うどん屋探訪

 香川県人はうどんについてうるさい。誰もが自分こそ一番のうどん通と思っている。誰かが「あの店は美味しい」と言うと別の誰かが「あんな店は」と言う。評論家が東西うどん比べなどと関東と関西のうどんのだしの色についてうんちくを傾けているとき、香川県人はどちらもまずそうなうどんと鼻で笑っている。やっかいな県民である。グルメ番組全盛の今でも讃岐うどんの奥深さに挑戦した番組はない。
 香川県のうどん店は形態の他、その対象とする客で観光うどん生活者のうどんの店に大別される。ふたつのうどんはカレーライスとオムライスくらいの違いがある。この観光うどんと生活者のうどんが相まって讃岐うどんを作っている。


観光で香川県へ来たなら

 観光で香川県にきて名物讃岐うどんを食べようと思ったとき、ガイドブックに載っている店に行くであろう。市内の店は夜に行けるので昼はこんなところに行って欲しい。 


讃岐うどんの奥の深さを知りたいなら

 やはり生活者のうどんだ。他県の有名人が書いた讃岐うどんについての文章で素晴らしいと思ったのが一つある。『ハイファション』誌の村上春樹の讃岐うどんエッセイだ。都会人が3日来ただけでよくこれだけと感心するくらい讃岐うどんの本質をついている。少し引用して氏の言うディープなうどん屋を紹介する。

 3日間うどんを食べ続けた村上氏は「香川県の人々がうどんについて話をするときには、まるで家族の一員について話しているときのような温もりがあった。だれもがうどんについての思い出を持っていて、それを懐かしそうに話してくれた」と結んでいる。(このエッセイ『辺境・近境』1998新潮社刊に「讃岐・超ディープうどん紀行」として載っている)

針の穴場探索の格言

 美味しいうどん屋を発見するのには少々こつがいる。数をこなせば段々とわかってくるが時間のないあなたのために秘伝を伝授しよう。

  1. クレスタの高跳びミニカの餌食
  2. 平凡は珍名に勝る
  3. 大小は肉よりも、天ぷらはおでんよりもつよし
  4. 下手な考え日曜の昼寝

(解説)1穴場は狭い路地の奥に畦道の果てにある、大きな車は身動きに困る。 2店の名前は名字をそのままつけた店の方がいい。 3大小のみのメニューの店が一番。またオプションでは、おでんだけおいてある店より天ぷらのみおいてある店が上。 4製麺所付属の店は日曜が休みのことが多い。