泌尿器科医・木村明の日記


PSA検診で見つかる予想患者数と死亡患者数の解離について


これは都筑区民を対象にしたコホートスタディーではありません。

亜沙郎先生とのチャットからスタートした数字の遊びに過ぎません。

「都筑区に住んでいる50歳以上の男性が全例PSA検診を受けてくれるとすれば何人前立腺癌がみつかるのでしょう」という4月10日のブログがスタートです。

その後昨日までに以下の6臓器のがんにつき計算しました。
臓器検診の対象人口要精密検査人数検診で発見される患者数年間死亡者数
前立腺がん25000250025015
胃がん8400084008481
blog9_4_15.html#blog">大腸がん84000252017065
乳がん220004417
子宮がん22000338
肺がん840008400100100

胃がん・肺がんは2次検診に回った人のうち実際に癌だった人の割合が低すぎるという欠点が見えてきます。

大腸がんは1次検診での絞込みがよくできていて、2次検診に回った人のうち実際に癌だった人の割合が高くなっています。

前立腺がんは2次検診に回った人のうち実際に癌だった人の割合が高いところまではよいのですが、年間死亡者数よりも1桁多いがん患者を発見してしまう、という大きな問題があるようです。

検診での発見率も、グーグルで適当に検索した資料によるもので、実際の検診とはかけ離れた数字を使ってしまっているかもしれません。

都筑区の人口にしても、総人口は今年だけど、年齢別人口は1~2年前のもの、と言った具合ですし、

90歳以上の人口まで検診の対象人口に加えているのも、突っ込まれそうです。前立腺がんを見つけても治療できない、重症の合併症をかかえている方もいるでしょう。

最大の突っ込みどころは、毎年全員がPSAを受け続けたら、2年目以降はPSA異常者が10%も見つからないだろう、ということ。


会員制の検診センターでのデータによれば、PSAを項目に加えた直後は異常値が多く発見されましたが、数年後には減っています。

もうひとつ突っ込めるところは、年間死亡者数は2005年のものであること。

前立腺がんは増加傾向にあり、PSA検診をしないでいたら、将来もっと多くの人が前立腺がんで死ぬかもしれません。
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