本書の前半は、三大作図問題の不可能性について述べる。後半は、5 次方程式の解の公式は一般にないことのアイデアと、 ガロア理論の応用を紹介する。
「第2章 体」の初め、p.24 に、こんな注がある。
1) 可換環論を使わずに議論しているので,可換環論をご存じの読者にはまどろっこしいかもしれない. まず注意 2.31 をご一読いただいて,その内容がすっと理解できるようであれば,その続きから読み進めていただいても大丈夫である.
では注意 2.31 を読んでみよう。本書の p.49 から引用する。
可換環論の初歩をご存じの読者に対しては,本章のここまでの内容は次のようにまとめることができる (この部分がちんぷんかんぷんであっても,本書の続きを読むのに差支えはない).
`K sub CC` は体,`alpha in CC` とし,環準同型
`varphi : K[x] rarr CC`を `varphi(f(x)) := f(alpha)` により定義する.`CC` は体なので `varphi` の像 `varphi(K[x]) = K[alpha]` は整域であり,よって `"Ker"(varphi)` は素イデアルである. 体上の 1 変数多項式環 `K[x]` はユークリッド整域なので単項イデアル整域であり,素イデアルは既約元 `f(x)` により生成された `(f(x))` か,あるいは 0 イデアル `(0)` のみである. `"Ker"(varphi) = (0)` となるのは `alpha` が `K` 上代数的でない場合に限られるので, `alpha` が `K` 上代数的なら,`"Ker"(varphi)` は `K` 上の既約多項式 `f(x)` が生成する単項イデアルとなる.このとき単項イデアル `(f(x))` は極大イデアルとなるので `K[alpha]` は体となる. すなわち `alpha` が `K` 上代数的なら `K[alpha] = K(alpha)` は `K` と `alpha` を含む最小の体である.
ちんぷんかんぷんである。まあしかし、がんばってみよう。まず、環準同型とは何か。中島匠一「代数方程式とガロア理論」を見てみた。 ここの付録 A を読んで、 わかったつもりになった。なお、`K[x]` は、本書の p.28 にある定義 2.7 に書かれている。
`K sub CC` が体,`alpha in CC` とするとき,`K` の元と `alpha` を材料に,足し算引き算掛け算を自由に組み合わせて作ることができる数全体の集合を `K[alpha]` と書く.(後略)
つぎに、「整域」という用語であるが、これも中島の「代数方程式…」や、永田雅宜(代表著者)の「理系のための線型代数の基礎」を見て確認した。
ただ、`CC` は体なので…
で始まる箇所の理屈は、まだわからない。そのまま次に進む。
`"Ker"(varphi)` と「素イデアル」について調べよう。`"Ker"(varphi)` については、やはり「代数方程式…」にあったが、「素イデアル」については「代数方程式…」には記載がない。私が持っている他の本ではどうか。 山﨑圭次郎「基礎代数」を見てみると、なるほどこういうことかとわかった。 ほかには、図書館から借りた本では、 水野弘文の「情報代数の基礎」やロットマンの「ガロア理論」にも記載があった。
さて、ユークリッド整域と単項イデアル整域についてはどうか。「基礎代数」にはないが、「理系のための…」にはあった。永田雅宜おそるべし。
ついでに、本書のユークリッド整域なので単項イデアル整域であり
については、
「理系のための…」で証明されている。
最後に「単項イデアル」と「極大イデアル」について調べる。単項イデアルだけなら山﨑の「基礎代数」や永田の「理系のための…」、中島の「代数方程式…」にある。極大イデアルの定義は、 手持ちの本では見つからなかったが、水野の「情報代数の基礎」やロットマンの「ガロア理論」にはあった。
数式表現は ASCIIMathML を、 数式表現はMathJax を用いている。
書名 | ガロア理論 |
著者 | 木村俊一 |
発行日 | 2012 年 11 月 15 日 初版 1 刷 |
発行元 | 共立出版 |
定価 | 1700 円 |
サイズ | |
ISBN | 978-4-320-01994-2 |
NDC |
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