ジュニア版 神社仏閣ミニ辞典           P11
                   ー入門篇・仏教の部ー                 
                                              参考文献:仏教入門(藤井正治)・目で見る仏像(東京美術)
                                                     仏像の見方(石井亜矢子)     ほか

・・・仏像についてV(如来形)・・・

 

如来形の特徴

 如来形は釈迦如来が悟りを開いた後の姿を基本としていますが、特徴的なこととして次のようなことが挙げられてます。

 @相好が取り入れられていること。
相好(そうごう)
 釈尊は入滅後、次第に神秘化超人化され、釈尊には生まれながらにして三十二の優れた特徴(相)があり[三十二相]、相よりさらに小さい八十の特徴(種好)がある[八十種好]とされ、仏像もこれら特徴を取り入れて表現するようになりました。

 体全体が金色をしている金色相、指の間に水掻きのような膜がある指縵網相、手のひらや足の裏に車輪のような模様がある千輻輪相、頭が鏡餅のようにもりあがっている肉髻相、眉間に右巻きの白毛があり、伸びると1丈5尺になるという白毫相などです。

 A法衣(袈裟)をまとうだけで装身具(大日如来を除く)は一切着けず、持物も薬師如来のほかは持たず、通常は結跏趺坐(左足を右腿の上の載せて、右足を左腿に載せて坐ります)です。

 B髪型は巻貝のように小さな渦巻き状になっています(螺髪)。

 C体型はすべて一面(かお)二臂(うで)で変化観音とか明王のような多面多臂のものはありません。

 D台座は坐像、立像ともすべて蓮華の花を形どった蓮華座です。           

                        





釈 迦 如 来
 
 釈迦如来像は釈尊の像ですがもっとも一般的なのは釈尊が説法する姿を表わしたもので印相は施無畏印・与願印、あるいは禅定印に結ぶ単独像です。
 
 ほかに薬王、薬上菩薩や文殊、普賢菩薩を脇侍に伴う三尊像も見られ、また釈迦の十大弟子を眷族(付き従うこと)として従える例もあります。

 釈尊生涯の物語(仏伝)にちなみ、誕生と同時に7歩進んで「天上天下唯我独尊」と言った時の姿を表わした誕生仏や、苦行を終えて山から出てきた出山釈迦像、仏像の中ではただ一つの横臥像である入滅する時の涅槃像など、特徴のある像も釈迦如来像に含まれます。


 釈尊の降誕


 古い仏典は釈尊の誕生の様子について次のように述べています。
 釈尊は白象の姿になって摩椰夫人の胎内に入りやがて月満ちて4月8日ルンビニー園を散策中の夫人がアショーカ樹の枝を手折ろうとした時に、その右脇腹より生まれ、直ちに蓮華の上を7歩あるき右手を上げて「天上天下唯我独尊」(世間において私がもっとも優れたものである)と言いました。


釈迦如来倚像(深大寺・重文)



阿 弥 陀 如 来
 
 阿弥陀如来も釈尊と同様に、もとインドの王子でしたが48の大願を立て、修行の末如来になったといわれます。
 その大願の中に「念仏を行う者は必ず極楽浄土へ行ける」と説いていて「無量寿如来」とか「無量光如来」
(無量=限りない)とも呼ばれています。

 結ぶ印相の種類は多く古くは施無畏印・与願印、あるいは説法印、平安時代以降は阿弥陀定印、浄土信仰が盛んになった平安後期以降には来迎印を結ぶ例が多いようです。

 各時代を通じて観音、勢至菩薩を脇侍を従える例が多く、来迎の模様を表現するために、50菩薩やその半分の25菩薩の像、供養の天人像を従えた例もあります。                                    

阿弥陀如来坐像(平等院鳳凰堂・国宝・定朝作)


薬 師 如 来
 
 正しくは薬師瑠璃光如来といい、今も東方瑠璃光世界で説法しているといわれます。
 まだ菩薩だった時代に立てた12の大願の中に人々を病から救うことが挙げられ、日本でも古くから病気平癒を願って多くの像が造られました。とくに眼病には霊験あらたかとされ多くの人の信仰を集めました。
 右手は
施無畏印、膝に載せた左手に薬壷(やっこ)をもつのが基本の形ですが、奈良時代くらいまでは右手を施無畏印、左手は与願印で薬壷を持たない例もあります。
 三尊像の場合は脇侍は日光、月光菩薩像ですが眷族として十二神将を従える例もあります。
 
東方瑠璃光世界

 
我々の住む娑婆世界から東方十恒河沙(ガンジス河の砂粒のように計算できない膨大な数のこと)を過ぎたところにある仏の住む極楽と同様の世界で、ここでは大地は青色の宝石からできていて、薬師如来が説法しています。

薬師如来坐像(新薬師寺・国宝)


毘 盧 舎 那 仏
(びるしゃなぶつ)              

 略して盧舎那仏(るしゃなぶつ)とも言われ蓮華蔵世界という広大な宇宙で今なお説法を行っています。

 
蓮華座結跏趺坐し、持物はとりません。日本では奈良時代から篤く信仰され大宇宙の象徴にふさわしい東大寺の奈良大仏や唐招提寺金堂本尊が造られています。       

 蓮華蔵世界

 蓮華から生まれた世界又は蓮華に中にある世界の意味で「梵網経」や「華厳経」によると、盧舎那仏の願と修行によって実現した理想的な清らかな広大な世界で1000枚の花弁を持つ大蓮華の中心に坐って1000の大釈迦と1億の小釈迦を集めて説法を行っているとされています。東大寺大仏の蓮華に刻んであるものはこれにしたがっているといわれます。


盧舎那仏坐像(奈良大仏)
(東大寺・国宝)


大 日 如 来

 密教において毘盧舎那仏をさらに発展させて密教世界の最高位に位置する絶対的な存在となりました。
 如来でありながら頭に宝冠を載き、髪を結って胸や腕には装飾品をつけて結跏趺坐します。
 金剛界の大日如来像は智拳印胎蔵界大日如来は法界定印を結び、瞑想にふける姿として造られています。
 この印相で2種の大日如来像の区別がつき、また菩薩像と大日如来像の区別も見分けることができます。
 
 金剛界と胎蔵界

 金剛とは金属の中で最も硬いもののことで大日如来の悟りの智慧は堅固で一切の煩悩を破ることを意味します。
 胎蔵とは母胎内のことで胎児が母胎内で育つように人々の持つ救いを求める心を仏の慈悲が育てるという意味があります。
 この金剛の思想と胎蔵の思想を両界といい密教世界の最高至上の絶対者大日如来のさとりの境地を表わしています。


大日如来像(金剛峯寺・重文)


その他の如来
 
 [弥勒如来]
 
弥勒菩薩は釈尊の後継者として将来如来になることが決まっているため、如来の姿であらわされることがありますがこれが弥勒如来です。
 姿・形も釈迦如来と変わることなく印相も通例は
施無畏印・与願印です。
 代表的なものに奈良・当痲寺の弥勒仏坐像、「試みの大仏」といわれる東大寺の弥勒仏坐像、興福寺北円堂の運慶作の弥勒仏坐像があります。変わった像では法隆寺五重塔の塔本塑像のなかに椅子に坐る倚像の弥勒如来像があります。

 [五智如来]
 
大日如来は単独で
祀られる場合もありますが五仏一具(セット)で安置された例も多く、これを五智如来といいます画像はこちら)。


弥勒如来(試みの大仏・東大寺)

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