QアンドA89
シンハラ語には品詞がいくつある?

 名詞とか動詞とか、品詞の数なんて土の言語も同じように決まっていそうなものだけど、言語によって品詞の数が違ってくる。また、その分け方も言語でだいぶ違っているのだ。シンハラ語の品詞は七つ。でもその内訳を辿ると……


No-89 2008-Mar-03 2015-Apl-14
 ここにシンハラ語の品詞を並べて見ます。
 

名詞 නාම පද ナーマ・パダ
代名詞 සර්ව නාම サルワナーマ
数詞 සංබ්‍යා ශබ්ද サンビャー・サブダ
形容詞 නාම විශේෂණ ナーマ・ウィセーシャナ
動詞 ක්‍රියා පද クリヤー・パダ
副詞 ක්‍රියා විශේෂණ クリヤー・ウィセーシャナ
助詞・接辞 නිපාත සහ උපසර්ග ニパータ と ウパサルガ

 名詞・代名詞・形容詞のシンハラ名に「ナーマ」とあります。「ナーマ」は名詞のことですから。代名詞、形容詞が名詞の仲間に加えれていることが分かります。形容詞をナーマ・ウィセーシャナと言いますが、これは「名詞の特別な形」という意味です。
 同様に動詞と副詞には「クリヤー」という言葉が使われています。「クリヤー」は「動作/行為」という意味のサンスクリット語です。これは「動詞」を表します。ここから副詞のクリヤー・ウィセーシャナが「動詞の特別な形」という意味を持っていることが分かります。
 こうしてみると、シンハラ語の七つの品詞はまず、大きく名詞、動詞に大別され、名詞の下に代名詞、形容詞が、動詞の下に副詞が置かれていることが分かります。そのほかに数詞、そして、それらとは別にニパータ と ウパサルガの挙げられていることが分かります。
 この分類法はサンスクリットの品詞分類と基本的に同じです。サンスクリットではクリヤー(動詞)、ナーマン(名詞)、ウパサルガ(動詞の接頭語)、ニパータ(接辞)の四つに品詞を分けます。
 サンスクリットにあるニパータはシンハラ語のニパータとはだいぶ趣を変えています。
 ニパータとは語形変化しない語や辞(不変化語)をさす品詞名ですが、シンハラ語では日本語にあるような助詞がニパータの大部分を占めるています。
 ところがサンスクリットには日本語のような助詞がありません。屈折語ですから助詞などあるはずもないのです。処がシンハラ語には助詞がある。つまり、サンスクリットにはないシンハラ語の助詞がサンスクリットの用語のニパータの中にたくさん放り込まれているのです。
 助詞の力を借りて文を作るのは、言ってみれば膠着語的です。屈折語とされるシンハラ語が日本語の構文法とほぼ同じようにできているのは、このニパータが文の中で働いているからです。

 上の品詞分類表を以上の論点でまとめ直すと次のようになります。

 名詞  නාම පද  ナーマ・パダ
代名詞  සර්ව නාම  サルワナーマ
形容詞  නාම විශේෂණ  ナーマ・ウィセーシャナ
 動詞  ක්‍රියා පද  クリヤー・パダ
副詞  ක්‍රියා ව්ශේෂණ  クリヤー・ウィセーシャナ
 数詞  සංබ්‍යා ශබ්ද  サンビャー・サブダ
 助詞・接辞  නිපාත සහ උපසර්ග  ニパータ と ウパサルガ