CSN 2009年12月29日
イタリアの政党 MCS運動で連帯
フランチェスカ・ロマナ・オーランド(AMICA 副代表)

情報源:CSN Environmental Medicine Matters
Italian Parties united the MCS cause December 29, 2009
Author: Francesca Romana Orlando, Journalist and Vice President of AMICA, 29th December 2009
Associazione Malattie da Intossicazione Cronica e/o Ambientale
(Association for Environmental and Chronic Toxic Injury)

http://www.csn-deutschland.de/blog/en/an-italian-law-proposal
-for-environmental-illnesses-and-disability/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma
Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年12月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/Italy/CSN_Italian_parties_united.html



 2006年の初めにAMICA(訳注1)は、全てのイタリア国会議員に対し多種化学物質過敏症(MCS)を社会的な疾病として認めるための立法を請願した。この考えは、この種の認知がセリアック病(訳注2)に対して与えられたことに由来する。そのような深刻な食物不耐性をもった人々が、これらの問題のためにそのような特別の法律を持つことが出来たのなら、MCSも同様な病気であり、多くの患者が存在し、彼らの生活は制限されているのだから、MCSも同じ法律を持てるはずではないか?

 緑の党(Parito dei Verdi (Green Party))のパオロ・チェントはそれに回答し、一緒に法案を作成するようAMICAに要請した。このようにして、初めてMCS認知に向けた最初のMCS法案がは2006年に提出された。

 その当時、3つの州議会(Tuscany, Emilia-Romagna, Abruzzo)が既にMCSを難病として認めていたが、2つの州で、任命されたMCS委員会の医師らは、”MCSについて十分な証拠がない”と主張して診断することを望まなかった。MCS基準についての国際合意(訳注3)があるにも関わらず、彼らは新たな基準を見つけるために観察研究を計画した。したがって実質的には、患者達は適切な診断と治療を受けることができず放置された。

 一方、公衆健康機関である高等健康研究所(Superior Institute for Health (ISS))は、健康省の科学部門である高等健康評議会(Supreme Council of Health (CSS))がレビューし署名すべきMCSについての見解書を作成することを目指して州間委員会(inter-regional Commission)を設立した。2008年9月、CSSは、”MCSは証拠が不十分であり、一義的な診断テストが存在しないので、疾病として認めることは出来ない”と主張する最終MCS文書を発表した。MCS活動家らはこの古い話をよく知っている。

 実際に州間ISS委員会の見解書は、産業側と結んだ研究者によるいくつかの研究を引用しており、また、1996年ベルリンの WHO-IPCS合意(WHO-IPCS consensus of Berlin in 1996)が発表されることを前提にしていた(訳注4)。 ニコラス・アシュフォード(Nicholas Ashford)やクラウディア・ミラー(Claudia Miller)ら主要な専門家によって書かれたMCSについての有名な書物によれば、どのようなWHO-IPCS合意も存在しないと明確に説明している。

 したがって、AMICAは再び国会議員に対して、MCSについての重要な科学的文献を考慮しなかったISSとCSSの見解書について調査するよう要請した。イタリア下院議員ジョルジオ・ジャノンは健康大臣に対し、MCSは小児の病気でもあるのに、なぜ州間委員会は主に職業病医師による見解書を作成したのか、議員質問をした。これに対する回答はいまだにない。

 実際にイタリアの職業病医師は、彼らの専門家組織がMCSを診断しMCSを研究することは金と時間の無駄であると主張する強い反MCS見解書を2005年に発表して以来、MCSの診断を禁じられている。

 イタリアにおけるMCS認知に対する唯一の希望は政治家の手の中にあり、AMICAは全ての政党の議員ともに活動してきたということである。今日、実際に、自由党(Liberty Party)による5つの提案と野党である民主党(Democratic Party)と価値あるイタリア(the Italian Party of Values:IDV)による4つの提案がある。

 12月だけで3つの新たな法案が提出された。それらの中でドメニコ・シリポッティ議員(IDV)による法案(訳注5)は、もっと幅広く環境病と環境障害として認知を求めるAMICの要求を考慮した全く新たなものである。この法案は、その生存と生活の質を薬に多くを頼るのではなく、ある環境的要因を忌避することに頼る人々に向けたものである。

 最も一般的な環境病であるMCSは化学物質の不耐性を伴い、電磁波過敏症(EHS)は携帯電話、WWi-Fi、送電線などによる電磁界から影響を受ける。

 さらに、線維筋痛症(Fibromyalgia)と慢性疲労症候群(CSF)の患者は通常、化学物質不耐性を被り、科学的証拠は化学物質を避けることでこれらの症状は改善することを示唆している。自閉症、てんかん、偏頭痛、狼瘡は蛍光灯への反応をもたらす。しかしまた、もともとは環境により引き起こされるものではない、いくつか他の病状がある。それらには、マメ科植物に激しく反応し、それを忌避しなくてはならない遺伝的ソラマメ中毒(favism)のよう、ある環境的な質に反応を示すものもある。

 トスカーナ州の緑の党の代表は本日、AMICAに対して、彼らは環境障害のためのこの法案を州健康委員会(Regional Commission for Health)に提出し、州法にもなることを望んでいると伝えてきた。

著者:フランチェスカ・ロマナ・オーランド(、ジャーナリスト/AMICA 副代表)2009年12月29日
Author: Francesca Romana Orlando, Journalist and Vice President of AMICA, 29th December 2009
Associazione Malattie da Intossicazione Cronica e/o Ambientale
(Association for Environmental and Chronic Toxic Injury)
www.infoamica.it

関連記事

各法案へのリンク:

イタリア下院(At the Chamber of Deputies) イタリア元老院(上院)(At the Senato)

訳注1:AMICA
イタリアのNGO/Associazione Malattie da Intossicazione Cronica e/o Ambientale
(Association for Environmental and Chronic Toxic Injury)

訳注2:セリアック病
小麦や大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患。
セリアック病:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

訳注3:MCS 国際合意
多種化学物質過敏症(MCS)1999年合意

訳注4:1996年ベルリンの WHO-IPCS合意
 WHO、ILO、UNEPはドイツ政府とともに1996年にベルリンで国際ワークショップを開催した。アメリカ、カナダ及びいくつかのヨーロッパ諸国から専門家が参加するよう要請された。欧州環境総局の代表もまた参加し、化学産業界からの何人かの代表も参加した(IPCS- report of multiple chemical sensitivities, 1996)。
 ワークショップの最終文書は発行されなかったが、それは参加者が結論に同意することができなかったからである。WHOはこの会議以来、何もしていない(pers. com. Dr. Younes, IPCS/WHO Geneva, 2001)。
デンマークEPAの報告書 多種化学物質過敏症、MCS
 参照:上記の3.4 国連/WHOの下での活動国際化学物質安全プログラム(IPCS) ベルリン・ワークショップ 1996年

訳注5
CSN 2009年12月21日 イタリア議員による立法提案 環境病患者の保護のための規則 ドメニコ・シリポッティ議員(IDV)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る