The Sydney Morning Herald 2018年6月16日
有害物質の秘密:
教授が3M社の化学物質に関する
”悪い科学を葬ったと自慢”

キャリー・フェルナー

情報源:The Sydney Morning Herald, 16 June 2018
Toxic Secrets: Professor 'bragged about burying bad science' on 3M chemicals
By Carrie Fellner
https://www.smh.com.au/lifestyle/health-and-wellness/toxic-secrets-professor-bragged-about-burying-bad-science-on-3m-chemicals-20180615-p4zlsc.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2018年6月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_18/180616_SMH_
Toxic_Secrets_Professor_bragged_about_burying_bad_science_on_3M_chemicals.html

 有害化学物質に関する国際的な権威であるジョン P. ジージー教授(訳注:John P. Giesy)は、世界でトップクラスの活動的な著者である。

 彼の履歴は、Who's Who in the World (訳注:著名人の略歴を掲載した年鑑の紳士録)への名前の掲載から中国科学院からのアインシュタイン教授賞受領まで様々な栄誉に輝いている。

 ジージー教授は、環境中のペル‐及びポリ−フルオロアルキル化学物質(PFAS)を発見した最初の科学者として、また巨大化学企業 3M 社を説得してそれらの化学物質の製造をやめさせるのに尽力した人として高い評価を得ていた。

 しかし、フェアファクス・メディア(訳注:Sydney Morning Herald の親会社)は現在、ジージー教授は PFAS の危険性に関する学界の研究を抑えるための国際的キャンペーンへの 3M 社の極秘の指令に言いなりになったとして非難されたことを明らかにすることができる。

 社内文書の貴重な発見は、3M 社とミネソタ州司法長官ローリ・スワンソンとの間の 8億5,000万USドル(約900億円)の法的和解(訳注1)に続いて明らかにされた。同社の言によれば、ジージー教授は化学物質に関して”科学を支配する”ために同社によって用いられた戦術武器庫内のひとつの武器であったと示唆している。

 その文書は、 3M 社がどのようにして数十年にわたり、血液中のその化学物質の存在について、伝えられるところによれば、科学界を誤解させ、その化学物質をがんに関連付ける研究をひそかに傷つけ、”訴訟に対する防御”として用いられる研究に先を争って選択的に資金提供したかをミネソタ州が記録することを可能にした。

 専門家らは、その戦略はタバコ産業及び医薬品産業によって歴史的に使用されたものとほとんど同じであると断定した。

 オーストラリア全土で、シドニーの10を含んで少なくとも90の地域社会で、高いレベルのその汚染物質が調査されている。

 オーストラリア政府は、その化学物質が軍の基地内で数十年間、難燃剤中で使用され、その排水が住宅の周囲の土壌と水を汚染した町からの集団訴訟の増大を積極的に防いでいる。

 保健省は、その化学物質ががんのような”重大な”健康影響を引き起こすことができることを示す””証拠はない”と主張している。この議論で保健省の専門家らは、その化学物質はヒトの血液中で見出されるレベルでは有害ではないと主張する 3M 社の科学者らの研究を根拠にした。

 土曜日(6月16日)にフェアファクス・メディアは、アメリカの北中西部のミネソタ州オークデールにある 3M 社のグローバル本社から数ブロック離れた所に位置し、水が PFAS で汚染されているある高校にがんが集中しているという恐怖を明らかにした

  3M 社はその疑惑を強く否定した。 3M 社はミネソタ州の天然資源と飲料水に及ぼしたと噂される損害に関して裁判で和解に達した本年2月に責任を認めなかった。

 報道担当官は次のように述べた。”独立系第三者及び 3M 社により実施された数十年間の研究から成る広範な科学的証拠は、これらの化学物質が現在の暴露レベルで人の健康に有害影響を及ぼすことを示していない”。

 しかしアメリカにあるいくつかの主導的な公衆健康機関は、それとは逆の警告を発している。

 2016年、米国環境保護庁は、その化学物質はあるレベル以上の暴露が免疫系と発達系への影響とがんをもたらすと警告して、”証拠の重み”が人間健康へのハザードであるという結論を支持したことを発見した。

 米国国家毒性計画は、動物実験からの高いレベルの証拠及びヒトからの中程度の証拠に基づき、それらは”免疫系へのハザードが推定される”ということを発見した。

 通常、臓器移植や HIV などの結果、免疫抑制は、がん細胞を検出し破壊する、又はがん由来の感染症と戦うための免疫系の能力を弱めることにより、がんのいくつかのタイプのリスクを増大することが知られている。

 テフロン製造で PFAS 化学物質を使用したデュポン社は、専門家健康委員会が実施した大規模な疫学調査の後、昨年、ウェストバージニア州オハイオ郡にある製造工場の近くに住む住民と 6億7,000万ドル(約737憶円)で和解に達した。同委員会は、PFOA と呼ばれる化学物質のひとつにより汚染された住民の飲料水は、腎臓がん及び精巣がんを含む 6つの健康状態(病気)に”おそらく関連がある(probable link)”と結論付けた。

 ミネソタ裁判によれば、3M 社自身の PFAS 化学物質のための安全データシートのひとつは、1997年にその化学物質には発がん性があるという警告を含んでおり、その結果その化学物質は取り除かれた。

 オーストラリアにおいて最大の懸念ある化学物質は、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)であり、間違いなく調査された化学物質の中もっともで有害である。この物質は、スコッチガード及び泡消火剤の製造に広く使用されている。

 先月、米国毒性物質疾病登録機関(ATSDR)により実施された PFAS に関する健康調査の発表を米国 EPA 及びホワイトハウスが阻止したという主張の中で論争の嵐が吹き荒れた。

 ポリティコ(訳注:政治に特化したアメリカのニュースメディア)にリークされたeメールの中で、トランプ政権の補佐官の一人は、その報告書はそれらの化学物質は EPA がそれまで安全であるとみなしていたよりはるかに低いレベルで人の健康を危険にさらすであろうことを示していたので、その報告書は”広報面で悪夢になる”であろうと警告した。

 健康への警告は、ハーバード大学教授フィリップ・グランジャン(訳注:フィリップ・グランジャン博士の化学的脳汚染)及びノースカロライナ州立大学のジェイミー・デウィットによりミネソタ州での専門家証言としてくりかえされた。

 グランジャン教授は、 PFAS 化学物質は、免疫系、甲状腺、肝臓、内分泌、心血管及び生殖の各系を含む人の健康に”相当な、現在の、そして潜在的な危険(ハザード)”を及ぼすと主張した。

 ”PFOA と PFOS の両方とも、これらの結果との説得力のある関連性を示す”と彼は言い、人の健康へのリスクは非常に低レベルでの暴露で同定されていたと付け加えた。

粗悪な論文

 公的にはジージー教授は高名で紐の付かない大学人であった。”しかし私的には、彼を 3M チームの一員としてみなしていた”とミネソタ州は申し立てた。

 ”彼は経歴の大部分を公立大学で教授として過ごしたが、約2,000万ドル(約22憶円)の純資産を持っていた。この巨額の富のうち少なくともその一部は、 PFAS に関する自主的な科学研究を抑圧する目的のために彼が長期間にわたり 3M 社と関わったことから得たものである”。

 ジージー教授のコンサルタント会社は、少なくとも1998年から2009年の間、 3M 社から支払いを受けていたように見える。ひとつの文書は彼の現行料率は時間当たり 275 USドル(約3万円)であることを示していた。

 3M 社研究所マネージャー宛のあるeメールの中でジージー教授は、彼の役割は”文献中から粗悪な論文を排除する”ことであが、その理由は”それらの論文は裁判で反駁するのに大きな障害となる”からであると述べた。

 ジージー教授はいくつかの学界誌の編集者であり、どの年も PFAS に関する論文の約半分はレビューのために彼の所に回ってきた。

 ”いくつかの雑誌は、利益相反の問題で産業側が彼らの製品のひとつについての論文をレビューすることを許さないので、それらが私の所に来る”と彼はもう一つのeメールに書いた。

 ”私はいつもタイムシート中にこれらのレビューを文献検索としてリストしたので、紙よる3M 社への痕跡(証拠)は残らなかった”。

 ジージー教授は、ある EPA の科学者からのジョージ州アセンズでの最新の PFAS 調査の詳細をつづったeメールはもとより、機密の原稿類を 3M 社に渡していたといわれている。伝えられるところによれば、彼は PFAS について否定的な情報を含む少なくとも一つの論文の発表を拒否したことについて自慢していた。

 もうひとつのeメールのやり取りで、 3M 社のマネージャはジージー教授が原稿を書いたある調査は PFAS の健康ハザードの可能性を連想させることを懸念して、健康影響に関するある付属文書で緩和すべきとした。

 ”この論文は・・・メディアとの論争を再開し、我々がすでに回避したような健康問題にまで後戻りさせる憶測の連鎖反応を引き起こすことになる”と彼は書いた。

 ジージーはカナダのサスカチュワン大学( University of Saskatchewan)に拠点を置いているが、彼はまたミシガン大学及びいくつかの中国の大学にも籍がある。

 3M 社の内部文書は、彼が何らかの影響を及ぼすことができる中国の仲間らと共同プロジェクトを展開する時に、彼らから”親切を買う”必要があることに言及した。

 サスカチュワン大学の報道担当者は、ジージー博士の行為について二つのレビューを実施したと述べた。”我々は利益相反の証拠は何も発見しなかった”と彼女は述べた。

 3M 社のジージー教授のコンサルタント会社への支払いの証拠は彼がカナダに来てから後に分かったことであるが、彼の 3M 社のための活動の”ほとんど大部分”はミシガン大学に在籍中になされたものであるとスカチュワン大学は強調した。

 ジージー教授の釈明は、これらは”もしかしたら”彼のコンサルタントの仕事の他の雇用者による以前の仕事又は調査のための支払いかもしれないということを含んでいた。大学報道担当は”彼はその時機については確信がない”と述べた。

 ”eメールについては・・・”とジージー博士は次のように弁解した。”悪い科学に基づく’悪い論文’、又は’不正確な論文’、又は’不十分に実施された’調査・・・そして’3M 社への紙に書かれた痕跡がない’のは、 3M 社以外の、主に外国の会社によって製造された PFAS に関して実施された研究成果への気配りのためであった”。

 しかし、何人かの学者らはサスカチュワン大学の立場に怒り狂った。マニトバ大学の応用倫理学の専門家アーサー・シェーファー教授は”紙に書かれた痕跡がない”ことについての弁解を”ばかげて信じがたい”とコメントしてこき下ろした。

 ”ジージーの倫理的に疑問のある行動が全て、サスカチュワン大学に着任する前に行われたのか、あるいはそれらはその後も引き続き行われたのか、私にはどうでもよい”と彼は述べた。

 ”もし適切な調査により重大な行為が確認されたなら、懲戒処分、恐らく解雇になるであろう非常に厄介な行動を証拠が示している”。

 同大学の理事会メンバーの一人、レン・フィンドレー教授は大学のレビューに納得しなかった。

 ”重要な疑問が残っている。もしサスカチュワン大学がジージーと 3M 社との間のこれらのeメールについてもっと早く知っていたなら、大学はそれでも彼を採用したのだろうか? もしそうなら、採用を通じて大学の評判とランクをもっと輝かしいものにするという暴挙について大学は何というのであろうか?”と、フィンドレー教授は言った。

裁判所はフォーチュン500の会社(訳注)がどのように科学を細工したのかを聴取する
 (訳注:アメリカのフォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つである。全米上位500社がその総収入に基づきランキングされる

 ミネソタ州によれば、ジージー教授の行為は大きなジグソーパズル中の一片である。同州は 3M 社について次のような行為をしたと疑っている。3M 社は:
  • 化学物質に関する”科学を支配する”ために社内チームを結成し、”訴訟に対する防壁”を設け、科学的論文が会社の”ビジネス利益”に反する情報を含まないことを確実にした。
  • 会社が科学論文の草稿を編集でき、場合によってはそれらが発表されるかどうか管理できるという条件の下に友好的に研究を資金援助した。
  • 実際には注意深く点検され、サービスの対価が支払われ、秘密保持契約に署名している報告者を、”紐の付かない第三者専門家”と呼んだ。
  • 文書の一部を破棄し、 PFAS に関連するすべての文書に弁護士・依頼者間の秘匿特権(訳注)のスタンプを押し、会議における鉛筆書きのメモを破棄し、証拠開示の時に見られないよう考えを書き留めないことを、職員に指示した。ある職員は、その化学物質に関する全ての電子データを一掃するためにメモを取った。
    (訳注:全部開示の原則に対する例外のひとつで、弁護士と依頼者の間のコミュニケーションの内容を秘密とする特権

数十年間の無作為

 3M 社が、同社の歳入に 4億8,000万ドル(約528億円)の負担となるが、1997年に一般集団の人々の血液中に PFOS が発見されたことによる懸念に基づき、2000年に PFOS の自主的な段階的廃止を発表したときに、それは環境的に責任ある決定であると見られた。

 しかし内部文書によれば、同社は実際には数十年前、1970年代にその発見をしていた。

 段階的廃止の発表直前に米国 EPA はラットによるひとつの PFOS 研究をレビューしたが、その研究では第一世代の子孫の全てと、第二世代の子孫の多くは死亡した。

 ”そのような第二世代への影響を見ることは極めて稀なことである”と、化学物質管理部門のディレクターは書いた。

 その頃、科学者リチャード・パーディは 3M 社を辞め、EPA に彼の辞任届の写しを送付した。

 彼は、ポリ塩化ビフェニル(PCB))以来”最も油断のならない汚染物質であり、恐らくもっと悪いと彼が述べた”PFOS に関するデータ収集を彼の同僚らが回避することを望んだということに憤りを表明した。

 PCB は、ヒト発がん性があることを発見されて禁止された工業化学物質である。

 ”私は、環境のために正しい行動がとられることを見届けるために組織内で私の能力の限りを尽くして活動してきた”と書いた。”それなのに進み方が遅く、私の見るところでは結果が出でいない。私は会社が懸念していると聞かされているが、彼らの行動は私の懸念とは異なることを語っている”。

 3M 社がそれらの化学物質の有害影響に関して EPA への報告を怠ったことで、同社は最終的に150万USドル(約1億6,500万円)の罰金を科せられた。

 法廷での証言でグランジャン教授は、3M 社は一人の研究者が PFOS は”予測されていたより確実に毒性が高い”と警告していたことを含んで、1970年代にはすでに動物への有害影響を文書にしていたと主張した。3M 社は動物の母乳中での PFAS の発見を追求せず、25年遅れでその研究の一部を発表したことをグランジャン教授は発見した。

 もっと懸念あるのは、3M 社が支援した同社の暴露した工場労働者に関するいくつかの調査であり、それは統計的に有意な発見を含む前立腺がんの高い発症率を示していた。

 ひとつの論文は、偶然又はミネソタにおける前立腺がんの高い蔓延のために、前立腺がんによる死亡が急上昇していることを示した。

 ”その後、3M 社に提供された分析は、・・・前立腺がんの蔓延は、アメリカ全体よりミネソタ州の方が実際には小さかったということを示している”とグランジャンは書いた。

 ”労働者の健康関する当初の調査では、健康への有害影響と関連するどのような可能性をも弁解しようと不適切に努めたからである”。

 1979年、高名な科学者ハロルド・ホッジ博士は、もしその化学物質が一般集団の人々の血液中で長い半減期をもって広範に発見されるなら、”我々は重大な問題を持つことになるであろう”と警告した。その言い回しはその会話を参照する後の文書の中から削除された。

 もうひとつの内部eメールの中で、3M 社のある科学者は、生殖影響に関する調査がなされるべきかどうかについてひとつの考慮は、”そのような調査を実施したときに生殖影響を発見する可能性”があるかどうかであったと書いた。

 もうひとつの議論が、3M 社の暴露した工場労働者に関する初期の研究を実施したミネソタ大学の thesis student(学位論文作成中の学生か?)フランク・ギリアンドの研究の周囲で生じた。彼は男性の中にホルモン系と免疫系の異常の兆候を発見した。しかし、3M 社によってなされた追跡調査はこれらの発見を意図的に損なったとグランジャン教授は述べた。

 グランジャン教授は、幼児のワクチンへの化学物質の影響についての研究を開拓し、フェロー諸島の子どもたちは PFAS 暴露が倍になるとワクチンの効果が半分になることを発見した。”かなり”の数の子どもたちが病気に対する防護が事実上ないことを意味する低いレベルの抗体しか持っていなかった。

 彼は、臍帯血母乳を通じて暴露し、”毒性影響により脆弱であるらしい”幼児や胎児に及ぼす化学物質の影響に関する研究の欠如について懸念を表明した。

生き残るための汚いゲーム

  3M 社が後援するコンサルタント会社や大学研究機関による PFAS 研究にかなりの金を注ぎ込んでいたことは秘密のことではなかった。しかし、裁判文書は同社がそれ以上のこと、すなわち研究に影響を与えるだけでなく、その痕跡を隠そうとしていたかもしれないことを示している。裁判文書によれば、”ゴーストライター”の使用は、2008年の 3M 社 会合でうわさされた。

 シドニー大学のリサ・ベロ教授は、タバコ産業と医薬品会社によって用いられた戦術を批判的に精査した著者の一人として、産業側の科学的研究への影響に関する研究について国際的に著名である。

 彼女の仕事の多くは裁判を通じて明るみになった文書に基づいている。

 ”それはまさに類似しており、私は PFAS で用いられた戦略は、我々が見てきた他の産業で使用されたものと実際に同じであると言わざるを得ない”と彼女は述べた。

 ”その言い回しすら同じである。”

 最も興味深いことのひとつは、彼らは全てを科学的な発表戦略に言及したことであると彼女は述べた。

 ”それはすべて彼ら自身を裁判から守るために又は彼らの製品を市場に出すために、証拠を作り出すことについてである”。それは新たな科学的知識を作り出すことについてではない。

 ミネソタ訴訟における 3M 社の重要な証人は、科学コンサルタント会社エクスポーネント(Exponent)の首席科学者エレン・チャンであった。

 彼女の証言の中で、疫学的証拠の重みは PFAS への暴露と”ヒトにおける特定の有害健康影響”との間の因果関係を証明しなかったと主張した。

 カリフォルニア州を拠点とするエクスポーネントはアメリカでのいくつかの訴訟で論争を招いており、ある批評家らは彼のことを、汚い法廷での争いで会社の必要に合わせて科学を作り出す”雇われ殺し屋(hired gun)”と命名した。アスベストを含有するブレーキで暴露した自動車整備工らの肺がんの高い発症率を示す研究と同様に、二次喫煙をがんと関連付ける研究に疑念を投げかけてその会社は非難を浴びた。

 ”批評家らは正しくない”とエクスポーネントの報道担当は述べた。”我々は顧客に工学的及び科学的発見を提供するが、それらはしばしば彼らが聞きたいことではなくて、むしろ知る必要があることである”。

 チャン氏による2016年の研究はすべての入手可能な証拠をレビューし、 PFAS 暴露はヒトのがんのリスクを増大させなかったと結論付けた。

 その研究は、オーストラリアにおける暴露集団に関するヒト健康リスク評価の一部として、オーストラリア防衛省のために働く毒性学者により引用された。

 それはまた、保健省の PFAS に関する専門家委員会による報告書の中に含められたが、それは現在の証拠は PFAS 暴露によるヒトの健康への”大きな影響”を支持しなかったと結論付けた。

 しかし、専門家委員会は、”重要な健康影響”は除外することはできず、 PFAS 暴露が免疫反応の変化、性ホルモンの変更、高コレストロール、肝臓機能の低下、及び低出生体重に関係するという”かなり明確な”証拠があったとうことをまさしく告白した。

 同委員会の議長を務めたシドニー大学のニコラス・バックレイ教授は、レビューの中でチャン氏の研究の使用を擁護し、”最も重要なガイダンス”は他の独立研究から来たと主張した。

 ”3M 社支援のチャンのレビューについての主要な潜在的利益相反は、多数の出来事に関する PFAS 報告書の中に記されており、ありそうな影響が検討された”と、彼は述べた。

 ”彼らの結果は、400ページの報告書の中で約 6ページに、まとめられていた”。

 しかし、ウェストバージニア州でのデュポン社に対する集団訴訟を勝訴に導いた弁護士ロバート・ビロットはこの決定を批判した。

 ”PFOA に関して、疑念をでっちあげる、あるいは不確実性の間違った認識を永続させるという役目を果たすために事実の何年も後に準備された論文は信頼されるべきではなく、又は潜在的な健康リスクを重大ではないとする、又は無視するための根拠として引用されるべきではない”と、彼は書いた。

”ファーディン・オリアエイ博士は、その化学物資に関する 3M 社の調査は信頼できるかどうか問われたときに、”もちろんできない”とためらうことなく答えた。

 ミネソタ汚染管理局の科学者として、彼女は州内の PFAS 化学物質拡散の調査に着手した最初のグループの一人である。

 彼女は、同局が 3M 社の元重役のシェリル・コリガン長官によって率いられていた時に、彼女は研究を実施することを阻止され、最終的には退職させられたと主張している。

 ”現実は、これはひとつのゲーム、生き残りのためのそして巨大産業のための汚いゲームであるということだ”と連邦裁判所に持ち込まれた内部告発訴訟を解決したオリアエイ博士は述べた。

 ”尊厳を失い、この汚い退廃した産業とベッドを共にする他の科学者らを見ると胸が張り裂ける”。


訳注1 MPR (Minnesota Public Radio) News 2018年2月20日 ミネソタ州 3M社に対する水汚染訴訟を8億5,000万ドル(約900億円)で解決

化学物質問題市民研究会
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