2003年3月2日(日)、午後6時、渋谷のオーチャードホールで念願だったAMP(アドベンチャーズ・イン・モーションピクチャーズ)の「白鳥の湖」を見ました。テレビでは見たことありますが必ず日本に来ると信じて待つこと3年あまり、それもトリプルキャストのオデットをオリジナルキャストのアダム・クーパーで見ることができて大満足!!
アダム・クーパーの踊るオデットは『リトル・ダンサー』の最終シーンで見た方も多いと思います。プログラムに出てたアダムの言葉で「あんなに苦労してバレエ・ダンサーになった少年が大人になって古典の『白鳥の湖』の王子を踊っていたのではつまらない」というのがありましたがものすごく納得しました。私は古典の『白鳥の湖』も好きだし、あの中の王子様も大好きですよ。でもクラシック・バレエの他の作品と同じで主役はあくまで女性のオデット、王子様はそのサポートです。だからリトル・ダンサーの未来は主役のオデットであるべきだ、というわけです。
この作品の圧巻はなんと言っても男性が踊る白鳥達。クラシックの振り付けだと退屈に感じることもある白鳥の群舞シーンも上半身裸の男性達が踊ると「白鳥のハッテンバ」風で迫力満点。酒場の外に座った王子の背景にオスの白鳥達が浮かび上がるシーンは、王子の妄想のように見えてホモセクシュアリティを暗示しているように感じました。
「禁断の」と言うとスキャンダラスな響きがあるし、「やおいバレエ」と呼びたいくらいゲイ的雰囲気はあるのですが、そんな風に茶化すのが申し訳ないくらい芸術性、完成度ともに高い舞台でした。『白鳥の湖』を新しい解釈で振付けていて、振付家の意図が観客によく伝わってくる、久々に感動したバレエです。10年以上前にロイヤル・バレエの「メーヤリンク」に感動したのもやはりその「演劇性」でした。イギリスのバレエの持ち味でしょう。
アダム・クーパーは中高の鋭角的顔立ちが鳥の役に向いてると思いますが、クラシックで言えばオディールにあたるストレンジャー役はジーンズ姿のスケコマシ風なキャラクターで、こちらも大柄な体躯がよく生きています。トリプルキャストの他の2人もオデットの方は遜色なく踊れるでしょうが、ストレンジャー役はアダム・クーパーにかなわないのではないでしょうか。そういえば、去年スターダンサーズバレー団との共演のときもテレビで見たAMP「白鳥の湖」でも胸毛があったのに、今回はありませんでした。どうして?
王子役はベン・ライトよりテレビで見たスコット・アンブラーの方が品があって好きです。ロシアのバレエだったら王子様の役は顔立ちからして「王子様」という人しか踊らないんですけどね。ベン・ライトも初演から踊ってる良いダンサーのようですがあまり背が高くなくてお尻が大きい印象。幕間にトイレで並んでたら「王子役の人は背が低くてかわいそうな感じね。ステテコで踊ってるみたいで」と話してるのが聞こえました。ステテコとは!
『白鳥の湖』のスペインの踊りはバレエ音楽の中で一番好きなものの1つで、テレビで全幕を見る前にマシュー・ボーンがどんな風に変えてるのか楽しみにしてましたが、これだけは普通の『白鳥の湖』の舞台にそのまま入れても違和感がない振り付けなのが不思議です。クラシックと同じようにフラメンコ風に踊るのがそのままこの作品にピッタリはまるからなのか、この部分だけは振付家もクラシックのものが気に入っていて変えたくないのか?
プログラムにも書いてありましたが、この舞台を見ながら昔の映画をいくつか思い浮かべました。特に最後のシーンで王子を攻撃する白鳥達は『鳥』。王妃様は昔の映画の中のグレース・ケリーのようだし、王子とストレンジャーのダンスは『バレンチノ』の中の男同士のダンスのよう。個人的には白鳥達のピラピラしたパンツやベッドの下から出てくる白鳥達は猿之助の歌舞伎を連想させるし、当然ながら「白鳥のニジンスキー」も思い出しました。
ここは
Bunkamura の英語のページですが、日本語の方より舞台写真がたくさん載ってます。
Swan Lake in
Tokyo は、アダム・マイ・ラヴのペリカンさんの公演レポートです。3月2日夜以外の舞台も見ていてそれぞれ違った感想が書いてあり感動しました。
2003年3月9日 とみた@管理人
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