CSN 2009年12月21日
イタリア議員による立法提案
環境病患者の保護のための規則

ドメニコ・シリポッティ議員(IDV)

情報源:CSN Environmental Medicine Matters
Italian Law Proposal for Environmental Illnesses and Disability December 21, 2009
On. Dott. Domenico Scilipoti
http://www.csn-deutschland.de/blog/en/an-italian-law-proposal
-for-environmental-illnesses-and-disability/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma
Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年12月30日
更新日:2010年 1月 2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/Italy/CSN_Italian_law_proposal.html




プレスリリース 2009年12月21日 ローマ
ドメニコ・シリポッティ議員(IDV:訳注)
環境障害によって影響を受けた人々をどのように支援するか


 ”その生存と生活の質が薬ではなくある環境的要因を回避することに依存する環境病患者を支援するために、本日、私はこの問題についての法案を発表した”とシリポッティ議員は述べた。”この法案は、化学物質への耐性を失う多種化学物質過敏症(MCS)や携帯電話、Wi-Fi、送電線などによる電磁界から影響を受ける電磁波過敏症(EHS)のような環境要因によって発症する疾病のためのものである。しかしこの法案はまた、慢性疲労症候群(化学物質不耐性を伴う)又はソラマメに激しい反応を示すファビズム (favism) のような遺伝因子、代謝系、神経系、又は免疫系の疾病のためのものでもある。環境障害の他の病状は、自閉症、てんかん、偏頭痛、蛍光灯への反応が関与する狼瘡(ろうそう) に見られる”。”これらの人々に答えを与えるために可能な限り早くこの法案を審議することが重要である”とシリポッティは結論付けた。

訳注:IDV:価値あるイタリア(イタリアの政党)

提案 2009年12月21日提出
環境病患者の保護のための規則
ドモニコ・シリポッティ議員(IDV)

同僚議員の皆さん

 過去数百年にわたり、人の生活環境は産業活動により完全に圧倒されてしまいました。化学の到来以前は、自然界には約150種の化学物質があるだけでしたが、今日では10万種以上の化学物質が市場に出ており、それらの大部分はそれらの長期的健康影響に関してテストが実施されていません。

 同時に、自然環境におけるマイクロ波バックグラウンドもともとは事実上ゼロに近く、それは太陽系外からの10億分の1μW/cm2のオーダーであったにもかかわらず、過去15年間に製造された個人用無線通信は電磁界(EMF)レベルを数10μW/cm2に押し上げました。

 このように、人類はわずか150種の化学物質とゼロに近いマイクロ波の環境の中で長年過ごしてきたので、例えば太陽光の紫外線から身を守るために長年の進化の過程でメラニン色素を選択したのとはわけが異なり、人の体は、これら環境要因の突然の増大から自身を守る生物学的準備が出来ていません。

 したがって私たちの社会は、数十年間無害であるとみなされていた、あるいはその健康影響はまだ未知の(有害)物質の使用により、また、電磁放射の熱影響だけに基づいている現在の法律によって無害であるとみなされているが生物学的には活性な電磁界により引き起こされる新たな疾病や障害の増加に直面しています。

 この点に関し、有害物質や電磁界への暴露の法的規制値は歴史的には主に産業界から金の出ている研究に基づいて決められており、公衆の健康についての政策は科学的知見の進歩を考慮するのが遅すぎるということが科学的に証明されているということを認識すべきです。

 電磁界の場合には、例えば過去数十年間にわたり無線通信技術の無秩序な拡散があります。ガイドラインに記されているよりはるかに低い電磁界への暴露の非熱影響についての証拠が増大しており、この点に関して、独立系科学者は何度かこれらの電磁界の法的規制値を低くするよう要請する決議を採択してきました。カターニア(イタリア)決議(2002年)、ベネヴェント(イタリア)決議(2006)、ロンドン(イギリス)決議(2007)、ヴェニス(イタリア)決議(2008年)、ポルト・アレグレ(ブラジル)決議(2009)などです。

 2007年、独立系科学者のグループが、予防原則の観点から電磁界についての既存の健康政策を研究し分析することを目的としてバイオ・イニシティブ・グループ(BioInitiative Group)を設立しました(www.bioinitiative.org)。同年、バイオ・イニシティブ・レポート(BioInitiative Report)が欧州環境庁によって採択され、非常に高い周波数については安全な暴露の閾値は現在産業先進諸国の法で規制する値よりも数千倍低いであろうことを示唆し、その結論は0.6V/mというより低い安全値を要求しています。

 環境と健康のための欧州行動計画の暫定評価についての決議の中で、2008年9月4日、欧州議会は多種化学物質過敏症、歯科アマルガム症候群、電磁波過敏症、シックビルディング症候群、子ども達の中で新たに生じている環境病としての注意欠陥多動症を挙げました。

 過去30年間、多種化学物質過敏症(MCS)と電磁波過敏症(EHS)の患者数は増大しており、これらは二つの異なる健康状態ですが、よく似ています。影響を受けている人々は引き金となるそれぞれの要因、化学物質と電磁界を回避しなくてはならず、その症状はしばしば一致しています。

 多種化学物質過敏症(MCS)は、一般の人々には耐えられる容量よりはるかに低い容量であっても環境中の化学物質に暴露すると多臓器反応を伴う疾病です。この疾病の診断基準は、Archives of Environmental Health (vol. 54/3)に発表された10年間の多中心性研究の結果として、1999年に国際的な合意(訳注1)によって確立されました。

 その合意はMCSを次のように定義しています。
 [1]慢性的疾病である。
 [2]再現性症状がある。
 [3]極低レベル暴露で反応する。
 [4]相互関連のない多種化学物質に反応する。
 [5]原因が除かれると症状は改善あるいは解決する。

 その後、6番目の基準として下記が加えられました。
 [6]症状は多臓器で起こる。

 MCSの発症は7つに分類される化学物質への暴露に関連していました。有機溶剤、有機塩素系農薬、カルバメート、有機塩素、ピレスロイド、水銀、硫化水素、一酸化炭素(M. Pall, 2009)。
 反応の引き金となり得る物質には特に次のようなものがあります。殺虫剤、農薬、消毒剤、洗剤、香水、脱臭剤、芳香剤、塗料、溶剤、接着剤、タール製品、木材防腐剤、建材、印刷物、歯科アガルガム、インク、ストーブ排煙、火災現場、バーベキュー、プラスチック製品、薬剤、麻酔剤、家具中のホルムアルデヒド、柔軟仕上剤及び新柔軟仕上剤、燃料、石油化学品に由来する全ての化学物質。

 一般製品への化学的過敏性(Chemical sensitivity)はアメリカでは人口の15%、デンマークでは10%に見られますが、多種化学物質過敏症(MCS)はアメリカでは人口の1.5〜3%です(G. Heuser , 1998)。MCSは多くの疾病の原因となり、体の多くの系に影響を及ぼします。腎臓系、呼吸器系、循環器系、消化器系、皮膚、神経系、筋骨系、内分泌−免疫系。

 遺伝学研究は、生体異物の代謝能力の欠如に関係する CYP2D6、グルタチオンS-転移酵素、NAT2、又は SODの遺伝子多型をもった人はそのような疾病に遺伝的に罹りやすい傾向があることを示唆しています。

 MCSは、症状が原因の除去により消えるので一般的アレルギーとしばしば誤解されますが、その動特性と推移は化学物質への耐性能力が永久に失われるので完全に異なります。

 MCSを解決する治療法はありませんが、国際的に認知された最良の治療アプローチとして化学物質の環境的忌避が示唆されています。この化学物質の忌避を行うために、MCS患者は居住環境や労働環境を、そしてレジャーの過ごし方を変えなくてはならず、一方、食物は有機で化学物質添加物や保存剤のないものでなくてはなりません。化学物質忌避には、活性炭や木綿フィルター付きの木綿や紙マスク、セラミック酸素マスク、活性炭素フィルター又は逆浸透浄水器、住宅及び車用の全金属ケージ活性炭及びHEPAフィルター空気清浄器などの採用が役に立ちます。

 金属に対するIV型アレルギー反応の場合には、歯科アガルガム詰め物の除去、又はその他の補綴(ほてつ)又は歯科医術用金属の除去によりMCS患者に改善が見られることが示されています。実験的研究は、環境的に管理されたユニット内(訳注:クリーンルーム)の長期滞在を通じて、日々の理学療法や温熱療法により体内の毒物を低下させるよう設計された治療的アプローチ、そしてMCS患者に特に高い酸化ストレスを低減するための統合治療を示唆しています。

 多種化学物質過敏症は症例毎にそして時間経過と共に非常に変化し、ある人は非常に重症なのに他の人はある場合には軽い症状なので、1999年国際合意はそれぞれの診断を次の点に付いてを定量的及び/または定性的に特性化することを勧告しています。生活又は障害への影響(すなわち、最小限、部分的、全体)、症状の程度(軽度、中度、重度)、症状の発症頻度(毎日、毎週、毎月)、感覚影響(どの感覚器官が関与しているかの特定−嗅覚、三叉神経、味覚、聴覚、視覚、触覚、振動、痛み、熱さ、冷たさの知覚)、過敏性の変化(大、小)、慢性的及び特定の化学物質への暴露に対する刺激の通常レベルの耐性)。

 イタリアでは、MCSとしての障害年金を100%受給している重症患者が既に数十人おり、またあるケースでは介護が必要な障害であると認定されていますが、これらは診断と障害の状態が疑いの余地がない進行した病状です。一方、社会で可能な限り長く活動的な市民として留まるためにまだ働いている障害者の予防的保護及び認定の必要性があります。

 アメリカではMCSは下記によって疾病及び障害として認められています。障害をもつアメリカ人法(ADA)、住宅都市開発省(HUD)、環境保護庁(EPA)、機関、委員会、研究所、連邦・州・地方政府及び連邦・州法廷。

 ドイツ、オーストリア、日本では、MCSは世界保健機関(WHO)の国際疾病分類 ICD-10 のコード T78.4”アレルギー、詳細不明”に分類されています。(訳注:日本はコード T78.4 ではなく、T65.9/その他及び詳細不明の物質の毒作用)。ドイツ厚生省はまた、MCSを運動障害ともみなしています。

 デンマークの環境保護庁は2004年にMCSに関する報告書(訳注2)を発表しましたが、それは化学物質過敏症が環境要因によって引き起こされるということ、及びデンマーク政府はこの症状の発症を防ぐために屋内環境でガスを放出する物質の使用を最小にするよう誓約すると結論付けました。

 化学物質への過敏を伴う疾病には次のものがあります。神経毒性脳障害、筋痛性脳脊髄炎又は慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症、気道過敏症、不特定ぜん息、片頭痛、Daunderer Syndrome、シェーグレン症候群、アトピー性皮膚炎、がん(特に化学療法の場合)及び多くのその他の症例。

 最近数十年間、これもまた多くのMCS患者に影響を与えるもうひとつの増大している環境病は電磁波過敏症(EHS)です。日々の生活において、高圧電力送電線、ラジオやテレビ送信機、家庭電化製品やビジネスツール(例えばビデオ・ターミナル)、そして特に携帯電話及び携帯基地アンテナなどにより放射される電磁界ににより多臓器反応を引き起こすことがあります。それは困難と時には重大な疾病をもたらし、収入の低減又は生計維持の手段を失なわせ、生活の質を低下させます。

 ”二重盲検”科学研究は、電磁波過敏症(EHS)被験者が電磁界の存在を正しく認識することができ、彼らがこれらの電磁界のせいだと主張する症状を被っていることを示しました。さらに近年、ますます多くの実験的証拠が”電磁疾病”及び可能性ある分子的、細胞的、機能的ベースの客観性を支えています。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所のオレ・ヨハンソン教授は、コンピュータ画面の前で引き起こされた電磁波過敏症(EHS)患者の皮膚サンプル中に肥満細胞とそれらによって隠される他の物質の増大を発見しました。肥満細胞はアレルギー性、過敏性、及び アナフィラキシー反応についてある役割を果しますが、また血管拡張と筋肉の収縮にも関与する物質の生成にもある役割を果たしており、電磁界に暴露した後に電磁波過敏症の人々により報告されている脳卒中のような症状の原因かもしれません。

 スウェーデンでは、ある研究者らによれば電磁波過敏症(EHS)は人口の10%くらいに及び、健康福祉省(Socialstyrelsen)は、その病気を”人を環境に適応できないようにする能力低下”として認めており、医師らに対しこの病気を国際疾病分類のコード R68.8 ”その他の明示された全身症状及び徴候(Other specified general symptoms and signs of illness)に分類するよう勧告しました。それにより電磁波過敏症(EHS)対象者は、例えば塗料やテントでシールドすることにより、重症な場合には電磁源から離れた施設に移ることより、彼らの生活又は職場環境を改善することになります。

 カナダでは、電磁波過敏症(EHS)は衰弱症状(debilitating condition)として認められており、また重症患者には年金制度があります。

 アメリカでは、電磁波過敏症(EHS)はアメリカ人障害者法(ADA)の下にリストされています。

 世界保健機関(WHO)は、電磁波過敏症(EHS)は人口の1〜3%存在するとしていますが、一方、スイスのベルン大学社会予防医学研究所により2005年に実施された見積もりでは、スイス人の5%がEHSを発症していることを示しています。イタリアのパドヴァ大学環境的突然変異学元教授で、ローマの国立健康研究所毒性学委員会永久会員のジオノ・レビスによれば、これらのパーセンテージは無線技術の拡大と平行して劇的に上昇するであろうということです。

 2009年4月2日、欧州議会は、無線技術(携帯電話、 Wi-Fi/WiMAX、Bluetooth、DECTディジタル電話)が人の健康に有害影響を及ぼすことが出来る電磁界を放射するということに基づき、スウェーデンが数年前に実現したように、適切な保護と平等な機会を確実にするために、加盟国に電磁波過敏症を被った人々を障害者として認めるよう要求しました。
Health concerns associated with electromagnetic fields
http://www.europarl.europa.eu/oeil/FindByProcnum.do?lang=en&procnum=INI/2008/2211

 アメリカとカナダの何人かの知事らは5月を”MCSと電磁波過敏症の意識向上月間”と宣言しましたが、一方それらの病気で影響を受けているわが国の人々は、実際に何も面倒を見てもらえず取り残されており、必要な資金を持っている人たちだけが、仕事を離れ、自分の家を改善するか、もっと健康な場所に移ることが出来ます。

 2009年11月、フランスの16の都市は、実験的にEMF暴露の上限をバイオイニシアティブによって勧告された値(0.6 V/m)に低減することを決定しましたが、それはまた”もっと厳しい制限”を採用するようにとのフランス環境省の要請(2009年5月)に対応するものでした。

 イスラエル環境省は国民に対し電話の注意深い使用について注意を喚起しました(2009年7月)。

 環境汚染は、ワクチンや投薬だけでは治療が難しい多種アレルギーをもたらし、しばしば合併症状を伴うアレルギーを著しく増大させてきました。厳しい症状の場合には、多種アレルギー患者はアレルゲンを避けなくてはなりません。さらに、化学物質過敏症又は多種アレルギーを持つ多くの患者は薬に対しても過敏であることが知られています。

 酵素の不足又は代謝不足を原因とする他の多くの環境病もあります。まず最初にカタラーゼ、グルタチオンS-転移酵素又は superossidismutasis の活性が低下した人々のことを考慮しなくてはなりません。しかし、ソラマメ症(Favism)患者も また、マメ科植物に摂取及び吸入による接触をしてはならないということを考慮しなくてはなりません。

 この法案は、健康状態を保つために、精神的及び身体的健康を損ねる引き金となる要因の忌避を余儀なくされている全ての人々に答えを与えることを目的としています。

 これに関し、この法案は、1992年の欧州条約に謳われている予防原則;法律中のこの原則の趣旨と範囲は環境と健康の分野において共同体によって求められる保護政策の要であるとを繰り返し述べている欧州司法裁判所;欧州委員会によって採択された予防原則に関する2000年2月2日のコミュニケーション(COM (2000) 0001)(訳注3)の法的拘束力のある基準;加盟国は経営者を屋内空気質の改善と彼らの施設、関連会社、事務所における電磁放射への暴露低減に関与させるよう勧告している2009年4月2日の欧州議会決議−を参照しています。今日まで、この勧告は無視されています。

 この法案は、全ての人々は平等に基づく社会で暮らす権利があると述べている国連障害者機会均等条約及び国連障害者の権利条約(訳注4)に向けてアピールしています。上述の病気の患者は、環境病( Environmental Illness)又は環境障害(Environmental Disability)についての具体的なルールがないので、実際には健康に対するこの基本的な権利及び平等の権利から除外されています。不十分な公共投資のために医療専門家の環境医学についての訓練が乏しく、医療訓練は主に産業の利益に対するものであり、それが注力するのは実際の病気の原因よりも化学療法だけなので、この病気の患者らは上述の全ての権利から除外されています。


環境病患者保護法の提案

第1条(社会的疾病としての環境病とその認知の定義、及び環境障害を持つ人々の権利の定義)
1. 環境病(Environmental Illness)は、環境的要因によって引き起こされる健康状態の変化をもたらす全ての病気として定義されるが、一方、環境障害(Environmental Disability)は周囲の環境との関連において低下した個人の能力を意味する。そのような定義は、多種化学物質過敏症(MCS)、電磁波過敏症(EHS)、アレルギー、ぜん息、化学物質への過敏(hypersensitivity to chemicals)のような、主として環境的原因を持つものとして知られている全ての疾病をその範囲とするが、一方、線維筋痛症(Fibromyalgia)、慢性疲労症候群(CSF)、シックビルディング症候群、ソラマメ中毒(favism)、さらには代謝障害、化学療法合併症のような周囲の環境に関連する同種の障害(inability)をもたらす異なる又は未知の病因の全ての状態も含む。

2. 労働健康社会政策大臣は、1962年3月20日官報第73号で発表された1961年12月20日付け健康大臣法令に1992年2月5日の第104号”障害者の支援、社会的統合、及び権利のための枠組み法”としての必要な修正を行うために、法令を通じてこの法の発効後1ヶ月以内に本条の第1節の規定を実施しなくてはならない。

第2条(目的)

1. この法の規定は”国家保健制度(National Health System )”一般支援と共に、環境病又は環境障害を被っている人々の平等及び平等な機会への基本的権利を保証し、通常の社会生活への参加を推進し、環境医学についての研究を促進することを意図している。

2. 州(訳注:現在20州)及びトレントとボルツァーノ自治県(訳注5)は、それぞれの健康計画及び国家保健基金(National Health Fund)からの資金の範囲内で環境障害に対応するための目標、行動、その他の適切なプログラムに従った取り組みを計画しなくてはならない。

3. 上記1及び2項における国及び地域の規定は以下に記述される。

a) ”国家健康制度(National Health System )”により全ての資金が提供され、臨床毒性学の訓練を受け、利害抵触が全くなく、又は民間企業又は権益(彼らの専門の一部)から自由であり、任命前の5年間は一時的にも産業側で働いたことがなく、産業側支援によるどのような専門家組織又は協会にも属したことがなく、そして5,000ドル(約45万円)の価値を超える化学産業又は製薬産業の株式又は所有物を保有したことがない専門家により管理される国立環境医学相談センター(National Reference Center )を設立すること。

b) 応急手当のための具体的な規則を決め、環境障害を持った人々に特化した診療所を各県に少なくともひとつは設置することにより公衆健康制度(Public Health System)を改善し、外部からの直接アクセス、グリーンな建築技術及び材料の使用、不活性で無臭な材料の使用、ラドン放射及び微粒子のない、そして病院の他の場所から環境を隔絶するために制御された排気及び空気浄化システムを備えた”環境的に管理されたユニット(訳注:クリーンルーム)”を国際的な環境医学病院に設置することにより、憲法第3条で保証される重要な支援を容易に受けることができるようにすること。

c) 全ての医療施設(病院、診療所など)、学校、事務所、公共施設では、携帯電話の使用、喫煙、香料入り製品を禁止し、交通機関を含む全ての地域の事業所では、Wi-Fiシステム又は無線通信の使用、殺虫剤、除草剤、農薬の使用(10日前)、ポプリ、香水入りエアフレッシュナー、豆類又はソラマメの持込について警告する表示を掲げること。

d) 特に子どもたち、慢性病患者、老人、妊婦、そしてパーキンソン病、MCS、がんなどに関連する生体異物の解毒能力が遺伝子的に低い人々が発症することを防止するために、地域当局及び健康専門家に対し、屋内空気質の重要性について、日常生活用品(洗剤、殺虫剤、塗料、建材など)に含まれる化学物質の有害影響について、無線通信技術(携帯電話、Wi-Fi, Wi-Max, Bluetooth, DECT など)に関連する危険性について、徹底的な意識向上をはかることにより、環境障害が関与する環境病の問題を防止すること。

e) 適切な場合には第8条に基づくメール使用の可能性を含んで、環境障害をもたらす環境について意見を表明(投票)しやすい仕組みを作ること。

f) 環境障害に関する国民の健康教育を改善すること。

g) 環境病又は環境障害を被っている個人及びその家族の健康教育を推進すること。

h) 環境障害に関連する健康関連専門家の訓練、再訓練を実施すること。

i) 環境障害に関連する社会サービスの職員の教育と訓練及び法的強化をはかること。

訳注:j) 及び k) はない。

l) 職場で化学物質や電磁界に暴露した人;職業的疾病により環境障害にいたった人;体の解毒能力が低下しているために働くことが出来ない人;時には遺伝子要因により過敏症を持つ人の利益になるよう、国家労働災害保険制度(INAIL)の年金の再評価を行うこと。

m) 環境障害研究のための適切なツールを確立すること。

n) 重度の環境障害を持った人々が必要とすることを織り込むために法104/92を更新し、救護支援、彼らの居住環境を改善するために必要とする資金の支給を確実にし、彼らの社会生活への参加を改善すること。

o) 環境障害をもった人々のための個別訪問と健康介護を提供すること。

第3条(環境障害の診断と防止)

1. MCSの早期の診断と防止を提供するために、州及びトレントとボルツァーノ自治県は、労働健康社会政策大臣の指針と調整の特別法措置によって確立された基準と方法論について第2条に示されるそれぞれの健康計画と行動を通じて、地域の健康当局に最も適切な措置として下記を指示すること。

a) いずれMCSになるリスクがあるアレルギー患者又は、化学療法の後に薬剤に過敏となるリスクがあるがん患者のように、環境障害をもたらす状況に置かれている人々を特定しやすくするために、環境障害に関連する医療従事者のための基本的及びさらなる訓練を確立すること。

b) MCS、電磁波過敏症、及び多種アレルギーに関連する疾病を監視することにより事態の混乱をを防止すること。

c) 国立監視所(National Observatory)を通じて、環境病又は環境障害を被っている人々の監視を明確にすること。

2. 第1条で言及されている行動の実現のために、地域の健康当局は、州及びトレントとボルツァーノ自治県によって公認されたセンター及び、国家レベルで同意されている特定の規則の採択を含んで早期診断を確実にするためにその使命をネットワーク調整であるとする地域と県のセンターを頼りにするが、それは具体的な診断と治療行為の文書化された経験によって特徴付けられる。

3. 地域の健康当局はまた、以下のことを実施すること。

a) 環境病又は環境障害を持つ人々が必要を生じ又は緊急時に実施されるべき病院収容の規則を採択するよう初期介護チームに要求すること。

b) 各自治県と各州に環境障害に関わる疾病の診断と治療のための相談センター(reference center)を設立すること。

c) 研究、診断、治療に求められる臨床的経験を取得するために、国際的に認定された環境健康サービスにおいて、環境病又は環境障害の治療に関与する医師の訓練を促進すること。

d) 専門家による訪問相談、及び/又は、訓練を受けた健康専門家によるラボテスト実施を手配すること。健康専門家は香料、喫煙による煙の痕跡を取り除き、また電磁波過敏症の場合には携帯電話を撤去すること。

e) ”環境的に管理されたユニット(訳注:クリーンルーム)”及び家庭健康介護、及び/又は環境障害をもたらす疾病の治療に求められるものと同等な材料で作られた移動式歯科治療設備を提供すること。

第4条(食物及び介護のための経済的支援)

1. 環境病又は環境障害を持った人々がバランスのとれた食物を摂取できることを確実にし、体が受容できる特別な製品又はグラス容器入りのミネラル水を購入できるよう貢献すること。

2. 労働健康社会政策大臣は、広報を通じて、上記が言及する貢献の認知のための方法を確立すること

第5条(薬、栄養剤、救護の支援)

1. 国家健康サービス(National Health Service)は、環境障害を持った人々の症状を改善することに大いに寄与する救命薬と内服薬の支給を確実にする。

2. 国家健康サービス(National Health Service)は、香料や化学物質ヒュームが存在せず、明らかに患者の精神的及び身体的症状を改善する治療なら、訪問介護、酸素治療、1人用または複数人用高圧酸素治療、歯科ケア、鍼(はり)治療、運動リハビリテーションを提供する。

3. 国家健康サービス(National Health Service)はまた、環境障害を持った人々のために障害の程度に応じて無料の救護支援の提供を確実にする。環境病又は環境障害を被っている人々のための期待される治療支援には次のことが含まれる。サウナ、布マスク、活性炭フィルター付きマスク、空気及び水清浄器、木綿手袋、読書及びパソコン用換気装置、第3条2項の州又は自治県の相談センターの医師によって処方されるその他の救護。電磁波過敏症(EHS)のための期待される救護に関しては、電磁遮蔽したパソコン、患者の住居、車又は特別な車両を遮蔽するための電磁遮蔽塗料及びカーテン、及び第3条2.3項の州又は自治県の相談センターの医師によって処方されるその他の救護。

第6条(建物及び建設計画規則)

1. 経済的に困難な環境病又は環境障害をもった人々の住居の権利はいくつかの措置によって保証される。

a) 医療ヘルスケア・システムの助言に基づく環境病又は環境障害を持った人々が必要とする個人所有又は賃貸の住宅の改築につてい55%の税控除を行うこと。

b) 各県の首都の公共施設に少なくともひとつは環境的に管理されたユニットの条件を満たす住宅を開発し、又は望ましくは自然公園の中に住居を開発すること。どのような場合も化学物質及び電磁界への暴露源から離れていること。施設は、グリーンで不活性で無臭な材料を使用し、ラドン放射及び微粒子のない、そして各ユニットを隔絶するために制御された排気及び空気浄化システムを備えること。

c) 自然災害や、例えば家の周囲からの危険な暴露から逃げる必要がある等、何らかの理由で家を離れなくてはならない場合に、環境病又は環境障害を持った人々が安全な場所に一時的に避難する時の市民防衛(Civil Defense)の出動及び環境的に管理されたユニットの原則に従った移動式住宅を確保すること。

1. MCS患者のいる家から、都市では半径100メートル以内、農業地帯では半径500メートル以内での殺虫剤、農薬、化学的除草剤の使用が禁止される。農薬散布の日時と時間についての義務的通知は少なくとも1週間前には行うこと。これらの製品は、可能な限り機械的又は天然の製品によって代替されるべきこと。

2. エアフレシュナー、溶剤を含む塗料、及び溶剤の使用は、MCS患者の家から半径50メートル以内及び公共の施設(待合室、手洗い所、救護室、救急室)では禁止されること。これらの製品は、水性、揮発性有機化合物の低放出、香料を含まないものによって代替されるべきこと。

3. Wi-Fi、Wi-Max、DECT、携帯電話、又はラジオ/テレビのアンテナは、電磁波過敏症(EHS)又は生物学的に活性な電磁界への暴露が受け入れられない環境障害を持つ人々の住居又は雇用場所の近くに設置することが禁止される。地域健康サービス(ASL)は、たとえ暴露が既存の法規の制限値以下であっても、電磁界(EMF)特性が時間経過で変化しないことを確実にするために、住居又は事務所の中及び周囲の電磁界を測定し、患者にとって許容できるレベルであることを確実にすること。

4. 自治体は、道路、交通計画を立案し、環境病と環境障害を持つ人々の住居及び職場の存在に応じて、商業活動とアンテナ設置のための認可を発行すること。

5. 自治体は、定期的に高頻度で、(環境病と環境障害を持つ人々を代表する団体との協力の下に)独立した機関によるによる電磁界(EMF)レベル及び大気放出の測定を実施し、対象者に迅速な情報提供をすること。

6. 州は、可能なら自然公園の中に、ただしそこだけに限らず、産業活動、工芸又は農業によって生じる化学物質汚染の全くない、及び、電磁界が電磁波過敏症(EHS)患者にとって安全であるとみなされる0.1ボルト/メートル以下であることによって特徴付けられる”ホワイト・ゾーン”を作ることを促進すること。

第7条(労働と学習の権利保護)

1. 環境病及び環境障害を持つ人々の働く権利を下記措置を通じて保護すること。

a) 特に第5条3項にリストされている人々を含んで職場における適切な支援を採用すること。

b) 化学物質過敏症の場合には職場及び手洗い所の掃除に揮発性有機化合物の放出が少なく、香料の含まれていない洗剤を使用すること。

c) use of furnishings that Hexalin volatile chemicals in case of chemical sensitivity;

d) インクの香料や揮発性化学物質(例えばトナなどー)のための集塵機及び/又は空気交換器の配置。

e) 障害を起こす環境になじまない個人の仕事の変更。

f) 電磁波過敏症(EHS)又は生物学的に活性な電磁界に合わない環境障害を持つ人がいる事務所内での無線通信システム(Wi-Fi、携帯電話、DECT)の使用禁止。

g) 環境病又は環境障害の原因となる環境的作業を請け負った人々のための専門家グループの維持。

h) 病気又は障害を被った人々にとって好都合な場合には在宅勤務の推進。

2. 環境病又は環境障害を持った人々の教育の権利を保護するために、学校の環境と建材に対する適切な措置をとること。例えば化学物質過敏症の場合には香料と化学的クリーナーの使用は禁止されるべきこと。またWi-Fiシステムの使用を禁止、たとえスタンバイ・モードであっても携帯電話のスイッチをオンにしたままにすることの禁止、深刻な症状の場合には離れたところからの授業と観察を用いること。

第8条(選挙における投票及び受験の権利の実施)

1. 環境病又は環境障害を持った人々の投票する権利を保証するために、法2001年12月27日, n. 459によって求められる郵便による投票の権利は、本条2項の規定にしたがって拡張されること。

2. 公共施設への平等なアクセスについて憲法第51条に謳われる権利を確実にするために、環境病又は環境障害を持った人が議会、自治体議会、県、州、又ははその他の公共体に選出され場合、もし保護政策(喫煙禁止、香水をつけることの禁止、携帯電話へのアプローチ禁止、など)が十分でなければ、最終的には建物や家具を改修するための規定を準備し、遠隔地からの会議参加や投票を可能とする手配をするなど、公共施設へのアクセスを確実にする権利が与えられること。

3. 公共又は民間の試験を受ける環境障害を持った個人は、試験会場のために確保された場所が化学物質で汚染汚染されていないことの権利を有する。

第9条(議会への報告)

1. 労働健康社会政策大臣は、環境病及び環境障害の分野における、特に初期診断及び合併症の監視について参照しつつ、知識の状況及び新たな科学的知識に関する年次報告を議会に提出すること。

第10条(財政的範囲)

1. 本法に関わる総額は、2009年〜2011年の3か年予算及び経済財政大臣の特別基金により、部分的には労働健康社会政策大臣の準備金を充当して、2009年以降年間10,000,000ユーロ(約13億円)であると推定される。

2. 経済財政大臣は、1978年法468第7条第2節 2) にしたがって発行される法令に従い、1978年8月5日 No 468 改正法 第11-ter条 第7節 の目的で、この法の実施により生ずるコストを監視し、関連報告書を添えて下院に提出する。

3. 経済財政大臣は法令布告により必要な予算変更を行う権限を与えられる。

On. Dott. ドモニコ・シリポッティ(Domenico Scilipoti)


ドイツCSNのブログに寄せたジョージ・カルロ博士のメッセージ
環境病と環境障害のためのイタリアの法案について
Dr. George L. Carlo 28. December 2009 um 23:13

 私はこの非常に重要な立法のための支援を提供したい。環境病はほとんどの場合認知されず、その増加と蔓延は4〜5%の範囲であると報告されているが、この症状を持つ患者を支援する我々の経験は、この環境病の発症は人口の6%に達することを示唆している。あなた方の提案する法案は、私が世界の他の諸国も従うことを希望するひとつのモデルを示している。あなた方は、先見性と慎重さについて称賛されるべきであり、あなた方の行動は非常に多くの人々の役に立つ。もし、あなた方がここアメリカでの私たちの臨床経験に関する情報を必要とするなら、どうぞ私に連絡してください。
Dr. George L. Carlo;
The Science and Public Policy Institute,
Washington, D.C. at the e-mail provided above.

訳注:ジョージ・カルロ博士は携帯電話の有害影響の研究で有名。
Dr. George Carlo EMF Cell Phone Dangers Interview/YouTube
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=2GD_BKTWyTY&feature=related

訳注1
多種化学物質過敏症(MCS)1999年合意

訳注2
デンマークEPAの報告書 多種化学物質過敏症、MCS

訳注3
予防原則に関する欧州委員会コミュニケーション COM2000

訳注4
国連障害者の権利条約

訳注5
イタリアの地方行政区画/フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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