ジュニア版 神社仏閣ミニ辞典            P9  
                      
 ー入門篇・仏教の部ー                 
                                              参考文献:仏教入門(藤井正治)・目で見る仏像(東京美術)
                                                     仏像の見方(石井亜矢子)     ほか

   

・・・仏像についてT(仏像の起源・制作・種類・尊像形式)・・・



 仏像の起源
 

 
(仏像以前の崇拝物)

 
釈尊入滅(BC380年頃)後その遺体は荼毘にふされ舎利(遺骨)は釈尊を慕う人々の間で分けられ、ストゥーパ(仏塔)に納められて人々はそれを拝むようになります。
 ストゥーパの周囲には釈尊が前世でなした修行の物語である本生説話(ジャータカ)などがレリーフとして刻まれ、釈尊が悟りを開いたという菩提樹の木や釈尊の足跡を石に刻んだ仏足石などが置かれますが、釈尊があまりにも尊い存在だったため(おそれ多いこととして)その顔や姿があらわされることはありませんでした。

(仏像の発生)

 その後、時の経過とともに釈尊追慕の念がますます高まりBC1世紀頃からその存在を仏像として表現するようになったといいます。
 仏像生誕の地はガンダーラ地方(現在のパキスタン北部)で、この地方へは神像を祀る風習のあったヘレニズム(ギリシャ文明)の東への広がりによって仏像が作られるようになったと言われます。
 はぼ同時期にマトゥラー(インド北部)にも仏像が作られ仏教と共に東アジアのほぼ全域にひろがります。


TOPICS
 2002年5月イランのファールス州で19体の仏像が発見されたと報じられました。
 この仏像は北部インドで1〜3世紀に隆盛をきわめたクシャン朝時代の特徴がみられるといわれ、これまであまり知られなかった仏教や仏像の西方への流れが解明されるものと期待されています。

(仏像の伝播と変遷)

 シルクロードを通って中国に仏教が伝わったのは紀元前後、仏像がつくられたのは2世紀頃といわれています。4〜5世紀頃には朝鮮半島にも伝わります。
 
 日本には朝鮮半島の百済から538年に仏教とともに伝わりました。以後聖徳太子や蘇我馬子の奨励策と朝鮮からの造寺・造仏の工人来朝とともに寺院の建立や仏像の制作が盛んになり飛鳥文化の花が開きます。
 飛鳥から天平(奈良)時代は殆ど中国や朝鮮の模倣といわれていますが、平安時代に入ると遣唐使の廃止(894年)の影響もあり、定朝(?〜1057)らの活躍により、優美さを追求した日本的な仏像がつくられるようになります。
 鎌倉時代は公家政権から武家政権に移り造仏も巨匠運慶((?〜1223)の出現もあり力強い写実的な鎌倉新様といはれる様式があらわれ、更に運慶の門下の快慶(鎌倉前期)は新しく伝えられた宋の様式もとりいれて安阿弥様と称される作風を確立しました。
 室町時代以後は旧仏教(南都六宗、天台、真言宗)の造像が一段落し、鎌倉新仏教(浄土教、禅宗、日蓮宗)が教義の上で必ずしも仏像を必要としなかったこともあって、造仏活動は衰え現在に至っているといわれています。


サルナート(最初の説法地)のストゥーパ
(松本栄一・三蔵法師の道)


日本最古の飛鳥仏(国宝・安居院)

 

仏像の制作について

 

(経典と儀軌)

 仏像は本来礼拝の対象として作られたものですがそれぞれが意味をもった一定の規則によって作られており、その規則の基本となるものが経典と儀軌(ぎき)です。
 経典には各仏の形が説かれており、日本では仏教伝来以降奈良時代までは主に経典の記述にしたがって仏像が作られていました。
 平安時代になり密教が入ってきてからは儀軌(規則という意味で仏像の作り方や仏の供養法、儀式の規則が記されている)によることが盛んになりました。
 そのご儀軌の整理により図像抄や別尊雑記などの図像集が編纂され各仏像についての形や色、持物(じもつ=手に持つ物)などが厳密に決められています。

(材料と作り方)

材 料 作 り 方

木 仏

 
 一木造(いちぼくづくり)・・・頭から足・台座まで一本の木を刻んだもので、像の細部が別の木でも一木造といいます。
 一木造の中には鉈彫り(*1)といはれるものがあります。

 寄木造(よせぎづくり)・・・数個の木で、像の頭・胴・背・手・足などを別々に彫刻してそれを集めて一体とするもので11世紀以降は殆どこの作り方によっています。


金 仏

 
 鋳造仏
・・・溶かした金属を形に流し込んで作り表面には金メッキを施します。

 鎚金仏(ついきんぶつ)・・・硬い金属で形を作り、その上から銅板をあてて叩きだすものです。


石 仏

 
 石窟像
・・・石窟内の壁面に厚肉彫りで彫り出したもの。

 磨崖像・・・断崖に直接仏像を彫り出したもので磨崖仏ともいいます。


乾漆仏

 
 脱乾漆
・・・粘土で大体の形をつくり、その上に麻布を漆で貼り、乾いたところで内部の土を抜き取り木枠で補強します。

 木心乾漆・・・木で大体の形を作り、その上に漆と木粉を練り合わしたもので盛り上げて作ります。


塑 仏

 
 塑 像
・・・木心に藁を巻き、その上からよく練った粘土を何回も重ねたのち乾燥させ、精選した土に雲母を混ぜた材料で仕上げます。

 (せん)・・・建築物の側面などを飾るために、煉瓦のように焼きしめたもの。


十巻抄(上・醍醐寺)と別尊雑記(下・仁和寺)(いずれも部分)

(*1)鉈彫り
 丸鑿の跡を表面に残した木彫りで10世紀頃から関東を中心に作られましたが、荒々しいのみの跡を日夜祈ることが東国の人々の好みに合ったのではないかと考えられています。
 鉈彫りとしてかって国宝に指定されたことがある弘明寺の十一面観音菩薩はケヤキの一木造です。(下図)


十一面観音像(重文・横浜市弘明寺蔵)


 磨崖像(神奈川県・鷹取山)

 

 仏像の種類
 
 仏像はその姿・形や対象によって、如来形・菩薩形・明王形・天部形・その他の5つのゲループに分けられます。

 如来形・・・如来とは悟りをひらいた者で仏陀ともいいます。悟りをひらいた釈尊の像が釈迦如来像です。大乗仏教の成立以来多くの仏陀があらわれ、それにともない数々の如来像が作られるようになりました。(詳細はこちら

 菩薩形・・・菩薩とは悟りを求めるために修業している人で他者をも救う行い(六波羅密)を実践することですべての人々を救おうとしています。
 菩薩像の基本は出家する前の修行中の釈尊の姿ですが、如来形と同様多仏思想の発生により多くの菩薩が生まれました。(詳細は
こちら

 明王形・・・明王とは真言(神秘的な力をもつ言葉や呪文)を唱えて祈った場合に、その霊験がもっとも大きい仏と言う意味で、密教が創造した仏ですが如来や菩薩の教えに従わない人を威力で導くものとされています。(詳細はこちら

 天部形・・・天というのは仏教以前からインドにあったバラモン教や民間信仰の神々のことですが、仏教はこれらを守り神として取り入れたもので姿もバラエティーに富んでいます。(詳細はこちら)

 その他・・・垂迹神、阿羅漢、高僧の像などです。(詳細はこちら)

 垂迹神は平安時代に生まれた
本地垂迹説によるもので僧の形をとる僧形八幡神や山岳信仰と密教の結びつきによって生まれた蔵王権現、円珍が中国から帰国する途中で感得したという新羅明神などがあります。

 阿羅漢(羅漢)・・・釈尊の高弟や最高の修行僧の像で十大弟子が代表的なもので釈尊にしたがった弟子十六体や五百体を一群として十六羅漢とか五百羅漢と呼んでいます。

 高僧・・・仏教の興隆に力を尽くした聖徳太子や各宗派の開祖なども彫像として表わされ、信仰の対象となりました。



如来像・ガンダーラ(東京美術・目で見る仏像)


菩薩像(東京国立博物館蔵)

 

 尊像形式
 
 仏像は単独のものもありますが「釈迦三尊像」や「五智如来」のように別の役割をもつ像と一具(セット)で祀られる場合があります。これを仏像の尊像形式といい、その組み合わせも経典や儀軌で定められています。

 組み合わせて祀られる場合、二尊像の場合は同格で並立します。
 三尊像の場合は本尊(中尊)を中心に左右に二体が従います(脇侍・わきじ)。まれに三像並立の場合もあります。
 四尊像の場合は同格で東南西北の四方に祀ります。
 五尊像は一体が中尊で四体を四方に祀ります。
 それ以上の場合は群像となり,組み合わせもいろいろとなります。

 [主な尊像形式]
二尊像
  
釈迦如来・多宝如来(並立)
   
釈迦如来・阿弥陀如来(並立)
   
文殊菩薩・維摩居士(並立) 
三尊像
   
釈迦如来(中尊)・普賢菩薩・文殊菩薩
   
釈迦如来(中尊)・薬王菩薩・薬上菩薩
   
薬師如来(中尊)・日光菩薩・月光菩薩
   
薬師如来(中尊)・阿難・迦葉
   
阿弥陀如来(中尊)・観音菩薩・勢至菩薩
   
不動明王(中尊)・矜羯羅童子・制多伽童子
   
毘沙門天(中尊)・吉祥天・善膩師童子
  
 ・釈迦如来・阿弥陀如来・薬師如来(並立)
四尊像
  
[金剛界四仏]阿關如来(東)・宝生如来(南)・無量寿如来
   (西)・不空成就如来(北)
  
[胎蔵界四仏]宝幢如来(東)・開敷華王如来(南)・無量寿
   如来(西)・天鼓雷音如来(北)
  
[四天王]持国天(東)・増長天(南)・広目天(西)・多聞天
   (北)
五尊像
  
[五智如来(五仏)]大日如来・四仏
  
阿弥陀如来(中央)・金剛法菩薩(東)・金剛利菩薩(南)・
   金剛因菩薩(西)・金剛語菩薩(北)
  ・阿弥陀如来(中尊)・観音菩薩・勢至菩薩・地蔵菩薩・竜樹
   菩薩
 
[五大明王]降三世(東)・軍荼利(南)・大威徳(西)・金剛夜
   叉(北)
  
[五大虚空蔵菩薩]法界(中央)・金剛(東)・宝光(南)・蓮華
   (西)・業用(北)
六尊像
[六観音]聖・十一面・不空羂索千手・馬頭・如意輪
・[六地蔵]壇陀・宝珠・宝印・持地・除蓋障・日光         


釈迦三尊像(法隆寺・国宝)
ー脇侍は薬王、薬上菩薩ー


五智如来像(京都安祥寺・重文)

  

  










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