EHN 2018年7月31日
数十年前から隠蔽された研究は
PFAS 類 の問題をきっと抑制できたはずと科学者は言う

本日発表された論説によれば、1970年代末から1980年代の初めに実施された研究は、
汚染が全米に広がったので化学会社によって秘密にされた
ヒーサー・モンギリオ

情報源:Environmental Health News, Jul 31, 2018
Hidden studies from decades ago could have curbed PFAS problem: Scientist
By Heather Mongilio
https://www.ehn.org/hidden-studies-from-decades-ago
-could-have-curbed-pfas-problem-2591289696.html


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年9月5日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_180731_
Hidden_studies_from_decades_ago_could_have_curbed_PFAS_problem.html


 Environmental Health に本日発表された論説は、パーフルオロアルキルスルホン酸類(PFAS)及びそれらの危険な健康影響に関する研究は、それが実施されてから数十年後まで明らかにされなかったことを示唆した。

 公的に利用可能な研究の欠如は、飲料水中を含んで、その化学物質のレベルについての適切なガイドラインの設定を妨げていると南デンマーク大学及びハーバード大学 T.H. チャン公衆健康校のフィリップ・グランジャン教授は彼の論説の中で主張した。

 論説の中でグランジャンは、40年前までに実施された研究は、免疫系に対するものを含んで PFAS 類 の化学物質からの健康影響を発見したが、それらの研究は 3M 社のような製造会社により隠蔽されたと述べた。

 ”環境健康研究者であること、そして、その情報の大部分はすでに知られていたが秘密にされていたことを発見するだけのために、これらの化学物質への暴露と有害影響を特性化するために何年も費やすことは苛立たしいことである”と、グランジャンは EHN に述べた。

遍在する問題

 PFAS類は撥水性や撥油性が知られる産業化学物質である。それらはしばしば、特に家庭用品の中で、防汚又は防水スプレー、テフロン及び電子レンジ用ポップコーン袋等に使用される。

 ”消費者製品中の PFAS類を避けることは非常に難しい”と、サイレント・スプリング・インスティチュート(沈黙の春研究所)の研究科学者であるローレル・シャイダーは EHN に述べた。

 それらはまた、消火泡中で使用されており、そのことが全米の軍事施設近くの地域で PFAS類の汚染が発見される理由である。

 それらの炭素鎖の長さにより定義される化学物質は、人間及び環境の両方に有害である。その化学物質は、精巣がん及び腎臓がん、低出生体重、甲状腺障害、精子の質の低下、高コレストロール、妊娠高血圧症、自閉症、潰瘍性大腸炎など人間の様々な健康問題に関連している。

 ほとんどの研究は二つの PFAS、すなわちパーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に関してなされているが、科学者の間で警鐘をならす新たなパーフルオロアルキルスルホン酸類(PFASs)もあるとシャイダーは述べた。

 その論説は、全米の地域社会が継続的に水供給系に危険な量のそれら化学物質を発見しているときに発表された。つい先週、ミシガン州は、パーチメントの町の水供給系に発見された PFAS 化学物質類のレベルに関して緊急事態宣言を行い、その化学物質類は州全体で 11,000 に及ぶ場所に影響を及ぼすかもしれないと州保健当局は警告している。

 ミシガン州だけではない。5月にはエンバイロンメンタル・ワーキング・グループにより発表されたある分析が 1億1,000万人に及ぶアメリカ人に供給している 1,500 以上の飲料水系が PFAS 化学物質で汚染されているかもしれないと報告した。

 それらの化学物質類はまた、化学物質製造者であるデュポン社と3Mへの多数の訴訟の対象となっており、それらの訴訟のうち最新の訴訟はミネソタ州で結審した。3M社は最終的に 8億5,000万ドル(約940憶円)でミネソタ州と解決したが、訴訟の間に、これらの化学物質の健康影響のいくつかを示す未発表の研究を含んで、多くの3M社の文書が暴露された。

隠された研究

 グランジャンの論説によれば、PFAS類による健康影響は、3M社のために準備された国際研究開発社(International Research and Development Corporation)のサルの研究についての二つの内部報告書が発表された 1978年以来、知られていた。論説によれば、研究のひとつは PFOS の投与でサルが死亡したために中止された。

 それらの研究は最終的には EPA に開示され、EPA はそれらをその後の PFAS に関する研究と報告で使用した。

 それらの化学物質はまた 1976年に製造作業者らの血液中で発見され、 PFAS は 1981年までさかのぼり、赤ちゃんに移転していることが発見された。しかしその論説によれば、 1981年に臍帯血中にPFAS が発見されたことが分かっていたにもかかわらず、その情報は 20年後まで発表されなかった。

 グランジャンは 2012年に、ワクチン接種を受けた子どもたちのより高い PFAS 暴露は、より少ない抗体の生成と関係があることを示す一つの研究を発表したが、当時それは”大きな発見”であるであると考えられた。

 しかし1978年のサルの研究は、免疫系は PFOA により影響を受けることを示していた。その研究は公表されておらず、フォローもされていなかった。そして研究は公表されず、精査されることなく、それらの化学物質は環境中に広がったと、グランジャンは述べた。

 ”もし私が1978年にこの産業化学物質が免疫系に有害であることを見つけていれば、私は実施することができたはずの暴露した子どもたちの全ての種類の試験結果を見ることができたはずであるのに、私はそのことを告げられていなかったので、私がこのことに注意を喚起するまで、30年間待たなくてはならなかった”と、彼は述べた。

 しかしそれは情報を公表しないこと以上のことであった。ミネソタ州の訴訟の一環として、1998年に3M社の科学公表戦略が発表されたが、それはどのようにして、会社が PFAS に関する選択された研究を公表し、その物質が有害ではないことを明確にするために彼らの物語を利用することを計画したかを詳述している。

 その戦略は、赤ちゃんの出生障害がない妊娠マウスに関する研究の発表を含めた。しかし、戦略中にリストされたもう一つの文書は、 PFOS が妊娠マウスに与えられた時に、マウスの仔の生存数及び妊娠期間中のマウスの平均体重を減少させたことを報告していた。

 他の事例では、 PFOS と PFOA 草稿研究が、 PFOA とコレストロール及びトリグリセライド(中性脂肪)の関連を発見したが、そのことは最終研究では発表されなかった。

 3M社は 2018年2月にもミネソタ州と 8億5,000万ドル(約970憶円)で和解した。同社はまた、2007年にもっと少額で手を打っていたが、それは最初の浄化の取り組みのひとつに着手するものであったと、ミネソタ州汚染管理局の報道官ウォーカー・スミスは EHN に述べた。

 2007年の最初の和解で、同州は、土壌からの汚染の除去、飲料水を井戸から得ている人々にボトル飲料水を提供し、井戸のいくつかにフィルターを設置することを含んで、いくつかの浄化の取り組みに着手することができたとスミスは述べた。

 ”ここまで、それは一種の応急措置である”と彼は述べた。

関連記事:もう一つの潜在的な PFAS 問題−体重増加

 新たな和解で、同州はどのプロジェクトにその和解金をつぎ込むべきかを決定するために作業部会を設立した。

 しかしミネソタ州は PFAS 製造会社に対する訴訟が起きた唯一の場所というわけではない。タフト・スタティニアス・ホリスター法律事務所で働く弁護士ロバート・ビロットは、これらの会社を追及して名声を博した。

 ビロットの最初の裁判はデュポンに対するものであり、それは解決した。そして過去20年以上、彼は研究とデータを EPA に送ることを試みたと、彼は EHN に告げた。

 その後、ビロットはデュポンに対して集団訴訟を起こし、彼が言うには、それはウェストバージニア州の飲料水中で発見された PFAS 類に関する評価を科学者らが開始することを可能にし、そのことは最終的に(C8 科学委員会と呼ばれる組織の下に)オハイオ川渓谷の 70,000人近くの域地住民の 10年前の大規模研究をもたらした。その委員会は、高フッ素化合物による現状の汚染と健康影響を研究するためのひとつのモデルになった。

 その科学的モデルを手にすれば、 PFAS 類に関係がある 6つの疾患のひとつでも持つ個人はデュポンを訴えることができる。

 訴訟を起こす前は、人々は彼らの飲料水中に PFAS 類が存在していたことを知らなかったと、ビロットは述べた。

 ”これらは、もし会社が適切に措置を取っていれば回避することができたことである”と彼は述べた。

 3M社の報道担当はその論説に対するコメント要求に答えなかった。

古い、そして新しい PFAS 類

 ほとんどの会社は PFOA と PFOS の製造を停止しているが、彼らの製造を禁止するものは何もないと、ローレル・シャイダー(サイレント・スプリング・インスティチュートの研究科学者)は 述べた。そしてそれらはまだ環境中に残留している。

 PFOA と PFOS は長鎖を持っており、そのことは分解するのにより長くかかることを意味する。しかし、現在新たに製造され始めている新しい PFAS 類は短い炭素の鎖なので、それらの半減期は数か月に近いことを意味していると、彼女は述べた。

 ”そしてそれらは、我々の体内に長くは残留しないが、他のある困難をもたらす。それらは飲料水から PFOA と PFOS を除去するために人々が使用する同じ水処理設備で除去することは困難である”と、彼女は」述べた。

 それらはまた環境に累積的な影響を及ぼすと、彼女は付け加えた。

 新たな化学物質についての他の問題は、新たな化合物に関する研究の欠如である。 PFOA や PFOS の時と全く同様に、これらの化合物は、それらがもたらすかもしれない可能性あるどのような有害性についても完全な評価が行われることなく、使用されているとグランジャンは言った。

規制と発布

 グランジャン、ビロット、そしてシャイダーが望んでいることは、 PFAS 類に関する規制の強化である。

 飲料水中に許容される PFAS 類の量について現在、連邦基準は存在しない。

 グランジャンは彼の論説の中で PFAS 類の広範な使用の前にもっと多くの研究を求めている。しかし、他の”容易な”議会が実施できるもっと多くの規制、例えば PFOA と PFOS を危険物質であると決定し、軍隊が浄化に関与できるようにするという解決策があると、グランジャンは述べた。

 ”それは正しく簡単なことであり、我々は民間部門によってもっと早くに知られていたことを調査し、再発見するのに20年遅れているが、我々はまた、規制当局の決定という点で遅れをとっている”と彼は」述べた。

 思うにこれは実際に簡単なことである。空港はフッ素を使用しない消火泡を使うべきであり、我々は単純に全国で飲料水中の PFAS 類を測定すべきである。

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訳注:本記事に関連する当研究会が紹介した記事



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