Forbes 2012年3月8日
新たな研究が
日用品中に隠された危険に光を当てる
たとえグリーン製品でも


情報源:Forbes, 3/08/2012
Study Highlights Hidden Dangers In Everyday Products -- Even The "Green" Ones
By Amy Westervelt
http://www.forbes.com/sites/amywestervelt/2012/03/08/
study-highlights-hidden-dangers-in-everyday-products/


オリジナル論文:EHP Online: 08 March 2012
Endocrine Disruptors and Asthma-Associated Chemicals in Consumer Products
(消費者製品中の内分泌かく乱物質とぜん息に関連する化学物質)
アブストラクト:http://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104052
全文:http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchObjectAttachment.action;jsessionid=
C3AAB8E73C090F59F8FF8FADA5EBAF46?uri=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104052&representation=PDF


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年3月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/120308_Fobes_dangers_in_everyday_products.html


 Environmental Health Perspectives に本日発表された、この種の初めてピアレビューされた研究が、よく使用されている家庭用品や身体手入れ用品中に、懸念ある多数の表示のない化学物質が存在することを明らかにした。この研究は「沈黙の春」研究所(Silent Spring Institute)がオハイオ州にあるバテル・ラボ(Battelle Labs)に213の消費者製品(50カテゴリー)を内分泌かく乱作用又はぜん息に関連する66の特定化学物質(懸念化学物質)についてテストさせたものである。

 この研究は、Windex ガラスクリーナーや Irish Spring 脱臭石けん、さらには従来の製品よりもっと安全な成分を含むとして市場に出されている七世代安全清浄(Seventh Generation Free and Clear)な天然ガラス及び表面クリーナーや、トムズ オブ メイン(Tom's of Maine )の天然モイスチライジング ボディーバーのような”代替製品”も含んでいる。ラボテストは、従来の製品サンプルからパラベン、フタル酸エステル類、ビスフェノールA(BPA)、抗菌剤、環状シロキサン、グリコールエーテル類、芳香剤など懸念ある55の化学物質を検出し、また11の代替製品から41種の懸念される化学物質を検出した。これらの化学物質のうち極めて少数のものを以外は製品ラベル中に記載されていなかった。

 この研究の発表にあたり、「沈黙の春」研究所は下記の研究結果を特に重要なこととして言及した。
  • シャワーや枕プロテクターのようなビニル製品は、内分泌かく乱物質(抗アンドロゲン)であり、いくつかの研究で呼吸器系症状の悪化と関連していることが示されているフタル酸エステル類 DEHP を重量で10%以上含んでいる。
  • エアーフレッシュナー、ドライヤーシート、香水などを含む芳香剤や日焼け止めは懸念化学物質の数が最大であり、最大濃度を持つものをいくつか含んでいる。芳香剤はぜん息を引き起こし、ラボ研究ではエストロゲン様作用を示し、乳がん細胞を成長させる。
  • 表示されている成分以外に、代替日焼け止めは表示されていない7種類の懸念化学物質を含んでいた。それらの製品にはエストロゲン様UVフィルターなどがある。最も多くの懸念化学物質を含む代替日焼け止めは、赤ちゃん用、子ども用、過敏な大人用として市場に出されている製品であった。
  • テストされた代替製品としての表面洗浄液、バスタブ及びタイル洗浄液、洗剤、固形石けん、シャンプーとコンディショナー、洗顔料とローション、練り歯磨きを使用している消費者は19種の懸念化学物質に曝露しているであろう。
 しかし、製造者は、この研究を偏向しており古い情報に一部基づいているとして批判している。”この研究は、偏向した政治的研究の典型である”と、国際香料協会北アメリカの科学アドバイザーであるウイリアム・トロイ(Ph.D.)は述べた。”それは古い情報と手法を焼きなおしたものであり、科学的プロトコールの基本的原則と標準、及び調査を無視している”とトロイ博士は述べた。

 「沈黙の春」研究所は、この最新の研究は始まったばかりであり、明らかに今後テストされるべき数千以上の製品が存在し、これらの化学物質が人の健康に及ぼす影響に関しもっと多くの研究が必要であるということを認めた。それにもかかわらず、環境健康を唱道する人々は、この研究は公衆がいかに様々な化学物質に曝露しているかについてのもっと多くの研究への出発点となるであろうことを希望している。”平均的な家庭におけるこれらの化学物質への曝露に関してなされた多くの研究があり、我々はこれらの化学物質が人々の家の中の空気やホコリの中に見出されることを知っている。疾病管理センター(CDC)は、我々の体の中にも同様にこれらの化学物質が見つかることを示している”と、この研究の主著であるロビン・ドットソン博士は述べた。”現在、我々はこれらの化学物質がどこから来るのか、そしていかに人々がそれらに曝露しているのかを理解しようとしている”。

 そのような曝露についてのもっと多くの情報があれば、消費者が可能な限り曝露を回避するのを助けるために、政策策定者が様々なカテゴリーの製品の製造者にもっと一貫した厳格な表示要求を課することに拍車をかけることができるであろう。”これらの製品の多くは、十分にはラベル表示がなされていないので、我々は、日用品中に存在する化学物質い関して我々が必要とする情報を持つことができない”とドットソン博士は述べた。

 確かに製品ラベル上に成分の全てを開示する製造者はおらず、彼等の表示の透明性を改善するために唱道者やNGOsが多くの活動をしている。多くのケースにおける問題は、消費者日用品の全ての種類にわたる統一された製品表示要求がないということである。

 化粧品はクリーニング製品とは異なる表示要求であると説明しつつ、”全製品にわたる表示要求はツギハギだらけである”とドットソンは続ける。”クリーニング製品については、事実上表示要求はない。もし抗バクテリ剤や抗微生物剤を含んでいるなら、EPAはこれらの成分は農薬であるとみなしているので、製品ラベル上に表示しなくてはならない。そうでなければ、クリーニング製品のラベル上に’98% その他’という典型的な表示を見るであろう。実際にはそこには何も情報がない。もっと包括的な表示要求があれば、消費者がもっと情報に基づく選択をするのに必ずや役立つであろう”。

 アメリカにおける現在の化学物質規制の改正は、消費者が潜在的に有害な化学物質の曝露を回避するのに役立てることができるであろう。現在、有害物質規正法(TSCA)と身体手入れ用品を規制する連邦食品医薬品化粧品法の改正のための取り組みが行なわれているが、両方とも数十年間改正されていない。「沈黙の春」研究はまた、様々な化学物質がどのように相互作用するかを精査している毒性学者に対する出発点を影響する。規制は化学物質毎と、製品毎に記述されているが、平均的な消費者は1日にいくつかの製品を使用しており、それらの製品中の様々な化学物質に曝露している。懸念ある様々な化学物質がお互いにどのように作用するのか、又は平均的なアメリカ人が一日にどの程度これらの化学物質に曝露しているのかについては、ほとんど知られていない。この研究は、特に問題があると考えられるいくつかの化学物質混合物を特定している。

 ”DEHP(塩化ビニル中で一般的に使用されているフタル酸エステル類エステル)は、しばしば香水とともに作用してぜん息を引き起こすことがあり、エストロゲン様作用も示すので、その混合物の研究が必要である”とドットソン博士は述べている。”単に毒物学的観点からだけでなく、リスク評価を改善するために”。

 この研究の結果について恐らく最も驚いたことは、”グリーン”あるいは”自然”として市場に出されている製品の中に懸念する様々な化学物質が使用されていることがわかったことである。消費者のお気に入りの製品に実際には潜在的に有害な化学物質が含まれているという発見は、消費者を怒らせるだけでなく、製造者が米連邦取引委員会のグリーンガイド違反であるとして法的措置の対象となるリスクに曝されるということになる。そのガイダンス次のように述べている。

 ”連邦取引 委員会法(Federal Trade Commission Act)第5条は、取引における不法な詐欺行為とその慣行を規定する。主張が明示的か暗示的かを決定するための基準は詐欺に関する委員会の政策声明にはっきり示されている。さらに、製品、容器包装、又はサービスの環境的属性について何らかの明示的又は暗示的な客観的断定を主張するどのような当事者も、主張がなされた時に、その主張を実証する合理的な根拠を保持するか又はそれに依拠しなくてはならない。合理的な根拠とは、適格で信頼できる証拠からなる。環境マーケッティングの主張という脈絡の中で、そのような実証はしばしば、関連する分野の職業的専門性に基づき、適格な人により客観的な手法で評価され、正確で信頼性のある結果を生み出す専門家により実施され、評価されたテスト、分析、研究、調査又はその他、適格で信頼できる科学的証拠を求める。

 そこで、もし、”グリーン製品”の表示ですら信頼できないなら、健康志向の消費者は何をしたらよいのか? ドットソンは、単純に合成洗浄剤や身の回り手入れ用品の使用を減らすことから始めることを示唆している。彼女はまた、製品ラベルに表示することが求められている二つのしばしば有毒な成分を避けるよう勧めている。芳香剤と抗菌剤である。”芳香剤製品を避けることはこれらの化合物の多くへの曝露を著しく削減することができる”と彼女は言う。”もうひとつも易しいことで、抗菌剤を避けることである。人々は、本当は必要ないのにそれらを使用しており、それらの多くは表示されている”。

 「沈黙の春」研究所は、消費者への助言のリストを用意している。例えば、植物性成分の製品を探し、洗浄用には、普通の水、ベーキングソーダ(重曹)、酢を使用することなどが含まれている。恐らく驚くことは、その助言リストは、太陽光からの保護のための日傘、帽子、おおいなどを含んでいる。

 ”日焼け止めに関するテスト結果は気にかかる内容であった”とドットソンは言う。”我々は4種類の従来商品と5種類の代替商品をテストした。あるものは他のものより良かったが、全ては懸念ある化学物質のいくつかを含んでいた。我々は、5種類の入手可能な日焼け止め製品をテストしただけなので、これらの化学物質を含まないものもあるのかもしれない。そのことは、良い日焼け止めを探すのに時間がかかることを意味するかも知れないが、もし回避したいなら、日傘や帽子を選ぶこともできる。それは素晴らしいことだ”。

 ”日焼け止めは、グリーンケミストリー運動の広告塔(ポスターチャイルド)となっている”とドットソンは付け加えた。”我々は内分泌かく乱物質ではないが、皮膚がんから保護してくれる何かを作り出すことができるのではないか?”。

**この記事は、2012年3月8日に、国際香料協会北アメリカからのコメントを含めるために修正された。**

**補足**ある読者から、懸念化学物質が見つからなかったのはどのような製品か−との問い合わせがあった。そのような製品は次の11製品であった。

  1. Healthy Pet Foods Here's the Scoop! Natural Unscented Clay Clumping Litter
  2. Seventh Generation Chlorine-Free Diapers
  3. Bon Ami Polishing Cleanser, No Chlorine, Perfume or Dye
  4. Seventh Generation Free and Clear Dishwashing Detergent
  5. Seventh Generation Free and Clear Natural Dish Liquid
  6. Tom's of Maine Natural Long-Lasting Deodorant Stick, Aluminum-Free, Unscented
  7. Bean Products Pure Cotton Shower Curtain
  8. Excell Home Fashions Ultimate Nylon Shower Curtain or Liner
  9. Carapelli Extra Light Olive Oil
  10. Magick Botanicals Fragrance Free Hairspray
  11. Dr. Bronners Magic Soaps Unscented Baby-Mild Pure Castille Soap


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