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活動交流と情報のコーナー 2002~2000年の記事

交通事故絶滅をめざし、交通犯罪を告発し、クルマ社会を問い直す

北海道新聞夕刊地方 掲載日:2002/11/20
犠牲を無駄にしないで 札幌で交通事故被害者フォーラム
「犯罪に甘すぎる」 厳罰化などの法改正望む
知らされぬ捜査の内容 遺族が声上げ裁判実現

「交通犯罪に寛容すぎる社会を見直して」-交通事故撲滅を被害者の立場から考えるフォーラム「裁かれるのか交通犯罪」(北海道交通事故被害者の会主催)が十五日、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。加害者の厳罰化や事故の真相を求めて活動中の遺族たちの訴え、担当弁護士の提言などを紹介する。

<遺族の訴え>

■公正な処罰を

音喜多真理子さん(45)=札幌市白石区
長男康伸君=当時(13)=は七月、白石区内の市道の横断歩道を自転車で横断中、トラックにはねられ全身を強く打ち間もなく死亡した。札幌白石署は九月、業務上過失致死の疑いで運転手を送検。音喜多さん夫婦は、危険運転致死容疑でトラック運転手を札幌地検に告訴した。同容疑での告訴は道内で初めて。
「事故当日の警察の対応から検察まで、納得できることは何一つありませんでした。死亡事故でさえ、遺族が動かなければ不起訴になります。不起訴の場合、遺族は実況見分調書も見ることができません。こんなことは絶対許してはなりません。被害者にとっての数少ない権利、それは警察に真実を、加害者に誠意を、検察に正義を求めるため、告訴することでした。加害者の公正な処罰こそが、社会の交通犯罪に対する意識の改善につながると確信します」

■報われぬ生命

真下(まっか)清一さん(41)=札幌市西区
長女綾香さん=当時(11)=は七月、西区内の国道交差点の横断歩道を青信号で自転車で渡っている途中、右折してきたトラックにひかれ、全身を強く打ち間もなく死亡した。札幌西署は八月、業務上過失致死の疑いで運転手を送検。真下さんは十月、札幌地検に運転手の厳罰を求める上申書を提出した。
「事故にあって初めて知ったのは、加害者の証言だけで事故原因が認定され、私たち被害者に、加害者の供述の詳細や事故原因の捜査内容が知らされないこと。交通死すべてが単なる事故と扱われ、車であれば人を殺してもたいした罪にならない社会、法律はおかしい。このことが、何より大切な安全確認を怠る安易な運転につながり、犠牲者を増やしている。綾香の事故の後も交通ルールを守っていた子供がたくさん死んでいる。これでは綾香の犠牲は報われない。危険運転致死罪は、綾香のような事故にも適用されなければ、飾りでしかない」

■不条理に挑む

土場一彦さん(44)=北広島市
長男俊彦君=当時(9つ)=は昨年八月、北広島市内の市道歩道上を友人三人と一緒に自転車で通行中、歩道上に乗り上げて暴走してきた乗用車にはねられ死亡した。土場さんは、乗用車の運転手の起訴を求める上申書を札幌地裁に計七回提出。地検は今年十月、業務上過失致死傷の罪で運転手を起訴した。また、土場さんは、運転手ら二人を相手取り、損害賠償を求める訴えを今月八日、札幌地裁に起こした。
「刑事裁判は今月十二日に初公判を終えました。事故発生後、私たちが行動しなければ、起訴に至らなかったかもしれないと考えています。遺族自ら声を出して行動するのは、大切な命を奪われたショックの中でとても苦しいし、社会の交通犯罪に対する認識の希薄さに追い打ちをかけられるように苦しめられます。それでも不条理なシステムに立ち向かうには当事者の行動が必要です。次回公判で意見陳述の機会を与えられていますので、私たちと同じ思いをする人が一人でも少なくなるよう訴えたいと思っています」

■情報得られず

高橋利子さん(57)=室蘭市
長女真理子さん=当時(34)=は昨年十月、苫小牧市の道央自動車道を走行中、小動物を避けようとして中央分離帯に衝突、車線上に止まった。そこに乗用車が猛スピードで激突し、真理子さんの命を奪った。「事故後、捜査状況を知ろうと努力しましたが警察には『加害者を刺激する』などとはねつけられました。事故捜査は加害者のためにあるのかと思いました。検察は『難しい事故だから起訴は難しい』と言いますが、難しいからこそ公判で事実を明らかにする必要があります。起訴されなければ、遺族は何の情報も得られず、二重三重の悲しみに苦しむだけです」

■死人に口なし

佐川昭彦さん(68)=札幌市豊平区
長男の妻の両親が運転する軽乗用車が一九九八年九月、北広島市内の市道交差点でダンプカーと衝突。両親は頭を強く打ち死亡した。民事裁判では両親とダンプカー側の過失割合は九対一。その後、事故鑑定の専門家による鑑定でダンプカー側の過失も重く認定された。佐川さんら遺族は今年一月、検察審査会に審査を申し立てた。フォーラムではこの事故の鑑定を特集したテレビ番組「ニュースステーション」のビデオを紹介した。「事故捜査と裁判はまさに『死人に口なし』だった。死亡交通事故に遭うと、被害者が加害者にされてしまう」

<弁護士の提言>*起訴率上げる必要

高橋さん、土場さんの事件を担当する青野渉弁護士
「業務上過失致死傷罪での起訴率は八七年に70%台だったが、現在は10%程度。東京高検が八七年、特異なケースの事故を除き、けがの事故を起訴猶予にする方針を出したのをきっかけに激減した。それまで有罪だった犯罪が、起訴もされなくなったのだ。これ自体問題だが、さらに、起訴率低下は警察の初動捜査や科学的捜査に不十分さをもたらし、『死人に口なし』のような実況見分調書がつくられるようになった。まず起訴率を上げる行動が大切だ」

*会発足の意義大きい

音喜多さんの事件を担当する田中貴文弁護士
「交通事故被害者の会が発足した意義は大きい。事故の被害者が新聞やインターネットを通じて情報交換し、手をつなぐことができるようになった。その過程で私たち弁護士は出会い、知識や情報を集めて事件に対応している。これからは、被害者、弁護士、医師、事故鑑定の専門家が協力・連携しながら、交通事故の根絶に向かって法制度を変える運動をつくっていきたい」

◇危険運転致死傷罪◇

悪質・危険な運転による交通事犯の厳罰化を求める遺族の全国的な運動を受け、昨年11月の刑法改正で新設された。業務上過失致死傷罪が5年以下の懲役・禁固か50万円以下の罰金なのに対し、危険運転致死傷罪は死亡事故の場合15-1年の懲役、負傷事故は10年以下の懲役。飲酒、暴走、信号無視など悪質運転で事故を起こした場合に適用される。改正刑法が施行された昨年12月以降、今年10月末現在、道内で危険運転致死傷罪で起訴されたケースはない。北海道交通事故被害者の会は、危険運転致死傷罪の適用拡大を求める運動を展開している。
【写真説明】会場には100人以上が詰めかけ、熱心に発言に聞き入った
【写真説明】交通事故の根絶を訴える被害者遺族のパネリスト

北海道交通事故被害者の会主催フォーラム
交通事故Ⅲ~ 裁かれるのか 交通犯罪 ~

11月15日、約100名の参加で無事終了。意義あるフォーラムになりました。ご協力に感謝します。(詳細は上記新聞報道をご覧下さい)


左:遺族と弁護士9名が報告と提起/右:「かでる2・7」には約100名の参加者が
主催者挨拶:内山孝子(遺族 副代表) / 司会: 前田敏章(遺族 代表)

《 被害遺族の訴え 》

① 音喜多 真理子 「私たちはなぜ告訴したのか」  
02/7/25 横断歩道上で中2の康伸君が犠牲に 危険運転致死罪で自ら告訴
② 眞下 清一 「報われぬ生命」
02/7/19 青信号の交差点で小6の綾香さんが犠牲に 検察庁へ上申 自ら告訴を検討中)
③ 佐川 昭彦 「『死人に口なし』の捜査と裁判」
98/9/17 親族ご夫妻が車対車の事故で犠牲に 真実を求め検察審査会に申立て中
④ 高橋 利子 「なぜ娘の被害の真相が明らかにされないのか」
01/10/8 高速道路で34歳の娘さんが犠牲に
⑤ 土場 一彦 「真相究明に対する被害者の関わり方」
01/8/18 歩道上で小4の俊彦君が犠牲に 捜査、処罰について検察庁へ上申
刑事裁判2回目の予定・・・12月5日(木)11:00~12:00 札幌地裁8階5号法廷
刑事裁判3回目の予定・・・12月12日(木)13:30~札幌地裁8階6号法廷

《 弁護士からの提起 》 交通犯罪を絶滅するために

⑥ 中村 誠也 (弁護士) 「土場さんの事件にかかわって」
⑦ 青野 渉 (弁護士)「初動捜査の徹底と科学化の必要性、加害者・被害者不在の裁判に関する疑問」ほか
⑧ 田中 貴文 (弁護士) (補充的に)「どう活かす危険運転致死傷罪」など
⑨ 小野 茂 (遺族 副代表) 「『被害者の会』の要望書の取り組み」

フロアー発言 司会のまとめ

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北海道新聞朝刊地方 掲載日:2002/11/16
交通犯罪に厳罰を要望 道などに被害者の会

北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は十五日、道と道警に対し、交通犯罪の厳罰化などを求める要望書を提出した。一九九九年に同会が発足して以来、行政機関に具体的な要望書を出したのは初めて。要望書は《1》救命救急体制の整備《2》事故の科学的捜査の確立《3》被害者支援体制の充実《4》交通犯罪の厳罰化-など七章二十三項目からなる。
このうち、道では前田代表が小笠原紘一環境生活部長に対し、犯罪被害者支援センターの設立や、高次脳機能障害者支援などを熱っぽく訴えるとともに、堀達也知事と被害者との懇談の機会を設けるよう求めた。  【写真説明】小笠原・道環境生活部長に要望書の内容を説明する交通事故被害者の会の前田代表(中央)

北海道交通事故被害者の会    代表 前田 敏章平成22年6月15日
警察庁長官 安藤 隆春 殿
関係各省(内閣府、法務省、国交省、厚労省)大臣殿

交通犯罪被害者の尊厳と権利、交通犯罪・事故撲滅のための要望書

憲法は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(憲法13条)と謳っています。しかし、交通犯罪・事故の犠牲者は、近年減少傾向にあるとは言え、死者が年間5,772人(2009年、警察庁交通局統計30日以内死者)に達し、負傷者も年間90万人を超え、国民のおよそ100人に1人が被害に遭うという深刻な事態に変わりはありません。北海道においても、249人の死者、23,855人の負傷者(2009年)という被害が続いています。
他の事件に比べ、道路上での車両による事件や事故については、交通犯罪という認識は薄く「事故だから仕方ない」「運が悪かった」と軽視され、原因究明と抜本対策が不十分です。結果として多数の被害が続き、本来社会で保護すべき子どもやお年寄りの犠牲も後を絶たないという、人命軽視の異常な「クルマ優先社会」となっているのです。
交通犯罪によってかけがえのない家族を失う、あるいは後遺障害などにより人生をも変えられるなど、深く傷つけられた私たち被害者のせめてもの願いは、尊い犠牲が生かされ、真に命と人権が大切にされる社会がつくられることです。交通犯罪被害者の尊厳と権利擁護を実現し、現代の最大の人権侵害ともいうべき交通犯罪と交通事故被害を絶滅するため、以下の事項について、抜本的で具体的な改善を要請致します。

1 人身にかかわる交通事故が発生した場合の救命救急体制を万全にすること

1-1  医療活動のできる高規格の救急車(ドクターカー)および医療専用機(ドクターヘリ・ドクタージェット)を整備・配備して、人身にかかわる事故に対し、地域格差なく全ての人に迅速、適切な医療が施される体制を確立すること。
1-2 そのためにも、救急救命士の医療的権限の明確化や、救急指定病院の拡大、指定外病院でも迅速な医療が施されるシステムの確立、さらに遠隔地医療の充実などをはかること。

2 「死人に口なし」のような不公正を正し、公正な裁きと原因究明、再発防止のために科学的捜査を確立すること

2-1 加害者供述に依存した「死人に口なし」の不公正捜査を生まないよう、「事故処理」ではなく「事件捜査」として、物証に基づいた捜査をを徹底すること。事故原因を徹底究明すること。科学的捜査に基づき公正な裁判を行うこと。
2-2 公訴時効制度は、逃げ得を許し、被害者が望む公正な裁きを損なう悪しき制度です。時効撤廃の対象には、法改正となった死亡事件に限らず、重い後遺症を与えた自動車運転過失致死傷罪など重大事件も加えること。
2-3 被害者の知る権利と、捜査の公正さを保障するため、実況見分調書など交通事故調書や鑑定報告書を、当事者の求めに応じ、送検以前の捜査過程の早期(実況見分調書は事件後1~2週間以内)に開示すること。
2-4 科学的捜査と原因究明のために、検視検案に際しては、CTなど画像検査や薬毒物検査を義務化し、医師が的確に死亡診断し、解剖の必要性を判断する仕組みをつくること。遺族等へ配慮し必要な情報提供や相談ができる体制を作ること。死因究明を専門的に行う機関を一元化して設置すること。生体鑑定についても同様に万全にすること。
2-5 科学的捜査と原因究明のために、航空機のフライトレコーダーに相当するドライブレコーダー(事故やそれに近い事態が起きた際、急ブレーキなどに反応し事故前後の映像等が記録され、分析によって速度や衝撃の大きさなど詳細が再現できる)の全車装着義務を法制化すること。交通事故自動記録装置を増設すること。

3 被害者や遺族に対しては、①知る権利 ②司法手続きに参加する権利 ③被害回復する権利 ④二次被害を受けない権利の四つ権利が厳格に擁護されるよう、必要な制度や行政上の措置を行うこと。

3-1 事故原因、加害者の処遇、刑事裁判の予定など、被害者の知る権利を保障する通知制度を徹底すること。
3-2 被害者や遺族の供述調書については、事故原因が知らされた後、冷静に加害者の事などを考えられるようにその時期等を配慮すること。
3-3 新設された被害者参加制度の制度趣旨を徹底し,被害者のために柔軟に運用すること。犯罪被害者等基本法前文および第18条の趣旨並びに被害者参加制度の実施を受けて、公判前整理手続に被害者ないし被害者参加人弁護士が出席できるようにすること。 さらにすすめて、捜査,公訴提起,刑事裁判手続に被害者が直接関与できる制度を整備するとともに,かかる権利の実現に資する制度,例えば,捜査情報の提供を受け捜査に参加する権利の確立や検察審査会の機能と権限の強化等をはかること。また,新設された損害賠償命令制度の適用対象を,過失により人を死傷させた犯罪にまで拡大すること。
3-4 被害者に対する損害賠償が適正に措置されるように、保険賠償制度は国が管理する自賠責保険に一本化し、対人無制限など充実させること。自賠責保険の支払限度額や給付水準を抜本的に改善するとともに、公正な認定がされるように機構の改善をはかること。また、後遺障害認定基準を脳や神経の機能障害に着目したものに見直すこと、事故による流産もしくは帝王切開術に対する保障、およびその結果発生する後遺障害に対する保障について早急に整備するなど、労災保険の認定基準に準拠している現行の認定基準を抜本改定して十全な損害賠償を実現すること。経済的支援と合わせ、PTSDに対する支援制度など精神的な支援を含めた被害回復の補償制度を確立すること。
3-5 脳外傷による高次脳機能障害を重大な後遺障害として認定し、これらを含む後遺障害者の治療と生活保障を万全にすること。介護料の支給対象を診断書による判断として拡大すること。遷延性意識障害の当事者を介護する療護センターの充実をはかること。
3-6 高次脳機能障害者の早期脳リハビリ施設の充実と一般就労支援窓口の充実をはかること。3-6 交通犯罪・事故の被害に遭った胎児の人権を認め、人として扱うこと。加害者の刑事罰、損害賠償および保険制度においても胎児の人権認め、保障を万全にすること。
3-7 交通犯罪被害者など犯罪被害者が、被害直後から恒常的に支援を受けられる公設の「犯罪被害者支援センター」(仮称)を設置すること。当会のような自助グループの活動に財政的支援が受けられる制度を整備すること。

4 自動車運転が危険な行為であるという社会的共通認識があるというべきであるから、交通犯罪の場合は、過失犯であっても、その結果の重大性に見合う処罰を科すことが、交通犯罪抑止のために不可欠である。交通犯罪については、特別の犯罪類型として厳罰化をすること。

4-1 危険運転致死傷罪が全ての危険運転行為の抑止となるように、適用要件を大幅に緩和する法改正を行い、結果責任として厳しく裁くこと。前方不注意のような安全確認義務違反など、違法な運転行為に因って傷害を与えた場合は「未必の故意」による危険運転として裁くこと。交通犯罪のもたらす結果の重大性からも、新設された「自動車運転過失致死傷罪」の最高刑をさらに上げることや、飲酒ひき逃げの「逃げ得」という矛盾を生まない厳罰化など、法体系を整備すること。
4-2 交通犯罪に対する起訴便宜主義の濫用を避け、起訴率を上げること。刑法211条2項に新設された「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除できる」という「刑の裁量的免除」規定は廃止すること。
4-3 危険で悪質極まりない飲酒運転での死傷事件を撲滅するために、運転者への厳罰の適用とともに、運転者への酒類提供者に対する罰則規定を設けること。また、事故の際の飲酒検査を徹底すること。飲酒の違反者には「インターロック」(アルコールを検知すると発進できない装置)装着を義務化するなど、再犯防止を徹底すること。
4-4 交通死について、24時間以内という扱いをせず、事故がもとで亡くなった方すべてを交通死とすること。

5 交通犯罪を撲滅し、交通事故被害をゼロにするために、国民皆免許主義ではなく、安全運転のための専門的な技能をもった者に限るために、免許付与条件を厳格にすること。

5-1 運転免許取得可能年齢の繰り上げ(バイクも18歳へ)や教習課程の抜本的見直しなど、免許付与条件を厳格にすること
5-2 免許者の違反行為はすべて重大な人身事故の原因や要因となる。累犯と事故の未然防止のために安全確認違反など悪質な道交法違反は全て免許取り消しとし、その他の違反にも欠格期間を長期にする、重い罰金を科すなど免許付与後の資格管理を適切に行うこと。また、免許再取得の制限を厳しくし、重大な違反で死傷事故を起こした場合などは永久に免許取得資格を与えないこと。

6 交通死傷被害ゼロをめざし、命と安全が最優先される社会を実現すること。

6-1 交通安全基本計画の目標を「交通死傷被害ゼロ」とし、事故原因と原因にいたる要因を完全に絶つ施策を講じること。そのために、先年発足した運輸安全委員会の調査対象に一般の自動車事故を加え、車の安全性能の問題や道路構造の問題など、事故原因を徹底究明し、被害ゼロへの方策を明らかにすること。交通安全基本計画の専門委員に交通事犯被害者団体の代表を加えること。交通安全運動は、運転者の「マナー」に依拠するのでなく、運転行為の社会的責任が自覚され、歩行者等への「安全確認」が最優先される運転者教育を徹底すること。
6-2 歩行者や自転車通行者、とりわけ子どもやお年寄りが安全・快適に通行できる道路環境をつくること。幹線及び準幹線道路での完全歩車分離と住宅地や商店街など生活道路での抜本的な速度抑制などクルマ通行の規制による歩行者優先を徹底し、被害ゼロを実現すること。交差点での歩行者、自転車事故を防ぐために、歩車分離信号をスタンダードな信号と位置づけ普及すること。通学路をはじめ全ての道路について安全を最優先した点検と見直しを行い、信号や歩道の改善、防護柵の設置など二重三重の安全策を講じること。ロードキルが原因の交通事故被害を根絶するために、高速道路における野生生物の侵入防止対策を万全にし、一般道路においては速度抑制を徹底すること。
6-3 交通死傷被害の元凶である危険な高速走行と制限速度違反を根絶するために、全てのクルマに、道路状況に応じ段階別に設定した速度抑制装置(リミッター)装着を義務づけること。
6-4 運輸業者の安全に対する社会的責任を明確にし、悪質違反や重大人身事故を惹き起こした運輸業者に対する監査を徹底するとともに、罰則を強化するなど行政指導を強化すること。
6-5 事故原因解明と再発防止のため、行政指導に必要な情報開示を徹底すること。
6-6 公共交通機関を整備し、クルマ(とりわけ自家用車)に依存しない安全で快適な生活を実現すること。

以上

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北海道新聞朝刊 掲載日2002/10/29
危険運転致死容疑で運転手告訴 交通事故死少年の両親-札幌

札幌市白石区の市道の横断歩道で今年七月、トラックにはねられて死亡した中学生の両親が二十八日、危険運転致死容疑で、トラックの運転手(46)を札幌地検に告訴した。北海道交通事故被害者の会(事務局・札幌)によると、交通事故被害者の家族が、加害者を同容疑で告訴するのは道内で初めてという。
危険運転致死傷罪は昨年十一月の刑法改正で新設された。業務上過失致死傷罪が五年以下の懲役・禁固か五十万円以下の罰金なのに対し、危険運転致死傷罪は、死亡事故の場合は十五年―一年の懲役、負傷事故は十年以下の懲役。飲酒、暴走など悪質運転で事故を起こした場合に適用される。
告訴したのは、同市白石区在住のレストラン経営音喜多(おときた)一さん(48)と妻の真理子さん(45)。七月二十五日午後二時五十五分ごろ、長男で中学二年生の康伸君=当時(13)=が白石区中央三ノ三のこ線橋脇の横断歩道を自転車で横断中、二トントラックにはねられ、全身を強く打ち間もなく死亡した。告訴状は、トラックの運転手は、康伸君の姿を視認しながら、通行を妨害する目的で、左折ウインカーを点滅させたまま時速五○キロで横断歩道に進入し、康伸君を死亡させたとしている。
音喜多さんは事故後、運転手の厳罰を求める運動を展開してきたが、札幌白石署は九月、業務上過失致死の疑いで運転手を送検したため、告訴に踏み切った。
音喜多さんの代理人、田中貴文弁護士は「死亡事故の発生状況を加害者の供述に頼る捜査手法が、多くの被害者遺族を苦しめている。客観的な科学捜査で真相を究明するため告訴した」と説明。同被害者の会の前田敏章代表は「告訴は、危険運転致死傷罪の本来の意義を問い直す第一歩となる」としている。

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北海道新聞朝刊地方 掲載日:2002/09/25
悲劇防げ!厳罰訴え

脇見運転が康伸君の命奪った「なぜ過失で済む」
危険運転致死傷罪適用拡大求め運動 地検に要望 2700通超す

「命の重さに見合う刑罰を-」。今年七月、札幌市内で脇見運転のトラックに中学生の長男の命を奪われた両親と北海道交通事故被害者の会(本部・札幌、前田敏章代表)が、運転手に厳罰化を求めて運動している。昨年十二月施行の改正刑法に新設された危険運転致死傷罪を、交差点での脇見運転など悪質な運転にも適用するよう求める内容だ。この刑法改正後、道内で起きた事故で運転手の厳罰化を求める運動が展開されるのは初めて。(札幌圏部 大倉玄嗣)
夏休み初日の七月二十五日、札幌は久々に青空が広がった。午後二時五十五分ごろ、白石区の米里中二年、音喜多(おときた)康伸君=当時(13)=は自転車用ヘルメットと蛍光色のジャージーに身を包み、マウンテンバイクで市道米里行啓通のJR函館線こ線橋を南に下り、同区中央三ノ三の側道の横断歩道に入った。そこへ市道本線から進入してきた二トントラックが激突。身長一七二センチ、体重七二キロの康伸君は十三メートルもはねとばされ、全身を強く打ち、間もなく死亡した。札幌白石署の調べでは、運転手は進行方向左側の道路に気を取られ、前を見ずに横断歩道にトラックを走らせたという。

■夢はエンジニア

康伸君の名を記憶している人がいるかもしれない。千歳市信濃小二年の時、鹿児島県南種子町の第一期宇宙留学生に選ばれた。一九九六年五月十三日の北海道新聞朝刊「ひと96」に登場、「宇宙センターのスタッフになりたい」と夢を語った。小学高学年になって夢はエンジニアに変わり、札幌に引っ越して米里中入学後は自転車にも熱中した。すべての夢は脇見運転が一瞬にして奪った。
同署は今月二十日までに、この運転手を業務上過失致死の疑いで書類送検したが、康伸君の父、音喜多一さん(48)=レストラン経営=は憤る。「交通ルールを守った息子が死に、運転手はけが一つ負っていない。これは車という凶器を使った犯罪だ。なぜ単なる『過失』で済まされるのか」

■賛同者道外にも

音喜多さんの手元には札幌地検に提出する要望書の束。「悪質な交通事犯に厳罰処分がなければ、悲惨な交通事故は抑止できない」として、康伸君をはねた加害者に危険運転致死傷罪の適用を求める内容だ。すでに二千七百通を超えた。要望書は音喜多さん夫婦が知人を通じて募った。「被害者の会」もインターネットのホームページに事故の概要と要望書のフォーマットを掲載。道外からも要望書が集まった。  業務上過失致死罪は懲役五年以下。実刑にならないケースも多い。一方、危険運転致死傷罪で被害者を死亡させた場合は懲役一年以上十五年以下。だが、適用されるのは飲酒運転、暴走、信号無視などに限られる。康伸君のケースで加害者が危険運転致死傷罪で裁かれるには、適用範囲の拡大が必要だ。
昨年の刑法改正は、飲酒運転のトラックに娘二人を奪われた千葉県の会社員が悪質運転厳罰化を訴えて運動した結果だった。「被害者の会」の前田代表は「危険運転致死傷罪を康伸君のようなケースに適用しなければ、厳罰化の意義は薄らぐ」と訴える。

■目撃情報求める

今月二十一日、音喜多さんの依頼で、道自動車短大の茄子川捷久教授のチームによる事故鑑定が現場で行われた。トラックの速度などを調べたもので、十月半ばに鑑定結果が出る。音喜多さんは、事故の目撃者も探している。事故当時、現場近くの北海道中央バス停留所「中央3条4」にはバス待ち客が数人いたという。目撃した人は洋食店ヴィサージュの音喜多さん(電)871・5520へ。秋の交通安全運動が二十一日から三十日まで展開されている。道内の今年の交通事故死者は二十三日までで三百二十人。全国最悪が続いている。
【写真説明】事故現場で行われた事故鑑定。康伸君と仲の良かった同級生の中西健太君が康伸君役を演じた=9月21日午前9時30分
音喜多康伸君が命を奪われた現場=7月25日午後3時10分ごろ、白石区中央3の3

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2001年12月5日
危険運転致死傷罪等の新設について
内藤裕次「北海道交通事故被害者の会」世話人

危険運転致死傷罪を新設する刑法改正案が、平成13年11月28日参議院で可決され成立した。従来、交通事故により人を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法211条)が適用されてきたが、最高でも懲役5年であり、悪質な犯罪については特に被害者感情が反映された処断ができなかった。今回の改正は、一歩前に進めるものであるが、問題点も抱えている。

まず、業務上過失致傷罪における刑の裁量的免除が、設けられたことである。 これは、自動車事故が業務上過失致傷罪となる場合において、「傷害が軽い場合」に「情状を考慮して」刑の免除をするものである。 犯罪一般については、犯罪が成立しても、検察官は起訴しないことができる(起訴便宜主義)が、交通事犯の場合、この起訴便宜主義のもとで、88%が不起訴処分となっている。 刑の免除規定が加わると、免除に該当しそうな場合、検察官はあえて起訴しないだろうから、不起訴処分という裁量行為について、刑法が追認をするという効果をもたらすであろうし、不起訴の拡大のおそれも生じよう。

また、これにより、一般の業務上過失致傷罪と異なり、自動車運転業務についてのみ免除が設けられることになる。これは、自動車運転は社会的に有益な行為だから、通常の注意義務を払っていてもなお生じた結果については犯罪とするべきではない、あるいは刑は軽くてもよい、とする過失犯理論からくるものである。しかし、運転者のモラルが日に日に低下する今日においては、そろそろこの考え方を改めるべきであろう。 

次に、危険運転致死傷罪については、その成立要件が厳格で、検察官の立証にハードルをかけるものが多い。 例えば、「人又は車の通行を妨害する目的で、通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」については、「目的」という内心的要素を立証しなければならない。内心は目に見えないものである以上、他の表面に現れた事実から立証するしかない。また、「赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」については、「殊更に」という他の刑法の犯罪に無い要件を立証しなければならない。これも内心的要素であるから、立証は難しいのではないか。 立証は難しいと書いたが、仮にそれ自体の立証は難しくないとしても、立証すべき事柄が増えれば、裏付けるための証拠がそれだけ多く必要になる。証拠がなければ公判維持できないから、起訴は控えられる(より軽い業務上過失致死傷罪で立件ということになる)。

以上から、今回の法改正は、一歩進めたものであるが、適用はごく一部の犯罪でかつ証拠が明らかな場合に限定されること、また、免除規定を設けた点に問題がある。
会員 内藤 裕次

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2001年10月25日(木)北海道新聞 「卓上四季」
分離信号の勧め

交通事故をなくすにはどうするか。いろいろ方策はあるが、歩行者を事故から守るには、人と車を<分ける>のが基本だろう
▼が、ほとんどの交差点はそうなっていない。青信号を渡った歩行者が、右左折の車両に巻き込まれる事故が後を絶たない。「あまりに車優先で人命がないがしろにされている」。青信号を横断中、車にひかれて亡くなった子どもの親たちが立ち上がった
▼歩行者が交差点の横断歩道を渡っている時は、車すべてをとめる<歩車分離>式にすればいい。そう訴えた。信号の管理責任を問う裁判を起こした。活動を本にまとめた
▼警察の対応は鈍かった。渋滞を招く。そもそも事故は運転者の不注意による。それが理由だった。全国の信号で分離式はわずか1%にすぎない。道内も札幌・三越前のようなスクランブル方式を含め、たった二十七カ所
▼その警察がやっと重い腰をあげた。ことし全国百カ所に分離式信号をモデル運用する。車の円滑な走行より、歩行者の安全を優先して-という声が、交通行政を動かした
▼十年間この運動に取り組んできた、東京在住の長谷智喜さんは今春、札幌での講演会でこう話している。「歩行者の安全が、運転者の手の中にあるという構造を、みんなの力で、少しずつでも変えていきませんか」。近く道内でも札幌・北五西三と北見・北二西一で<変化への試み>がスタートする。

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2001年3月10日(土) 北海道新聞(夕刊)
「交通安全白書」について官房長官に意見書 道交通事故被害者の会

北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表、七十人)は十日、福田康夫官房長官あてに、二○○○年度版「交通安全白書」の記述への疑問などを指摘する意見書を郵送した。同会は白書の中に「車社会は便利なので交通事故発生は仕方がない」と受け取れる表現があるとし、一月下旬に札幌で開いたフォーラムで異議を唱えていた。
同会が疑問視するのは、白書の第二章「『交通事故における弱者及び被害者』の視点に立った交通安全対策と今後の方向」の序文にある「自動車交通社会の便益の裏返しとしての社会的費用である交通事故の被害」との記述など数カ所。
意見書の中では「クルマ優先社会の人命軽視の考え方が語られており、大きな衝撃を受けた」と前置きし、文章表現に対して抗議するとともに、「政府がクルマ優先の考え方を改め、交通弱者、被害者の視点に立つことを求める」としている。
前田代表は「多くの賛同者の思いを政府に受け止めてもらいたい。誠意ある回答を期待している」と話している。

「運転免許の処分基準等の見直し素案」への意見

警察庁交通局 様

2001年9月25日
札幌市中央区北1条西9丁目ノースキャピタルビル8階
北海道交通事故被害者の会 代表 前 田 敏 章

1 はじめに(現状認識)

現状では、運転免許は移動の自由や快適性のために、公共の福祉が犠牲にされて、憲法13条(生命、自由及び幸福追求の権利)に違反した実態となっています。交通事故および交通犯罪被害は、交通死が毎年1万数千人におよび、事故件数と負傷者数は過去最悪を更新中という極めて深刻な事態が続いているからです。
この背景には、暴走運転など危険な運転を繰り返す者、明らかな故意犯である無免許や酒酔い、酒気帯び運転、そしてスピード違反など悪質な違反の蔓延があり、同時にドライバー全体にも遵法精神などモラル低下が顕著で、歩行者保護など安全運転義務が守られないという運転者の問題が大きな比重を占めます。
運転者のモラル低下の一因となっているのが、「事故を起こさなければ違反をしても構わない」(わずかな反則金を払い、1年経てば点数も消える)、「違反をしても捕まらなければよい」(軽微な違反はそんなに危険なことではない。捕まるのは運が悪いから)という安易な意識を生む現行の点数と反則金の制度そして取締りのあり方です。
重大人身事故の巨大な予備軍ともいえるモラル低下、および重大な人身事故の加害者には累犯者の割合も多いという実態からすると、現状の点数制度や欠格期間が、交通犯罪被害ゼロのために有効に機能しているとはいえません。
このことから、警察庁交通局が運転免許の処分基準等の見直しを図ることについて大いに期待をし、今回示された「運転免許の処分基準等の見直し素案」について、尊い肉親の犠牲を無にして欲しくない、あるいはこんな辛い思いは自分だけにして欲しいという交通事故被害者の痛切な願いから、意見を申し上げます。

2 意見の骨子

(1)根本的には、運転免許取得可能年齢の繰り上げ(バイクは18歳、四輪は20歳など)や取得に関わる教習内容の抜本的見直し、付与後の適切な規制や管理など、免許条件の厳格化がはかられ、免許は誰にでも与えられるものではなく、安全運転のための専門的な技能をもった者に限るという発想をすべきです。
(2)違反はすべて重大人身事故の原因や要因となり得るものという視点から、未然防止のために点数、反則金のそれぞれを重くすべきです。
(3)累犯者が多いという実態からも、悪質違反についてはすべて免許取り消しとし、その欠格期間は長期にすべきです。さらに再免許取得の制限を厳しくし、重大な違反で死亡事故を起こした場合などは永久に免許取得資格を剥奪すべきです。

3 いくつかの項目についての意見

免許の欠格期間及び点数制度の見直しについて

(1) 極めて悪質な違反をして死亡事故を起こした者に対する欠格期間は、1回目の取消しであっても、5年の期間が指定できるようにします。(例えば、①故意により人を死傷させた場合、②酒酔い運転をして専らその人の責任で人を死亡させた場合については、5年の欠格期間が指定できるようにします。)

≪意見≫ 累犯が多いというなかで、未然に防ぐためにも、取り消しを受けた者が再び免許を取れる条件は厳格にすべきです。無免許や飲酒など重大な違反で死亡事故を起こした場合などは、永久に免許取得を認めるべきではありません。

(2) 死亡事故を起こした場合の点数を引き上げ、原則として、免許を取り消すことができることとします。(ただし、事故を起こした者に責任がない場合や責任が極めて軽微な場合には取り消さないこととします。)

≪意見≫ ただし書きの部分については、現状の、科学的捜査が行われず、加害者側の証言を重視する結果、「死人に口なし」的不公正があるという事故捜査上の問題点を改善した上で適用していただきたいと思います。

(3) 交通事故の被害者に重度障害が残る事故や治療期間が3か月以上である事故に対する付加点数については、新たに区分を設け、重くすることとします。

≪意見≫ 酒酔い(又は酒気帯び)運転は、故意であり、悪質、危険極まりない行為ですから、ドイツのようにその行為自体で取り消しとすべきです。

(4) 無免許運転については、他の違反行為と合算して評価することとします。

≪意見≫ 無免許運転は酒酔い(又は酒気帯び)運転と同じく、故意であり、さらに社会規範を全く無視する行為ですから、他の違反と同列に扱うのでなく、ただちに取り消しとすべきです。また次項の「特例」の対象からも除外し、無免許運転を繰り返した結果重大事故に到ったということは皆無にすべきです。

(5) 1年間無事故無違反の場合の点数累積等の特例(1年間無事故無違反であれば、点数制度上、それ以前の違反や免許停止歴をなかったものとして扱うという特例)の要件となる無事故無違反期間について、現在、免許停止期間や免許が失効した期間も含めて1年間としていますが、これを、運転が可能な期間に限る(運転可能期間が1年間以上あり、かつ、その期間無事故無違反である場合に限る)こととします。

≪意見≫この「特例」の存在自体が遵法精神を涵養しているかどうか疑問です。少なくても、「提言」の中で考え方が述べられているように、無事故無違反の期間を長く(3~5年)して、安全運転と遵法精神の定着をはかるべきです。1年というのはあまりに安易です。なお、本人の努力を促すというのであれば、諸外国の例にあるように、3~5年の間に一定の研修を受けた者だけに点数を差し引くという制度も組み合わせるべきと思います。

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2001年1月25日(木) 北海道新聞(夕刊)
交通事故死は「社会的費用?」交通安全白書に遺族ら反発

「車社会は便利なので、交通事故発生は仕方がない」とも受け取れる表現が「交通安全白書」(2000年度版)の中にあると、交通事故で肉親を亡くした人たちから疑問の声が出ている。北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は、26日に開くフォーラムで「車優先社会を容認する人命軽視の考え方で、怒りを覚える」と訴える。指摘を受けた内閣府も、記述の見直しを検討している。

問題視されているのは、白書の第二章「『交通事故における弱者及び被害者』の視点に立った交通安全対策と今後の方向」の序文にある「自動車交通社会の便益の裏返しとしての社会的費用である交通事故の被害」という記述。  1995年に高校2年の長女を失った前田代表は「便利な車を使っているのだから、死亡事故も仕方ないという姿勢でいるかぎり、私たちが目指す交通事故根絶はほど遠い」と憤る。
白書の「(交通事故被害の)負担を個人の苦しみとしては可能な限り軽減するため、社会全体がバランスよく負担していく」という表現にも批判がある。夫を事故で亡くした同会の内山孝子副代表は「夫の事故死は社会全体がバランスよく被害を負担した結果だから我慢しなさい、という意味なのですか」と唇をかむ。
クルマ社会を問い直す会前代表の杉田聡・帯広畜産大教授は「重大な被害者が出る交通事故を、政府が『社会的費用』と経済学用語で語る感覚は異常。犠牲はやむを得ないという発想で、事故をなくす努力を放棄している」と指摘する。
前田代表は昨年暮れ、自ら運営する「交通死―遺された親の叫び」というインターネットのホームページに、白書への疑問を書いたコラムを掲載。さらにフォーラムでの討論などを踏まえ、関係省庁への抗議文提出なども検討している。
こうした指摘について、交通安全白書を編集する内閣府の交通安全対策担当は、「意図と違った形で受け止められるのであれば、今後はそのような表現は避けたい」と話している。

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2000年5月20日
北海道交通事故被害者の会 2000年 定期総会開かる

1999年9月17日に産声をあげた「北海道交通事故被害者の会」は、2000年5月20日、初めての定期総会を開催し、これまで8か月間の活動をまとめ、今後の活動の方向を確認しました。 以下は、総会で確認された文書です。

これまでの活動と今後の活動について

2000年5月20日北海道交通事故被害者の会

「北海道交通事故被害者の会」(以下「被害者の会」)は、昨年9月17日の設立総 会以来8か月を経て、初めての定期総会を迎えることになりました。 この間「被害者の会」では、設立の主旨から会の行うべき活動を、時間をかけて相 談し、模索しながら会員相互の支援交流を中心に初期の活動を進めてきました。主な 活動は、毎月一回世話人会を兼ねた例会開催、電話相談、各種会合での訴え、研修会 参加、会報の発行、会のホームページ開設などですが、一歩一歩活動するなかで、「被 害者の会」結成の意義と、今後の活動の方向性が見えてきました。

私たちが「被害者の会」に集まって何よりも救われたことは、それまでの孤立無援 の状況から、理解し互いに支援し合える仲間と場が初めて得られたことです。私たち の、かけがえのない肉親を失ったことによる、あるいは心身ともに深く傷つけられた ことによる悲嘆や腹の底からの怒りに変わりはありません。しかし私たちは、何度か の例会を重ねる中、悲しみや憤りをもたらした直接的な加害者をはじめ、二次的被害 をもたらした捜査や裁判の過程、保険会社の対応、そしてこれらの背景にある交通犯 罪にあまりに寛容な人権無視の「クルマ社会」などに対する思いが、全ての被害者に 共通のものであり、そしてこれを変えたいという願いが正当なものであることを理解 し確信することができました。

悲しみ、怒りを個々の胸の内に押し込めておく事はできません。それでは同様事故 の再発が避けられず、同じ悲しみ、怒り、恨みを生み、何より交通犯罪で命を奪われ た故人や、深い傷を負った被害者の方の尊い犠牲が報われないからです。「被害者の 会」には、会の発足後の事故によって最愛の家族を失った会員の方もおられますが、 やはり「死人に口無し」の不当な捜査や扱いは変わっておらず、かけがえのない肉親 を失った悲嘆に加えての二次的被害の悲惨さに、このままでは仏も遺族も浮かばれな いという思いを新たにしています。そして、全道、全国で一向に減る兆しもみせない 悲惨な交通事故、悪質な交通犯罪、これらを見聞きする度に胸が痛みます。

私たちは、発足時に定めた会則の目的にあるように、交通事故の被害にあった者が 不公正を受けることのないように、そして新たな被害者を生み出さないための抜本対 策を求めて、活動を発展させたいと思います。 私たちは、交通事故被害者のおかれている実態と願いを具体的に把握するために、 この4月、会員アンケートを実施しました。詳細な分析はこれからですが、会員の 63%から寄せられた回答には無念さや憤りとともに、会の今後の活動についての期待 も述べられています。

「被害者の会」では、これらをもとに一つひとつの事例が教訓として生かされ、二 度と起されることがないという万全な対策が講じられるよう、関係機関に要請してい きたいと思います。 飛行機や列車の事故であれば、事故原因が徹底的に究明され、再発防止の抜本対策 がはかられるのは至極当たり前のことです。ところが道路上の一般車両事故について は、科学的な原因究明が不十分で、したがってその対策もおざなりです。結果として 同様事故が毎年一定の割合で発生し続け、本来社会で保護すべき子どもやお年寄りな ど交通弱者の犠牲が年間5000人以上にものぼるという人命軽視の異常な社会が形成 されているのです。

私たちは、真に命が尊重される社会の実現を望みます。現代の最大の人権侵害とも いうべき交通犯罪を絶滅するため、被害者の立場から具体的に次のことを実践し、あ るいは要請していきたいと思います。

(1)交通事故被害の悲惨さ、かけがえのない命の大切さを訴える、啓蒙活動。
(2)捜査段階や裁判の過程で、「死人に口無し」のような不公正をなくすため、被害者がおかれている不当に弱い立場を改善すること。
(3)事故の再発をさせないための原因究明と抜本対策を求めること。そのために、科学的な事故捜査を確立すること。
(4)他の犯罪に比べ、交通犯罪の起訴率は低く、刑事罰は軽すぎます。罪に見合 った正当な量刑とすること。
(5)自賠責保険の後遺障害認定基準を見直し、適切な損害賠償を実現するなど、精神的、経済的な支援を含めた補償制度を確立すること。
(6)免許賦与条件を厳格にすること。分離信号設置や歩車分離の道路整備、生活道路での車の速度や通行の制限など、歩行者保護が貫かれた安全な道路環境を つくること。公共交通機関を整備すること。

最後に、これまで声をあげたくてもあげられなかったであろう多くの被害者、遺族 の方に呼びかけます。不公正を許さず、尊い犠牲を無にしないため、そして同様の事故や交通犯罪を絶滅するために「被害者の会」でその思いを束ねて力にしましょう。 入会を心から呼びかけます。

以上

入会申し込み・連絡先 011-233-5130
事務局 札幌市中央区北1条西9丁目 ノースキャピタルビル4階
会則など詳細は、会のホームページをご覧下さい(リンク集に入っています)

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