MedPage Today 2018年12月4日
身体手入れ用品への暴露は
少女らの思春期早発と関連する

パラベンやフタル酸エステル類を使用する少年らに関連は見られない
クリステン・モナコ

情報源:MedPage Today, December 4, 2018
Personal Care Product Exposure Tied to Girls' Early Puberty
-Associations weren't seen among boys using parabens, phthalates
by Kristen Monaco, Staff Writer, MedPage Today
https://www.medpagetoday.com/pediatrics/generalpediatrics/76699

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年12月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/181204_MedPage_
Personal_Care_Product_Exposure_Tied_to_Girls_Early_Puberty.html

 化粧品やその他の家庭用品によくみられるいくつかの内分泌かく乱化学物質類(EDCs)への若年期の暴露は少女の思春期早発に関連づけられたが、少年らにそのようなことが見られることは少ないと、研究者らは報告した。

 カリフォルニア大学バークレー校のキム・ハーレーと同僚らにより書かれ、『Human Reproduction』に発表された論文は、ヒスパニック系参加者の長期的なコホート研究で、出生前及び思春期前後における化粧品やせっけん中に見られるパラベン、フタル酸エステル類、及びその他の EDCs への暴露と少女らの思春期早発を関連付けた。

 研究者らは、妊娠中の母親の尿中のある化学物質のためのバイオマーカー濃度が 2倍増大していることを発見した。そのことは少女の陰毛及び初経の平均発現が有意に早いことに関連していたが、乳房発育開始とは結び付いていなかった。(P<0.05 for all)
  • フタル酸モノエチル:1.3か月早い初経 (95% CI -2.5 to -0.1)
  • トリクロサン:0.7か月早い初経 (95% CI -1.2 to -0.2)
  • 2,4-ジクロロフェノール:0.8か月早い初経 (95% CI -1.6 to 0.0)
 少年の性腺系成熟(gonadarche)の有意な早期開始と関係づけられるバイオマーカーは 9歳時におけるプロピルパラベンへの高暴露だけであった。平均より10か月早い (95% CI -1.8 to -0.1 months)。他の環境化学物質で少年らの早期の性腺系成熟又は陰毛発現に関係するものはなかった。

 著者らは、研究の限界は、子どもたちは全て農場地域に住むラテン系アメリカ人であるという事実を含んでいたことに注意を喚起した。また、思春期早発を経験した子どもたちは、身体手入れ用品をより多く使用すると思われるので、逆の因果関係が可能となると、彼らは述べている。

 ”我々はすでに、身体手入れ用品中で広く使用されているある化学物質類−フタル酸エステル類、パラベン類、そしてトリクロサンなど−は、内分泌かく乱物質であることを疑っている。これらの化学物質はエストロゲンのような我々の体内の天然のホルモンを擬態し、阻止し、又は干渉する”。

 ”実験室の研究では、これらの化学物質はラットに思春期早発を引き起こすことが示されていたが、人間での研究は非常に少なかった。”さらに、内分泌かく乱影響は、子宮内又は思春期のような発達の特定の臨界期(critical windows)に特に重要であることを我々は知っている。この研究は、人間の子宮内での暴露を観察した最初の研究のひとつであり、子宮内及び思春期の両方での暴露を検証する機会を我々に与えたという理由で重要であると、彼女は述べた。

 ハーレイはまた、これらの化学物質は香料中でよく使用されているフタル酸エステル類や抗菌特性のためにせっけんや歯磨き中でしばしばみられるトリクロサンのように日用品中で広く使用されていることに言及した。

 子宮外でのこれらの化学物質への暴露もまた、少女の思春期早発に関連していた。特にプロピルパラベンと 2,5-ジクロロフェノールの尿中濃度が 9歳において倍増すると、0.8か月の早発 (95% CI -1.6 to -0.1) 及び1か月の早発(95% CI 0.1-1.9)と関連した。

 小児期のメチルパラベンへの暴露に関しては、乳房発育開始、陰毛発生、初経が有意に早まることと関連していた。
  • 1.1 か月早い乳房発育開始 (95% CI -2.1 to 0.0)
  • 1.5 か月早い陰毛発生 (95% CI -2.5 to -0.4)
  • .0.9 か月早い初経 (95% CI -1.6 to -0.1)
 ”我々は少女の思春期開始年令が過去数十年間で早くなっていることを知っているので、このことは重要である。ひとつの仮説は、環境中の化学物質がある役割を果たしているかもしれないということであり、我々の発見はこの考えを支持するものである”とハーレイは述べた。”少女らの思春期早発は彼らの精神健康問題と10代としての危険行動のリスクを高め、長期的に乳がんと卵巣がんのリスクを増やすので、これは目を向けるべき重要な問題である”。

 その分析対象は、カリフォルニア州に在住の 338人の子どもと彼らの母親で、ほとんど全てがラテン系アメリカ人である。1999年と2000年に妊娠した母親の尿サンプルが、4 種のフェノールとともに、3種のフタル酸エステル類代謝物、メチルパラベン、及びプロピルパラベンアについて分析された。思春期前後の 9歳児のフェノールとパラベンのレベルを評価するために彼らの尿サンプルが収集された。子どもたちのフタル酸エステル類のレベルは。、予算の都合上評価されず、それは発見のひとつの限界であった。子どもたちは、タナー段階(訳注1)を評価するために 9歳から13歳までの間、9か月ごとに追跡調査された。

 ”これは依然として研究の盛んな分野であり、もっと多くの研究が必要である。しかし、我々は、毎日、体につける製品中で広く使用されているいくつかの化学物質はホルモン及び生殖の発達に影響を及ぼしていたかもしれない証拠について懸念している”と、ハーレイは結論付けた。

 研究は国立環境健康科学研究所(NIEHS)及び米国環境保護庁(US EPA)により資金的支援がなされた。

 ハーレイと共著者らは産業側との関係はないことを明らかにした。

一次資料
Human Reproduction
Source Reference: Harley K, et al "Association of phthalates, parabens and phenols found in personal care products with pubertal timing in girls and boys" Human Reproduction 2018; DOI:10.1093/humrep/dey337.



訳注1
タナー段階/ウィキペディア
 ヒトが幼児期から青年期、成人になるまでの成長を、男性器(男性)・乳房(女性)の発達状況、陰毛(男女)の発生・発達状況など、外部からわかる第一次(男性器・乳房・陰毛の何れもTannerI)および第二次性徴(男性は男性器・女性は乳房で TannerII以降)に基づいた性的発育の物理的測定値をもとに定義した指標。

訳注:当研究会が紹介した関連情報


化学物質問題市民研究会
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