしは労使協定の締結も労基署の届出も必要ありませんが、最低限、事業場外労働ができる旨の規定を就業規則に盛込んでおくべきと思われます。
裁量労働とは何か
「裁量労働」とは、みなし労働時間制の一つで、次の2種類があります。
1 専門業務型裁量労働制
デザイナー、システムエンジニア等、専門的な業務に就く者が対象(専門業務型裁量労働時間制の対象業務)
制度の導入にあたり、労使協定(労使協定例)を締結し、所轄労働基準監督署へ届出る必要があります。
(詳細)厚生労働省のHP
2 企画業務型裁量労働制
事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務を行うホワイトカラーが対象
制度の導入にあたり、労使委員会の設置や対象労働者の同意を必要とするなど、専門業務裁量労働制より要件が厳しくなっています。
(詳細)厚生労働省のHP
労働時間等の適用除外者とは
労働基準法41条に規定する労働者は、労働時間・休憩・休日の規定については適用しないとしています。
●(労働基準法41条)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。
1 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
■ 別表第1第6号又は第7号に掲げる事業とは
・土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
・動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
■ 監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者とは
次項Q&A「労働時間等の適用除外とされる管理監督者の範囲は広くない」を参照
■ 監視又は断続的労働に従事する者とは
1 監視に従事する者の許可基準
●(参考通達)S22.9.13基発17号、S63.3.14基発150号
監視に従事する者は、原則として、一定部署にあって監視するものを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張のすくないものについて許可すること。したがって、次のようなものは許可しないこと。
イ 交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場等の監視等精神的緊張の高い業務
ロ プラント等における計器類を常態として監視する業務
ハ 危険又は有害な場所における業務
2 断続的労働に従事する者の許可基準
次々項Q&A「宿・日直勤務の許可申請手続」を参照
労働時間等の適用除外とされる管理監督者の範囲は広くない
労働基準法41条では「事業の種類に係わらず、監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者は、労働時間・休憩及び休日に関する規定は適用しない。」としています。したがって、管理監督者については時間外・休日労働手当を支給しなくてもよく、また休憩時間も与えなくてもよいとされています。
なお、管理監督者の範囲については法令で明文化されたものはなく、行政通達などの解釈例規によります。
□ 監督若しくは管理の地位にある者とは
●(参考通達)S22.9.13発基第17号、S63.3.14基発第150号
法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたつては、下記の考え方によられたい。
1 原則
法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
2 適用除外の趣旨
これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限つて管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従つて、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。
3 実態に基づく判断
一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによつて人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たつては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
4 待遇に対する留意
管理監督者であるかの判定に当たつては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといつて、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
【解説】上記のように、管理監督者の範囲は思ったほど広くはありません。行政通達でも「資格や名称にとらわれず実態に即して判断すべきものである」としていますが、通達の定義が曖昧なため、企業が呼称している管理者の定義と通達上の管理監督者の範囲が乖離しているケースも少なくありません。これがトラブルがとなり、裁判等で争われるケースも少なくないようです。
なお、ほかにも管理監督者に関する以下の通達があります。
(1) 都市銀行等における「管理監督者」の範囲(S52.2.28基発第104号の2)
(2) 都市銀行等以外の金融機関における「管理監督者」の範囲(S52.2.28基発第105号)
(3) 多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者について(H20.9.9基発第0909001号)
(詳細)厚生労働省のHP
宿・日直勤務の許可申請手続
労働基準法41条では「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については「労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない。」としています。
●(参考通達)S22.9.13基発17号、S23.4.5基発535号、S63.3.14基発150号
断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待ち時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によって取扱うこと。
(1) 修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機するものは許可すること。
(2) 寄宿舎の賄人等については、その者の勤務時間を基準として作業時間と手待時間折半の程度まで許可すること。ただし、実労働時間の合計が8時間を超えるときは許可すべき限りでない。
(3) 鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可すること。
(4) その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。
●具体例
役員専属自動車運転士(S23.5.5 基収1540号)、寄宿舎の寮母および看護婦(S23.11.11基発1639号)などがあり、タクシー運転者(S23.4.5基収1372号)、新聞配達従業員などは断続的労働ではないとしています。
宿直または日直の勤務も、断続的労働の一形態とされますが、宿・日直勤務をさせるには、他の断続的労働と同様に所轄の労働基準監督署長の許可を受ける必要があります。なお、宿・日直は労働者に対し労働時間・休憩および休日に関する規定を適用させないものであることから、厳格な許可基準が設けられています。なお、許可申請に際しては原則として労働基準監督官による実地調査が行われます。
1 断続的な宿直又は日直勤務許可
通常の労働に従事している労働者が、宿直を週1回、日直を月1回程度勤務するような場合の許可申請
(申請書)主要様式ダウンロードコーナー
*添付書類の詳細については、所轄の労働基準監督署でご確認ください。
■ 断続的な宿直又は日直勤務の許可基準
●(参考通達)S22.9.13発基17号
労働基準法施行規則第23条に基づく断続的な宿直又は日直勤務のもとに、労働基準法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないこととしたものであるから、その許可は、労働者保護の観点から、厳格な判断のもとに行われるべきものである。宿直又は日直の許可にあたっての基準は概ね次のとおりである。
(1) 勤務の態様
イ 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
ロ 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。したがって始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
(2) 宿日直手当
宿直又は日直の勤務に対して相当の手当が支給されることを要し、具体的には次の基準によること。
イ 宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の1人1日平均額の3分の1を下らないものであること。ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者についての1人1日平均額によることができるものであること。
ロ 宿直又は日直勤務の時間が通常の宿直又は日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督所長が右イの基準によることが著しく困難又は不適当と認めたものについては、その基準にかかわらず許可することができること。
(3) 宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
(4) その他
宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。
2 監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可
専ら宿日直勤務に従事する場合の許可申請
(申請書)主要様式ダウンロードコーナー
(調査票)監視又は断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請書に添付する調査票
*添付書類の詳細については、所轄の労働基準監督署でご確認ください。
3 最低賃金の減額特例許可
専ら宿日直に従事する労働者の場合、宿日直手当が最低賃金額を下回る場合は、併せて最低賃金の減額特例許可申請が必要です。なお、監視・断続的労働に従事する者にかかる最低賃金の減額特例の許可期間は3年が限度とされますので、監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可と異なり更新が必要です。
(参考Q&A)最低賃金の減額特例許可とは何か
■(参考)許可後に申請事項の変更があった場合
●(参考通達)S23.9.20基収2320号
宿直または日直勤務、監視または断続的労働に従事する者に対する許可等については、許可後に申請事項の変更があった場合には、原則として許可の再申請を要するが、総合的に判断して労働の態様が労働者にとり有利に変更したと認められる場合は、勤務内容に相当の変化がない限り許可を受けさせる必要はない。
医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方
● 医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日、基発0701第8号)
● 医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について(令和元年7月1日、基発0701第9号)
● 医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する 考え方についての運用に当たっての留意事項について(令和元年7月1日、基監発0701第1号)
(通達ダウンロード)厚生労働省のHP
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(改定版)
●テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン (平成29年1月20日)
(詳細)厚生労働省のHP
労働基準法関係主要様式のダウンロード
労働関係主要書式は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から入手できます。
トラック運転者の労働時間等の改善基準とは
トラック運転者の労働時間は特殊なため、厚生労働省は改善基準を策定し、拘束時間と休息時間、運転時間の限度、時間外および休日労働の限度について告示しています。厚生労働省「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」と、全日本トラック協会「全日本トラック事業者の労働法のポイント」により要旨をまとめてみました。
□ 拘束時間と休息時間
1 拘束時間とは
始業時刻から終業時刻までの時間で「労働時間+休憩時間」をいいます。
【解説】労働時間には荷積みや待期などの手待ち時間を含め、手待ち時間も労働時間になります。また、休憩時間(仮眠時間を含む)は労働時間ではありませんが、拘束時間となります。
2 休息時間とは
勤務と勤務の間の自由時間で、ドライバーの生活時間や睡眠時間をいいます。
□ 拘束時間の限度
拘束時間の限度は、1日・1週間・1か月・1年について各々定められています。
【解説】1日とは、暦日でいう1日とは概念が異なり、始業時刻から起算します。始業時刻から起算して「拘束時間+休息時間」計24時間で1日が終了します。拘束時間+休息時間が24時間を超えることはありません。始業時刻が異なる場合は、1か月の拘束時間を計算する際に重複部分を差し引いて計算します。
1 1日の拘束時間の限度
(1) 1日の拘束時間は13時間以内が基本です。延長する場合でも16時間が限度です
(2) 1日の休息時間は、継続8時間以上必要です
(3) 上記の原則のほかに、以下の特例が認められています
【休息時間の分割】
業務の必要上、連続8時間以上の休息時間を与えることが困難な時は、下記の要件のもとに分割して与えることができます。
(1) 分割休息の回数は、2週間から4週間程度の一定期間における、全勤務回数の1/2が限度です
(2) 休息時間の長さは、拘束時間の途中または拘束時間の経過直後に、1回あたり継続4時間以上で合計10時間以上あれば分割して与えることが可能です
(3) この特例は、フェリーに2時間以上乗船する場合は適用できません
【二人乗務の特例】
1台のトラックに運転者が2名以上乗務する場合(キャビンにベットがついているなど、車両内に体を伸ばして休息できる設備がある場合に限る)は、以下の特例があります。
(1) 1日の最大拘束時間を20時間まで延長できます
(2) 1日の休息時間を継続4時間まで短縮できます
【隔日勤務の特例】
業務の必要上やむを得ない場合は、下記の要件のもとに隔日勤務に就かせることができます。
(1) 2暦日における拘束時間は、21時間を超えないこと
(2) 勤務終了後、継続20時間以上の休息時間を与えること
【解説】隔日勤務とは文字どおり一日置きに勤務することで、例えば月曜の朝8時に出勤し火曜の朝5時まで勤務、休息をとった後水曜の朝8時に再び出勤するという形態です。
【フェリーに乗船する場合の特例】
(1) フェリー乗船時間のうち2時間(フェリー乗船時間が2時間未満の場合はその時間)については拘束時間として取扱い、その他の時間を休息期間として取扱います
(2) フェリーの乗船時間が2時間を超える場合には、休息時間とされた時間を休息8時間(二人乗務の場合は4時間、隔日勤務の場合は20時間)から減じることができます
(3) 差し引いた後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船から勤務終了時までの時間の2分の1を下回らないことが必要で。
2 1週間の拘束時間の限度
(1) 1日の拘束時間を延長する場合でも、15時間を超える回数は1週間2回が限度です
(2) 休息時間が9時間未満となる回数は、1週間2回が限度です
3 1か月の拘束時間の限度
(1) 1か月の拘束時間は、293時間が基本です
(2) 1か月の拘束時間は、一般に給与締日で計算します
4 1年の拘束時間の限度
労使協定を締結した場合は、1年のうち6か月まで1年間の拘束時間が、293時間×12か月=3516時間を超えない範囲で、1か月の拘束時間を320時間まで延長することができます。
□ 休日の取扱い
(1) 法定休日は「休息時間+24時間」の連続した時間をいいます。休息時間は、原則8時間確保しなければならないので「8時間+24時間=32時間」以上の連続した時間が必要です
(2) 2日続けて休日を与える場合は、2日目の休日は24時間以上あればよいとされます
(3) 隔日勤務の場合は、勤務終了後に継続20時間以上の休息時間が必要ですから「20時間+24時間=44時間」以上の連続した時間が必要となります
(4) 上記の時間数に満たないものは、法定休日として取り扱われません
□ 運転時間の限度
運転時間にも、連続運転時間・1日の運転時間・1週間の運転時間の限度が定められています。
(1) 連続運転時間の限度
連続運転時間とは、1回10分以上でかつ合計が30分以上の運転の中断をすることのない運転時間をいいます。この1回の連続運転時間は、4時間以内と定められています。したがって、4時間ごとに30分以上の運転をしない時間をおくや、4時間以内に10分以上の運転をしない時間を3回設けるなどの工夫が必要となります
(2) 1日の運転時間の限度
2日を平均し、1日当たり9時間以内とされます
(3) 1週間の運転時間の限度
2週間を平均し、1週44時間以内とされます
□ 時間外労働の限度
延長可能時間の計算例/1日の所定労働時間8時間(1週40時間)休憩時間1時間のケース
1 1日の時間外労働の限度
(1) 最大拘束時間16時間−(労働時間8時間+休憩時間1時間)=7時間
(2) ただし15時間越えは1週間2回までなので、上記以外は、最大拘束時間15時間−(8時間+1時間)=6時間
2 2週間における時間外労働の限度(休日労働がない場合)
(1) 最大7時間×2回×2週=28時間
(2) 原則13時間−(8時間+1時間)=4時間×3回×2週=24時間
(3) 2週間の最大延長可能時間=28時間+24時間=52時間
3 1か月間の時間外労働の限度(月間労働日数が31日の月は22日、30日の月は21日で、休日労働がない場合)
(1) 拘束時間原則293時間の場合
(31日の月)
・拘束時間293時間−1か月の所定労働時間177.1時間−(休憩時間1時間×22日)=93時間54分
(30日の月)
・ 拘束時間293時間−1か月の所定労働時間171.4時間−(休憩時間1時間×21日)=100時間36分
(2) 拘束時間特例320時間の場合
(31日の月)
・拘束時間320時間−1か月の所定労働時間177.1時間−(休憩時間1時間×22日)=120時間54分
(30日の月)
・ 拘束時間320時間−1か月の所定労働時間171.4時間−(休憩時間1時間×21日)=127時間36分
4 1年間の時間外労働の限度
(1) 1年変形労働時間制以外で、休日労働がない場合
拘束時間3516時間−(1週労働時間40時間)÷7日×365日−休憩時間1時間×年間労働日数260日=1170時間17分
(2) 1年変形労働時間制の場合
拘束時間3516時間−(1週労働時間40時間)÷7日×365日−休憩時間1時間×年間労働日数280日=1150時間17分
□ 休日労働の限度
2週間に1回まで
(参考)トラック運転者のほかに、バス・タクシー運転者についても改善基準が策定されています。
・バス運転者の労働時間等の改善基準のポイント
・タクシー運転者の労働時間等の改善基準のポイント
トラックドライバーの荷待ち時間等の記録の義務付づけ&荷役作業・付帯業務の記録の義務づけについて
1 トラックドライバーの荷待ち時間等の記録の義務付け(詳細)国土交通省のHP
トラックドライバーの長時間労働等の改善を図るため、荷主の都合により待機した場合、待機場所、到着・出発や荷積み・荷卸しの時間等を乗務記録の記載対象として追加する「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令」が、2017年7月1日公布されました。
■ 改正の概要
1 乗務等の記録(第8条関係)
トラックドライバーが車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合、ドライバーごとに以下について記録し、1年間保存しなければならない。
・集貨又は配達を行った地点(以下「集貨地点等」という。)
・集貨地点等に到着した日時
・集貨地点等における荷積み又は荷卸しの開始及び終了の日時
2 適正な取引の確保(第9条の4関係)
荷主の都合による集荷地点等における待機についても、トラックドライバーの過労運転につながるおそれがあることから、輸送の安全を阻害する行為の一例として加える。
2 トラックドライバーの荷役作業・付帯業務の記録の義務付け (詳細)国土交通省のHP
トラックドライバーが車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合に、集貨地点等で荷役作業又は附帯業務を実施した場合についても乗務記録の記載対象として、2019年6月15日に追加されました。
■ 乗務記録への記録対象として追加する内容
1 対象車両
車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上の車両に乗務した場合
2 対象作業
(1) 荷役作業(例)積込み、取卸し
(2) 附帯業務(例)荷造り、仕分、横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業
【注】契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合は、所要時間が1時間未満であれば荷役作業等についての記録は不要となります。
国交省によるバス・タクシー・トラック事業についての睡眠不足による事故防止対策の強化について
国土交通省は省令を改正(平成30年6月1日施行)し、バス・タクシー・トラック事業について、運転者の睡眠不足による事故防止を推進するため、睡眠不足の乗務員を乗務させてはならないこと等を明確化し、点呼簿の記録事項として睡眠不足の状況を追加しました。(参考)国土交通省のHP
事業者は乗務前の点呼で、運転手の健康状態や飲酒の有無などのほかに睡眠が十分かを確認することが義務となり、具体的な睡眠時間についての基準は定められていないものの、睡眠不足のまま乗務を許可したと認定されれば運行停止など行政処分の対象となります。
具体的には、乗務前の点呼時に、睡眠不足による集中力低下など安全に支障がでる状態にないかを確認して結果を記録として残さなければならず、ドライバー側にも、睡眠不足により安全な運転をすることができない等のおそれがあるときの申告が義務化されることとなりました。
時間外労働の上限規制の概要
2019年4月1日から(中小企業は2020年4月1日から)改正労働基準法36条に規定する上限を超える時間外労働はできなくなるとともに、違反した場合は刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象とされました。ただし、次の事業については5年間適用を猶予され、施行は2024年4月からとなります。
□ 適用世猶予される事業等
(1) 工作物の建設の事業
・法別表第1第3号に掲げる事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業)
・事業場の所属する企業の主たる事業が法別表第1第3号に掲げる事業である事業場における事業(本社の総務、経理、事務作業など)
・工作物の建設の事業に関連する警備の事業(当該事業において労働者に交通誘導警備の業務を行わせる場合に限る)
(2) 自動車の運転の業務
・一般乗用旅客自動車運送事業の業務
・貨物自動車運送事業の業務
・一般乗合旅客自動車運送事業の業務
・一般貸切旅客自動車運送事業の業務
・その他四輪以上の自動車の運転の業務
【注】運送業については建設業と異なり、ドライバー以外の総務・経理・事務などに従事する従業員ついては時間外労働の上限規制の適用は猶予されていません。したがって、ドライバーには現行様式での36協定、その他の従業員については新様式の36協定と、2本立ての36協定による届出が必要となります。
(3) 医業に従事する医師
(4) 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
上記のほかに、新技術・新商品等の研究開発業務については、時間外労働が一定時間を超える場合の医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康管理措置を設けたうえで、時間外労働の上限規制は適用しないこととされています。
□ 概要
残業時間の上限規制を、次の2パターンとして整理すると理解しやすいと思います。
(1) 原則(通常の36協定)
月45時間以下、年360時間以下(時間外労働のみとし休日労働は含みません)
(2) 臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合(特別条項付36協定)
・月100時間未満。ただし、2か月から6か月までを平均し80時間以下(時間外労働と休日労働を合算します)
・年720時間以下(休日労働は含めません)
□ ポイント
(1) 原則の場合は時間外労働のみをカウントしますが、臨時的な特別の事情がある場合は「時間外労働+休日労働」の合算であることにご注意ください(ただし、年720時間以下の場面では休日労働はカウントしません)
(2) 臨時的な特別の事業がある場合は月100時間未満であることにご注意ください(他は○時間以下)
(3) 臨時的な特別の事業がある場合でも、原則の月45時間を超えることができるのは、年間6か月までであることにご注意ください
(4) 上記の場合でも、2か月から6か月までを平均し80時間以下としなければならないことにご注意ください(2か月から6か月までを平均の意味は、1年間に最大の6か月を適用する事業所もあれば、2か月で済む事業所もあると想定されることから、それぞれの平均で80時間以下にしなければならないという意味です)
(5) 上記を超えると直ちに法違反となることにご留意ください
(6) 現在、中小企業に猶予されている月60時間超の時間外労働割増賃金率(50%)は、2023年4月以降は中小企業にも適用されます。
(7) 原則の場合は36協定届、臨時的な特別の事情がある場合は、原則の場合の36協定届と特別条項付36協定届の2通が必要です。なお、36協定届の様式が変更になっています。特に、特別条項付36協定届のハードルが高くなっていますのでご留意ください
(参考Q&A)2019年4月(中小企業は2020年4月)からの36協定様式
(8) 36協定指針では、時間外労働や休日労働を最小限とすべきという労使当事者の努力義務が課せられるとともに、上限規制を適法に運用していたとしても安全配慮義務については免責されないとしていますので、ご留意ください。
(参考)時間外労働の上限規制 分かりやすい解説
労働者に時間外労働や休日労働させることができる要件とは
使用者が労働者に対して、労働基準法で定める法定労働時間を超えて時間外労働、若しくは休日に労働させることができるのは、以下の3つの場合のみです。
1 災害その他避けることができない事由により、臨時の必要がある場合(労働基準法33条)
災害その他避けることができない事由により、臨時の必要がある場合は、使用者は労働基準監督署長の許可を受け、労働時間を延長しまたは休日に労働させることができます。ただし「災害その他避けることができない事由」には、単なる業務の繁忙や経営上の必要によるものは含まれません。
手続方法は、「非常災害等の理由による労働時間延長/休日労働許可申請書(様式6号)」を所轄の労働基準監督署に事前に、若しくは事後遅滞なく届け出ることにより行います。これを一般に「33(サンサン)」とか「33(サンサン)発動」と呼んでいます。
2 時間外協定、休日労働協定による場合(労働基準法36条)
上記以外に時間外労働や休日労働をさせるためには、労働基準法36条による以下の手続が必要です。
(1) 時間外労働や休日労働を行うことができる旨を就業規則に記載する。
(2) 労働者の過半数で組織された労働組合、または労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し「時間外労働・休日労働に関する協定届」を所轄の労働基準監督署に届出る。(これを一般に「36(サンロク)協定」とか「36(サブロク)協定」と呼んでいます。)
(3) 時間外労働に対しては2割5分以上(月60時間超の時間外労働割増賃金率は50%(中小企業は2023年3月まで猶予))、休日労働に対しては3割5分以上の割増賃金を支給する。
3 国家公務員および地方公務員が公務のために臨時の必要がある場合
36協定がないと時間外労働・休日労働はさせられない
労働基準法で定める法定労働時間は、原則として1日8時間以内・1週40時間以内、法定休日は原則として1週1日または4週4日です。
使用者は労働者に対して労働基準法で定める法定労働時間を超えて時間外労働をさせ、若しくは休日に労働させることができますが、使用者と労働者とで「時間外労働または休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、所轄の労働基準監督署へ届出る必要があります。したがって、労働基準法33条で定める非常時の場合を除き、使用者は36協定なしに労働者に時間外労働や休日労働をさせることはできません。
36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する従業員代表との間で書面により締結し、所轄の労働基準監督署に届出ることによって始めて効力を生じます。
労働基準監督署に届出る際には「時間外労働・休日労働に関する協定届」に、労使で締結した36協定書を添付します。ただし、協定書を作成せずに、協定届を協定書として代用しても差し支えありませんので、その場合は協定書の添付を省略します。
36協定の有効期間は通常1年ですが、36協定中に自動更新の定めを置くことも可能です。ただし、この場合は更新の都度、更新について異議のないことを証明する労使間の書面の届出が必要ですので、いずれにせよ届出は必要になります。
□ 36協定書に定めるべき事項
(1) 時間外または休日に労働させる必要のある具体的理由
(2) 業務の種類
(3) 労働者の数
(4) 所定労働時間を越えて延長できる時間(@1日、A1か月、B1年間の3つの期間)、および労働させるべき休日
(5) 有効期間(通常1年。ただし、労働組合と労働協約の形で締結された場合は有効期間を定めなくてもかまいません。)
1年を超える36協定や半年の36協定の締結は可能か
●(参考通達)H11.3.31基発169号
(問)時間外労働協定の有効期間は、必ず1年間としなければならないか。
(答)限度基準により、時間外労働手当においては必ず1年間についての延長時間を定めなければならないこととされたことをうけて、1年間についての延長時間を定める時間外労働協定については、有効期間は最も短い場合でも1年間となる。(以下略)
(問)時間外労働協定の有効期間は、1年以上であれば限度はないか。
(答)時間外労働協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年とすることが望ましい。
【解説】行政解釈によれば、1年間についての延長時間を定める36協定についての有効期間は最低でも1年間と限定し、1年以上の有効期間については否定はしないものの、1年とすることが望ましいとしています。
36協定を協定期間中に再締結した場合の起算日はどうなる
36協定を協定期間中に再締結した場合の起算日については、過去に遡った起算日は認められないという監督官や、便宜上認めるという監督官が混在しハッキリしませんが、再締結した日を起算日とする方が理にかなっていると思われます。
この場合、36協定の有効期間は最も短い場合でも1年とされる(実態は1年を超える36協定は皆無と思われる)ことから、例えば、有効期間が4月1日から翌年3月31日の36協定を、6月1日に再締結した場合の有効期間は6月1日から翌年5月31日までとなり、翌年は例年に戻り4月1日を起算日とした36協定を締結することになると思われます。
36協定は事業場単位で届出なければならない
支社・支店・営業所などを設けている会社は多いと思われますが、この場合でも、36協定届は支社・支店・営業所など各事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に各々届出る必要があります。このことは、労働基準監督署に届出を要する他の協定届や就業規則届などについても同様です。
労働基準法における事業場とは「主として場所的観念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として1個の事業として、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする。」としています。
また、行政通達では「出張所、支所等で規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務処理能力等を勘案して一の事業という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこと。例えば、新聞社の通信部の如きはこれに該当すること。(平11.3.31基発第168号)」としています。判断ができない場合は所轄の労働基準監督署で確認した方がよいでしょう。
新たな事業を開始し従業員を雇い入れたときや、新たに支社・支店等を作ったときは、所轄労働基準監督署に「適用事業報告書」の届出が必要です。また、併せて「労働保険保険関係成立届」も提出しますので、労働保険番号を取得している事業場、イコール協定届や就業規則届を提出する事業場とみても差支えないと思われます。
36協定を本社で一括届出できないか
支社・支店・営業所などを設けている企業は多いと思われますが、この場合でも、36協定は支社・支店・営業所など各事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に各々届出る必要があります。ただし、本社機能を有する事業場で、現実的に労働条件の統一的処理を図られている場合に限って、本社での一括届出は可能とされています。
ただし、36協定の一括届出は、支社・支店・営業所等の各事業場の全てに過半数労働者を組織する労働組合のある場合しか認められておりません。また、一括届出といっても、各事業場で作成したものを便宜上本社の所在地を所轄する労働基準監督署へ提出できるというだけで、受理した労働基準監督署が各労働基準監督署へ届書を送付するという流れになっています。
事業所数にもよりますが、遠方の各労働基準監督署へは返信用封筒を同封のうえ郵送により提出するか、電子申請により提出した方が実務上は簡便なように思われます。
■ 作成上のポイント
協定の当事者(使用者と労働組合代表)の職・氏名は、全ての協定書について同一とする必要があります。
(参考)厚生労働省のHP
36協定を労働基準監督署へ届出る際のポイント
36協定は所轄労基署へ届出て始めて有効となりますが、36協定を労基署へ届出る際のポイントは以下となります。
□ ポイント
(1) 本来であれば任意の書式で36協定を締結し、労基署への届出は、当該協定の内容を様式9号などの定められた書式に転載し届出ますが、様式9号などを36協定書として代用することも認められています。
(2) 労基署への届書については、労働者代表および事業主の押印を省略できることになりましたが、協定書本体の押印は省略できません。したがって、規定の届書を36協定書として代用する場合は従来と変わりなく、記名押印のうえ届出ることになります。
(3) 36協定届は電子申請もできます。電子申請により返信された公文書をプリントアウトし、協定書と共に保管し周知します。
36協定違反となる場合とは
36協定は、締結すれば労働者に時間外および休日労働させても法に問われないという免責の効果が及ぶと解されています。したがって、締結された36協定の枠を超えた時間外労働・休日労働は36協定違反となります。ただし、労働者数については大幅な増減がない限り違反とはならないとされます。
●(参考通達)S23.7.27基収2622号、H11.3.31基発168号
(問)業務上必要ある場合(法第33条による場合を除く)に、法第36条第1項で定めた限度を超えて労働時間を延長してはならないか。
(答)見解の通り。
●(参考通達)S63.1.1基発1号
労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものであること。
2019年4月(中小企業は2020年4月)からの36協定様式
2019年4月から施行される36協定様式は、以下の7つに分類されました。
(1) 様式9号…原則的上限の範囲内で締結する場合
(2) 様式9号の2…特別条項付で締結する場合
(3) 様式9号の3…新技術・商品等の研究開発業務(注3)の届出
(4) 様式9号の4…適用猶予事業(建設、自動車運転、医師、鹿児島および沖縄の砂糖製造)が2024年3月31日までの間に締結する場合
(5) 様式9号の5…事業場外で従事する業務の遂行に通常必要とされる時間を協定する場合の当該協定に付記して届出する場合
(6) 様式9号の6…労使委員会の決議を届出する場合
(7) 様式9号の7…労働時間等設定改善員会の決議を届出する場合
【解説】
(1) 様式は、厚生労働省のHP下部からダウンロードできます。
(参考リーフレット)2021年4月から36協定届の様式が新しくなります
(2) (4)〜(7)は旧様式を経過的に規定。従前の様式を流用することも可能です。
(3) 様式9号の3における新技術、新商品等の研究開発業務とは、専門的、科学的な知識、技術を要する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいいます。以前は、新技術、新商品等の研究開発業務について以下の具体的な行政解釈が示されておりましたが、現在は廃止されています。ただし、これに代わる行政解釈が出されていないため、当該行政解釈は引続き生きていると解されています。
(イ) 自然科学、人文・社会の分野の基礎的または応用的な学問上、技術上の問題を解明するため試験、研究、調査
(ロ) 材料、製品、生産・制作工程などの開発または技術的改善め設計、製作、試験、検査
(ハ) システム、コンピュータ利用技術などの開発または改善のための企画、設計
(ニ) マーケテイング・リサーチ、デザインの考案並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエーティブワーク
(ホ)その他(イ)〜(ニ)に相当する業務
(4) 新技術・新商品等の開発業務や適用猶予事業についても、上限規制に対応できる場合は、様式第9号、様式第9号の2で届出することも可能です。
■ 様式9号の4における、建設および自動車運転の適用猶予の範囲とは…
1 工作物の建設の事業の範囲
(1) 法別表第一第3号に掲げる事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業
(2) 事業場の所属する企業の主たる事業が法別表第一第3号に掲げる事業である事業場における事業(本社の総務、経理、事務作業など)
(3) 工作物の建設の事業に関連する警備の事業(当該事業において労働者に交通誘導警備の業務を行わせている場合に限る)
2 自動車の運転の業務の範囲
(1) 一般乗用旅客自動車運送事業の業務
(2) 貨物自動車運送事業の業務
(3) 一般乗合旅客自動車運送事業の業務
(4) 一般貸切旅客自動車運送事業の業務
(5) その他四輪以上の自動車の運転の業務
【注】運送業については建設業と異なり、ドライバー以外の総務・経理・事務などの業務に従事する従業員ついては時間外労働の上限規制の適用は猶予されません。したがって、ドライバーには様式9号の4または現行様式での36協定、その他従業員については新様式の36協定と、2本立ての36協定による届出が必要となります。
□ 新様式のポイント
(1) 延長できる時間数を、1日・1か月・1年に固定し、起算日・有効期間を明確にしました。
(2) 時間外労働と休日労働の合計時間数が1か月に100時間未満、かつ2か月から6か月までを平均し80時間を超えると法違反となることから、チェックボックス欄にチェックがないと有効な36協定とされません。
(3) 特別条項付36協定においては、原則の上限を超えて労働させる者に対して「健康及び福祉を確保するための措置」を定めなければなりません。具体的には、様式9号の2裏面(9)に記載されている何れかを選択したうえで、具体的な措置内容を記載します。なお、事業者は健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を記録し、有効期間満了後3年間保存しなければなりません。
(参考)様式9号の2裏面(9)抜粋
@ 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること
A 労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること
B 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること
C 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
D 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
E 年次有給休暇についてまとまつた日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
F 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
G 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
H 必要に応じて 、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること
I その他
□ 実務ポイント
36協定届の記載例に倣い、起算日を4月1日などとしているケースが多いと思われますが、例えば給与計算の締日を15日としている会社の場合、36協定における各月および1年の時間外・休日労働の把握が厄介です。この様な場合は給与締日にあわせ、36協定の有効期間を3/16から翌年3/15までのように変更すれば時間外・休日労働の把握が容易と思われます。
36協定届・1年単位の変形労働時間制に関する書面の作成支援ツール
厚生労働省「スタートアップ労働条件」の入力フォームから必要項目を入力・印刷することで、労働基準監督署に届出が可能な以下の4種類の書面を作成することができます。
・時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)
・1年単位の変形労働時間制に関する書面(協定届、労使協定書、労働日等を定めたカレンダー)
36協定など労使協定を締結する際の過半数代表者の選出方法
1 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合
過半数組合の要件は正社員だけでなく、パート・アルバイトなどを含めた事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である必要があります。
(計算式:全ての労働者÷労働組合員数>50%)
2 過半数労働組合がない場合の過半数代表者の要件
(1) 正社員だけでなく、パート・アルバイトなどを含めた事業場の全ての労働者の過半数を代表している必要があります。
(2) 過半数代表者の選出手続は、投票、挙手、労働者による話し合い、持ち回り決議など、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続きが取られていることが必要です。
(3) 労働基準法41条2号に規定する管理監督者でないことが必要です。
3 周知義務
労働基準法106条により、就業規則や労使協定は労働者へ周知する義務が課せられています。各作業場の見やすい場所に掲示・備え付けるなどして周知をする必要があります。
(詳細)厚生労働省のHP
●(参考)平成31年4月1日改正省令第6条の2
労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にあるものでなく、かつ同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと。
【解説】改正省令では、投票、挙手等の方法による手続により選出された者に加えて「使用者の意向に基づき選出された者でないこと」が追加され、これらの要件を満たさない過半数代表者との協定は無効とされます。
災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働とは何か
使用者が労働者に対して業務上の必要がある場合に法定労働時間を超えての残業や休日労働をさせるためには、労働者代表との「時間外労働または休日労働に関する協定(36協定)」の締結が必須です。
一方で、非常災害などにより臨時の必要がある場合においては、36協定の締結なくして、時間外労働や休日労働を命ずることができます。この根拠規定が労働基準法33条であるため、一般に「33(サンサン)」とか、「33(サンサン)発動」などと呼んでいます。ただし、事前または事後に所轄労働基準監督署の届出及び許可が必要となります。
【解説】災害等による臨時の必要がある場合は、36協定がなくても時間外労働および休日労働させることができ、また36協定で協定した時間を超えて時間外労働および休日労働させることも可能です。ただし、割増賃金の支払いは必要です。
●(関係法令)労働基準法33条1項
災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
【注】「必要の限度」とは、例えば、火災での消火作業や消火後の後始末の時間は必要の限度に含まれますが、復旧のための作業は必要の限度を超えるものとされます。
●「災害その他避けることのできない事由」についての許可基準(令和1.6.7基発0667第1号)
第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定であるからその臨時の必要の限度において厳格に運用すべきものであって、
その許可又は事後の承認は、概ね次の基準によって取り扱うこと。
(1) 単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。
(2) 地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む)、急病への対応その他の人命または公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれること。
(3) 事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれること。
(4) 上記(2)および(3)の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命または公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には、認めること。
■(申請書)非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書 (主要様式ダウンロードコーナー)
一斉休憩の原則とは何か
□ 休憩時間の3つの原則
(1) 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくても1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えること
(2) 一斉に与えること
(3) 自由に利用させること
□ 一斉休憩の例外
@運輸交通業、A商業、B金融広告業、C映画・演劇業、D通信業、E保健衛生業、F接客娯楽業、G官公署の事業、は休憩を一斉に与えなくてもかまいません。
上記以外の事業でも、労働者代表と労使協定を結ぶことにより休憩を一斉に与えないこともできます。この労使協定には、次の事項についての協定が必要ですが、所轄労基署への届出は必要ありません。
(1) 一斉に休憩を与えない労働者の範囲
(2) 一斉に休憩を与えない労働者に対する休憩の与え方
□ 休憩時間を与えなくてもよい職種がある
一斉休憩の例外のほかに、次の者には休憩そのものを与えなくてもよいという特例もあります。
(1) 屋内勤務者30人未満の郵便局において、郵便・電信・電話の業務に従事する者
(2) 運送事業や郵便事業に使用される者のうち、
@ 列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機の乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者
A 長距離にわたり継続して乗務しない乗務員であって、勤務時間中の停車時間、折返しによる待合わせ時間、その他の時間の合計が労働基準法第34条の休憩時間に相当する者。
休憩時間の自由利用に制限を加えることはできないか
労働基準法34条3項では「使用者は第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」として、休憩時間の自由利用を規定していますが、休憩時間の利用に制限を加えるこができるか否かについては、以下の行政通達や最高裁判例が参考となります。
●(参考通達)S22.9.13基発17号
休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差支えないこと。
●(参考通達)S23.10.30基発1575号
(問)休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせるのは法34条3項に違反するか。
(答)事業場内において自由に休憩し得る場合には必ずしも違法にはならない。
●(参考判例)S52.12.13最判、電電公社目黒電報電話局事件
労働基準法34条3項に基づく休憩時間の自由利用は、時間を自由に利用することが認められたものに過ぎず、その利用が企業施設内で行われる場合には施設管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れず、また企業秩序維持の要請に基づく規律による制約を免れないから、企業施設内における演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を休憩時間中であっても使用者の許可にかかわらしめることは合理的な制約である。
□ 休憩の自由利用を制限できる労働者
次の労働者は業務の性質上、労働基準法34条3項を適用しないとしています。ただし、(2)については所轄労基署の許可が必要です。
(1) 警察官、消防吏員、常勤の消防団員および児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者
(2) 乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、盲ろうあ施設および肢体不自由児施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者
(申請書)休憩自由利用除外許可申請(主要様式ダウンロードコーナー)
休憩時間は分割して与えることもできる
労働基準法34条は「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」としていますが、与え方については特に言及していません。
したがって、例えば1時間の休憩時間を30分ずつ分割して与えたとしても違法ではありません。ただし、労働時間の途中にと言っていますので、始業前や終業後に与えることはできません。また、昼夜交代勤務のような長時間勤務の場合でも、労基法上は、労働時間の途中に1時間の休憩時間を与えればよいことになります。
休憩時間は1時間としておくのが実務的
労働基準法34条は「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」としています。
例えば、1日の労働時間が7時間30分のケースでは休憩時間は45分で差支えありませんが、仮に残業を1時間命じると労働時間は8時間を超えることになりますので、15分の休憩時間をどこかで追加しなければなりません。
残業があった都度、15分以上の休憩時間を追加するとなると労務管理上も煩雑になります。最初から1時間の休憩時間を設定しておいた方が実務的です。