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休日と休暇の違い
休日とは労働義務がない日をいい、労働基準法ではこの休日のことを法定休日といいます。
労働基準法35条では「使用者は労働者に対して、毎週少なくても1回の休日与えなくてはならない。」としていますが、休日は労働義務がない日ですから完全月給制でなければ無給です。
一方、休暇は本来は労働義務のある日であるが労働を免除する日をいい、法律により必ず与えなければならないとする法定休暇と、就業規則等に任意に定める任意休暇があります。
法定休暇には、年次有給休暇、産前産後休暇、生理休暇、育児・介護休業などがあり、任意休暇には、慶弔休暇、結婚休暇、リフレッシュ休暇、創立記念日休暇など会社が独自に定める様々な休暇があります。
休暇は年次有給休暇が有給である以外は、有給とするか無給とするかは会社の自由です。
法定休日と法定外休日の違い
●(労働基準法35条)使用者は労働者に対して、毎週少なくても1回の休日与えなくてはならない。
2 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
この、労働基準法35条に定められた休日を法定休日と呼び、法定休日以外の休日を法定外休日と呼びます。
□ 賃金計算の基本
例えば、通常の労働時間制の場合で1日8時間勤務、月曜日から金曜日までを労働日(8時間×5日=週40時間)とし、日・土曜日を休日としている会社の場合、日曜日を法定休日と特定すれば、土曜日は法定外休日となります。この場合、日曜日に出勤を命じた場合は「休日労働」として135%以上の割増賃金を支払い、土曜日に出勤を命じた場合は「時間外労働」として125%以上の割増賃金を支払います。
ただし、祝日が介在するなど週の労働時間が40時間に満たない週(例えば週32時間)に法定外休日労働を命じた場合は、40時間に達するまでの時間は時間外労働とならず、通常の賃金支給(100%)を支払います。
●(参考通達)S23.4.5基発537号、S63.3.14基発150号
(問)法37条の規定により休日労働に対し割増賃金を支払わなければならないのは法35条の休日のみと解するが如何。
(答)見解のとおり。ただし、法35条の休日以外の休日の労働により週の法定労働時間を超える場合には、時間外労働の割増賃金の支払を要するから念のため。
【解説】法定休日の特定は就業規則で行うのが一般的です。法定休日を特定しなければ、週の最後に到来する休日が法定休日とされます。
時間外労働の上限規制により、時間外労働と休日労働の各々の時間を正確に把握する必要があることから、就業規則や変形労働時間制の場合はシフト表などで、どの休日が法定休日でどの休日が法定外休日なのかを定めておく必要があります。
週の起算日は何曜日か
●(参考通達)S63.1.1基発1号
1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。
【解説】通達では「就業規則その他に別段の定めがない限り」としていますので、例えば就業規則等で「週の起算日を土曜日とする」とすれば、週の起算日は土曜日となります。
法定休日は1週に1日、4週に4日のどちらを適用すればよいか
●(労働基準法35条)使用者は労働者に対して、毎週少なくても1回の休日与えなくてはならない。
2 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
この、労働基準法35条に定められた休日を法定休日と呼びます。
□ 毎週少なくても1回の休日が原則
行政通達では、毎週少なくても1回の休日が原則であるとし、4週4日の休日(変形休日制)を採用する場合は、就業規則等で変形期間の起算日を定めるよう指導しています。
●(参考通達)S22.9.13基発17号
第1項が原則であり第2項は例外であることを強調し徹底させること。第2項による場合にも、出来る限り第32条の2第1項に準じて就業規則その他これに準ずるものにより定めをするよう指導すること。
□ 変形休日制と変形労働時間制の関係
1週の法定労働時間は原則40時間までと定められていますが、40時間の法定労働時間を超える週がある場合は、1か月単位の変形労働時間制などの変形労働時間制の導入が必要となります。ただし、週の法定労働時間を超えないのであれば、
変形労働時間制を導入することなく変形休日制のみを導入することも可能です。
変形休日制に適用される4週4日制の休日の配置はどうする
変形休日制に適用される「4週4日」の休日については、特定の4週間に4日の休日があればよく、どの4週間を区切っても4日の休日が与えられていなければならないということではありません。
●(参考通達)S23.9.20基発1384号
(問)法第35条第2項の休日はいかなる4週間に区切ってもどの4週間にも必ず4回の休日が与えられていなければならないか。例えば
(1) 第1週 1日、第2週 なし、第3週 2日、第4週 1日
(2) 第5週 なし、第6週 2日、第7週 1日、第8週 1日
の休日が与えらた場合、第2週より第5週までの4週間には休日が3日であるので基準法違反となるか。
(答)法第35条第2項の規定は特定の4週間に4日の休日があればよく、どの4週間を区切っても4日の休日が与えられていなければならないという趣旨ではない。従って設例の場合は適法である。
休日は暦日で与えなければならないが例外もある
行政解釈では休日は暦日の休業であるとしています。ただし、一部に暦日休日の例外を認めています。
●(参考通達)S23.4.5基発535号
(問)休日とは単に連続24時間の休業であるか、或いは暦日を指し午前零時から午後12時までの休業と解すべきか。
(答>見解後段の通り。
□ 暦日休日の例外
1 交替制勤務の場合の休日(例えば、8時間3交替勤務のような場合)
以下のいずれにも該当する場合に限り、継続24時間の休日付与を認めています。
(1) 番方編成による交替制によることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること
(2) 各番方の交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものでないこと
(S63.3.14基発150号)
2 旅館業における休日
フロント係、調理係、仲番および客室係に限って、原則として正午(午後0時)から翌日の正午までの24時間を含む継続27時間の休憩が確保されている場合について、暦日休日の例外を認めています。
●(参考通達)S57.6.30基発446号
国民の祝日に休ませなくても労働基準法違反とはならない
行政解釈では、国民の祝日に休ませなくても労働基準法違反にはならないとしています。
●(参考通達)S41.7.14基発739号
国民の祝日に関する法律は、国民の祝日に休ませることを強制的に義務づけをするものではなく、労働基準法は、毎週1回又は週4日以上の休日を与えることを義務づけているが、この条件を満たす限り、国民の祝日に休ませなくても労働基準法違反とはならない。
しかしながら、国民の祝日の趣旨及び労働時間短縮の見地から、労使間の話合いによって、国民の祝日に労働者を休ませ、その場合に賃金の減収を生じないようにすることが望ましいことはいうまでもないところである。
振替休日とは何か
休日をあらかじめ他の日に振替えることを「休日の振替」いい、この振替えられた休日を「振替休日(振休)」といいます。例えば、法定休日が日曜日の会社で、あらかじめ日曜日の法定休日を月曜日に振替える旨を従業員に通知のうえ休日を振替えるようなケースをいいます。
□ 振替休日のメリット
(1) 休日労働ではないので、原則として割増賃金の支払いが不要です。
(2) 休日労働ではないので、原則として36協定の締結・届出を要しません。
(3) 事業所一斉に休日の振替を行なうことも、個々の労働者ごとに休日の振替を行なうことも可能です。
□ 注意点
(1) 振替の結果、週1回の法定休日がなくなったり、変形休日制において4週に3日の法定休日となったような場合は法違反となります。このような場合は、振替休日とせずに休日労働として取扱い、割増賃金を支払った方がよいでしょう。
(2) 振替の結果、週法定労働時間の40時間を超えたり、変形労働時間制を採用している場合にあらかじめ定められた週の労働時間枠を超える場合は、時間外労働の問題が発生します。
●(参考通達)S23.11.27基発401号、S63.3.14基発150号
就業規則に定める休日の振替規定により休日を振り替える場合、当該休日は労働日となるので休日労働とはならないが、振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する36協定及び割増賃金の支払が必要であることに留意されたい。
●(参考通達)S63.3.14基発150号、H6.3.31基発181号)
(問)完全週休2日制を採用している場合に、ある週の休日を他の週に振り替えることは可能か。
(答)設例の場合、休日の規定との関係では問題ないが、例えば1日の休日を他の週に振り替えた場合には、当該週2日の休日があった週に8時間×6日=48時間労働をさせることになり、予め特定されていない週に週40時間を超えて労働させることになるので、8時間分は時間外労働となる。
□ 休日の配置ポイント
上記通達のように、週を越える振替休日は時間外労働手当の問題が生じます。あらかじめ法定休日を特定していなければ週の最後に到来する休日が法定休日とされますが、就業規則に規定することにより、例えば土曜日を週の起算日とすることもでき、実態に応じ起算日を定めることも可能です。
実務上は、できる限り振替休日が週を越えないように、法定休日を週の初めに配置するなど実態に合わせた配置を行うことががポイントです。
□ 振替休日の運用ポイント
(1)「業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ○条の休日を他の日と振替えることがある。」の例により、就業規則に休日の振替を行うとことがある旨を定めます(就業規則に休日の振替を行うことがある旨を定めた場合は、個々の従業員の同意を要しないとされます。)
(2) 振替える日をあらかじめ特定します(休日を繰上げても繰下げてもOKです。)
(3) 振替の結果、週1回の法定休日がなくなったり、変形休日制において4週に3日の法定休日とならないように注意します
(4) 遅くとも前日までに特定し周知します(事後の振替えはできません。)
(5) 所定の休日にできるだけ接近した日に振替休日を与えるようにします。この場合、同一週内での振替であれば時間外労働手当の問題は生じないので、できる限り同一週内に振替休日を与えるようにします。
振休と代休の違い
「振替休日(振休)」はあらかじめ休日を振替えるのに対して、「代休」は休日に休日労働し、事後の労働日に代休を与え労働を免除するという大きな違いがあります。
●(参考通達)S23.4.19基収1379号、S63.3.14基発150号
(1) 就業規則において休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合、休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替える日を特定し振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにならない。
(2) 前記1によることなく休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれに当たらないこと。
□ 休日労働手当との関係
「振替休日」は、例えば日曜日の休日を労働日とし、労働日であった月曜日を休日に振替えるなど、あらかじめ指定した休日を他の日へ移動させますから、休日労働の問題は発生しません。一方「代休」の場合は休日の変動はなく、休日は休日として生きていますから、休日労働手当の問題が発生します。
(1) 代休を付与しない場合の取扱い
休日に労働していますから、135%以上の休日労働手当(法定外休日に労働した場合は125%以上の時間外労働手当)を支給します。
(2) 後日に代休を付与した場合
法定休日(135%−100%=35%)、法定外休日(125%−100%=25%)のように、通常の賃金額100%を引去り支給します。ただし、1日の法定労働時間8時間を超えた部分については、135%または125%の支給が必要となります。
□ 実務上のポイント
(1) 代休は振替休日と異なり、暦日で与えなければならないという縛りもなく、半日単位で与えることも可能です。また、代休は労働者から請求されれば必ず与えなければならないものでもなく、請求があっても会社の都合で付与しないことも可能です。
(2) 賃金計算期間を超えて翌月以降に代休を付与することもあります。その場合は、一旦135%(125%)以上の割増賃金を支払い、翌月以降に代休を取得した時点で100%を差引くという扱いが正式です。
なお、代休は直近の時期に与える必要もなく閑散期にまとめて付与することも可能ですが、事務処理が煩雑で、かつ従業員サイドでも、支払い済みの賃金を後日控除されることに抵抗感があることから、後日代休を与えることを条件に、35%あるいは25%のみ支給しておき、未消化の代休があった場合は年度末などの一定の時期に清算するという方法を採っている企業もあるかと思われれますが、代休付与が翌月以降になった場合は賃金全額払の原則に抵触する恐れがあります。
したがって、実務上は同一賃金支払期内に限って代休処理を行う方法が現実的と思われますが、この場合でも法定休日は35%部分、法定外休日は25%部分の割増賃金の支払いは必要です。
(注)この取り扱いを行う場合は賃金債権を消滅させるために、就業規則に「代休日は無給とする」と規定する必要があります。この規定を置かないと、代休を付与しても100%控除ができず、135%または125%を支払わなければならないとされます。
【解説】振替休日と異なり代休は柔軟な運用が可能です。代休は必ず割増賃金の問題が発生しますが、振替休日でも同一週を超える振替えでは割増賃金の問題が発生します。
例えば、土曜日の休日労働の頻度が高ければ、土曜日を週の起算日と就業規則に規定し、同一週内に振替休日を行いやすいようにします。そして、振替休日は同一週内に限るとし、同一週内で処理できなかった休日労働は同一賃金支払期間内に代休処理します。代休処理できなかった休日労働は休日労働として清算します。このように、振替休日と代休をうまく使い分けて運用することがポイントと思われます。
振替休日や代休を半日ずつ2回に分けて付与することはできるか
労働基準法では、一部の例外を除き「暦日休日の原則」を採っています。したがって「振替休日」を半日ずつ2回に分けて付与することは認められていません。
一方「代休」の場合はすでに休日は付与しているとみなします。その後に代休を与えるかどうかは自由ですし、どう与えるかも特に明示されていません。したがって、代休を半日ずつ2回に分けて付与したり、時間単位で付与することも可能です。
年5日の年次有給休暇付与の義務化について
改正労働基準法39条により、使用者による年5日の年次有給休暇(以下「年休」という)の付与が義務化されました。これにより、2019年4月1日から大企業・中小企業を問わず年5日の年休付与義務が一斉に適用されることになりました。
□ ポイント
1 労働者であれば管理職(労働基準法41条2項の管理監督者)であっても、年5日の年休付与義務が適用されます。ただし、対象者は年休付与日数が10日以上の労働者とされますので、パートタイマーなど年10日未満の比例付与の労働者には適用されません。
2 労働者の年休取得状況を把握するための「年次有給休暇管理簿」の作成が使用者に義務づけられました。労働者が年休を取得した時季・日数・基準日を管理簿に記録し、3年間保存しなければなりません。
3 年5日の年休については、使用者が労働者の希望を聴いたうえで時季を指定し付与することが必要です。ただし、労働者が取得済みの年休については、使用者よる時季指定は不要としていますので、労働者の時季指定により付与した年休、労使協定により計画付与した年休についは、使用者よる時季指定が免除されます。
付与方法は、計画年休により5日を必ず与える、労働者に年5日の年休請求を義務化する、その折衷方法などが考えれます。
4 違反した場合は、6か月以下の懲役又は従業員1人につき30万円以下の罰金という罰則規定があります。
(リーフレット)厚生労働省のHP
●(参考法令)労働基準法39条7項、8項
7 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち5日については、基準日(継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第1項から第3項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
8 前項の規定にかかわらず、第5項又は第6項の規定により第1項から第3項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
年5日の年次有給休暇付与の義務化に伴う具体的取扱い
1 改正労働基準法39条により年5日の年次有給休暇(以下「年休」という)の付与が義務化されましたが、この年5日の年休については「使用者が労働者に取得時季の希望を聴いたうえで」「労働者の希望を踏まえて使用者が取得時季を指定する」のが原則的な扱いです。ただし、@労働者が自ら申し出て取得した年休、A労使協定に基づき計画付与した年休は実際に消化された日数分(5日が上限)について、会社が時季を定めて与える義務が免除されます。
2 会社が時季を定めて与える義務が免除される年休には半日年休はカウントされますが、時間単位年休はカウントされません。
3 付与が義務化される年5日の年休は、2019年4月1日以降最初に到来する基準日から適用されます。
【例1】2019年4月1日に入社し10月1日に10日の年休を与えられた従業員は、2020年9月30日までの1年間の間に5日。
【例2】基準日を4月1日とする斉一的取扱いを行っている事業所で、2019年4月1日に入社し当日付で10日の年休を与えられた従業員は、2020年3月31日までの1年間の間に5日。
4 年休は、労働基準法41条2項の管理監督者に対しても適用除外となっていませんので、労働者であれば管理職であっても、年5日の年休付与義務が適用されます。ただし、対象者は年休付与日数が10日以上の労働者とされますので、パートタイマーなど年10日未満の比例付与の労働者には適用されません。
5 労働者の年休取得状況を把握するための「年次有給休暇管理簿」の作成が使用者に義務付けられ、労働者が年休を取得した時季・日数・基準日を管理簿に記録し、3年間保存しなければなりません。
6 年休を計画付与する場合は労使協定が必要ですが、この労使協定は労基署への届出義務はありませんので、事業所見やすい箇所にに備付けるなどして周知しておきます。
計画付与には、@事業場全体の一斉付与、A班ごとの交代制付与、B個人別付与の3通りがあり、事業所の実態に併せて労使協定を結びます。なお、必要に応じ複数の付与方式を混合させることもできます。
(参考)年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
年次有給休暇の時季指定権および時季変更権とは何か
●(参考法令)労働基準法39条5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、 請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
【解説】労働者には、年次有給休暇の時季を指定する権利(時季指定権)があります。一方で、労働者から指定された時季に年次有給休暇を与えると「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は他の時季に年次有給休暇を与えること(時季変更権の行使)が認められています。
時季変更権という名称からして、労働者が指定した日に年休を与えられなかった場合は代替付与日を指定しなければならないのかという問題がありますが、この点について判例は「労働者の指定する日に年休を付与し得ない旨の意思表示をすれば、必ずしも別の日を具体的に示す必要はない。」としています。
□ 事業の正常な運営を妨げる場合とは
労働者の年次有給休暇の時季指定に対して、事業の正常な運営を妨げる場合には使用者は時季変更権を行使できます。それでは、事業の正常な運営を妨げる場合とはどんな場合なのでしょうか。
判例では「事業の正常な運営を妨げるかどうかはその労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行など諸般の事情を考慮して判断すべきである。」としています。
具体的には、年末など特に業務が繁忙であるとか、大量の出荷日や当日中に処理しなければならない商品管理日であるとか、多数の年休請求が競合し全員に休暇を付与し難いとか、当該年休請求者でなければ処理できない業務の発生が予想される場合などが考えられます。ただし、時季変更権の行使の際の業務の繁閑は極小単位でなく、担当部署全体で判断すべきとされ、まず代替要員確保の努力をすることが前提とされます。
実務上時季変更権を行使するには、代替要員の確保ができず管理職が代務せざるを得ないなど、代替要員の確保が困難な場合に限定されるようです。
年次有給休暇付与と出勤率の関係
労働基準法39条では「使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」として、使用者に年次有給休暇の付与を義務づけています。そして、1年6か月間継続勤務したときはこれに1日を加算、更に1年ごとに1日または2日を加算していき、6年6か月後に年次有給休暇付与日数の上限を20日間とします。
年次有給休暇を取得するためには、全労働日の8割以上の出勤が要件となりますが、この全労働日とは、6か月または1年の総暦日から所定休日を差し引いた日数をいいます。なお、休日に出勤したとしてもそこは休日のままですので全労働日に含めません。
●(参考通達)S33.2.13基発第90号、S63.3.14基発第50号・婦発第47号
全労働日とは、労働契約上労働義務の課せられている日をいい、具体的には労働協約、就業規則等で労働日として定められた日のことで、一般には6か月(1年)の総暦日数から所定の休日を除いた日がこれに該当する。したがって、休日労働をしたとしても、その休日は全労働日には含まれない。
□ 全労働日にカウントするもの
1 労働基準法39条によるもの
(1) 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業した期間(通勤災害を除く)
(2) 育児休業・介護休業法に基づく育児休業・介護休業した期間
(3) 産前産後の休業期間
2 通達によるもの
年次有給休暇を取得した期間(S22.9.13基発第17号)
3 通達(H25.7.10基発第0710第3号)によるもの
労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日(例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる。)
年次有給休暇を取得した労働者への不利益取扱いは禁止される
●(参考法令)労働基準法136条
使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
【解説】その他不利益な取り扱いとは、制皆勤手当や賞与の算定に際して、年休を取得した日を欠勤若しくは欠勤に準じて取扱うことのほか、年休の取得を抑制する全ての不利益な取扱いが含まれるとしています。なお、39条違反は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金と規定されています。
計画年休とは何か
年次有給休暇は労働者の請求により生じる権利ですから、使用者の一方的な付与はできません。しかし、労働者代表と労使協定を締結することにより、年休付与日を特定することも可能です。これを「計画年休」といいます。
計画年休制度とは、労使の合意により、各人の年休の持分(前年度からの繰越分を含む)のうち、5日を超える日数について計画的に与えることを認める例外的な制度です。なお、この労使協定は労働基準監督署への届出義務はありませんので、事業所の見やすい箇所に備付けるなどして周知しておきます。
□ 労使協定により定めるべき事項
(1) 事業場全体の休業による一斉付与の場合は、具体的な年休の付与日
(2) 班別の交代制の場合は、班ごとの具体的な年休の付与日
(3) 個人別付与の場合は、個人別計画年休表を作成する時期および手続等
【注】計画付与には、@事業場全体の一斉付与、A班ごとの交代制付与、B個人別付与の3通りがありますので、事業所の実態に併せて労使協定を結びます(複数の付与方式を混合させることも可能)。なお、時間単位年休を計画付与することは認められていません。
(労使協定例)厚労省のHP
□ メリット
計画年休制度を採用することにより年5日の年休の確実な付与ができるなど、年休消化を促進できるというメリットがあります。
□ デメリット
労働基準法上は雇入れ後6か月を経過しない従業員には年休を付与する必要はありませんが、事業場全体の一斉付与を採用する場合は、この年休未付与である従業員に対しても、計画年休と同日数の特別休暇を付与する必要があります。
また、計画年休制度を採用した場合でも、最低5日については必ず労働者に自由利用させなければなりません。例えば、10日間の計画年休を定めた場合は、新入社員等で10日の年休しかない者に対しては、さらに5日間の特別休暇を与えなければならないというデメリットがあります。
□ 計画年休付与日の変更はできないか
●(参考通達)S63.3.14基発150号
(問)労使協定による計画付与において、指定された日に指定された労働者を就労させる必要が生じた場合、使用者は時季変更権を行使できるか。
(答)計画的付与の場合には、第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない。
【解説】計画年休付与日の変更はできないとされますが、現行の労使協定を破棄し新たな労使協定を結び直すか、計画年休付与日を変更することができる旨の労使協定を締結するかのいずれかを行うことにより計画年休付与日の変更も可能と思われます。念のため労使協定には、事情やむを得ない場合は労働者代表と協議のうえ変更できる旨を付記したおいた方が良いでしょう。
時間単位年休制度の導入手順
時間単位年休制度を導入するには、労働者代表と労使協定を締結する必要があります。
□ 締結すべき労使協定の内容
(1) 対象となる労働者の範囲を定めます。
(2) 5日以内の範囲で時間単位年休の日数を定めます。
(3) 1日分の年次有給休暇に対応する時間数を所定労働時間数を基に定めます。
(4) 1時間以外の時間を単位とするときは、その時間数(例えば2時間など)を定めます。
□ ポイント
(1) 時間単位年休も使用者の時季変更権が認められますが、日単位の請求を時間単位に変えることや、時間単位の請求を日単位に変えることはできません。
(2) 時間単位年休の賃金額は、日単位による取得の場合と同様にします。時間単位が平均賃金、日単位が通常の賃金というように異なる設定はできません。
(3) 時間単位年休の労使協定は、労働基準監督署への届出義務はありません。
(参考)厚生労働省のHP
半日単位の年休請求は認めなければならないか
●(参考通達)S24.7.7基収1428号、S63.3.14基発150号
法39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。
【解説】通達の「付与する義務はない」を反面解釈として、半日単位年休(以下「半休」という)を認めている会社も多く存在します。なお、半休は法に基づいた制度ではなく、労使がお互いに納得すればよいというスタンスですので、時間単位年休制度のような労使協定の締結は必要としません。
また、半休は法令に基づいた制度ではありませんので、当社は半休は認めないとしても問題ありません。
半休取得後に出勤し、終業時刻を超えて労働した場合の残業計算はどうする
設問のケースでは実働で計算しますので、計算例は以下となります。
出勤時刻:8時/終業時刻:17時/休憩時間:12時〜13時(所定労働時間:8時間)の会社で、8時から12時まで半日年休を取得後、13時に出勤し、20時まで残業した場合…
○ 労働時間:半休4時間+実働時間7時間=11時間(3時間の時間外労働)
○ 終業時刻17時を超えて3時間の時間外労働しているが、実働時間は13時から20時までで法定労働時間の8時間未満であるので、この3時間は法内超勤となって、3時間×100%の時間外労働手当の支給でよい。
○ 法定労働時間の8時間を超えた残業を行うと、8時間超の部分は125%の時間外労働手当が必要となる。
土曜日半ドンのような日の年休取得はカウント0.5かカウント1.0か
労働法コンメンタールでは「日によって所定労働時間が異なる場合、例えば土曜日半ドンのような場合に土曜日に休暇をとっても、それは他の8時間の日と同様に1労働日の休暇を取ったことになる。(中略)このような土曜日半ドンの年休について、これを半日消化として、土曜日の年休2回をもって1日として取り扱うことは、結果として法を上回る日数の年休を与えることになり問題のないことは当然である。」としています。
年次有給休暇の賃金の支払方法は3通りある
労働基準法39条6項では、年次有給休暇を取得したときの賃金の支払い方法について、次の3つの方法を選択できるとしています。
(1) 平均賃金
(2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3) 健康保険法の標準報酬月額に相当する金額
(1)(2)の場合は就業規則等により定め、(3)の場合は労使協定の締結が必要としています。また「この選択がなされた場合には、必ずその選択された方法による賃金を支払わなければならない(S27.9.20基発675号、H11.3.31基発168号)」として、恣意的に変更することを禁止しています。
□ 運用のポイント
1 平均賃金とする場合
「月給により算定した通常の労働日の賃金が平均賃金を上回る限りその月給を支給すれば足りる(S23.12.26基発573号、S33.2.13基発90号)」として、平均賃金を選択した場合でも、その都度平均賃金額で計算した額を支払うのでなく、計算の簡素化を認めています。
2 通常の賃金とする場合
「法第39条第6項の規定は、計算事務手続きの簡素化を図る趣旨であるから、日給者、月給者等につき、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う場合には、通常の出勤をしたものとして取扱えば足り、規則第25条に定める計算をその都度行う必要はないこと(S27.9.20基発675号)」とし、その都度労働基準法施行規則25条に規定する時間外労働の基礎となる賃金により計算した額を支払うのでなく、計算の簡素化を認めています。
また「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金には、臨時に支払われた賃金、割増賃金の如く所定労働時間外の労働に対して支払われる賃金等は、算入されないものであること(同上)」として、割増賃金等は除外するとしています。
年休の時効と繰越年休の優先順位はどうなっている
年次有給休暇の時効については、行政解釈で「労働基準法第115条の定めにより2年の消滅時効が認められる(S22.12.15基発501号)」としていることから、年次有給休暇は、付与してから2年を経過すると時効により消滅するという考え方が一般的です。
□ 労働者が年休請求した場合、前年付与度分と当年付与度分のどちらを先に充当するか
民法の規定により、@1次的には当事者の合意による、A2次的には使用者の指定による、B特に指定がない場合は当年度分が付与されたとみなす(民法488条、489条)という考え方があります。
民法の規定により当年付与度分を優先消化とすることも可能ですが、この場合は就業規則に「次年度に繰り越された年次有給休暇の取得に際しては、当年分が優先するものとする。」の例により周知しておくべきでしょう。ただし、前年付与分から充当していたものを、いきなり当年付与度分から充当したりすると不利益変更として争いとなる恐れもありますので、慎重に対応すべきと思われます。
直前の年休請求は拒否できるか
年次有給休暇の時季を指定する権利(時季指定権)は労働者に与えられています。したがって、労働者が月日を具体的に指定して年休請求して来た場合には、使用者がその指定日に対して時季変更権を行使しない限り、当然にその日は休暇日とされます。
□ 直前の年休請求についても、原則拒否できない
例えば就業規則等に「年休は2日前までに請求しなければならない。」という規定は有効かという問題があります。最高裁判例は「このような就業規則の定めは、有給休暇の時季を指定すべき時期につき原則的な制限を定めたものとして合理性を有する。」として、規定すること自体は可能としています。
しかし、当該規定を盾に直前の年休請求を拒否できるという訳ではありません。とは言うものの、時間的余裕のない年休請求は代替要員の確保も難しく、必然的に時季変更権行使の可能性は高くなりますので、緊急の場合を除いて、従業員に自粛を求めること自体は構わないと思います。なお、時季変更権の行使を行った場合でも、代替日を特定して付与する必要がないことはご承知のとおりです。
□ 直前請求と休暇開始後の時季変更権行使との関係
労働者が年次有給休暇を指定する時季について法律の定めはありませんが、判例では「使用者が時季変更権を行使する時間的余裕を置いてなされるべきことは、事項の性質上当然である。」としています。年次有給休暇は暦日解放の原則がある関係上、0時を超えての当日になされる年休請求や、前日であっても使用者が時季変更権を行使すべき時間的余裕を無視した年休請求は労働者も厳に慎むべきと思われます。
此花電報電話事件(S57.3.18最判)では、「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)に対する使用者の時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇期間が開始又は経過した後にされた場合であっても、労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季指定権を行使する時間的余裕がなかったようなときには、それが事前になされなかったことのゆえに直ちに不適法ととなるものでなく、客観的に右変更権の行使し得る事由が存在し、かつ、その行使が遅滞なくされたものである場合には、適法な時季変更権の行使があったものとしてその効力を認めるのが相当である。」として、直前の年休請求については休暇開始後であっても適法な時季変更権の行使は可能としています。
(参考Q&A) 年次有給休暇の時季指定権および時季変更権とは何か
一交勤務者の年休付与はどうする
一昼夜交替勤務では勤務が2暦日に渡って行われますが、1勤務を休むことにより物理的に2暦日の休業が必要となります。このため、労働者は2暦日単位で指定するか、若しくは会社は労働者がどちらか1日の時季指定であっても、原則は2暦日の年次有給休暇を付与する処理をします。
●(参考通達)S26.9.26基収3964号、S63.3.14基発150号
法第39条の「労働日」は原則として暦日計算によるべきものであるから、一昼夜交替制の如き場合においては、一勤務を二労働日として取扱うべきである。また、交替制における二日にわたる一勤務及び常夜勤勤務者の一勤務については、当該勤務時間を含む継続24時間を一労働日として取扱って差支えない。
【解説】また以降の部分については、3交替勤務の2暦日にまたがる交替勤務および常夜勤勤務については、年次有給休暇の暦日解放の例外として、当該勤務時間を含む継続24時間を1労働日として取扱って差支えないとしています。
年休を買上することはできるか
年休の買上は法違反とされますが、以下の年休は買上げすることも可能です。
(1) 時効により消滅した年休
(2) 退職後の未消化の年休
(3) 労働基準法が定める付与日数を上回って付与している年休(ただし、どれが上回っている年休か区分しておく必要あり)
●(参考通達)S30.11.30基収4718号
年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求しえる年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である。
退職まぎわの年休請求に応じなければならないか
使用者が労働者の年休請求を拒否できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られています。したがって、退職まぎわだからといって年休請求を拒否することはできません。
ただし、年休付与により業務の引継や突然の退職申出等により代替要員の確保が困難なケースもあります。このような場合は、引継ぎに必要な日数や代替要員確保が困難な日数に限定しての時季変更権の行使は可能とされます。
退職間際の年休請求に全面的に応じるような前例を作ると、職場の慣行になりやすく、かと言って年休付与を全く認めないとなると、時季変更権を逸脱した不当な年休拒否とも取られかねませんので痛し痒しです。日頃から従業員に対して効果的な年休消化を指導するとか、計画年休制度を採用し年休消化を促進するなどの対策も必要かも知れません。
年次有給休暇は労働者が請求すると必然的に発生する権利です。退職まぎわに年休請求をした従業員に対して欠勤として賃金カットしたりすると、労基署から賃金不払いとして指導される恐れもあります。ただし、年休請求権は退職と同時に消滅しますので、既に退職した従業員からの年休請求や消滅年休の買上げに応じる義務はありません。
退職後の年休請求はできない
退職などにより使用者と労働者の雇用関係が消滅した時点で、年次有給休暇の請求権も同時に消滅します。したがって、既に退職してしまった後で、権利が消滅した年次有給休暇を労働者が請求することはできません。
退職した労働者が、未消化の年次有給休暇の買上げを要求することがありますが、これについても使用者側は応じる義務はありません。ただし、年次有給休暇の買上げは禁止されていますが、権利が消滅した年次有給休暇をどうするかについては法は関知していません。したがって、労働者の要求に応え任意に買上げすることも可能ですが、将来に渡って慣行とされる恐れもありますので、慎重に対応すべきと思われます。
パートから正社員や正社員からパートに切替わったときの年休付与日数はどうなる
●(参考通達)S63.3.14基発150号
(問)法第39条第3項の適用を受ける労働者が、年度の途中で所定労働日数が変更された場合、休暇は基準日において発生するので、初めの日数のままと考えるのか、それとも日数の増減に応じ、変更すべきと考えるのか。
(答)見解前段のとおり。
【解説】通達は、年休の比例付与対象者が年度の途中で所定労働日数が変更した場合の取扱いについて記載しています。通達では「休暇は基準日において発生する」としていますので、パートから正社員あるいは正社員からパートに切替わったときの年休付与日数についても同様に、次に到来する基準日までは現行の日数で継続することになります。
定年後再雇用者の年休付与日数は従前からの継続か否か
定年退職者を嘱託などとして再雇用する場合、年次有給休暇は従前のものを継続させるのか、新規の雇用として6か月後に付与を開始するのかという問題があります。この点については、以下の行政通達が参考となります。
●(参考通達)S63.3.14基発150号
継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。
イ、定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再雇用している場合(退職金規程に基づき、所定の退職手当を支給している場合を含む)。ただし、退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない。
【解説】定年退職者を直ちに再雇用するような場合は、定年前の年休がそのまま継続され、退職と再雇用との間に相当期間が存する場合には、新たに年休付与ということになります。ただし「退職と再採用との間の相当期間」がどの程度かについては、通達では具体的に明示しておらずはっきりとしません。
なお、再雇用後の勤務態様が著しく軽くなるようなケースでは、正職員と定年退職後の嘱託職員の年休の継続性が否定されたという下級審の判例もあります。(東京地判H2.9.25 東京芝浦食肉事業公社事件)
特別休暇制度を設けるか否かは会社の任意
特別休暇は、年次有給休暇のような法の規定はなく、会社が就業規則等で任意に定める「任意休暇」ですので、制度がなくても違法ではありません。特別休暇は、慶弔休暇・結婚休暇・創立記念日休暇などを会社が独自に定めることができ、有給とするか無給とするかも任意です。
特別休暇制度を作る場合は以下の点を留意し、就業規則等で規定します。
(1) 付与の事由
(2) 付与日数
(3) 請求手続
(4) 給与の取扱い、その他
就業規則には、有給・無給である旨のほかに、「特別休暇期間中に介在する所定休日は休暇日数に含める。休暇は分割して取得できないものとする。」や「休職期間中は特別休暇の請求はできないものとする。」などの条文を追加して、トラブル防止を図っておいた方がよいでしょう。
事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
厚生労働省では、がん・脳卒中などの疾病を抱える人に対して、事業場が適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組みなどをまとめた「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表しています。
ガイドラインでは、職場における意識啓発のための研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項をとりまとめています。
(詳細)ガイドラインの概要/事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン