EHP 2016年10月1日
より良い美容法に向けて
身体手入れ用品からの潜在的な EDC 暴露を減らす

キャリー・アーノルド

情報源:Environ Health Perspective, October 2016
Toward a Better Beauty Regimen:
Reducing Potential EDC Exposures from Personal Care Products
By Carrie Arnold
A freelance science writer living in Virginia.
Her work has appeared in Scientific American, Discover,
New Scientist, Smithsonian, and more.
http://ehp.niehs.nih.gov/124-A188/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年11月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/
16_10_EHP_Toward_a_Better_Beauty_Regimen.html

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アイリーン・ベラ(左)と若者地域協議会の仲間らは HERMOSA 研究を支援した。 Photo: Kimberly Parra
 カリフォルニア州サリナスの高校生としてアイリーン・ベラは、カリフォルニア大学(UC)バークレー校のサリナスの母親と子どもの健康評価センター(CHAMACOS)のプロジェクトである若者地域協議会(Youth Community Council)のメンバーであった。このプロジェクトの目的は、地域の若者を研究、教育、及び活動を通じて環境健康リーダーとして訓練することであり、ベラはその若者地域協議会を通じて身体手入れ用品中の潜在的な内分泌かく乱化学物質について学んだ。彼女と仲間の協議会メンバーは、どのようにして十代の少女がこれらの化学物質に曝露するか、そして暴露を低減するため方法を調査するために、UC バークレーの環境健康科学者キム・ハーレイと共に活動した(原注1)。

 HERMOSA (サリナスの少女の化粧に関する健康と環境研究)調査は、ラテン系10代少女の化粧品及びその他の身体手入れ用品に含まれるフタル酸エステル類、パラベン、トリクロサン、ベンゾフェノン 3 への暴露を測定した(原注:hermosa (エルモソ)はスペイン語で”美しい”を意味する)。これらの化合物は動物及び細胞研究で内分泌活性を示している(原注 2, 3, 4, 5

 女性は男性より平均して身体手入れ用品を多く使用するのでフタル酸エステル類とパラベンに不均衡に暴露する( 原注6)。10代の少女は一般女性より多くの製品を使用する傾向があり、一般女性の平均12製品に比べて平均17の異なる製品を使用している(原注7)。

 しかし、まだ不明確なことは、これらの暴露は実際に人々を損なうかどうかということである。”我々はこれらの化学物質の長期的な健康影響があるかどうかわからないが、十代の少女の暴露について懸念する理由がある。それは彼女らが急速な生殖系発達の時期にこれらの製品をたくさん使用するからである”とハーレイは言う。

 また、ひとりの人間の身体手入れ用品に由来する合計暴露がどのくらいなのかも不明確である。パラベン、フタル酸エステル類、ベンゾフェノン 3 (BP-3)及びトリクロサンは広く使用されていると、沈黙の春研究所の研究ディレクター、ラザン・ルーデルは言う。”広く使用されている化学物質なので、暴露に最も影響を及ぼす源がどれなのか知ることは難しい”。ルーデルはこの研究に関与しなかった。

 ベラと若者地域協議会の他の十代の若者らは、参加者の募集からデータの分析まで、この調査のあらゆる面に関与した。学生らは友人や級友を登録して、最終的にサリナス地域の100人のラテン系少女の参加を得た。全ての少女らは、参加と調査手順の順守の両方を動機付けるためのひとつの方法として、内分泌かく乱物質の潜在的なリスクに関して教育を受けた。

 参加することに同意した少女らは代替の身体手入れ用品を与えられ、これらの代替品を3日間使用するよう指示された。代替品は、それらの成分リストがトリクロサン、BP-3、又はパラベンを含んでいるかどうかに基づき選ばれた。フタル酸エステル類は成分リストに記載されていないが、それらはしばしば香り付けされた製品中に見いだされた。そこで研究者らは、特にフタル酸エステル類を含まないと記述されていなければ、成分として”香気(fragrance)”と示されている製品は避けた(原注1)。

 尿サンプルが最初及び3日間の最後に採取された。尿サンプルの分析は、HERMOSA 参加者の90%以上の少女らはほとんどが、代替品の使用を開始する前には検出可能レベルのフタル酸エステル類、パラベン、及びベンゾフェノン 3 を、一般的アメリカ人集団の十代について見積られていた平均濃度より高いレベルで持っていた(1)。

 しかし、3日間代替製品を使用した後、メチル及びプロピルパラベンの尿中濃度はそれぞれ 43.9%及び 45.4%減少し、フタル酸モノエチルは 27.4%減少、トリクロサンは 35.7%減少した。一方、約半分の少女で検出されたブチル及びエチルパラベンの濃度は増加した。著者らは、これらの化学物質は代替製品中の非意図的な汚染物質か又はラベルに示されていない成分であったかもしれないと示唆した。彼らはパラベンはない(フリー)ということを保証することはできないこと認識している。

 これらの結果は、消費者の選択は調査化合物への暴露に影響を及ぼすことができることを示している。”3日後にほとんどのレベルが平均して25%から45%”下がったことを見て本当に喜んでいる”と、ハーレイは言う。”このプロジェクトを始めた時には、身体手入れ用品や化粧品を変えることにより、これらの化学物質のレベルが低下することを示す他の調査を見たことがなかった”。

 ワシントン大学の環境健康科学者シーラ・サスヤナラヤナは、この調査研究が実施された方法について称賛した。”それは非常によく管理された調査であり、調査参加者を彼ら自身の研究プロジェクトに関与させるという信じられないほどよくできたアプローチであった。このことは調査の質を高めていると、この研究には関与していないサスヤナラヤナは述べている。

 現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校の2年生であるベラは、このプロジェクトは環境法と環境政策に関わる職業を目指したいとする気持ちにさせたと言う。それはまた、彼女が選ぶ身体手入れ用品に関する考え方に影響を与えた。”このプロジェクトに参加するまでは、私はこれらの化学物質について聞いたこともなかったし、私の身体手入れ用品のラベルを見たこともなかった”と彼女は言う。しかし現在は、”このプロジェクトの結果として、顔、髪の毛、体のための製品を低化学物質製品に切り替えた”と彼女は付け加えた。


訳注:関連情報
Earth Island Journal 2016年3月7日 化粧品を変えれば10代女性の内分泌かく乱化学物質への暴露を減らすことができる/エリザベス・グロスマン



化学物質問題市民研究会
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