EPA ファクト・シート
PFOAに関するQ&A

情報源:EPA / OPPT FACT SHEET April 14, 2003 / PFOA Q's & A's
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
(EPA が2003年4月に PFOA の予備的リスク評価に関するパブリックコメントを実施した際、添付した資料です)
掲載日:2004年1月25日
 2003年4月13日付連邦官報通知(Federal Register notice)によって、 EPA は化学物質 PFOA (パーフルオロオクタン酸)の予備的リスク評価を発表し、このリスク評価を強化するための追加情報が何かを特定しそれらを入手するためにパブリック・コメントの手続きを開始した。
 EPA はまた、 PFOA 及び最終的には PFOA に代謝又は分解するフッ素テロマー(短鎖重合体)に関する追加情報を入手するためのより強制力のある合意協定に参加するあるいは監視することに関心ある団体を募った。
 第一回目の会合は2003年6月6日に開催される予定である。


1. PFOA とは何か?

 PFOA は パーフルオロオクタン酸(perfluorooctanoic acid)である。それは人工の化学物質であり、環境中に自然に生じたものではない。 ”PFOA” という頭文字はパーフルオロオクタン酸だけを指すのではなく、その主要塩類をも指す。このグループの中で最もよく使われる化学物質はアンモニウム塩であるアンモニウム・パーフルオロオクタン酸(APFO)であり、時には ”C8” と略称される。

2. PFOA は何に使用されるのか?

 PFOA はフッ素ポリマーの製造時に用いられる重要な助剤である。フッ素ポリマーは、難燃、防汚、撥油、撥水などの貴重な特性がある。例えば、それらは調理器具表面のこげつき防止(訳注:フッ素加工)、カーペットや衣類の保護仕上げなどに用いられる。
 それらは、宇宙、自動車、建築/建設、化学、電気・電子、半導体、繊維などほとんど全ての産業分野で数百の用途で採用されている。フッ素ポリマー は PFOA を用いて製造されるが、最終製品自体には PFOA は含まれていないと考えられる。

3. どのような措置をEPAはとっているのか?

 EPA は PFOA の予備的リスク評価を発表し、科学的知見に関するコメント、及びこれらの化学物質についての追加データを求めてパブリック・コメントを実施中である。 EPA はまた、有毒物質規制法 (TSCA) 第14条の下、 PFOA 及び PFOA に代謝又は分解するフッ素テロマー(短鎖重合体)に関する強制力のある一つあるいはそれ以上の合意協定((ECAs)に関する交渉に参加するあるいは監視することに関心ある団体を募っている。
 EPA はまた、これら ECA 交渉のための第一回目の会合を2003年6月6日に開催することを発表した。

4.なぜこのような措置が必要なのか

 研究により PFOA は実験動物で発達毒性及びその他の影響を引き起こすことがわかったので、 EPA は追加的な情報を収集することに関心がある。 EPA の予備的評価はアメリカの一般大衆が PFOA に曝露する量は非常に低いことを示している。しかし、この評価はまた、潜在的なリスクについて少なからぬ科学的不確実性があることを示している。
 EPA は PFOA 及び最終的に PFOA に分解する化学物質によってもたらされる潜在的リスクのより精度の高い評価を行うために非常に役に立つ情報に関する領域を特定し、さらに、もし必要なら、どのような自主的または法的措置が適切かについて決めた。

5.消費者は PFOA への曝露を削減するために何かをすべきか?

 現時点では EPA は消費者が PFOA への曝露を削減するために何かをすべきと勧告することはない。それは環境中の PFOAの 汚染源と人々が曝露する経路がわかっていないからである。少なからぬ科学的不確実性があるので、 PFOA が不合理なリスクを公衆にに及ぼすかどうかについて EPA は判断を下していない。この判断は、新たな曝露データがリスク評価に反映されてから発表されるであろう。
 EPA は消費者が消費者関連製品あるいは産業関連製品の使用を止めなければならない理由はないと信ずる。

6.人々はどのように PFOA に曝露するのか?

 現状の情報では、アメリカの一般大衆は PFOA に非常に低いレベルで曝露しているかもしれないことを示しているが、入手可能な科学的情報では人々がどのように曝露しているのか決定することはできない。
 この化学物質を製造あるいは使用しているフッ素化合物製造設備以外に環境中の PFOA の追加的な汚染源が存在するかもしれないこと、及び、これらの産業設備からの直接的排出に起因する以外の曝露があるかもしれないことが示唆されている。
 テロマー(短鎖重合体)化学物質の分解が追加的な汚染源の一つかもしれない。しかし、人間の曝露の原因が、大気中、水中、埃や堆積物中、食物経由のどれなのか、あるいはこれらの複合経路なのかについては現在不明である。

7.どのような製品が PFOA を含んでいるのか?

 現時点では消費者製品には PFOA は含まれていないと信じられるが、いくつかの製品には、年月が経つと環境中で PFOA に分解するテロマー(短鎖重合)と呼ばれる化学物質が含まれている。
 産業用フッ素ポリマー製品のあるものには PFOA が含まれるが、これらの製品は典型的に熱処理用に使用され、最終製品が工場出荷される前に PFOA は除去される。

8.フッ素テロマーとは何か、それは PFOA とどのように関係があるのか?

 短く”テロマー”と呼ばれるフッ素テロマーはフッ素を含む重合品(ポリマー)である。テロマーは PFOA を用いて作られるわけではないが、いくつかのデータによれば、テロマーのあるものは環境中で分解して PFOA になり、また生体組織中に取り込まれると代謝して PFOA になる。

9.テロマーは何に使われるのか?

 テロマーは、消火用泡、及び身体手入れ品、カーペット・繊維製品・紙製品等の防油、防汚、防油脂、防水など多くの製品中で使われている。

10.安くてコスト効果のある PFOA 及びテロマーの代替品はあるのか?

 PFOA はフッ素ポリマーの製造に使われる重要な助剤である。フッ素ポリマー製造者は PFOA の代替物として知られたものはないとしている。ある製造プロセスでは PFOA を採用しない異なった技術を用いているが、これらのプロセスは現在はほとんどのフッ素ポリマー製品の製造には使用することができない。

 EPA はテロマーの全ての用途について知っているわけではないので、これらの用途についての代替物に関する情報を直ぐには準備できない。産業界は、現在実施しているこれらの化学物質に関する自主的な取組の一環として、追加的情報を提供すると約束している。

11.どのような会社が PFOA とテロマーを製造しているのか?

 3M 社は以前、 PFOA をアメリカ国内で製造していたが、2000年〜2002年の間にこの化学物質の製造を中止した。現在、デュポン社がアメリカ国内で PFOA を製造している唯一の会社である。他の会社が PFOA を国外のどこかで製造しているかもしれない。

 デュポン社、クラリアント社(スイス)、ダイキン工業(日本)、旭硝子(日本)の全ては世界中の各所でテロマーを製造している。これら以外にもテロマーの製造会社があるかもしれない。

12.同意協定(ECA)とは一体何か?

 強制力のある同意協定(ECAs)は、EPA、産業界、及び関心ある団体が交渉により結ぶ協定であり、署名した特定の団体に対し、ある期限までにデータを作成しそれらを EPA に提出するよう要求するするものである。
 EPA は、特定のデータが必要であるまたは重要であるような場合、ECAs の方が、それらのデータを有害物質規制法(TSCA)第4条のテスト・ルールに基づいて入手するよりはるかに早いことを知っている。テスト・ルールでは入手できるまでに2年かかるが、 ECAs の場合はしばしば、1年以内で完了する。
 ECAs は強制力がある、すなわち、ECA で同意した情報の提出を命じることができる。
 これらは公開の場での交渉であり、データに関心のある全ての団体が参加する機会を与えられる。

13.PFOA は成人よりも子どもに対しより有毒か?

 EPA は PFOA が成人よりも子どもに対してより有毒であるということを示したどのような研究についても知らない。

14.PFOA は食物、飲料水、室内空気中に存在するのか?

 EPA は環境中の PFOA の汚染源又は人間に取り込まれる経路についてはわからない。PFOA の一般環境中での存在に関し、非常に限られたデータはある。これらの質問に対し回答するためにさらなる調査が行われている。

15.EPA のこの措置による健康上の利益は何か?

 EPA の予備的評価によれば、アメリカの一般大衆は非常に低いレベルで PFOA に曝露しているかもしれない。 EPA が要求した情報を入手すれば、EPA は曝露について特性をもっと明確にし、リスク評価を精査して完成度を上げ、人間の健康と環境を守るために、必要な措置があれば、それを決定することができる。

16.EPA はどのような追加データを要求しているのか、それはなぜか?

 EPA は、環境中及び人体中の PFOA の存在に関係するかもしれない化学物質の総量を精度よく定義するために必要な使用量と製造量、及び、 PFOA の汚染源を説明可能とするためにこの化学物質と生物分解に関する追加データを要求している。
 EPA はまた、人間が PFOA に曝露する経路についての理解の展開に役立つ追加的な情報を要求している。

17.PFOA を評価するための次のステップは何か?

 EPA は科学的リスク評価における不確実性を減少し、環境中のこの化学物質の存在に対する理解を増進するのに役立つ追加」情報を要求した。EPA はこれらの追加情報を反映したより包括的なリスク評価を EPA 科学諮問委員会(Agency's Science Advisory Board)に2003年秋には提出し、独立したレビューとコメントを受けるつもりである。
 EPA はまた、関心ある団体に対し、追加的データ生成のための強制力ある合意協定の交渉に参加するよう要請する。
 産業界はすでに追加データのあるものを提供することを、2003年3月に EPA に提出した意思表示の手紙(letters of intent)を通じて約束している。

18.意思表示の手紙(letters of intent)とは何か?

 意思表示の手紙とは会社や団体、個人が自分たちが引き受けようとする活動を記述し、それらの活動を記述通りに実施することを一方的に意思表示するものである。このような手紙の中での約束は自主的なものなので、法的な拘束力あるいは強制力はない。

19.産業側は PFOA とテロマーに関する意思表示の手紙の中で何を約束したのか?

 簡単に言えば、会社は PFOA の汚染源と曝露の理解に役立つ追加的データを提供することを約束した。
 3M 社は PFOA の製造を再開するつもりはなく、作業者たちの医療的側面からの監視を続け、また、地下水、地表水、及びその他の環境媒体の監視を続け、 EPA に報告書を提出すると表明した。
 ”フッ素ポリマー製造団体” の会員たちは、排出を削減すること、彼らが PFOA の汚染源の一つであるかどうか決定するために彼らの製品を調査すること、及び、毒物学的調査を支援し、彼らの施設における職業的曝露を管理し、雇用者の健康を監視し、顧客が彼らの雇用者を保護することを支援し、環境への排出を削減するための一般的な使命を全うするという努力を行うことで、彼らの製品責任原則に従うことを約束した。
 ”テロマー研究計画” の会員たちは、彼らが人間又は環境の PFOA への曝露に関与しているかどうかを見極めるためにアメリカ国内で販売されているテロマー製品を評価することを約束した。
 全ての意思表示の手紙は public docket から入手することができる。

当研究会翻訳資料
地球を汚染する過フッ素化合物類 PFCs(EWG報告書)
テフロン化学物質はヒトへの発がん性がありそう−独立系科学調査委員会がEPAに報告書(EWGプレスリリース)
PFOAに関する基本情報 (EPA)
EPAニュースルーム 2004年7月8日/EPA デュポン社に行政措置 有毒物質報告違反で
EPA ファクト・シート PFOAに関するQ&A

PFOA 関連リンク
  • つれづれなるままにPFOS総説
    (京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康要因学講座環境衛生学分野の”個人運用ページ”とのことであるが、国内におけるPFOS や PFOA の汚染に関し、河川水、沿岸海水、大気、野生生物、飲料水中のPFOSとヒトへの暴露予測、ヒト母体・臍帯血、ラットでの毒性試験などの論文の解説や 「国内機関の有機フッ素化合物研究発表リスト」 などがあり興味深い。)
    EPA PFOA Homepage
    EPA Science Advisory Board/PFOA Review Panel
    Perfluorooctanoic Acid (PFOA) Investigation Intensified:Serious Health Concerns PRESS RELEASE / EPA 14apr03
    EPA Investigate Health Risks of Polymer Additive PFOA
    PFOA/PFOS
    Chemical Used in Teflon May Be Hazardous
    DuPont Statement on PFOA and the Use of Fluoropolymers in the Communications Cable Industry
    Overexposure: PFOA
    EPA Concerned of Chemical Found in Consumer Products, PFOA
    CRE Raises Data Quality Act Issues in EPA's PFOA Review


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