改正安衛法による労働時間の客観的な把握の義務づけについて
労働安全衛生法では、長時間労働に対する医師の面接指導制度が定められていますが、2019年4月から、長時間労働に対する医師の面接指導制度が強化されると共に、労働時間の客観的な把握が企業に義務付けられています。次項Q&Aの「改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について」と併せてお読みください。
● 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法の施行等について(H30.9.7基発0907第2号)
● 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(H30.12.28基発1228第16号)
● 厚労省のリーフレット
□ 具体的な流れと変更点
1 労働時間の状況を客観的に把握し記録する義務(安衛法66条の8の3)
(1) 医師による面接指導を行うため、事業者はタイムカードやパソコン等による記録など客観的な方法で労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存しなければなりません。(安衛則52条の7の3第1項)
(2) 労働時間の把握は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければなりません。
(3) 管理監督者や裁量労働制などのみなし労働対象者も面接指導の対象となることから、当該労働者に対しても、労働時間の記録・保存が義務化されます。
2 労働者に対する通知と産業医への情報提供
(1) 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた場合は、速やかに当該情報を当該労働者に対して通知しなければなりません。(安衛則52条の2第3項)
(2) 産業医に対しても、同様の情報提供を行わなければなりません。(安衛則14条の2第2項)
●(参考通達)
時間外・休日労働が1月当たり80時間を超えた労働者がいない場合においては、該当者がいないという情報を産業に情報提供する必要がある。(H30.12.28基発1228第16号、問5)
3 医師による面接指導の実施(参考)厚労省のリーフレット
(1) 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、労働者の申出により、遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりません。(安衛則52条の2)
(2) 研究開発業務に従事する労働者が、時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超えた場合は、労働者の申出の有無に関係なく、遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりません。(安衛則52条の7の2)
【注】(1)の面接指導については、管理監督者や研究開発業務に従事する労働者を含め、全ての労働者が対象となります(ただし、高プロ対象労働者を除く)。(2)の面接指導については、研究開発業務に従事する労働者のみが対象となります(ただし、研究開発業務に従事する労働者が、高プロ対象労働者や管理監督者である場合を除く)。
4 面接指導後の労働者の健康を保持するための必要な措置
(1) 面接指導結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません。(安衛則52条の6)
(2) 面接指導の結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴き、必要に応じ、就業場所の変更、職務内容の変更、有給休暇の付与(労基法39条の規定による有給休暇を除く)、労働時間の短縮、深夜業の回数の制限、などの措置を講じなければなりません。(安衛法66条の8第5項、同66条の8の2第2項)
●(参考)罰則規定
3(2)に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。因みに、3(1)に違反した場合の罰則規定はありません。
○(参考)新技術、新商品等の研究開発業務とは…
新技術、新商品等の研究開発業務とは、専門的、科学的な知識、技術を要する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいいます。以前は、新技術、新商品等の研究開発業務について具体的な行政解釈(以下を参照)が示されておりましたが、現在は廃止されています。ただし、これに代わる行政解釈が発出されていないため、当該行政解釈は引続き生きていると解されています。
(イ) 自然科学、人文・社会の分野の基礎的または応用的な学問上、技術上の問題を解明するため試験、研究、調査
(ロ) 材料、製品、生産・制作工程などの開発または技術的改善のための設計、製作、試験、検査
(ハ) システム、コンピュータ利用技術などの開発または改善のための企画、設計
(ニ) マーケテイング・リサーチ、デザインの考案並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエーティブワーク
(ホ)その他(イ)〜(ニ)に相 当する業務
改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について
労働安全衛生法の改正による産業医の機能強化に伴い、2019年4月から事業者および産業医に課せられる義務も強化されまています。事業者に対する具体的な義務は以下のとおりです。
● 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の 労働安全衛生法及びじん肺法の施行等について(H309.7基発0907第2号)
● 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(H30.12.8基発1228第16号)
● 厚労省のリーフレット
□ 事業者の義務
1 長時間労働に関する産業医への情報提供等(安衛則14条の2第2項、安衛則52条の2第3項)
(1) 産業医を選任した事業者は、産業医に対して、以下のアからウまで情報を提供しなければりません。
ア @健康診断、A長時間労働者に対する面接指導、Bストレチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報⇒@からBの結果について、医師又は歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく(概ね1か月以内)。
イ 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者の氏名・当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報⇒当該超えた時間の算定を行った後、速やかに(概ね2週間以内)。
(時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者がいない場合も、該当者がいないという情報を産業医に提供する必要があります。)
ウ 労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要と認めるもの⇒産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに(概ね2週間以内)。
(2) 面接指導の結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴き、必要に応じて措置を講じたうえで、その旨を産業医に情報提供しなければなりません。(安衛法66条の8第5項、同66条の8の2第2項)
(3) 上記の情報提供によって、産業医は必要に応じ事業者から意見聴取を行ったうえで勧告を行うことができるとされますが、産業医から勧告を受けた事業者は、勧告および措置の内容(措置を講じない場合は、その旨・その理由)を記録し、3年間保存しなければなりません。(安衛則14の3第3項)
2 衛生委員会への報告等
(1) 事業者は、産業医から労働者の健康を確保するための勧告を受けたときは、遅滞なく勧告および措置の内容を衛生委員会に報告しなければなりません。(安衛則14条の3第3項)また、事業者は、安全委員会・衛生委員会開催の都度、これらの委員会の意見・当該意見を踏まえて講じた措置の内容・これらの委員会における議事で重要なものを記録し、これを3年間保存しなければなりません。(安衛則14条の3第4項)なお、産業医は衛生委員会に対して、労働者の健康を確保する観点から、必要な調査審議を求めることができます。(安衛則23条5項)
(2) 産業医が辞任または産業医を解任したときは、遅滞なくその旨および理由を衛生委員会に報告しなければなりません。(安衛則13条4項)
3 その他
(1) 事業者は産業医に関する情報(事業場における産業医の業務の具体的内容、産業医に対する健康相談の申出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報取扱の方法)を労働者に周知しなければなりません。(安衛則98条の2第2項)
(2) 労働者の健康情報については、労働者の健康の確保に必要な範囲で収集し保管・使用しなければなりません。(安衛法104条、じん肺法35条の3)
厚労省のサイト「こころの耳」の「働く人の疲労蓄積度セルフチェック」
厚労省の「こころの耳」は、働く人やそのご家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者などに向けて、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供している、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトですが、同サイトで「働く人の疲労蓄積度セルフチェック」を再公開しています。
安衛則52条の2では、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、労働者の申出により、遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりませんが、労働者自身の疲労度チェックに活用できる有効なツールと思われます。
・働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用)
・働く人の疲労蓄積度セルフチェック(家族支援用)
総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任が必要な事業場とは
以下の事業場は、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に、所轄の労働基準監督署に選任報告を 行わなければなりません。
(参考)東京労働局のサイト
□ 総括安全衛生管理者の選任と届出(労働安全衛生規則2条1項)
事業者は政令で定める規模の事業場ごとに、総括安全衛生管理者の選任が義務付けられています。
■ 政令で定める規模の事業場とは
(1) 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業…100人
(2) 製造業(物の加工を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業…300人
(3) その他の業種…1,000人
■ 総括安全衛生管理者の資格
事業場の事業の実施を統括管理する者の中から選任するとされていますので、特に資格要件はありません。
□ 安全管理者の選任と届出(労働安全衛生規則4条1項1号)
常時50人以上の労働者を使用する一定の事業場においては安全管理者の選任が義務付けられています。
■ 安全管理者の選任が義務付けられる、常時50人以上の労働者を使用する事業場
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備及び機械修理業の事業場です。
【注】一定規模以上の事業場は、専任の安全管理者の選任が必要です。
■ 安全管理者の資格
(1) 学校教育法による大学、高等専門学校における理科系統の正規課程を修めて卒業した者で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
(2) 学校教育法による高等学校、中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
(3) 労働安全コンサルタント
(4) 厚生労働大臣が定める者
また、安全管理者の資格要件としては上記のほかに、安全管理者専任時研修を終了していることが必要です。
□ 衛生管理者の選任と届出(労働安全衛生規則7条1項1号)
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者の選任が義務付けられています。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属でなくても差し支えありません。
労働者数により、複数の衛生管理者の選任が必要となります。また「常時1,000人を超える労働者を使用する事業場」または「常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場」では、衛生管理者のうち、少なくとも1人を専任とする必要があります。さらに、法定の有害業務のうち一定の業務を行う有害業務事業場では、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理免許所持者から選任しなければなりません。
■ 衛生管理者の選任数
・50人以上〜200人以下 1人以上
・200人超〜500人以下 2人以上
・500人超〜1,000人以下 3人以上
・1,000人超〜2,000人以下 4人以上
・2,000人超〜3,000人以下 5人以上
・3,000人超 6人以上
■ 衛生管理者の資格
第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者で、業種により資格者が異なります。
□ 産業医の選任と届出(労働安全衛生規則13条1項1号)
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、産業医の選任が義務付けられています。
安全委員会・衛生委員会を設置しなければならない事業場とは
一定の基準に該当する事業場は安全委員会・衛生委員会(または両委員会を統合した安全衛生委員会)を設置しなければなりません。(労働安全衛生法17条、18条、19条)
(参考)厚労省のリーフレット
□ 安全委員会
1 常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
2 常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
製造業のうち1以外の業種、運送業のうち1以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
□ 衛生委員会
常時使用する労働者が50人以上の事業場(全業種)
■ 安全委員会・衛生委員会または安全衛生委員会の開催にあたっての留意事項
(1) 毎月1回以上開催すること
(2) 委員会における議事の概要を労働者に周知すること
(3) 委員会における議事で重要なものに係る記録を作成し、3年間保存すること
労働者数50人未満の事業場の安全衛生管理はどうなる
常時使用する労働者が10人以上50人未満の事業場での安全衛生管理体制は以下のとおりです。なお、安全衛生推進者または衛生推進者および安全推進者を選任したときは、氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません(労働安全衛生規則14条の4)。なお、50人以上規模事業場と異なり所轄の労働基準監督署への選任報告義務はありません。
(参考)厚労省のサイト
□ 安全衛生推進者または衛生推進者の選任
労働者数10人以上50人未満規模の事業場においては、労働安全衛生法により、安全衛生推進者または衛生推進者の選任が義務付けられ、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならないとされます。ただし、労働基準監督署への選任報告の義務はありません。
(1) 労働者数10人以上50人未満規模で「安全衛生推進者」を選任すべき事業場
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
(2) 労働者数10人以上50人未満規模で「衛生推進者」を選任すべき事業場
上記以外の事業場
(3) 労働者数10人以上50人未満規模で「安全推進者」を選任すべき事業場
・小売業(ただし、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業は安全衛生推進者の選任義務事業場のため除く。)
・社会福祉施設
・飲食店
法人の代表者は産業医として選任できない
常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、事業者は産業医を選任しなければならず、また、産業医を選任した際および産業医を変更する際には所轄の労働基準監督署へ届け出が必要ですが、法人の代表者等を産業医として選任することは禁止されます。
(参考)厚労省のリーフレット
●(参考法令)労働安全衛生規則13条1項2号
次に掲げる者(イ及びロにあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)以外の者のうちから選任すること。
イ 事業者が法人の場合にあつては当該法人の代表者
ロ 事業者が法人でない場合にあつては事業を営む個人
ハ 事業場においてその事業の実施を統括管理する者
■ 具体例(産業医を兼ねることを禁止されます。)
(1) 代表取締役、医療法人又は社会福祉法人の理事長
(2) 病院又は診療所の院長、老人福祉施設の施設長
安衛法における事業の単位
労働安全衛生法における事業場の定義(単位)については、労働基準法における考え方と同一としています。
(参考)東京労働局のHP
安衛法における常用労働者の定義
●(参考通達)S47.9.18基発第602号
常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用するとは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものである。
●(参考通達)S63.10.1基発602号
派遣中の労働者に関しての総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等および産業医の選任の義務並びに衛生委員会の設置の義務は、派遣先事業者および派遣元事業者の双方に課せられているが、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場および派遣元の事業場の双方について、それぞれ派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出するものであること。
労働者私傷病報告における休業日のカウント方法
休業を伴う業務災害が発生した場合、事業者は所轄の労働基準監督署へその旨を報告しなければなりませんが、報告書の様式および報告日は休業日数により異なります。
(1) 死亡または休業4日以上の場合…労働者死傷病報告(様式23号)により、遅滞なく
(2) 休業4日未満の場合…労働者死傷病報告(様式24号)により、災害発生が1〜3月は4月末まで、4〜6月は7月末まで、7〜9月は10月末まで、10〜12月は1月末まで
(3) 休業1日未満…報告必要なし
□ 労働者死傷病報告における休業日のカウント方法
(1) 災害発生当日は、休業日にカウントしない(労災保険における休業補償給付の考え方と異なります)
(2) 日の一部を休業の場合は、休業日にカウントしない
(3) 休業日に、公休日や年休などが介在した場合の場合の日数のカウントは 暦日計算し、労働することができず休んだ日であれば、労働者死傷病報告における休業日にカウントする
(参考Q&A)労災保険の休業補償給付における休業日のカウント方法
健康診断には会社の実施義務と労働者の受診義務がある
□ 会社の義務
(1) 法律上の義務
労働安全衛生法66条1項で「事業者は、労働者に対して厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」として、従業員に対する健康診断の実施を義務づけています。また、違反者に対しては、労働安全衛生法120条により50万円以下の罰金刑に処するとしています。
(2) 民事上のリスク
健康診断を行わなかったことによる健康障害等により労働者から損害賠償請求をされた場合に、これを免れることは難しいとされます。安全配慮義務違反を問われた場合に、法で実施を義務づけているものを履行しないことに対しては無過失責任を反論できません。
□ 労働者の義務
労働安全衛生法66条5項は「労働者は(中略)事業者の行なう健康診断を受けなければならない」として、労働者の健康診断の受診も義務づけています。
また、同項但書きで「但し、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない」として労働者が会社の行なう健康診断を受けたくないときは、自身の費用で受診のうえ、会社に健康診断書を提出する義務を規定しています。
(参考Q&A)パートタイマーの健康診断はどうする
会社が実施を義務づけられる健康診断とは
会社が行うことを義務づけられている健康診断は、以下のとおりです(労働安全衛生規則1節の2)。(1)と(2)の健康診断は、常時使用する労働者を雇用している全ての企業に実施を義務づけられますが、(3)以降は、その項目に該当するケースがある場合に実施を義務づけられる健康診断です。
(1) 雇入時の健康診断
常時使用する労働者を雇入れるときに実施する健康診断
(2) 定期健康診断
常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回実施する健康診断
(3) 特定業務従事者の健康診断
坑内労働、深夜業等の有害業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回実施する健康診断
(4) 海外派遣労働者の健康診断
労働者を6か月以上海外に派遣させるときや、海外に6か月以上派遣していた労働者を日本国内の業務に従事させるときに実施する健康診断
(5) 結核健康診断
健康診断で結核の恐れがあると診断された労働者に対し、おおむね6か月後に行う健康診断
(6) 給食従業員の検便
給食従業員を雇入れる際や当該業務へ配置替えの際に行う検便による健康診断
(7) 歯科医師による健康診断
特定の業務に常時従事する労働者を雇入れる際や当該業務へ配置替えの際に、6か月以内ごとに1回実施する歯科医師による健康診断
健康診断の検査項目
□ 雇入時の健康診断・定期健康診断の検査項目
(1) 既往歴及び業務歴の調査
(2) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
(3) 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
(4) 胸部エックス線検査及び喀痰検査
(5) 血圧の測定
(6) 貧血検査
(7) 肝機能検査
(8) 血中脂質検査
(9) 血糖検査
(10) 尿検査
(11) 心電図検査
「定期健康診断」は、医師の判断により省略できる項目があります。なお「雇入時の健康診断」については省略できる項目はありません。
□ 定期健康診断で省略できる項目
1 身長の検査
20歳以上の者
2 腹囲の検査
(1) 40歳未満の者(35歳の者を除く)
(2) 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの
(3) BMI が20 未満である者 BMI =体重(kg)/身長(m)2
(4) 自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMI が22未満である者に限る)
3 喀痰検査
(1) 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者
(2) 胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
4 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 血糖検査及び心電図検査
40歳未満の者(35歳の者を除く)
5 胸部エックス線検査
(1) 40歳以上→全員に実施
(2) 40歳未満→以下のア〜ウ以外は、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
@ 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の人
A 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている人
B じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている人
【注】検診年齢は、年度の末日(3月31日)現在の満年齢でカウントします。
特定業務従事者の健康診断における深夜業の業務に常時従事する労働者とは
厚生労働省のQ&Aでは、特定業務従事者の健康診断における深夜業の業務に常時従事する労働者は、以下としています。
・深夜業(午後10時から午前5時までの間に業務に従事)を1週に1回以上又は1月に4回以上行う労働者
二次健康診断等給付とは何か
一次健康診断の結果、次の全ての項目で異常の所見があると診断されたとき、二次健康診断等給付を受けることができます。なお、二次健康診断等給付は労災保険による給付で、二次健康診断と特定保健指導があります。
(1) 血圧検査
(2) 血中脂質検査
(3) 血糖検査
(4) 胸囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
【注】一次健康診断とは、安衛法で規定される定期健康診断のうち直近のものをいいます。
二次健康診断等給付を受ける場合は、労働者が二次健康診断給付請求書に会社から証明を貰い、一次健康診断の結果の写しを添付のうえ、二次健康診断を受ける病院等を経由して都道府県労働局に提出します。無料で二次健康診断を受けることができます。
(詳細)厚生労働省のリーフレット
特殊健康診断とは何か
特殊健康診断とは、労働衛生対策上特に有害であるといわれている業務に従事する労働者等を対象として実施する法定の健康診断で、下記の業務に従事する労働者はパートタイマー等を含め全ての労働者が対象となります。
・屋内作業場における有機溶剤業務に常時従事する労働者(有機則第29条)
・鉛業務に常時従事する労働者(鉛則第53条)
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者(四アルキル鉛則第22条)
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)(特化則第39条)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者(高圧則第38条)
・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者(電離則第56条)
・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者(除染則第20条)
・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者(石綿則第40条)
ストレスチェック制度導入のポイント
□ ストレスチェックとは
ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。労働安全衛生法により、労働者が50人以上いる事業所では、常時使用する労働者にストレスチェックを実施することが義務付けらています。
【注】ストレスチェック制度の規定は事業場ごとの適用となります。例えば労働者、本社100人、A支社60人、B支社30人会社の場合、ストレスチェックを義務化される事業場は、本社、A支社となります。
(参考)厚生労働省「こころの耳」
□ ストレスチェック制度の導入
1 導入準備
(1) 衛生委員会で制度の実施方法を検討します。
@ ストレスチェックは誰に実施させるのか
A ストレスチェックはいつ実施するのか
B どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
C どんな方法でストレスの高い人を選ぶのか
D 面接指導の申出は誰にすれば良いのか
E 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
F 集団分析はどんな方法で行うのか
G ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか
【注】法令の規定は事業場ごとの適用となりますので、全社共通のルールについても各事業場の衛生委員会等において確認し、共通化できない内容がある場合は各事業場の衛生委員会等で調査審議のうえ決定することになります。
(2) 実施体制・役割分担を決め、ストレスチェック制度実施内規などで具体的な内容を規定します。
■ ストレスチェック制度実施規定例(厚生労働省版)
■ 実施体制例
@ 制度全体の担当者…事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者
A ストレスチェックの実施者…ストレスチェックを実施する者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。)
B ストレスチェックの実施事務従事者…実施者の補助をする者(質問票の回収、データ入力、結果送付など個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。)
C 面接指導を担当する医師
(3) 従業員に周知します。
2 ストレスチェックの実施
(1) 従業員に質問票を配布し記入してもらいます。
(ダウンロード)職業性ストレス簡易調査票
(2) 質問票の回収等については、以下の方法が考えられます。
@ ストレスチェック実施者が回収する方法
A ストレスチェック実施事務従事者として会社の人事担当者や衛生管理者などを指定し、質問票の回収・データ入力・結果送付などの個人情報を取扱う業務を担当させる方法
B ストレスチェック実施事務従事者が回収を行うが、データ入力・結果送付などはストレスチェック実施者が行う方法
C 全てを外部委託する方法
(3) 回収した質問票をもとに医師などの実施者がストレスの程度を評価し、面接指導が必要な者を選定します。
(4) ストレスチェックの結果は直接本人に通知されます。会社が結果を入手するには、本人の同意(同意確認書類)が必要です。また、会社はストレスチェックの結果についての情報を把握しないということも可能です。この場合は、同意を得る手続きを省略できます。
(5) 結果の保存(保存期間5年間)は実施者または実施事務従事者が行います。
3 面接指導
(1) ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされた労働者から申出があれば、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。
(2) 面接指導を実施した医師からの結果報告書や意見書の入手については、本人の同意は必要としませんが、面接指導にあたり事前に本人に説明し、了解を得ることが望ましいとされています。
(3) 医師の意見等を参考に、必要に応じ会社は労働時間の短縮などの措置を行います。
4 ストレクチェック結果の労働基準監督署への報告
(ダウンロード)心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書様式
法令の規定は事業場ごとの適用となりますので、複数の事業場を有する企業の場合は、各事業場が管轄労働基準監督署に対して報告します。
□ ストレスチェック制度のポイント
(1) 定期健康診断と異なり、ストレスチェックを受検するか否かは労働者の自由です。したがって、質問票の提出や医師の面接指導を受けるか否かは労働者の自由とされます。
(2) 会社で実施事務従事者を選任する場合は「解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ管理監督者」以外の者から選任しなければなりません。
(3) 実施者および実施事務従事者には守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。
(4) ストレスチェック制度の対象者は、定期健康診断を実施する労働者と同一です。具体的には、正社員および週所定労働時間の3/4以上働くパートタイム労働者が対象となります。
(5) ストレスチェックおよび面接指導に要する費用は会社の負担となります。また、要した時間について賃金の支払いの有無は会社の自由です。一般健康診断の考え方と同様です。
メンタル不調者の「職場復帰支援モデルプログラム」
労働者健康安全機構で、事業場規模等に対応したメンタル不調者の「職場復帰支援のモデルプログラム」を公開しています。
(詳細)労働者健康安全機構のHP
応募者の採否を決定するための健康診断を実施することができるか
採用選考時に応募者の採否を決定するために健康診断を実施することの是非についての行政の考え方は、以下の事務連絡が参考になります。
● 採用選考時の健康診断に係る留意事項について(H30.4.24 厚生労働省職業安定局雇用開発課長補佐から都道府県労働局職業安定主務課長あての事務連絡)
近年、新規学校卒業者の採用選考時に、労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、いわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施している事例が見受けられます。
しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。
また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。
したがって、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討していただきますようお願いします。
【解説】事務連絡では「健康診断を一律に実施している事例が見受けられる」と言っています。事務連絡ですので法的拘束力はありませんが、最終選考の段階において健康確認のため本人から健康診断書の提出を求める程度としておけば無難と思われます。また、不採用となった場合は速やかに本人に返還するか、本人に確認のうえ破棄するなどの配慮が必要と思われます。
雇入時の健康診断の費用は必ず会社負担か
労働安全衛生規則43条は「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し医師による健康診断を行わなければならない」として、雇入時の健康診断の実施を義務づけています。
労働安全衛生法で定める健康診断は会社の全額負担が原則ですが、同規則但書では「ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。」としています。
したがって、本人が提出した3か月以内の健康診断書を、雇入時の健康診断とすることも可能です。
雇入時の健康診断はいつまでに行えばよいか
雇入れ時の健康診断はいつまでに実施すればよいかについては、特に明文化されたものは見当たりませんが、労働安全衛生規則43条但書きを準用し、雇入れ後3か月以内に行う定期健康診断を、雇入れ時の健康診断として準用するなどしても差し支えないものと思われます。
●(関係法令)労働安全衛生規則43条
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
健康診断に要した時間の賃金はどうする
行政解釈では、一般健康診断の受診のために要した時間について「賃金を支払うことが望ましい」と留め置いていますので、支払わないことも可能と思われますが、特殊健康診断については「所定労働時間内に行うのを原則とし、時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければならない。」としています。なお、健康診断の費用については、会社が全額負担する必要があります。
●(参考通達)S47.9.18基発第602号
一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものでないので、その受診のために要した時間について当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることと考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい。
特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。
健康診断の受診施設までの移動の際に交通事故に遭った場合の労災の取扱いはどうなる
会社から健康診断の受診施設まで、徒歩や車で移動の際に交通事故などの災害にあった場合の労災の取扱いはどうなるかという問題があります。定期健康診断や特殊健康診断の受診について、所定労働時間内に行われた場合や割増賃金を支給のうえ時間外に行われた場合は、勤務時間中の事故ですので業務災害として取扱われると思われます。
問題は賃金の支払をしない一般健康診断において、労働者が自分の時間で受診した場合の取扱いです。そもそも会社の指示による受診という前提があったしても、業務命令と賃金支払いは表裏一体であり、賃金支払いの前提がなければ業務とはいえず、労災は適用されないのではないかと考えます。
育児休業などで休業中の労働者の健康診断はどうする
通達では、育児休業などで休業中の労働者の健康診断については以下としています。
● 育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて(H4.3.13基発第115号)
育児休業、療養等により休業中の労働者に係る労働安全衛生法第66条第1項から第3項まで(労働安全衛生規則第44条第1項、第45条第1項、第48条、有機溶剤中毒予防規則第29条第2項、鉛中毒予防規則第53条第1項、四アルキル鉛中毒予防規則第22条、特定化学物質等障害予防規則第39条第1項及び第2項、高気圧作業安全衛生規則第38条第1項並びに電離放射線障害防止規則第56条第1項)並びにじん肺法第8条第1項に規定する定期健康診断(以下「定期健康診断」という。)及び指導勧奨による特殊健康診断の取扱いについては、下記によることとされたい。
1 休業中の定期健康診断について
事業者は、定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が、育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえないものであること
2 休業後の定期健康診断について
事業者は、労働者が、休業中のため、定期健康診断を実施しなかった場合には、休業修了後、速やかに当該労働者に対し、定期健康診断を実施しなければならないものであること
3 指導勧奨による特殊健康診断について
休業中及び休業後の指導勧奨による特殊健康診断については、上記1及び2に準じて実施するよう事業者等を指導すること
【注】文中の指導勧奨による特殊健康診断とは、労働安全衛生法により定められた健康診断の他に、特定の物質を扱ったり、 特定の業務に就いたりする場合に行政からの通達により指導勧奨されている健康診断のことをいいます。
人間ドックを受診すれば会社の健康診断を省略できる
人間ドックやかかりつけの医師による健康診断を受けた場合は、その健康診断の結果を会社に提出すれば、改めて会社が実施する健康診断を受診する必要はありません。この場合、人間ドック等の検査機関で、会社提出用の健康診断書を作成してもらい、会社に提出します。
また、労働安全衛生規則では、雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断を受けた人は、その健康診断の実施日から1年間(特定業務従事者の健康診断については6か月間)は、重複する項目は省略できるともしています。
健康診断結果について医師等からの意見聴取とは何か
労働安全衛生法では、事業者は健康診断等の結果、異常の所見があると診断された労働者について、就業上の措置について、3か月以内に医師または歯科医師の意見を聴かなければないとしています。(労働安全衛生法66条の4)
また、事業者は、上記の医師等の意見を勘案し必要がある場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる必要があるともしています。(労働安全衛生法66条の5)
□ 事業者が医師に聴かなければならない意見とは
(1) 通常の勤務でよいか→通常勤務
(2) 勤務に制限を加える必要があるか→制限制限
(3) 勤務を休む必要があるか→要休業
会社は、健康診断の結果、要所見の労働者に対して、産業医や、産業医の設置義務のない会社の場合は地域産業保健センターの相談窓口等を活用し意見を聴かなければならず、また医師等の意見を勘案し、必要があるときはその労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じる必要があるとしています。
労基署に提出すべき健康診断結果報告とは
労働基準監督署に提出しなければならない健康診断結果報告については、厚労省のサイトに一覧が掲載されています。
健康診断結果の保存期間は何年か
会社は、健康診断結果について「健康診断個人票」により5年間保存することを義務づけられています。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、健康診断結果について「定期健康診断結果報告書」により、所轄の労働基準監督署に報告することも義務づけられています。
健康診断個人票保存義務と個人情報保護法の関係
企業は、健康診断結果について「健康診断個人票」により5年間保存することを義務づけられています。また、これらの健康診断情報については、従業員の健康状態や病歴等も明らかになっていますので、その保管や開示に対しては慎重さが求められます。
したがって、鍵のかかる場所での保管は当然のことですが、鍵の保管責任者もキチンと決めておき、従業員が覗き見などをできないようにしておく必要があります。
また、個人情報保護法23条では「個人情報取扱事業者は、(中略)あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」としていますので、健康診断結果についても第三者への開示が必要な場合は原則として本人の同意が必要です。
【注】ここでいう第三者とは家族も含みます。
結核予防法や伝染病予防法は感染症法に統合
伝染病予防法は1999年4月に、結核予防法は2007年4月にそれぞれ廃止され、感染症法に統合されました。
病者の就業制限として、伝染病予防法や結核予防法を記載している就業規則を稀に見かけることがありますが、削除・変更しておいた方が良いでしょう。また、2000に安全衛生規則61条(就業制限)も次のように改正されています。
1 事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第1号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。
(1) 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者
(2) 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者
(3) 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者
2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。
【注】法により就業を禁止される場合は、事業主都合による休業ではありませんので、賃金や休業手当の支払義務は生じません。なお、1項3号の厚生労働大臣が定める疾病は、現在のところ例示がないようです。
【解説】以前は、安全衛生規則61条の就業制限条項に「精神障害で自身に傷つけるか他人に害を及ぼすおそれのある時」の条文が掲載されていましたが、2000年に削除されました。会社の就業規則に当該条文が掲載されていたら、これも削除しておいた方が良いでしょう。
(参考)H12.3.30基発第207号
感染症法に基づく就業制限の解除に関する取扱いについて
表題の取扱いについては、令和2年5月1日付の厚労省発の事務連絡を令和4年1月31日に一部修正し、新型コロナウィルスの感染者や濃厚接触者が職場復帰する際の取扱いが記載されました。
(参考)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 18 条 に規定する就業制限の解除に関する取扱いについて
□ 就業制限解除の概要
・ 就業制限の解除については、宿泊療養又は自宅療養の解除の基準を満たした時点で、同時に就業制限の解除の基準を満たすこととして差し支えないこと。
・ 就業制限の解除については、医療保健関係者による健康状態の確認を経て行われるものであるため、解除された後に職場等で勤務を開始するに当たり、職場等に証明(医療機関・保健所等による退院若しくは宿泊・自宅療養の証明又はPCR検査等若しくは抗原定性検査キットによる陰性証明等)を提出する必要はないこと。
・ 濃厚接触者の待機期間の解除については、解除された後に職場等で勤務を開始するに当たり、職場等に証明を提出する必要はないこと。
インフルエンザに罹患した従業員を就業制限した場合の賃金の支払いはどうする
□ 従業員がインフルエンザに罹患した場合
接客などに従事する従業員がインフルエンザに罹患した場合は、顧客への感染を予防するため自宅待機を命じることがあります。この場合は会社都合による休業とされますので、労基法26条による休業手当(平均賃金の6割以上)が必要となります。なお、従業員が年次有給休暇を請求してきた場合は、年次有給休暇で対応するも可能でしょう。また、労務不能期間が4日以上となる場合は傷病手当金の申請も可能です。
なお、家族の罹患などで本人も罹患の恐れがある場合などに業務命令により休業指示をする場合についても会社都合による休業となりますので、休業手当の支払いが必要となります。
● 労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
□ 従業員が新型インフルエンザに罹患した場合
従業員が新型インフルエンザに罹患し「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律」により都道府県知事が就業制限を行った場合は、直ちに就業を禁止する必要があります。この場合は事業主都合による休業ではありませんので、休業手当の支払義務は生じません。
事業所の飲酒運転根絶取組の強化により、運転者の酒気帯びの有無の確認が一般の事業所にも拡充へ
2021年6月28日に千葉県八街市で発生した交通死亡事故を受け、運送業等に義務付けられていた運転者の酒気帯びの有無の確認が一般の事業所にも拡充されました。
(詳細)警察庁のリーフレット
□ 2022年4月から
(1) 運転前後の運転者の状態を目視で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
(2) 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
□ 2022年10月から
(1) 運転者の酒気帯びの確認の有無を、アルコール検知器をを用いて行うこと
(2) アルコール検知器を常時有効に保持すること
□ 安全運転管理者の選任義務と届出
「乗車定員が11人以上の自動車1台以上」または「その他の自動車5台以上」を使用する事業者は、事業所ごとに「安全運転管理者の選任」を行い、事業所を管轄する警察署への届出が必要となります。
健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
厚労省が、アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用することを目的としたガイドラインを公表しています。
ガイドラインでは純アルコール量に着目し、健康に配慮した飲酒の仕方、避けるべき飲酒、疾病別の発症リスクと純アルコール量の関係などを啓蒙しています。
・リーフレット
・ガイドライン
職場における労働衛生基準(照度、便所、救急用具等)が変更へ
□ 2021年12月1日施行
● 便所の設備
便所を男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持されつつ、新たに「独立個室型の便所」についての位置付けが行われました。 なお、従来の設置基準を満たしている便所を設けている場合は変更の必要は
ありません。
(独立個室型の便所を付加する場合の取扱い)
男性用と女性用の便所を設けた上で、独立個室型の便所を設けたときは、男性用及び女性用の便所の設置基準に一定数反映させること。
(少人数の作業場における例外と留意事項)
少人数(同時に就業する労働者が常時10人以内)の作業場において、建物の構造の理由からやむを得ない場合などについては独立個室型の便所で足りるものとした。ただし、既存の男女別便所の廃止などはできない。
● 救急用具の内容
作業場に備えるべき負傷者の手当に必要な救急用具・材料について、一律に備えなければならない具体的な品目の規定がなくなり、職場で発生することが想定される労働災害等に応じて、応急手当に必要なものを産業医等の意見、衛生委員会等での調査審議、検討等の結果等を踏まえ、備え付けることに変更されました。
□ 2021年12月1日施行
● 作業面の照度
一般的な事務作業(300ルクス以上)、付随的な事務作業(150ルクス以上)へ
(詳細)厚労省のリーフレット/事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の改正に係る質疑応答集
改正健康増進法により、全ての施設において原則屋内禁煙へ
□ 2020年4月改正(詳細)厚労省のHP
改正健康増進法により多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等の施設など全ての施設ににおいて、原則屋内禁煙となりました。
原則屋内禁煙の例外は、喫煙専用室または加熱式タバコ用喫煙室を設置した場合のみ屋内喫煙が認められとしていますので、これらの施設の設置がない場合は、全面屋内禁煙となります。
なお、多数の利用者がいる施設とは「2人以上の者が同時に、又は、入れ替わり利用するをいう」としていますので、事務所や工場などの屋内の職場も該当し、企業内においてはほぼ全てが対象となります。なお、違反した場合は50万円以下の過料の罰則規定もあります。
● 職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(R1.7.1基発0701第1号)
特定化学物質障害予防規則の改正
□ 2015年11月施行(参考)厚労省のリーフレット
特定化学物質障害予防規則が改正され、新たにナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーについて健康障害防止措置が義務づけられました。
●作業環境の測定基準・評価基準の改正
【解説】厚生労働省では、事業場において労働者が有害物にさらされる(ばく露)状況を把握するため「有害物ばく露作業報告制度」を設けています。この報告に基づき、リスク評価を実施し、労働者に重い健康障害を及ぼすおそれのある化学物質については、必要な規制を実施しています。
有機溶剤等使用の注意事項にかかる掲示内容が変更へ
□ 2015年1月改正
有機溶剤中毒予防規則では、事業者は、屋内作業場等で有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、@有機溶剤が人体に及ぼす影響、A取扱上の注意事項、B中毒が発生したときの応急処置など有機溶剤等使用の注意事項について、労働者が見やすい場所に掲示しなければならないことになっています。
2015年1月から、有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置に関しての掲示内容の一部が変わりました。
(詳細)厚労省のリーフレット
有機溶剤とは何か
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称であり、様々な職場で、溶剤として塗装、洗浄、印刷等の作業に幅広く使用されています。有機溶剤は常温では液体ですが、一般に揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
このため、有機溶剤中毒予防規則において、対象となる有機溶剤(54種類)を扱う事業者に対して、以下のような責務を課しています。
1 使用する有機溶剤等の危険有害性の確認と周知を行うこと
2 譲渡・提供するときの容器・包装への表示や文書の交付等を行うこと
3 屋内作業場等において、有機溶剤業務を行うときは、作業主任者を選任し、次の事項を行わせること
(1) 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから、有機溶剤作業主任者を選任
(2) 作業主任者の職務
@ 作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
A 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1月以内ごとに点検すること
B 保護具の使用状況を監視すること
Cタンク内作業における措置が講じられていることを確認すること
4 有機溶剤蒸気の発散源対策を講じること
5 作業環境管理を行うこと
6 決められた掲示と保管を行うこと
7 有機溶剤業務に常時従事する労働者に対して、雇入れの際、または当該業務への配置替えの際およびその後6月以内ごとに1回、定期に特殊健康診断を実施すること
(参考)厚労省のリーフレット
鉄骨切断機等も安衛法令上の規制対象に
□ 2013年7月改正
(参考)厚労省のサイト
鉄骨切断機等は車両系建設機械には該当せず、安衛法令は適用されませんでしたが、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機(鉄骨切断機等)も、労働安全衛生法令上の車両系建設機械の解体用機械として、規制の対象となりました。
じん肺健康管理実施状況報告とは何か
じん肺法施行規則別表で定められた粉じん作業に従事または従事した労働者に対しては、 就業時、定期、定期外または離職時に健康診断を行わなければなりません。そして、毎年12月31日現在における、じん肺に関する健康管理の実施状況を「じん肺健康管理実施状況報告書」により所轄労働基準監督署を経由して、都道府県労働局へ提出することが義務付けられています。
なお、じん肺健康診断は通常は3年に1回の実施となりますが、実施しない年についても報告する必要があります。
【注】じん肺法施行規則別表で定められた粉じん作業とは、じん肺健康管理実施状況報告書の裏面に、対象の粉じん作業の内容が記載されています。
(参考)厚労省の資料
労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請の義務化について
□ 2025年1月改正
労働安全衛生法関係の以下の手続の電子申請が義務化されます。
■労働者死傷病報告 ■ 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告 ■定期健康診断結果報告 ■心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
■有害な業務に係る歯科健康診断結果報告 ■有機溶剤等健康診断結果報告 ■じん肺健康管理実施状況報告
このうちの労働者死傷病報告の電子申請の流れは、以下のとおりです。
1 電子申請に当たっては、厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を活用します。
(「電子申請」を利用する場合は、e-Govアカウント、GビズID、またはMicrosoftアカウントが必要のため、これらを取得していない場合は事前の取得が必要です。)
労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス (mhlw.go.jp)
2 以下の「帳票入力支援サービスを活用した 労働者死傷病報告の電子申請方法について」を参考に電子申請を行います。
001292159.pdf (mhlw.go.jp)
騒音障害防止のためのガイドラインの改訂
□ 2023年4月改訂
● 2023.4.20、基発0420第3号
厚労省では、騒音性難聴の発生が後を絶たないことから、職場における「騒音障害防止のためのガイドライン」を改訂しました。
(詳細)厚労省のリーフレット
職場における熱中症対策強化の義務付けについて
○ 2025年6月1日施行
労働安全衛生規則が改正され、事業者に対し職場における熱中症対策の強化が義務付けられました。
1 対象となるのは
「WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1時間を超えて実施が見込まれる作業」です。
2 義務付けられるのは
(1)「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症の恐れがある者を見つけた者」が、その旨を報告するための体制整備および関係作業者への周知
(2) 熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に、迅速かつ的確な判断が可能となるよう、
@ 事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先、および所在地等
A 作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等、熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の作業手順の作成、および関係作業者への周知
(詳細)厚労省のリーフレット1、リーフレット2
陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン
厚労省は、荷役作業での労働災害を防止するために「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン(H253.25基発0325第1号)」を発出しています。
厚労省では、陸運事業者だけで荷役作業の安全対策を講じることは困難なため、荷主等(荷主、配送先、元請事業者など)も、陸運事業者と連携して、ガイドラインにより荷役災害の防止に取り組んで欲しいとしています。
(ガイドライン)■陸上貨物運送事業者向け ■荷主・配送先・元請け事業者向け ■ガイドライン
(参考Q&A)トラックドライバーの荷待ち時間等の記録の義務付け&荷役作業・付帯業務の記録の義務付け
小売業・社会福祉施設における危険の「見える化」ツール
厚労省で、小売業・社会福祉施設における危険の「見える化」ツールを公開しています。「見える化」は、危険認識や作業場の注意喚起を視覚に訴えることで分かりやすく知らせることができ、安全確保のための有効なツールです。費用も掛からず効果も大きいことから、導入をお勧めできるツールです。
従業員参加のもとで危険個所の洗い出しを行うことにより、情報の共有化と対危険意識の向上が図れます。さらに「危険予知訓練」と併せて洗い出しを行えば、一層の効果が期待できます。
(参考)厚労省のHP
情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン
「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン(H14.4.5基発0405001)」 が廃止され、新たに「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(R1.7.12基発0712第3号)」が発出されています。
事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
厚労省では、がん・脳卒中などの疾病を抱える人に対して、事業場が適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組みなどをまとめた「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表しています。
ガイドラインでは、職場における意識啓発のための研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項をとりまとめています。
(詳細)ガイドラインの概要/事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
自転車の危険運転に罰則が科されました
○ 2024年11月1日改正
自転車の危険運転に対する刑事罰が適用されるのは、以下の二つです。
(1) 運転中のながらスマホ
自転車に乗りながら、スマートフォン等を手で保持して通話したり、画面を注視したりする行為が禁止されます。
・違反者は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
・交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
(2) 酒気帯び運転および幇助
酒気帯び運転のほか、酒類の提供や同乗・自転車の提供に対しても罰則が適用されます。
・違反者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
・自転車の提供者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
・酒類の提供者・同乗者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金
(その他)自転車運転者講習制度
上記は、「自転車運転者講習制度」の対象となります。また、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の自転車運転の危険行為(信号無視や指定場所一時不停止、通行区分違反や安全運転義務違反等)を反復して行った者も講習制度の対象となります。
*受講命令違反は、5万円以下の罰金
(参考)警察庁のサイト
事業所のアルコール検知器によるアルコールチェックの義務化
○ 2022年4月1日改正
・安全運転管理者の選任
@定員11人以上の車を1台以上所持している事業者、又はA白ナンバー車を5台以上所持している事業者は「安全運転管理者」を選任し、事業所を管轄する管轄警察署への届け出が義務付けられていました。
○ 2023年12月1日改正
・ アルコールチェックの義務
前記の安全運転管理者の選任義務のある事業所のアルコール検知器によるアルコールチェックが義務化されました。
(参考)警視庁のリーフレット
運転中の「ながらスマホ」の厳罰化
○ 2019年12月1日改正
1 携帯電話の使用等(保持)
保持とは、@携帯電話を持って通話する(通話)A携帯電話の画面を注視する(画像注視)Bカーナビの画面を注視する(画像注視)をいい、運転中のこれらの行為が処罰の対象となります。
(1) 罰則:5万円以下の罰金→6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
(2) 反則金:普通車の場合 6,000円→18,000円
(3) 点数:1点→3点
2 携帯電話の使用等(交通の危険)
交通の危険とは、上記1の携帯電話等の使用等(保持)により事故を起こした場合や事故を起こしかけた場合をいいます。
(1) 罰則:5万円以下の罰金→1年以下の懲役または30万円以下の罰金
(2) 反則金:普通車の場合 9,000円→反則金の適用はなく、直ちに上記の罰則が適用される
(3) 点数:2点→6点に変更され、一発免停に
【解説】通勤途中や営業車の運転中に限らず私生活においても、携帯電話等の使用等(保持)により事故を起こした場合や事故を起こしかけた場合には直ちに免許停止となり、職種によっては直ちに業務に支障が生じることが考えられます。携帯電話の使用等(保持)とは、携帯電話を持って通話する(通話)だけでなく、携帯電話の画面を注視する(画像注視)ことや、カーナビの画面を注視する(画像注視)ことも含まれますので、これらも踏まえて、従業員に対する周知啓蒙が必要と思われます。
(参考)警察庁のサイト