古事記は夏の匂いがする
古事記は夏の匂い

Indian summer from 'Kojiki'



スリランカ料理・道案内
No.11 2012-10-23
スリランカ料理・道案内 第12回 スリランカ料理・道案内 
No.11 2012-10-23
「古事記は夏の匂いがする」と書いたことがある。「あじまさの島見ゆ」というまったく売れなかった本に、だ。昨日、山から小分けして切り出した倒木の幹をチェーンソーでさらに細かくストーブ用に刻んだら肩が痛くなった。それで体をいたわって静かに机に向かってネットを泳いだ。そうしたら、偶然に、その「古事記は夏の匂い」を引用したブログに出会った。沖縄の人が「あじまさ」を読んでこんなふうに記している。
 「あじまさ」は食いしん坊の実践者が書いたものだから視点が胃袋的で面白い。伊是名、伊平屋の島の名をジャヤ、つまり「盛者(勝ち誇ったもの)」に結びつけて、黒潮に乗った「勝者たち」の海原の旅たくだりを描いているけど、「勝者」のジャヤはふるさとの石垣島の川平の古い言葉にもある。それは「んじゃやー」。負けないこと。「んじゃやー精神」と言えば「勝つ心」。
 へええ。知らなかった。石垣島でもそうか。黒潮の「古事記」。夏の海の匂いの「古事記」。びんろう樹の匂い。沖縄。日本のふるさと。
 

りんごを戴いた。1本のりんごの木にいくつもの種類のりんごの枝を接木して毎年、多種のりんごが生るという。赤いのやら、青いのやら。
 りんごを薄切りにしてアルミホイールに載せ、セイロンのシナモンをちぎって載せ、きっちりと包み薪ストーブに載せて焼く。ウィジャヤの島、その山岳部、カンディの奥のシナモン樹、現地でクルンドゥと呼ぶけど、これがいい。クルンドゥを使えばりんごがそのままナチュラルなスイートになる。自然そのままのお菓子になってしまう。
 昨年6月に退院してから、私の食事は朝に生野菜のサラダ、フルーツ、そして、たまごを摂る。昼は少々の肉をとり、夜は粥かうどんを常食とする。この季節、冷え込む朝にはストーブを焚いてシナモンの焼きりんごをつくりメニューに加える。シナモンの木の皮はカンディの奥の山のかぐわしい匂い。
 そして、お茶。お茶はいろいろと欠かさない。クルンドゥー入りのスパイス・ティーはこれから冬に向けて、特に有り難い。白い季節のシナモン・ティ。
 
おいしいってシンプルなんだ。スリランカの田舎でピュアーなスリランカ料理とめぐり合ってそのことを知った。土鉢やミリス・ガラ(擂り石)で作るシンプルな伝統の料理。ケミカルを排除する。ナチュラルを摂る。そして、繰り返すけどシンプル。
 私の好むこのスリランカ料理を原理主義と名づけてくれた人もいる。ふうん、ま、そうか。シンプルをそう呼ぶか。でも、この原理主義は原理以外を排除すると言うエキセントリックじゃなくて、原理を基にしてナチュラルに、平凡に応用すると言うだけの、とても当たり前のことなんだけど。
 かしゃぐらは今、晩秋の気配だ。いまどきになって太平洋上に高気圧が居座るものだから晴れたり、暖かな雨が降ったり。おかげで庭のトルシーは元気に花を咲かせ、まだ生葉が食べられるし、畑のナスは元気に花をつけ、ニガウリも最後のひとつだけど実をつけている。何だろう、これ。不思議な今年のインディアン・サマー。
 暖かな雨の中、雪が恋しくて冬の準備を始めたのだけど、なにか夏の匂いが…。


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