MPR (Minnesota Public Radio) News 2018年2月20日
ミネソタ州 3M社に対する水汚染訴訟を
8億5,000万ドル(約900億円)で解決

エルザベス・ダンバー&キルスティ・マーローン
情報源:MPR News, Feb 20, 2018
Minnesota settles water pollution suit against 3M for $850 million
By Elizabeth Dunbar and Kirsti Marohn
https://www.mprnews.org/story/2018/02/20/
3m-pfc-groundwater-pollution-trial-announcement


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2018年2月24日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_18/180220_
Minnesota_settles_water_pollution_suit_against_3M_for_$850_million.html

 ミネソタ州司法長官ローリー・スワンソンは火曜日(2月19日)、双子都市(ミネアポリスとセントポール)東部のいくつかの郊外における過フッ素化合物(PFCs)による水汚染に関する3M社に対する同州の訴訟を 8億5,000万ドル(約940億円)で和解したと発表した。

 同州最大の環境問題訴訟の公判は火曜日に陪審員の選任から始まった。同州は当初、3M社に対して50億ドル(約5,500億円)の懲罰的損害賠償を求めていた。

 同州はその和解金を、汚染で影響を受けた地域の飲料水及び水の持続可能プロジェクトのために使用する。

 同州司法長官スワンソンは、その金は間もなく3M社から一括で支払われるであろうと述べた。話し合いは火曜日の早朝から続いている協議を含んで、すでに数週間行われていると彼女は述べた。

 3M社からの金は、市東部の PFCs により引き起こされた汚染問題に対して、新たな井戸の掘削、個人井戸使用者への自治体水源からの供給を含む問題解決のために使用されるであろうとスワンソンは述べた。その金をどのように分配し、使用するかについて決定するためのプロセスを作り出す必要があるとスワンソンは述べた。

 公判は、今月初旬のミネソタ州健康当局からの報告書が出るのを待って1週間遅れたが、同報告書は双子都市東部におけるがん又は出生障害の異常に高い発症率を示すことはなく、同州の強い訴訟対応について疑問を提起した。

 スワンソンは、健康当局の行動は”非常に、非常に問題がある”ことが分かり、彼らは彼女の訴訟の助けにならなかったと付け加えた。

 8億5,000万ドル(約940億円)という和解金額は、同州が求めていた損害賠償額 50億ドル(約5,500億円)の5分の1以下であるが、それは、3M社が、昨年末現在環境問題保全責任を有する米・証券取引委員会に告げた損害賠償額を上回るものであった。

 スワンソンは、ウェストバージニア州における地下水汚染に関わる調停を引き合いに出しつつ、ミネソタ州の調停の勝利と呼んだ。その訴訟では、デュポン社は PFC 漏洩に関する一連の訴訟において 6億7,100万ドル(約718億円)で和解した。

 ”我々はその調停を喜んでいる”とスワンソンは述べた。”我々はこの調停がミネソタ州にとって問題解決に役に立つであろうと考える。解決のために数十年という長い期間を要したことは問題である。これらの化学物質は私が述べたように地下に入り込んでいたが、この調停がそれを是正することに役立つということについて非常に希望を持つことができる”。

 この調停を発表する声明の中で3M社は PFCs に関連する公衆の健康問題があるとは信じていないが、とにかく州の環境プロジェクトに協力すると述べた。

 ”この調停は、ミネソタ州に住み、そこで働く全ての人々の最善の利益にかなう持続可能な方法で誠実に行動しビジネスを行うという我々の約束を反映している”と、3M社の技術担当重役で副社長のジョーン・バンベッツはその声明の中で述べた。さらに彼は、”PFC に関連する健康問題があるとは決して信じていないが、この合意は、我々が訴訟を超えて、州と一緒に環境と我々の地域社会に利益をもたらす行動とプロジェクトのために働くことを可能にする”と付け加えた。

 同州の天然資源汚染管理省の部局の長官らは火曜日(2月19日)の声明の中で、調停を称賛した。同省の部局が8億5,000万ドル(約900億円)の和解金の管財人となるであろう。

 ミネソタ汚染管理機関(MPCA)の長官ジョーン・リンク・スタインは、きれいな飲料水を確保するために双子都市東部の住民と共に働き続けると述べた。

 調停の一部はまた、影響を受ける地域の水の持続可能性と湿地の改善に向けることができる。

 ”我々は、調停の一部である天然資源回復と保護を喜んでおり、地域の水資源、漁業、及び野生生物生息地を回復し改善するために、これらの基金をどのように最善に投資するかを決定するので、影響を受けた地域社会と共に働くことができることを期待している”とミネソタ天然資源省(DNR)長官トム・ランドワーは記者発表で述べた。

調停は長年の法的争いを終わらせる

 この訴訟は、2010年に初めて起こされて以来何回も遅れた。3M社は健康当局の報告書が発表された後、その報告書は流れを変えるものであるとして、今月の初めにさらに遅らせることを求めていた。州の代理人である弁護士らはそれは新しいニュースではないとして、その特性を否定した。判事はその訴訟を1週間だけ遅らせた。

 以前の記事:ミネソタ州は水汚染裁判で3M社と戦う準備ができているとして、全ての目はミネソタ州に注がれている

 スワンソンは、3M社は地下水を PFCs で故意に汚染し、市東部の住民にがんと不妊のリスクに曝したとして訴訟を起こした。

 ミネソタ汚染管理局(MPCA)によれば、3M社は PFOA と PFOS の製造はやめたが、他のタイプの PFCs をまだ製造している。同社は、それらをスコッチガード防汚、焦げ付き防止調理器、消火剤の様な多くの製品中で使用した。

 1970年代まで3M社は合法的に、それらの化学物質を双子都市郊外のオークデール、ウッドベリ及びレイク・エルモの埋め立て場に投棄した。その後、それらの化学物質は漏洩して、地下水を汚染した。

 スワンソンは、3M社は PFOA と PFOS の製造を止める以前に PFCs の環境と市民への潜在的な有害性を故意に無視したと訴訟で主張した。同訴訟はまた、3M社は連邦当局からの PFCs に関する重要な情報を隠していたと述べた。

 3M社は、ミネソタ訴訟は実際には存在しない損害のために支払わせようとするものであると述べていた。同社はのオークデール地域の汚染を浄化するために、すでに1億ドル(約100億円)以上を費やしている。

 ”ある意味でそのような大きな訴訟が調停で解決することは驚くべきことではない。実際に両者にとって大きなリスクであった。確かに当初の数十億ドル(約数千億円)という州の主張は3M社にとって莫大な金額であるが、それはまた州にとっても、もしうまくいかなければ大きなリスクとなる”と、ミネソタ大学法学校の教授であるアレクサンドラ・クラスは述べた。

 3M社は同社が地下水を汚染したと申し立てる少なくとも 24件の同様な訴訟に直面しており、クラスは、ミネソタ訴訟は、 PFC 汚染であっても又は他の化学物質汚染であっても全国的に影響を及ぼし得ると述べている。

 ”このようにひとつの訴訟を体験すれば、専門知識を得ることができ、他の法的訴訟を扱うことができる。したがって恐らく、他の州が使用するための戦略と枠組みをもう少し提供することができるであろう”と、彼女は述べた。”我々は数十年前には必ずしも有害であるとは思っていなかったが、現在はもっと懸念ある異なる化学物質について多くを学んでいるので、私はこのような訴訟は特異なものであるとは思わない"。和解金にかかわることで今後生じるであろうことは今後、もっと詳細に説明されることが期待される。スワンソンは、その基金は州議会議員が長年暖めてきたプロジェクトには利用できないであろうと述べた。


訳注:当研究会が紹介した関連情報

化学物質問題市民研究会
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