PFOAに関する基本情報 (EPA)
情報源:Basic Information on PFOA
Last updated on Wednesday, July 13th, 2005
http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pubs/pfoainfo.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年7月12日
更新日:2005年7月24日
(EPAの2005年7月13日の更新を反映)

 2003年4月、EPAは化学物質PFOA(パーフルオロオクタン酸)の予備的リスク評価を発表した。その評価は、PFOAの潜在的な発達毒性に対する懸念及び一般のアメリカ人が非常に低レベルのPFOAに暴露しているかもしれないという情報に的を絞ったものであった。多くの不明であったデータがEPAによって特定されが、その多くは暴露範囲と暴露経路に関するものであった。EPAの現在の作業は、それらのデータの欠如を埋めること及びもっと頑強なリスク評価を完成させることである。完全な評価は、潜在的なリスクを低減するために追加的な規制措置が必要かどうかEPAが決定するために役に立つ。

(訳注:上記の文章は、EPAによる2005年7月13日の更新で削除されましたが、参考のために残しておきます。)

(訳注:原文には項目番号はないが、ここでは便宜上、項目番号をつけたました。)

  1. いつごろからEPAはPFOAとその潜在的なリスクについて注目していたのか?
  2. PFOAに関連する懸念は何か?
  3. 人はどのようにしてPFOAに暴露するのか?
  4. フルオロポリマーとテロマーは何に使用されるのか?
  5. 消費者がPFOAへの暴露を低減することができる方法はあるのか?
  6. これらの科学的不確実性を減らし、PFOAの人間への暴露経路と潜在的なリスクをもっと完全に理解するためのEPAの現状の作業状態はどうなっているのか?
  7. 強制力のある同意協定(ECAs)の状況はどうか?
  8. 了解覚書(MOUs)の状況はどうか?
  9. いつからEPAはこれらの取り組みの情報を受領し始めるのか?
  10. なぜ、なぜ、EPAはこのドラフト評価を2005年1月に発表したのか?
  11. このドラフト評価は潜在的なリスクに関し新たな結論を出しているのか?
  12. このリスク評価が厳格な科学に基づくものとするために、EPAはどのような方法をとろうとしているのか?
  13. なぜEPAは予備的ドラフト(リスク評価)を修正したのか、そして、それは潜在的リスクについてのよりよい情報を公衆に提供することになるのか?
  14. このドラフト・リスク評価にはどのような新たなアプローチが含まれているのか?
  15. いつ、EPAは修正版PFOAリスク評価を完成させるのか?
  16. PFOAとテロマーに関し実施中の他の活動はあるのか?
  17. EPAは、PFOAに関しデュポン社に法的措置をとったのか?
1. いつごろからEPAはPFOAとその潜在的なリスクについて注目していたのか?

 1990年代の後半に、EPAはパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)は広く一般の人々の血液中に存在し、その残留性、生体蓄積性、及び有毒性の懸念があるとの情報を受けた。EPAとPFOSの製造者である3M社の討議を経て、3M社はこれらの化学物質の製造をやめた。PFOSに関する知見により、EPAは、パーフルオロオクタン酸(PFOA)を含む同様な化学物質についての検証を2000年に開始し、PFOSに関連するものと同様な懸念が存在するかどうか決定することとなった。

2. PFOAに関連する懸念は何か?

 PFOAは環境中で非常に残留性があり、環境中及び一般のアメリカ人の血液中に非常に低濃度で見いだされている。研究によれば、PFOAは実験動物に発達障害やその他の有害な影響を引き起こすことがある。PFOAはまた、人間の体内に長い間残留するように見える。これら要素の全てを総合して、現在見出される濃度で、又は今後PFOAが環境中に放出され続けて将来達するであろう濃度で、PFOAが人間の健康と環境にリスクを及ぼすかどうかをEPAは早急に調査する必要があると判断した。

3. 人はどのようにしてPFOAに暴露するのか?

 EPAは、どのようにして人々がPFOAに暴露するのか完全には理解していないが、それは、フルオロポリマー(フッ素重合体)の製造工程における重要な助剤として使用され、また、フッ化テロマーと呼ばれる他の関連化学物質の分解物質かもしれない。2003年4月、EPAはPFOAの予備的リスク評価を発表し、PFOAの源と人間の暴露経路をより理解するために追加的情報を特定し生成するために意見を求めるための公開手続きを行った。

4. フルオロポリマーとテロマーは何に使用されるのか?

 フルオロポリマーは、耐火性、油、汚れ、グリース、水への耐性などの優れた特性を有する。それらは調理器具の表面のこげつき防止や衣料品への通気性を持たせた防水加工に用いられる。それらは、航空機、自動車、建築/建設工事、化学プロセス、電気電子機器、半導体、そして織物を含むほとんど全ての産業分野で数百の用途で利用されている。テロマーは、消火泡、身体手入れ用品、及びカーぺット、織物、皮革、紙などへの油、汚れ、グリース、水への耐性コーティングなどを含む、多くの製品で界面活性剤及び表面処理化学物質として用いられている。

5. 消費者がPFOAへの暴露を低減することができる方法はあるのか?

 現時点では、消費者がPFOAに暴露することを低減する方法についてEPAが推奨するものはないが、その理由は人々が暴露する環境中のPFOAの源と経路がわからないからである。科学的不確実性のために、EPAは、PFOAが公衆に対し不合理なリスクを及ぼすかどうかの決定をまだしていない。現時点では、EPAは、消費者がPFOAを含む消費者向け又は産業向け製品の使用をやめなければならないどのような理由も存在するとは思わない。

6. これらの科学的不確実性を減らし、PFOAの人間への暴露経路と潜在的なリスクをもっと完全に理解するためのEPAの現状の作業状態はどうなっているのか?

 EPAは2003年にPFOAに暴露する汚染源と経路の理解を改善する必要性を特定し、この論点に必要な新たなデータを開発するプロセスを展開した。この新たな情報は、EPAが潜在的なリスクが存在するかどうか及びどのようなリスク管理措置が適切かを決定するために役立つであろう。特にEPAは、産業界及び他の関係者と協力して、PFOAに関する追加的監視情報、焼却又は製品使用中のロスに起因する暴露、及びPFOAの潜在的な源であるテロマーの生物分解について入手するよう作業を進めている。EPAは、多くの関係団体の関与と自主的研究活動の協力のもとに公開で有害物質規制法(TSCA)第4条における、産業側との強制力ある同意協定(ECAs)及び了解覚書(MOUs)を展開している。

7. 強制力ある同意協定(ECAs)の状況はどうか?

PFOAを生成するかもしれないフッ素化合物の実験規模の焼却テストのために二つの分離された強制力ある同意協定(ECAs)がEPA、旭ガラス社、クラリアント社、ダイキン・アメリカ社、デュポン社、及びダイニオンLLC社によって署名され、フルオロポリマーとフッ化テロマーの実験規模での焼却テスト実施が2005年7月8日、連邦官報(Federal Register)に公表された。これらのテストはこれらの化学物質でできた又は処理された製品が自治体の焼却炉で焼却されたときにPFOAを生成するかどうかを確認するために役に立つ。

 2005年7月のECAsに関する詳細な情報は下記にて入手できる。
 http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaeca.htm

EPA、消費者製品安全委員会、食品医薬品局、産業界及びその他の関係団体からの科学者たちが、フルオロポリマー製品(こげつき防止調理器具、衣服のコーティング、配管ねじシールテープ、充填ケーブルなどを含む)が使用年月の間にPFOAを生成又は放出するかどうか決定するために、これらの製品に関するもうひとつのECAテストプログラムの取り決めを開発するために共同で作業を行っている。

8. 了解覚書(MOUs)の状況はどうか?

 EPAは、2004年10月25日にアラバマ州デカータにあるフルオロポリマー製造工場の近辺での監視について3M社及びダイニオンLLC社と了解覚書(MOUs)を取り交わした。EPAは同様な了解覚書(MOUs)をデュポン社とウェストバージニア州パーカースブルグのワシントン工場における監視について、2005年2月に締結しつつある。

9. いつからEPAはこれらの取り組みの情報を受領し始めるのか?

 3M社/ダイニオンLLC社の監視についての了解覚書(MOUs)は2005年の1月初旬からから、半期毎の予定で docket OPPT-2004-01124に提出されている。焼却テストECAからの予備的報告書は2005年後半からdocket numbers OPPT-2003-0071 及び OPPT-2004-0001への提出が始まる。EPAと産業界はテロマー製品が分解してPFOAを放出するかどうかを決定するために別個にフッ化テロマー生物分解テストを実施している。これらの調査のあるものは完了するのに1年あるいはそれ以上要するが、産業界のテストのあるものの予備的結果は2005年夏には入手が期待され、主要結果はdocket, OPPT-2003-0012に提出される。この調査が始まって以来、EPAは、製造量、製造と放出プロセス、化学物質の用途、及び毒性と薬物動態、その他に関するデータを作成することを約束した実施意向表明書(LOIs)を2003年3月にを提出した会社から、現時点の情報を受領している。この情報は、docket OPPT-2003-0012及び行政記録(AR-226)で可能な限り公開されている。

10. なぜ、EPAはこのドラフト評価を2005年1月に発表したのか?

 PFOAに関するEPAの現在の評価において最も厳格な科学を適用にするために、EPAは、PFOAドラフト・リスク評価に関し、外部の科学専門家委員会にピアレビューを求めている。EPAは、リスク評価を修正する時に、これらの勧告を用いるであろう。

11. このドラフト評価は潜在的なリスクに関し、新たな結論を出しているのか?

 このドラフトは予備的なものであり懸念の潜在的なレベルに関し、どのような新たな結論も出していないというこに留意することが重要である。このドラフトは、EPAの修正リスク評価を作成するために用いられる科学的アプローチと重要なデータを強調している。

12. このリスク評価が厳格な科学に基づくものとするために、EPAはどのような方法をとろうとしているのか?

 修正評価に着手する前に、評価に用いられるアプローチが科学的に健全であるということを確実にするための手続きとして、EPAはEPAの科学諮問委員会(Science Advisory Board)に公式のピアレビューを求めている。このドラフトは予備的であり懸念の潜在的なレベルに関して結論を出していない。

13. なぜEPAは予備的ドラフト((リスク評価)を修正したのか、そして、それは潜在的リスクについてのよりよい情報を公衆に提供することになるのか?

 2003年4月に発表された予備的ドラフト・リスク評価は発達毒性だけに焦点を当て、評価の中で多くの不確実性を特定した。その後、潜在的な発達毒性リスクの理解を向上させる新たなデータが入手可能となり、EPAは、発がん毒性と系統的毒性を含む潜在的な人間の健康影響の全ての範囲を検討するために分析領域を広げた。

14. このドラフト・リスク評価にはどのような新たなアプローチが含まれているのか?

 いかにPFOAがラットの肝臓に腫瘍を引き起こすか、及び人間の健康への関連性ならびにラットの毒物学的研究におけるPFOAの血清中濃度を推定するための薬物動態学的モデルを構築することを含む、いくつかの新たなアプローチがドラフト・リスク評価の中で示されている。さらに、EPAは、実験動物の血清中のPFOA濃度を人間の血清測定値と比較するアプローチの採用に関するアドバイスを求めている。これは、動物への投与用量を人間の暴露推定値と比較する多くの典型的なアプローチとは異なる珍しいアプローチである。

15. いつ、EPAは修正版PFOAリスク評価を完成させるのか?

 我々は、科学諮問委員会(SAB)から2005年夏までにコメントを得られるとは考えていない。さらに、EPAは現在、展開されている新たな情報の検討を続けるので、現時点で修正版リスク評価の完成時期を明言することはできない。

16. PFOAとテロマーに関し実施中の他の活動はあるのか?

 疾病管理予防センター(CDC)は、PFOS、PFOA、及びその他のいくつかのフッ素化合物を今後公開される”環境化学物質への人間の暴露に関する全国レポート”に含めるであろう。このレポートに関する詳細は下記ウェブサイトで入手できる。
 http://www.cdc.gov/exposurereport

 国家毒性計画(NTP)は、PFOAとテロマー派生物を含む複合パーフルオロスルホン酸とカルボン酸に関するclass studyを実施中であるが、それはこれらの化学物質の毒性と長期間人間の体内に残留する傾向をより理解するためのものである。国家毒性計画(NTP)とその研究に関する詳細は下記ウェブサイトで入手できる。
 http://ntp.niehs.nih.gov/

17. EPAは、PFOAに関しデュポン社に法的措置をとったのか?

 EPAはデュポン社がEPAにPFOAに関する情報について、有害物質規正法8条(e)に従ってEPAに報告しなかったので、行政措置をとった。告訴の詳細はEPAのCivil Enforcementのウェブサイトで見ることができる。


当研究会翻訳資料
地球を汚染する過フッ素化合物類 PFCs(EWG報告書)
テフロン化学物質はヒトへの発がん性がありそう−独立系科学調査委員会がEPAに報告書(EWGプレスリリース)
EPAニュースルーム 2005年7月20/PFOAメーカーとの同意協定はPFOA汚染源のより良い理解をもたらすであろう
PFOAに関する基本情報 (EPA)
EPAニュースルーム 2004年7月8日/EPA デュポン社に行政措置 有毒物質報告違反で
EPA ファクト・シート/PFOAに関するQ&A

PFOA 関連リンク
  • つれづれなるままにPFOS総説
    (京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康要因学講座環境衛生学分野の”個人運用ページ”とのことであるが、国内におけるPFOS や PFOA の汚染に関し、河川水、沿岸海水、大気、野生生物、飲料水中のPFOSとヒトへの暴露予測、ヒト母体・臍帯血、ラットでの毒性試験などの論文の解説や 「国内機関の有機フッ素化合物研究発表リスト」 などがあり興味深い。)
    EPA PFOA Homepage
    EPA Science Advisory Board/PFOA Review Panel
    Perfluorooctanoic Acid (PFOA) Investigation Intensified:Serious Health Concerns PRESS RELEASE / EPA 14apr03
    EPA Investigate Health Risks of Polymer Additive PFOA
    PFOA/PFOS
    Chemical Used in Teflon May Be Hazardous
    DuPont Statement on PFOA and the Use of Fluoropolymers in the Communications Cable Industry
    Overexposure: PFOA
    EPA Concerned of Chemical Found in Consumer Products, PFOA
    CRE Raises Data Quality Act Issues in EPA's PFOA Review


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