戸田 盛和 : 力学

作成日 : 2021-09-14
最終更新日 :

概要

「はじめに」から引用する :

本書は大学教養過程において力学をはじめて学習する人のための入門書あるいは参考書であって, のちに物理学科または物理を基礎とする理工系諸学科を専攻しようとする学生のために書かれたものである.

感想

パラパラとめくっていて、あることが気になった。減衰振動がない。外力の加わった強制振動もない。 これでいいのだろうか。だいたい、「おもちゃセミナー(正・続)」本で著者が取り上げた題材に感心した私には、 本書の例は余りにも無味乾燥で残念だ。わずかにおもちゃを感じるのは 「7-4 コマの歳差運動」ぐらいだろうか。 もっとも著者は巻末の「さらに勉強するために」で 本書はとりあげる素材はしぼったが, その範囲ではできるだけ充足しているように書いたので,じっくり読んでほしいと思う. と書いている。減衰振動や強制振動がないのは、取り上げる素材を絞った結果だと思う。

教科書らしいと思うのは惑星の運動と中心力が前面に取り上げられている個所である。 私は学生時代、一般教養の物理学で減衰振動や強制振動は学んだが、惑星の運動は学んでいない( あるいは学んだが忘れてしまった)。この際、本書で惑星の運動を学んでみることにしよう。

p.85 の問題1.をやってみよう。

1.表 4-1 は惑星の軌道,公転周期などのデータを示す. これからケプラーの第3法則が成り立っていることを示せ.

表 4-1 惑星の諸性質(抜粋)
水星金星地球火星木星土星天王星海王星冥王星
軌道の長半径 `a` (AU)0.390.721.001.525.29.519.230.139.5
公転周期 `T` (年) 0.240.611.001.911.929.586.0164.8248.4

(AU) というのは天文単位(太陽と地球の距離を 1 とした単位)のことである。 ケプラーの第3法則は本書の p.80 によれば次の通りである :

惑星が太陽のまわりをまわる周期の2乗は楕円軌道の長半径の3乗に比例する.

ということは、適当な比例係数を `k` とすれば、`T^2 = k a^3` と書ける、ということなのだろう。 そうすると `a` を横軸に、`T` を縦軸にした両対数グラフを書けば、その傾きが `3//2` になっていることを確かめればいいのだろう。Chart.js を使って両対数グラフを書いてみた :

見事に直線上に載っているように見える。この傾きが 3/2 であることを示せばいいのだろうが、 傾きが 3/2 であることを示すにはどうすればいいか。視察で内挿する線をえいやと引いて、 これが誤差も含めて 3/2 といえればそれでいいのだろうか。だいたい誤差をどのように認識すればいいのだろうか。 解答例を見ても「略」となっている。まあそうなのだろうが、私の中では納得できない。 ここはやはり AIC を用いて、傾き 3/2 が所与とされる
`log T = 3/2 log a + log b`
というモデルと、 観測データから計算される最小二乗法による傾き `m` から作られるモデル
`log T = m log a + log b`
のモデルのどちらがより適切かを判断するのがいいだろう。 この計算のため、`a` と `T` の自然対数を計算してみた。

表 4-1 惑星の諸量の対数
水星金星地球火星木星土星天王星海王星冥王星
軌道の長半径の常用対数 `log a`-0.409-0.1430.0000.1820.7160.9781.2831.4791.597
公転周期の常用対数 `log T`-0.620-0.2150.0000.2791.0761.4701.9342.2172.395

しかし、ここで力尽きてしまった。

誤植

誤植にあたると思うのだが、p.56 で(3.97) 式が出たあとで尻切れトンボになっている。 おそらく下線部が追記されるべきだろう。 新しくなった版でどうなっているかは知らない。

十分時間がたつと水平速度 `v_x` は 0 になり,鉛直方向の速度は終端速度

`v_y = - g/ beta`
(3.97)
になる.

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数式記述

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書誌情報

書名力学
著者戸田 盛和
発行日1993 年 5 月 14 日 21 刷
発行元岩波書店
定価2427 円(本体)
サイズA5 版 244 ページ
ISBN4-00-007641-8
その他物理入門コース1、 越谷市立図書館にて借りて読む

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