Earth Island Journal 2016年3月7日
化粧品を変えれば
10代女性の内分泌かく乱化学物質への
暴露を減らすことができる

エリザベス・グロスマン

情報源:Earth Island Journal, March 7, 2016
Switching Cosmetics Can Help Teens Reduce Exposure to Hormone-Disrupting Chemicals
by Elizabeth Grossman
http://www.earthisland.org/journal/index.php/elist/eListRead/
switching_cosmetics_can_help_teens_reduce_exposure_to_hormone-disrupting_ch/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年3月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA
/160307_Switching_Cosmetics_Help_Teens_Reduce_Exposure_to_EDCs.html


これらの化学物質を含まないと表示されている即納品を3日間使用するだけでも暴露レベルを大きく下げることができることを研究が示している。

 本日、Environmental Health Perspectives に発表された研究によれば、ある内分泌かく乱成分を含まない化粧品とパーソナルケア製品を3日間使用するだけで、女性はこれらの化学物質への暴露を著しく減らすことができる。

 カリフォルニア大学(UC)バークレー校、カリフォルニア州公衆保健局、及びクリニカ・デ・サルー・デル・バジェ・デ・サリナスの研究者らによるその研究は、100人のラテン系の10代女性がこれらの成分を含まないと表示されている即納品を使用する前及び使用した後に、内分泌かく乱物質として知られ、一般的に使用されている 4つの主要な化粧品成分、フタル酸エステル類(訳注1)、パラベン(訳注2)、トリクロサン(訳注3)、及びオキシベンゾン(訳注4)の彼女らの体内レベルを測定した。

 これらの化学物質はサンスクリーン、整髪料、香水を含んでパーソナルケア製品と化粧品中で広く使用されている。これらは全て実験室の研究で内分泌系を阻害することが示されているが、この内分泌系は、心血管系、免疫系、及び神経系の機能と同様に、発達、生殖及び代謝を制御するのに役立っている。これは、これらの化学物質を含まないと表示されている製品を使用することによって個人の暴露レベルが著しく低減することを示した初めての研究である。

 ”女性は多くのパーソナルケア製品の主要な消費者なので、これらの化学物質に不釣り合いに暴露しているかもしれない ”とこの研究の主著者であり、UCバークレー校環境研究子ども健康センターの副ディレクターであるキム・ハーレイは述べた。”10代の少女は、急速な生殖的発達の時期なので、特別のリスクがあるかもしれず、また彼女らは平均の成人女性より1日当たりより多くのパーソナルケア製品を使用することが研究で示されている”。

 ”研究によれば、一人の女性又は少女は1日に12品種の製品を使用するとされており、私は私の体に何が入り込みむのかを知りたいし、また私がこの研究で知ったことを友達に伝えたいと思った”と、この研究に参加し、また研究の手伝いをした19歳のUCバークレー校の新入生キャロライン・ムンドは述べた。

 この研究のために研究者らは、14歳から19歳までの10代の少女を募集し、代替のパーソナルケア製品と化粧品を与え、3日間使用してもらった。”我々は可能な限り持続可能なものにしたかったので、製品は地域の店から主流であるが高価ではないものを入手した”と、ハーレイは述べた。標的とする化学物質のレベルは、代替品を使用する前と後に参加者の尿を測定することで得た。

 少女のほとんどは、定期的にメークアップをし、香水を用いると報告した。ほとんどすべての少女がモイスチャライザーを使用していた。代替製品の使用前この研究の標的化学物質のレベルが測定された。同じ化学物質が3日目の最後に測定されたが、全てのレベルは明らかに低下していた。

 芳香剤中で一般的に使用されるフタル酸ジエチルは27%減少したが、石けんやある練り歯磨きの中で殺菌剤として使用されるトリクロサンや多くのサンスクリーン中で使用されるオキシベンゾンのレベルは36%降下した。最大の減少が観察されたのは防腐剤として使用されるメチル及びプロピルパラベンで、それぞれ44%及び45%減少した。

 幾分驚いたことは、あまり使用されない二つのパラベン−エチル及びブチルパラベン−は、調査期間中に増加したということである。これらのレベルは極めて低く、調査対象の少女らの約半分にのみ検出されたとハーレイは述べた。我々はそれがどこから来たのかわからない”と彼女は述べた。しかし、ひとつ考えられることは、それらは製品中に存在していたかもしれないが成分リスト中に含まれていなかったか、又は製造中の非意図的な汚染の結果として製品中に存在したのかもしれないということである。

 ”私にとって最大の収穫は、我々は10代の少女の体内の内分泌かく乱化学物質のレベルを測定したということである”とハーレイは述べた。”少女たちの90%以上は調査に参加した時に、体内に検出可能なレベルでこれらの化学物質を持っていた。そして我々が彼女たちに普段使っている製品を3日間だけ使用を中止するよう頼んだところ、そのレベルを低くすることができた”。

 ムンドはこの研究の結果として、彼女が使用している化粧品とパーソナルケア製品を変えようと思ったと述べた。”私の香水と私の祖母が私のためにメキシコから持ってきてくれた体臭防止剤の使用を止めるのは本当につらかった”と彼女は述べた。”私は、香水を含んだ製品を止めるよう、またもっと有機のメークアップ使うよう、試みた。そして私は、縮れ毛防止クリームの代わりに、ヤシ油を整髪に使用している”。

 この研究から何を学んだかを彼女に問うと、、”もし我々がこれらの製品を使い続けるなら、もしあなたが妊娠したなら、これらの化学物質は発達中の胎児に移行することができるので、あなたの赤ちゃんは生まれる前に汚染(pre-polluted)されることになる”と懸念を述べた。”私のおばさんは一年前に妊娠し、私は彼女にいつもの製品を使用しないよう言い続けた”とムンドは述べた。彼女はまた、米国食品医薬品局(FDA)がこれらの製品のすべての中に何があるのか実際には知らないということを知って驚いたと述べた。

 これはムンドだけのことではない。メルマン・グループとアメリカン・ビューポイントにより先週発表された世論調査で調査対象者800人のうち3分の1が、連邦政府の化粧品とパーソナルケア製品の成分の監督と規制はもっと厳しいものであると思っていた。90%近くがそのような製品に対してもっと厳格な規制を望んでいたと述べた。事実は、現在、アメリカで一年間に売られている80億以上のパーソナルケア製品と化粧品を監督する連邦機関の FDA は、驚くほど少ししかこれらの製品に何が入っているのか知っていないということである。

FDA はまた、化粧品中又はパーソナルケア製品中の内分泌かく乱物質、発がん性物質、及び生殖毒性又は発達毒性物質として特定された物質の使用を具体的に禁止していない。現在、わずか 8物質(いくつかの発がん性物質、肺毒性物質、及びオゾン層破壊物質のクロロフルオロカーボン(フロン)が具体的にこれらの製品で禁止されているだけであり、FDA が上市前に承認しなくてはならない色素添加物を除いて FDA は化粧品が店の棚に届く前にその成分をテストすることはない。もし消費者が化粧品を使用した後有害健康影響を報告すれば、FDA はその製品をテストし、市場から回収することを勧告するかもしれないが、FDA は実際にパーソナルケア製品と化粧品を回収させる権限は持っていない。その代わり、FDA は製品が市場に出る前に製造者が自主的に製品の成分と安全性をテストすることに依存している。そして、これらの製品を規制する連邦食品化粧品法は、80年近く前に制定された法律である。

 上院議員ダイアン・ファインスタイン(民主党)とスーザン・コリンズ(共和党)により導入された超党派法案は、これらのギャップのあるものを埋めることを目指している。パーソナルケア製品安全法(Personal Care Products Safety Act (S. 1014))と呼ばれるこの法案は、FDA にパーソナルケア製品中で使用されている化学物質の安全性を評価することを求め、有害であることが発見された成分を禁止又は制限する権限を FDA に与えることにより、現状の規制を強化するものである。この法案はまた、FDA が、現在は企業秘密であるとして権限が与えられていない香料中の成分の開示を求めることを許し、会社に対してかれらの製品に関連するどのような重大な健康上の出来事についても FDA に報告することを求める条項を含んでいる。

 この法案は現在、 パーソナルケア製品評議会、及びエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ、内分泌学会、及びマーチオブダイムを含む多くの環境健康団体はもとより、プロクター・アンド・ギャンブル、ロレアル、レブロン、及びジョンソン・エンド・ジョンソンを含む多くの化粧品会社の支持を得ている。 法案の公聴会は今春後半に開催されることが予測される。

 しかし、環境健康推進団体の全てが、現在の法案を支持しているわけではない。”それは、超党派であるので、本当に重要で価値のある法案である”と、安全な化粧品キャンペーンの共同設立者であるジャネット・ヌーデルマンは述べた。しかし、彼女は、より強い安全基準とサプライチェーンを通じて成分と安全データへのより良いアクセスを確実にする条項はもちろん、香料成分の完全な開示を含めるために強化された最終的な立法を彼女のグループは見たいと、彼女は述べた。

 ”どのような改革がなされようと、我々はそれが可能な限り健康保護的であり、意味があるということを確認したい”と、ブレスト・キャンサー基金のプログラム及び政策ディレクターでもある ヌーデルマンは述べた。現在行われているシステムは、”ホルムアルデヒド、内分泌かく乱物質、そしてリップスティック中の鉛など、毎日、新聞の見出しを賑わす結果となっている”。

###  エリザベス・グロスマン:Earth Island Journal への寄稿ライター エリザベス・グロスマンは、次の本の著者でもある。Chasing Molecules: Poisonous Products, Human Health and the Promise of Green Chemistry, High Tech Trash: Digital Devices, Hidden Toxics, and Human Health, Watershed: The Undamming of America, and other books. 彼女の著作は Scientific American, Salon, The Washington Post, The Nation, Mother Jones,
訳注1:フタル酸エステル類
  • フタル酸エステル/ウィキペディア
     内分泌攪乱物質である疑いが強く、ヨーロッパでは近年使用規制の動きが強まっている。(フタル酸系可塑剤の環境問題については記事 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)#環境暴露の節で詳説。)

  • フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)/ウィキペディア
     一般には略号DEHPが使用される。DEHPは食物や水から吸収される可能性があり、牛乳やチーズから相対的に高いレベルで検出される。またプラスチックに接触することで飲食物等に移動してくる可能性がある。アメリカ食品医薬局は飲料やスープなど液体容器にDEHPを含有する製品の使用を禁止している。日本では 2002年に厚生労働省より、食品用の器具や容器包装およびおもちゃについてDEHPを原材料とするポリ塩化ビニルの使用を禁止する通知が出された。

訳注2:パラベン類
  • パラオキシ安息香酸エステル/ウィキペディア
     主に飲料向けの防腐剤として使用されているが食品・医薬品あるいは化粧品の防腐剤成分名として掲示する場合に、製品に複数種含まれるパラオキシ安息香酸エステルを総称してパラベン(paraben)と呼称される。ウィキペディアにはなぜか有害性についての記述はない。

  • パラベン類の安全性/医薬品情報21
     paraben類は内分泌かく乱作用を持つ可能性があることが指摘されている。 paraben類は保存料として一般の環境で広範囲に使用されている。

  • 防腐剤(パラベンなど)/完全無添加化粧品ガイド
     “パラベンの代用”とも言われる「フェノキシエタノール」や、天然の殺菌成分といわれる「ヒノキチオール」という成分にも、肌への刺激性があることが報告されている・・・ 。

訳注3:トリクロサン
訳注4:オキシベンゾン


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