初心者のための
ディベートQ&A
<第5版>

抜粋

2.1 教育ディベートってどんなもの?

 ティーチング・アシスタントのヒロミは、ゼミで、「今日は、ディベートの練習のために、『日本政府は、サマータイム制度を導入すべきである」という論題を使って、ディベートの練習試合をする。全員が、肯定側と否定側で1度ずつディベートをしてもらう。ジャッジは、空いている学生でやる。試合の順序は、こうやる…」とディベート練習試合の説明を始めました…
 これまで述べたディベートは、現実の意志決定を適切に行うために実社会で行われるものです。これに対し、ディベート能力を獲得するための訓練を目的として行われる競技形式のディベートがあります。これを「教育ディベート(academic debate)」といいます。教育ディベートは、教育効果を高めるために特別に設定された論題を使用し、特別に設定された試合形式を用いて行われます。

(1) 教育ディベートの特徴

 教育ディベートは、①あらかじめ設定された論題(proposition)を用い、②肯定側(affirmative side)、否定側(negative side)の両者の立場に分かれ、③一定のスピーチ時間、順番等の進め方の試合形式(format)に従ってディベートを行うものです。

 このような教育ディベートは、アメリカ、イギリス等で様々な形態で行われており、日本では、主に、大学の英語研究会(ESS)等で、英語により、アメリカのディベートの形態を取り入れて行われてきましたが、近年では中学校、高校教育にも取り入れられつつあります。大学の授業や課外活動でも、教育ディベートを取り入れられています。

(2) 教育ディベートの種類

① 論証重視型ディベート(ポリシーディベート)

 ディベートの試合の前に十分な時間的余裕(数週間~数ヶ月)をもって論題を発表しておき、その論題に対する十分なリサーチとともに、証拠資料(evidence)を明示的に用いた論証に重きをおくディベートです。米国の大学ディベート(NDTスタイル)で多く行われ、日本の大学の英語ディベート、日本語ディベート、中学、高校生のディベート大会で多く行われているディベートです。フォーマットにはいくつかの種類があります。

② 即興性重視型ディベート(パーラメンタリー・ディベート)

 ディベートの試合直前の数十分間前に論題を示し、即興的に行うディベートです。証拠資料による論証には重きを置かず、即興で論じる力を競います。イギリスや、英連邦諸国で多く行われているディベートで、近年、日本でも大学生の英語ディベートで行われています。フォーマットは、複数あります。

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