思い出の指揮者

感動的なシーンで思い出すのは、スロバキア出身のオンドレイ・レナルド先生の指揮で、マーラーの一千人の交響曲を合唱で演奏した時のこと。

練習では常に「この曲に愛をもって、魂を込めて演奏して」と。本番、サントリーホール。地響きのような圧倒的な迫力で締めくくられる感動的なラスト、ホール全体が嵐のような拍手。指揮者はそのまま指揮台で、顔を手で覆い咽び泣いた。その姿に我々演奏者皆もらい泣き。涙が止まらなかった。こんな感動的なシーンは、何年に1度、あるかないか。これがあるから、音楽は止められない。

涙で思い出すのは、飯森範親先生。ブラームスの合唱曲の大曲、ドイツ・レクイエム。練習後に、指揮者自ら、曲の理解を深めるために演奏者に歌詞の講義を行っていた。宗教曲ゆえ、まるで伝道者のようだった。

本番では、美しい旋律と歌詞の内容からか、指揮をしながら感極まって飯森先生が涙する場面がいくつかあった。この演奏はFMで全国に放送されたが、なかなかの名演だったと思う。

いつも冷静にオーケストラをコントロールしていると思われがちな指揮者も、実は皆感受性豊かな人間。笑わせたり、楽しませてくれる人もいれば、怒ったりする怖い人もいる。そして、自ら感動して涙を流す指揮者もいる。まさに喜怒哀楽、個性があって、いろいろな指揮者がいてはじめて、演奏者や聴衆がそのヴァラエティーに富んだ素晴らしい音楽を享受する、これこそオーケストラの醍醐味ではないだろうか。

山本直純先生
山田一雄先生
小澤征爾先生
井上道義先生
ゲルハルト・ボッセ先生
大友直人先生/汐澤安彦先生
小林研一郎先生
大河内弘先生/金子健志先生/宇野功芳先生
オンドレイ・レナルド先生/飯森範親先生



Last update:Jun.2 2007
This page maintained by Takeru Kawai(Tp)
All contents copyright (C)
KOHOKU-KUMIN SYMPHONY ORCHESTRA
All Rights Reserved.