「はじめに」から引用する :
本書では熱力学の独特な考え方にも十分触れることができるように, 前半の部分では分子論てきな考え方は入れないで,後半の統計力学の部分との間にははっきりした境界をおくことにした. それと同時に統計力学の部分では前半の記述を参照しなくてよいように配慮しておいた.
熱・統計力学を真面目に勉強したいと思って借りたが、借りただけで何も読まずに返却期限を迎えてしまった。 もう一回出直したい。
思い出してみると、私が大学で初めて学んだ熱力学は、物理の授業ではなく化学の授業であった。 化学の授業でどうして物理みたいなことをやるのだろうかと思ったが、 物理化学という分野があることを大学に入って知った。 とにかく、熱力学では圧力 `P` や体積 `V`、内部エネルギー `U`、仕事 `W`、熱量 `Q` が出てくる。 ここまではまだいいが、さらにエンタルピー `H` やエントロピー `S`、ヘルムホルツの自由エネルギー `F`、 ギブスの自由エネルギー `G` が登場して、何がなんだかわからない世界になるのだった。
一つだけ、本書の例題から計算問題を引用する。p.79 の例題 1 である。
常温(15 ℃)において,酸素分子 O2 の速さは約 470 m/s であり, 二酸化炭素分子 CO2 の速さは約 390 m/s であることを示せ.
[解] `T` = 273 + 15 = 288(K) だから,分子の速度の 2 乗平方根は`sqrt(bar(v^2)) = sqrt((3RT)/M) = sqrt((3times8.314times10^7times288)/M)` (cm/s) `=2700/sqrt(M)` (m/s)
ここで、`R` は気体定数、`T` は絶対温度、`M` は分子量である。この 107という数字は何か。
姉妹書の例解 熱・統計力学演習の類題を調べてわかった。107を 103 と
104に分ける。103 のほうは、 g を kg に換算するための係数である。
というのは分子量 `M` の単位は mol であり、mol は単位容積当たりのグラム数であるから、
MKSA で統一するために g を kg に直す必要がある。104 のほうは、
m を cm に換算するための係数である。しかし直後の計算で cm を m に再度直しているのだから、
104 のほうは不要だったのではないかな。ともあれ、計算式はできた。
酸素分子の分子量は 32 、二酸化炭素の分子量 46 であり、それぞれの値を入力すると答が出る。
本書の解答ではそれぞれ 470 (m/s) 、390 (m/s) となっていて、有効数字が 2 桁となっている。
これは分子量の有効数字から妥当であろう。下記の計算は無駄に数字を計算してしまっている。
しかし、二酸化炭素の場合、計算は395.18… となる。だから有効数字 2 桁なら 390 (m/s) より
400 (m/s) のほうが正しいといえば正しい。これは、上の式の最後で分母の数字 2700 として丸めたためだろう
分子量
速さ (m/s)
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 熱・統計力学 |
著者 | 戸田盛和 |
発行日 | 2015 年 8 月 6 日 40 刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | 2300 円(本体) |
サイズ | A5 版 176 ページ |
ISBN | 4-00-007642-6 |
その他 | 物理入門コース 7、 川口市立図書館にて借りて読む |
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