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「ずいぶんコミック」の時代 1980年



1980年の他の漫画家の作品

萩尾望都
「ラーギニー」「訪問者」「メッシュ」「金曜の夜の集会」「銀の三角」

山岸凉子
「日出処の天子」「悪夢」「恐怖の甘い物一家」

大島弓子
「綿の国星」「雛菊物語」

三原順
「今は静かな」


この年の吉田秋生の作品
「風の歌うたい」「はるかな天使達の群れ」「アカプルコ・ゴールド」

ずいぶんコミック NO.4、NO.5、NO.6が出ました。


NO.4
発行日 1980年3月24日
発行部数 250部

表紙を入れて24ページ
・ 表紙の次のページに、Magical Mystery Tour の歌詞と訳詞
・ P3〜P6 「THE INTERVIEW」
小学館にいる吉田秋生に電話でインタビューしたもの。以下、抜粋

Q.じゃ、まんがは? 好きなまんが家とか・・・
A. 吾妻ひでお。
Q. 好きな少女まんが家さんは?
A. うーん。(困っている・・・)
Q. じゅあ、作品では?
A. 樹村みのりさんの "40-0(フォーティーラブ)"。
Q. ああ、あのテニスの。
A. 前にテニスやってたから、今はやらないけど、夏にやるの。

Q. 先生は学生時代シニックデザインっていのうをやってらしたそうですけど、 シニックデザインって何ですか?
A. 舞台デザインとか映像芸術です。

Q. またまんがの話ですが、一番思い入れしているキャラクターは?
A. やっぱり恭一君ですね。
Q. やっぱり・・・・。あ、インディアンのモデルがいるって・・・・。
A. ええ、ジーン・ハックマン。
Q. ああ。他にもモデルのいるキャラクターは?
A. ブッチが。目の色はちがうけど "いちご白書" の主人公の男の子。 あのバカさかげんというか・・・・。
Q. それから、ヒースのお母さんのシャーロットって、あのシャーロット・ランプリング ですよね。
A. やっぱりわかる?
Q. わかります。
A. "地獄に堕ちた勇者ども"のランプリングが好き。"オルカ"はみてないの。
Q. "愛の嵐"はみましたか?
A. みた。耽美的な映画ですね。とても私には描けないわ。
Q. 最近、何かみましたか?
A. "がんばれタブチくん"。それと"青春の殺人者"と"太陽を盗んだ男"。
Q. カンケーないけど、ジュリーすきですか?
A. え・・・・まあ好きです。 "勝手にしやがれ"が・・・・。

Q. それじゃ"タクシー ドライバー"は?
A. みた。悲しい映画ですね。
Q. ロバート・デ・ニーロは好きですか?
A. はい。イタリア系の人が好きですね。ダスティン・ホフマンとかアル・パシーノとか。


最後に、QUESTIONというコーナーがあって、会員からの質問とスタッフからの回答が載っています。 それによると、会員数はこの時141名。平均年齢17.6才、だそうです。
・ P7 「新ヨナ書」 旧約聖書のヨナ記をおもしろく書きあらためたもの。

・ P8、P9 「FREE TALKIMG」 会員からのおたより
□「ホテル・カリフォルニア」の最終ページが書き直されているのご存知?
(管理人には初耳です。ただいま別コミを取り寄せ中。)
□秋生さんのヒースについて・・・・・だんだん絵がらしくなるというのか、 子供っぽかったヒースがだんだんホネっぽい男になっていくような気がしませんか?
(管理人注 当時は第3部が終り第4部が始まるのを待ってた頃です。)

・P10 「風の歌うたい」によせて 会員からのおたよりだがこの項を独立させてある
□一歩間違えば大島さんの「綿の国星」の模倣ともとられそうな昆虫の擬人化の試み、それを 通して伝わってくるのは、秋生さんの昆虫に対する愛情に満ちた目。(中略)阿修羅を意識した ようなヒグラシゼミの姿に、あるいはこれを「百億の昼と千億の夜」へのアンチテーゼ、いや レジスタンスだと思ったのはボクの深読みでしょうか。
□「風の歌うたい」にでてくるヒグラシはなんとなく萩尾望都の「百億〜」のシッタータと イメージがだぶってしまうのです。(秋生さんの方が顔が細い感じがするけど)そしてヒグラシが うたう歌のテーマが「輪廻」だけど、これもだぶるんですよね。友達にいわせると秋生さんの ような絵はどうしても望都さんのような絵に近くなってしまうっていうんですけど、どう思いますか?

・P11 左半分はオリコン2.29号の記事のコピー 以下、引用
まんが界のニューウェイヴ登場!
たとえば、イーグルスのLPならどれでも、J・D・サウザーでもいいし、スティックスの「コーナー ストーン」もいい。貴方が映画好きならば"真夜中のカウボーイ"を思い出しながら、この物語に 目をとめてくれれば・・・・・・、まだ見ぬ土地、亜米利加が、あざやかに広がる。
物語はそのイントロダクションに位置する"ホテル・カリフォルニア"という短編から始まる。 サン・ディエゴの中流家庭で厳格な父親に育てられたヒースを中心に、彼が家出同然にニューヨーク へ向かう途中、テキサスで出逢ったイーヴとブッチ、それにヒースが高校時代に知り合った "インディアン"というヒッピーに、そのかたくなな心をひらいていく過程を、ヴェトナム戦争や 人種問題を折りまぜながら醒めた調子で描いていく1部、2部、そして2月25日に発売される第3部は、 麻薬中毒の中であえぐ孤独なヒースの高校時代である。
少女まんがにありがちな不自然に長い足ではなく(実際、出演者たちの足が短すぎるという批判 が多いらしい)目に星が入っているわけではなく、ただ要所要所にでてくる英語的ネーム(セリフ)と 気のきいたギャグが多くの新しいファンをつくりあげた"カリフォルニア物語"は、まんが界のニュー・ ウェイヴに違いない。夏頃再連載される第4部に期待しよう。

右半分は「INFORMATION」
会員へのお知らせと、少女まんが愛好会「不思議の国」の会員募集

・ P12、P13 「あなたの求める理想の恋人は?!」 選択肢の1つを選んで4つの絵の1つに たどりつく

・ P14、P15 「カリフォルニア物語ガイド PART.2 DRUG」 
「このドラッグについての文は"アメリカ俗語辞典"を参考にしたもので、漫研らんまる団 スペシャルの会誌の"ジッター・バック Vol.2" よりの転載であります。
(管理人注 「ずいぶんコミック」全体が手書きで、転載といってもコピーして貼ったものでは なく、スタッフが書き写したものです。 脱帽)
途中にらんまる団Specialの会員募集広告があります。愛知県のサークルで「Rock、まんが、 映画のお話、小説etc. 。会員の原稿中心の会誌を2ヶ月に1回発行してます」ということです。
途中にある囲み記事「Rock Artistに見る麻薬による事故」
69年7月3日、元ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズが自宅のプールで変死 ということになっているが、Drugで死を早めたと言われている。70年9月18日ジミ・ヘンドリックス、 10月4日ジャニス・ジョップリン、71年7月3日「地獄の黙示録」の挿入歌The endを歌っているドアーズ のジム・モリスン。その他にはアル・ウィルソン、トミー・ボーリン、最近ではキース・ムーン、 セックス・ピストルズのシド・ヴィシャス、元ウィングスのジミー・マックローなどなど。


・ P16、 P17 「パロディー カリフォルニア」Part 3
(管理人注 カリフォルニア物語「キティ・ガール」の中の、ヘルムート?の書き込みがある 見開きページ。コミックス2巻。愛蔵版だと1巻。)
ヒース「イーヴ、入ってこいよ・・・・」
ヒース「? イーヴ、早くこいよ!」
ヒース「イーヴ? そこにいるんだろう?」
イーヴ「だって・・・」
ヒース「あれ・・・・ 何恥じらってるんだよ・・・・オレとおまえの仲だろうが? おい・・・」
ヒース「なに泣いてるんだ・・・・・え?」
イーヴ「ブッチに誘惑されそうになったんだ・・・」
イーヴ「初めての人はヒースって心に決めてたのに・・・・」
ヒース「どうして? あいつはいい奴だよ。別にいいじゃないか?」
(イーヴ、首を振る)
ヒース「わかったよ もう泣くな・・・ 愛してるよ イーヴ」
イーヴ「オレ・・・・準備してくる」

・ P18 「作品リスト」
・ P19 「プレゼント付 QUIZ part3」
・ P20 「スタッフ 真昼間のパーティー」 スタッフと今回の助っ人の紹介
・ P21 「INFORMATION」 おたよりや原稿の募集
「下宿人の会は第2期まで公認ファンクラブとして活動してまいりましたが、第3期 よりは吉田秋生協力ファンクラブとして活動してゆく予定です。これを期に新しい企画も どんどんやってゆく予定ですので、会員のみなさま、よろしくお願いいたしまする」、 という断り書きがあります。
・ P22 「CONTENTS」「こじんつうしん」「へんしゅうこうき」
・ P23 The J Geils Band の Sanctuary の歌詞


NO.5
発行日 1980年7月1日
発行部数 250部

表紙を入れて28ページ
・ 表紙の次のページに、Simon&Garfunkel "America" の歌詞と訳詞
・ P3「CONTENTS」
・ P4、P5「The Interview」
筆記質問、回答。以下、抜粋

Q. ペンネームの由来は?
A. 昔の彼の昔の女の名。
Q. よく読む雑誌は?
A. ポパイ
Q. 部屋にはってあるポスターは誰の(もしくは何の)ポスターですか?
A. ジュリーとビョルン・ボルグと東京芸大の芸術祭のポスター。

・P6、P7 「Character's Index」 
吉田作品のキャラクターがそれぞれどの作品に登場しているかを図示。
最後の囲みで、吉田秋水というペンネームで少コミのまんが研究生に 応募した「猫」という作品を紹介。

・ P8〜P10 「FREE TALKIMG」 会員からのおたより
特別おもしろかったので「おさびしやま」さんからのおたよりを全文掲載します。 (おさびしやまさん、掲載許可ありがとうございました。)

こんにちは。中三の一学期の昼休みだったでしょうか。私が友人から少コミを 借りてきて一人でさわいでいると友人がやってきて
友人K「うーん。足が短いねえ、この人(とヒースをさす)」
私「そ、それはねえ、この人はリアルに描いてあるからであって手抜きとかそういう わけではないの。だって変に足が長すぎるとヌードになったときつりあいがとれなくて みにくいのよね。ほらきれいでしょう。」
と表紙のカラーヌードを見せました。Kはしばらく見つめて
K「この手ぬぐい、たしかに不自然よねえ。」
私「ない方が美しいと思う」
K「やあねえ問題は手ぬぐいの大きさと置いてある場所よお。」
私「どうして?」
K「だってこんな小さい手ぬぐいかけたってないものと同じようなもんだわ。 だいち、なんでおしりの上に手ぬぐい置かなきゃなんないの?」
私「お腹が冷えないように・・・じゃない?」
K「アメリカじゃお腹を冷やさないようにおしりに手ぬぐい置くの?」
私「・・・・・」自分があまりにばかなのに絶句。
K「この人おしりにおできでもあるんじゃない。それで手ぬぐいでむしぼししてるんだ。」
私「そんなばかな。だいたい少女んがの主人公におできなんて冗談じゃないわ。」
K「あら、この人のマンガはリアルなんでしょ。それにあんた、この人(秋生さん)は ただのマンガ家じゃないって言ってたじゃない。ただじゃないだけのことはあるわねェ。」
彼女はヒースをおできもちと決めつけてしまいました。今度会ったら「人間宣言」を 読ませようと思っています。

他には、大阪の南津守のフロンティアランドという所で毎月やっていた フリーマーケットの紹介のおたより、「みんなで本をつくろう会」というサークルの会員募集も出ています。

・P11、P12 「らくえんシリーズ特集」 会員からのおたよりからこの項独立
□従来のものはだいたいが男と女がくっついてハッピーエンドでおしまいだったんですよね。 別にそれはそれでいいと思うんです、夢物語で。だって少女マンガは夢物語なわけでしょ。しかし まあ、そればっかりじゃあ、あきますけれど、うん、たしかにあきてきましたね。若いというか 幼いうちはいいけど私ぐらいになりますともっと現実をというか内容の深いものを読みたいんです よね。それをですね、秋生くんがやってくれたのですよ。「はるかな〜」や「カリフォルニア」で。 ぱふ5月号の今月の話題作に「はるかな〜」がのってました。

・P13 上半分「ひとことTALKING」 会員がアンケートに書いたものの中からおもしろい ものをまとめた
□「ぴったしカンカン」で番組の最後に字幕のスーパーで2、3週に一度、演出「吉田秋生」 というのが出るのにお気づきだろうか。昔映像技術やらをやってらっしゃったとかのうわさを 聞いていたので即TBSにTELしたらムシされてしまった。
(スタッフより)あれは全く別人だそうです。あしからず!
(管理人注 この話、何回もききますね)
□飲んでますか? ウーロン茶 これがもう忘れられない味なんですよね!
(管理人注 当時は今みたいにあたりまえのものではなかった、ということ)

 下半分「NEWS!」
その1。 別コミ7月号に告知があったそうです。
「カリフォルニア・ストーリー」のLPレコードが7月10日、日本フォノグラム(フィリップス) から発売された。グループ名は不明だがオーストラリアのアーティスト。
A面 「カリフォルニア・ストーリーのテーマ」、「ビッグ・アップル」(歌はサム)と、 「ヒースのテーマ」、「イーヴのテーマ」(歌は、作曲も担当しているケント・イボット)
B面はプレーヤーのオリジナル曲
(管理人注)このページを見ていただいたKent Ibbottさんからメールを いただきました!しばらくの間音楽はやめていらして何年か前にまた復活された そうです。 Kentさんのサイトの"Media"セクショ ンの”ケント・ディスコグラフィー”のところでCalifornia Storyが紹介されています。 ジャケットが見られますよ!

その2。吉田秋生のサイン会が7月29日に行われる予定。

・ P14、P15 「女性週刊誌ふう占いコーナー」 
選択肢の得点を足して、どんな仕事だったら金になるかを占う。テリー、アレックス、 ルーファス、サルくん、の4タイプに分かれる。


・ P16〜 P18 「特集 New York」
P16にはニューヨークの地図と、カリフォルニア物語の舞台SOHOの説明。
「SOHOは、South of Houston の略で、19世紀初頭から高級住宅街ー商業地域ー 倉庫街という変遷をたどり、リトルイタリーと隣り合わせのため一時はマフィアの 死体置き場だったこともあるといわれるが、いまやアーティストの住むロフト、 モダンアートのギャラリー、ファッショナブルなブティック、レストランなどが 点在する、ニューヨークでも最もコンテンポラリーで芸術的雰囲気にあふれた街と 化している」そうです。ここにある文章は草思社発行「ニューヨーク人間図鑑」による ものだそうです。

・ P19 「ヨナ書」
ヨナ書の第2章から最終章。第1章はふざけていたが、この号ではマジ。

・ P20、P21 「パロディ・カリフォルニア」 Part 4
(前回の次のページ。)

ヒース「な な なんだありゃ?」
イーヴ「ブッチだよ・・・・きっとそうだ」
ヒース「ブッチか? いやがらせのつもりかよ・・・悪い冗談だぜ・・・つ、疲れてるのに・・・」
ブッチ「へっへっへっへっへっへっへっ」
ブッチ「よう! お疲れさま! 朝早く起きられただろう?」
ヒース「やっぱりおまえかあれは・・・・・くそっ」
ブッチ「ちょうどいいめざましになっただろう? え? それともまだお楽しみだったかな?」
ブッチ「オレはおまえがだれと寝ようがかまやしねえ・・・おまえの勝手だ 好きにするがいいさ」
ブッチ「ただあいつと寝るんだったらオレの知らないとこでやってくれ」
ヒース「へえ〜〜、やっぱりやいてるってことか」
ブッチ「・・・・・・」
ヒース「おまえに指図されるおぼえはないね」

・ P22、P23 「アンケート結果大発表」 第3期入会申込書の中のアンケートの結果
・会員総数 131名、平均年齢17.87
・吉田秋生以外の人気まんが家ベスト10
萩尾望都、竹宮恵子、大島弓子、青池保子、森脇真末味、三原順、倉多江美、木原敏江、 高口里純、樹村みのり、の順
・吉田秋生ファンクラブの会員が所属している他のファンクラブ
"さんるーむ(竹宮恵子)"(26名)、"青池保子と息子の会"(8名)、 "Street Kid(高口里純)"(6名)、"東映アニメFC"(6名)、"高橋葉介FC"(5名)

・ P24 上 「INFORMATION」 おたよりや原稿の募集
・ P24 下 「QUESTION」 
Q. 協力FCとは?
A. 公認FCといいますと、スタッフや会員などが何か問題を起こした場合、秋生くんや 編集部にメイワクがかかります。 このFC活動は、あくまでも会員の自主性で行ってゆくものです。

・ P25 「けんしょうつき くいず ぱあと4」
・ P26 「FROM STAFF」
・ P27  Billy Joel のYOU MAY BE RIGHT (ガラスのNew York)の歌詞


おまけ
SARAH NO.2 、という 1980.8.12 に出たペーパーもハラさんにいただいたので ご紹介させていただきます。

「サイン会レポート」
7月29日の2時から4時まで、新小岩の第1書林というレコード店とくっついた本屋さんでサイン会が ありました。当日はカリフォルニア物語のレコードか単行本を買うと整理券がもらえたそうです。 商店街の中にある本屋の外のテーブルでサインをしていたので、買い物の主婦達がめずらしげに 行列を見ていたそうです。秋生くんのひとことカンソーとして「パンダと同じ心境でした」と書いて あります。(管理人注: しもママさんのスクラップにあった記事によると、これは1980年度少女 まんがフェアの中の1つの催しだったようです。多分別コミのコラムで、「少女まんがフェア 報告」というのがあり、その中にもこのサイン会の報告があります。)

「COFFEE BREAK」 おたよりコーナー
□私、この前サンプラザでやったJ ガイルズ・バンドのコンサートに行ってきたんです。 もう最高にのれたの!! ほんの数曲しか彼らの音楽は知らなかったんだけれど、ピーター・ウルフ がすごく踊りが上手で、あのジャンプ力にはただ、ひたすら頭が下がるわ。
□秋生さんが奇想天外に書かれた作品(アカプルコ・ゴールド)かなり倒錯していた。 奇想天外からアリス出版(あの著名な自動販売機用の本を作ってる大もとじめ)に移る人が 多いらしく、秋生さんにはそうなってほしくない。
秋生くんにメイワクをかけてはいけないので協力FCとなったと説明があったが、 吉田秋生FCの名で誘拐事件が起こるとか、そういう事態を想定してのことだろうか。


NO.6
発行日 1980年11月10日
発行部数 300部

表紙を入れて28ページ
・ 表紙の次のページに、Bob Dylan "Sara" の歌詞と訳詞
・ P3「CONTENTS」
・ P4〜P6「The Interview」
少女まんが研究会誌「der Flügel」4号に載せるために1978.8.28に小学館に おいて録ったインタビューの再録です。出席者は吉田秋生、担当の毛利さん、der Flügelと 下宿人の会のスタッフ達です。以下、抜粋。

スタッフ: 秋生さんって写真で見るのとだいぶ違いますね。大人っぽいですねー。
毛利: 大人ですョ。
スタッフ: あのォ、多い質問で、秋生さんは男じゃないかっていうのがあるんです。
毛利: 男じゃないんですか?
スタッフ: 名前が"秋生"だからねー。
毛利: "あきお"って読む人いるでしょう。
スタッフ: ええ。で、マンガも少しかわっているカンジだからかな?

スタッフ: イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」ってありますでしょ。会員の 方から質問があったんですけど、あの曲によって彼らは何を伝えたかったんだと思いますか?
秋生: 私があの曲にすごくキョーミを持ったのは、あの中で、酒場のマスターが"69年 以来スピリットはおいてませんよ"って言うでしょ。そのスピリットっていうのにひっかかったんです ね。スピリットってお酒ありますでしょ。あのスピリットっていう言葉にかけて、69年 以来、魂っていうか精神っていうか、それがないって言ってるんじゃないかって、どっかの雑誌に 書いてあったんですよ。で、あっ私も思ってたって喜んだんだけど、それがすごく印象に残ってましたね。 あの曲に関しては。

スタッフ: カリフォルニアのキャラクターやルーファスなんかはデビュー前からできてたん ですか?
秋生: ええ、前からありました。
スタッフ: じゃあ未発表の彼らが出てる作品なんかはあるんですか?
秋生: イヤー、そーいうのはないですね。描いてないんですよね。全然。
スタッフ: じゃあ、描きはじめて最初に投稿したのが入選したんですか?
秋生: そーです。
スタッフ: それはどんな作品でしたか?
別のスタッフ: 「猫」!
秋生: あっ、よく知ってる。えーミステリーを描きまして、で、週コミに送ったんですよね。 しめきりがちょうど近かったのですぐ結果が出るだろーと思って。したら電話がかかってきたらしいん です。私、その時家にいなかったもので、話がピーマンなんですよね。母が電話に出たらしいんですけど、 "何か懸賞にオマエあたったよ"とか言うんですよ。私はその時、夜中の2時頃泥酔して帰ってきたものだ から"あ、ホント懸賞かあ"と思って。その時ちょうどレディーボーデンの懸賞に出してて、すごいキタイ してたから。あたったと思ったら翌日。ちがうんですよね、話が(笑)。
スタッフ: それは本にのらなかったんですか?
秋生: ええ、のらなかったです。
スタッフ一同: 見たかった〜!!
秋生: あれはね、恭一君をメガネなしで描いたの。
スタッフ一同: え〜っ 見たいっっっ!
秋生: でも全然絵が違うんですよね。今でもだけど、もっとひどいの。
(管理人注:リュウの個人SF史によると、努力賞の賞金は3万円で、それを分割で くれたそうです。6ヶ月で、源泉徴収引いて4500円ずつ。賞金だと思っていたが、研究費 だった。)

スタッフ: 「マダム・ブレルの人魚」のときは、ブッチはホモでしたね?
秋生: 全然違う話なんですよ。あの話は、あの3人である必要はないんですよね。 同じ人間が出てるからどーしても、どっかつながるんじゃないかと思ってる方が多いんですけど。
スタッフ: じゃ、「ホテル・カリフォルニア」で「ホモじゃない」って否定してるのは本当なんで すね?
秋生: ええ、そーです。
スタッフ: ただ単に名前が・・・・・
秋生: ええ、あの3人は全然ホモッ気がないんですよね。
スタッフ一同: おもしろくない!
秋生: 言うだろうと思った。

スタッフ: えー、今までで吉田さんはカリフォルニアシリーズを120ページぐらい書いて らっしゃるんですけど、彼らのストーリーだったら何ページぐらい書けます?
秋生: 結末はもう頭の中にあるんですよね。
スタッフ: ひぇ〜っ。今度12月からまた連載を始めるでしょ? 何回くらい?
秋生: えー一応、3回。できたら4回くらいかなーって毛利さんが言ってるんですけど。

スタッフ: じゃ3回か4回かはわからないけれども、それで結末になるんですか?
秋生: まだ結末じゃないです。

スタッフ: あのー、やっぱり最後はイーヴが死んじゃうんですか? だって吉田さんの好きな 歌とか映画とかって、みんなラストは死んじゃうヤツばっかなんだも〜ん。
秋生: 死なせてもいいですよ。

スタッフ: 野球は好きですか?
秋生: プロ野球はあんまり好きじゃないけど高校野球は好きです。
スタッフ: 秋生さんが南海ファンだっていうのに特別な理由あります? 
秋生: そりゃやっぱし「あぶさん」!
スタッフ: キャー やっぱり! 絶対そうだと思ったんだ!
秋生: 「あぶさん」って本当にいるかと思ってたんですよね。
スタッフ: あ、他の登場人物はみんないるから。
秋生: 話したんですよ。「南海にいる安武って人が1度みたくてテレビ見てんだけど、どーも 出てこない」って堂々と言ったんです。すごいバカにされたわ。

スタッフ: 他の人のマンガを読むのは好きですか? 
秋生: 最近あんまり読んでないんですよ。昔は手塚治虫さんとか石森章太郎さんとか読みました。
スタッフ: 少女マンガでは好きな作家はいないんですか?
秋生: 今好きなのは大島弓子さん。
スタッフ: 大島さんだったらコミックに描いてらっしゃるから、小学館内なんかで会うことありま せん? 
秋生: いつかパーティーでお会いしました。すごいステキな方で、大人っぽくてハハーッていう 感じで。
スタッフ: 弓子さんって、自画像にそっくりだっていうウワサが・・・・・・。
秋生: イエ、そんなことないです。髪をまん中でわけてらして、で、あんなゲジゲジじゃない ですよ。もっとずっときれいでねー。全然イメージ違いますよ。

 (この後、吉田秋生の別コミに載った写真の話になる。犬といっしょに写ってるカラー 写真があったそうです。その他この時点で別コミに出た写真は、「名香智子と対談」の時、「宇宙 からのメッセージレポート」の時、およびアメリカへ行った時のもの。)

・P7、P8 「作品リスト&コミックス未収録作品紹介」 
(管理人注 ここで紹介されているコミックス未収録作品は、その後すべて収録されました。)

・P9〜P12 「FREE TALKING PART I」 会員からのおたより
この号のFREE TALKING欄でおもしろいのは他のファンクラブの募集が出てること。
まず、高口里純公認FC Street Kid が第4期会員募集をしています。
次に、エーベルバッハ親衛隊 SACHLICHKEIT、略称 ESS
誘い文句は「当E.S.Sでは年中無休で隊員募集をしております。入隊資格は少佐に対する愛情 だけ。さあ あなたも少佐の部下に!!」。この下に西ドイツ(当時)の国旗を頭に立てた少佐が後ろ 向きで「きさまらしょうこりもなく隊員募集なんぞしやがって アラスカ行き!!」と言ってる絵と、 「フン アラスカがこわくてFCがやれるか」という隊長のお言葉。
ESSの隊員募集はP11右下にあり、左上には「ヒース 私を見て」と身体をふるわせてる白鳥と 後ろを向いて髪を逆立ててるカリフォルニアのヒース、のカットがあります。
そして、森脇先生の承認つき「森脇真末味FC」の会員募集。
この連絡先は、 下宿人の会のスタッフの一人で、その縁で下宿人の会の会員だったハラさんが、やがてここの 会誌「桃色軍団」の発行人となって今に至っているわけです。いただいた「桃色軍団」 創刊号は1981年2月の発行。はじめから28ページ、300部発行と、なかなかの勢いです。

・P13〜P15 「きゃらくたぁえこひいき」 会員が自分の好きなキャラについて 書いたもの。
会員No.33の人のごひいきは「スケベノホマレ」。「いつかはあの高みへと飛ぶだろう」という フレーズも盛り込んだ詩と、イラストが紹介されています。イラストは、「トーマの心臓」の冒頭 近く、トーマとその父が野原を散歩している見開きのイラストがベースで、画面右上の空を、恭一君 を乗せたスケベノホマレが飛び、その股間周辺が点線のマルで囲んであります。左下にいるトーマの父は ステッキで、そのマルのあたりを指しています。画面の中の文は、
「どうして、お父さん 神様はあんな所をマルで お囲みになったの? ひとりでは見ていられないように。
それはあんな所を拡大すると面白いというしるしだよ」  

・ P16、 P17「FREE TALKING PART II」 イーヴについてのおたよりが多かったので まとめて掲載しています。別コミ8月号でイーヴがヒースに告白してファンの期待が高まっていたよう です。

・P18〜P20「Dancing American」 アメリカのディスコやミュージシャンについての情報。

・P21 「INFORMATION」 第4期会費納入のお願いと、原稿募集

・P22、P23 「パロディー カリフォルニア」 

ブッチ「勝手にしろ!」
ヒース(イーヴに) 「もう忘れちゃえよな? 気にすることはないんだ。楽しくやろうぜ。人間なんだからいろいろ 悩む、それだけのことだよ。 イーヴ、すべてうまくいくよ。いい方法があるさ。ハハハ」
(何日か後)
ブッチ「よう、イーヴ、ヒースはいるか?」
ブッチ「なんだよおまえ、なんでそんなとこに・・・。やつ中にいるんだろう?」
イーヴ「い、い、いないよ! いない! 入っちゃだめだ!」
ブッチ「何かあるな・・・・くさいぞ」
イーヴ「な、何もないよ、ないったら」
ブッチ「あやしいな、どれどれ」
イーヴ「の、のぞく気なの?」
ブッチ「うっ!? スゲ〜〜」
イーヴ「やめなってば ブッチ!」
ブッチ「だっておまえ すげえぞ 見てみろよ ハハハ」
イーヴ「よせったら! のぞきなんて悪趣味だな」
ブッチ「? あれ? オレ達結局ふられたってわけ?」
イーヴ「そうだよ・・・・アホッ」

・ P25 「プレゼント Quiz 5」
・ P26 「FROM STAFF」
・ P27  J Geils Band のCome Back の歌詞と訳詞


(管理人の昔話)
萩尾望都は当時SF中心に書いてましたが、この年はプチフラの創刊号に 「訪問者」を書きました。ずいぶんコミックの会員のおたよりの中で「風の歌うたい」と 比べられてた「百億の昼と千億の夜」は1975年の作品です。ヒグラシさんは、顔はシッタータに 似てユーリ顔してる。着てるものは阿修羅に似てます。阿修羅といえば、伊部さんがアッシュに 阿修羅のようだ、と言ってましたね。かわいい大水青さんの髪型も、「銀の三角」のマーリー に似てると思います。
この年はあの「日出処の天子」が始まりました。80年代前半のLaLaほど粒揃いの作品を 連載してた少女マンガ雑誌はありません。85年頃、そのようなことをLaLa宛ての葉書に書き ましたが、いい年をした女に大受けしてるのはいけないと思ったのか、その直後からターゲット 年齢を下げたようで、読むものがなくなってしまいました。残念です。
山岸凉子の「悪夢」が載った「マンガ少年」には竹宮恵子の「地球へ・・・」の最終回、 手塚治虫の「火の鳥」乱世編も載っています。「地球へ・・・」の最終回、総集編では大幅 に書き直されてずっとわかりやすくなっていました。
ドラッグで命を落とした人はその後もたくさんいるでしょうが、リヴァー・フェニックスも そうでしたね。
映画の話になりますが、ブッチのモデルと言われてる「いちご白書」の主人公の男の子とは、 ブルース・デービソンです。その後目だった活躍はないですが、テレビでも見たことあります。 最近ではX-Menにも出てるようで、一応俳優は続けているわけですね。「愛の嵐」といえば、 シャーロット・ランプリングと、昨年亡くなったダーク・ボガードが主役でした。ダーク・ボガード といえば「ベニスに死す」・・・・・・と話が脱線しそうなので、この辺で。

 

追加情報

「ずいぶんコミック」NO.6 に載ったインタビューは元々der Flügel 4号に載せるための ものでした。しもママさんに見せていただきましたが、「ずいぶんコミック」の方には載っていない 部分がありましたので、ここで紹介します。しもママさん、ありがとうございました。

スタッフ: カリフォルニアはいかがでしたか?
秋生: カリフォルニアよりもニューヨークの方が良かったです。
スタッフ: 話は変わりますが、高校時代から漫研に入っていたのですか?
秋生: いいえ、入ってなかったです。
スタッフ: それではご自分でずっとお描きになっていたのですか?
秋生: ええ、そうですが、高校時代は漫画描かなかったです。

スタッフ: 恭一君の私生活ものはお描きにならないのですか? 描いてほしいです!
秋生: あ、そうですか? 考えておきます。
スタッフ: 「楽園のこちらがわ」は他の作品に比べますとイメージが違いますが、あれは 担当さんからの注文なのですか?
秋生: いいえ、自分の考えで描いたものです。今までに担当さんに「こんなものを描きなさい」 と言われた事ありません。言われてもきかない人なのですよねー。
スタッフ: それで、あの中にガリ勉についての理論がありますがあれは秋生さんの考えですか?
秋生: いいえ、友人の意見なんです。

スタッフ: 「悪魔と姫ぎみ」の姫ぎみは秋生さんですよね?
秋生: はい。
スタッフ: あれ最高におもしろい。秋生さんの作品で、谷村さん風のせりふが 受けているんですよ。
秋生: あ、そうですか。私、谷村さんの大ファンなんです。
スタッフ: 秋生さんは、作品ができる時は、こういう様な物を描こうと思ってお描きになるの か、シーンがでてきて描いてしまうのか、どのようにしてですか?
秋生: セリフが出てくるんですよね。ですから、セリフで動かしてしまう感じです。
スタッフ: 月に何枚描くのが理想だと思われますか?
秋生: 1枚。
スタッフ: 吾妻ひでおさんのやけくそ天使・・・・
秋生: あれは絶対におもしろい!

スタッフ: 漫画を読んで泣いたことありますか?
秋生: 漫画ではありませんが「フランダースの犬」を読みますと泣きますねえ。犬がかわいそう で。 動物が虐待されるのは嫌ですねえ。
スタッフ: 月並みの質問ですが、何に一番なりたかったですか?
秋生: 男になりたかった。医者になりたかったんですよね。小さい頃お医者さんごっこが 好きでして、(・・とここでみんながニタ〜と秋生さんを見たので)そんな意味じゃなくて注射 したりするのが快感でした。


「ずいぶんコミック」の時代

「ずいぶんコミック」の時代 1979年

「ずいぶんコミック」の時代 1981年