グリーン科学政策研究所 2017年2月
フッ素化合物の代替物質:作り話と事実

情報源:Green Science Policy Institute February, 2017
Fluorinated Alternatives: Myths vs. Facts
http://greensciencepolicy.org/wp-content/uploads/2017/02/pfoa_flyer_myths_vs_facts.pdf

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2017年3月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_17/
170200_Fluorinated_Alternatives_Myths_vs_Facts.html


 PFOA、 PFOS、及びその他のC8化合物を含む長鎖過フッ素化合物は、備品、カーペット、アウトドア用品に撥水性、防汚性、及び非粘着性を持たせるために数十年間使用されている。 PFOA への暴露は、子どもの有害発達影響及び免疫機能の低下はもちろん(参照1)、成人の腎臓がん及び精巣がん、高コレストロール、不妊、甲状腺障害、ホルモン機能の変化と関連付けられている。

 そのような有害な影響のために長鎖過フッ素化合物は最近廃止され、C6 及び C4(参照2)と呼ばれる短鎖分子を含んで、多くの似たような化合物によって代替されている。産業側はこれらの代替物質は安全で、持続可能で、良くテストされていると述べている(参照3)。以下の”事実”はこれらの主張は当たらないことを示している。

要点:過フッ素化合物は人の健康と環境に潜在的なリスクを及ぼすので、それらはその機能が本質的に求められる場合にのみ安全対策をもって使用されなくてはならない。

作り話:“PFOA-free(PFOA を含まない)は安全を意味する。

事実:製品の広告は、 PFOA と同じように問題となる化学物質成分から作られた代替化学物質を含んでいるとしばしば広告している。PFOA は廃止されているので、同じように残留性があり、同様な健康リスクを及ぼすかもしれない数多くの関連化学物質が PFOA にとって代わっている(参照4)。そのような”残念な代替”を防ぐために、全てのクラスの過フッ素化合物が回避されるべきである。

作り話:炭素数が 6及び 4の化合物のような短鎖フッ素化合代替物質は、徹底的にテストされており安全である。

事実:最近の研究はこれらの代替物質は長鎖化合物と同様な健康問題を引き起こすかもしれないことを示唆している。

 2006年から2013年の間にデュポン社によりEPAに提出された16の報告書の中で示されているように(参照5)、一般的に使用される短鎖代替物質に暴露された実験動物は、いくつかの種類のがんと、肝臓と免疫系の変化が増大した。これらの有害健康影響は、古い長鎖化合物への暴露によるものと類似している。もう一つの研究は、短鎖及び長鎖化合物がホルモン系に有害影響を及ぼすプロセスに類似性を発見した(参照6)。

 カリフォルニア州公衆保健局によれば(参照7)、”PFOA と PFOS 以外の過フッ素化合物の潜在的な毒性はまだよく特性化されていない”。2015年に200人以上の世界中の科学者らがマドリード声明に署名したが、その声明は過フッ素化合物の製造と使用を制限することを求めている(参照8)(訳注1)。

作り話:短鎖フッ素化合代替物質(例えば C6, C4)は、長鎖物質の様に人体内に蓄積することはない。

事実:科学者らは、人体内で短鎖フッ素化合代替物質に何が起きるのかを理解し始めたばかりである。

 最近のある研究は短鎖フッ素化合物の濃度は、人間の腎臓、肺、肝臓、及び脳では長鎖化合物より高いことを発見した(参照9)。デンマーク環境保護庁によれば(参照10)、”人間の組織内の短鎖フッ素化合物が高い濃度で存在することには・・・懸念がある”。

作り話:短鎖フッ素化合代替物質は持続可能性がある。

事実:ほとんどのフッ素化合代替物質は極めて残留性が高く、除去するのが難しい。持続可能性であるためには、化学物質はその意図した使用の後に、速やかに分解すべきである。ほとんどの短鎖代替物質は自然には分解しない(参照9)。長鎖化合物と同様に、それらは永遠に残留するであろう。

 短鎖フッ素化合代替物質を環境中から除去することは、長鎖化合物より難しい。自ら長鎖化合物を除去するために一般的に使用される活性炭フィルターは、短鎖化合物を除去する場合には効果が低い(参照11)。過フッ素化合物は、汚染された水からレタスやイチゴのような食用作物に移動することができることを研究が示している。驚くべきことに短鎖化合代替物は、長鎖化合物より高いレベルでそのような作物中で発見されている(参照12)。

作り話:過フッ素化合物は現代生活に必要である。

事実:多くのブランドが製品から全ての過フッ素化合物を除去している。IKEA, Crate & Barrel, Levi Strauss 及びその他50社以上。

参照
     
  1. C8 Science Panel. “C8 Probable Link Reports.” Accessed Feb. 22, 2017. http://www.c8sciencepanel.org/prob_link. html
     
  2. Wang, Z., et al. Environ. Int. 75 (2015): 172-179, Wang, Z., et al. Environ. Sci. Technol. DOI 10.1021/acs.est.6b04806
     
  3. “DuPont Capstone Surfactants and Repellants ? an Overview.” Accessed Oct. 27, 2016. http://www2.dupont.com/ Capstone/en_US/assets/downloads/Capstone(R)_Overview_Document_rev28march2011.pdf
     
  4. American Public Health Association. Policy Number 20163. (2016), Scheringer, M. et al. Chemosphere 114 (2014): 337-339
     
  5. Lerner, S. “New Teflon Toxin Causes Cancer in Lab Animals.” The Intercept, 2015.
     
  6. Rosenmai, A. K., et al. Andrology 4.4 (2016): 662-672.
     
  7. Biomonitoring California. “Potential Designated Chemicals: Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)”. Accessed Sep. 9, 2016.
    http://www.biomonitoring.ca.gov/sites/default/files/downloads/PotenDesigPFASs_031315.pdf
     
  8. Blum, A., et al. Environmental Health Perspectives 123.5 (2015): A107-A111.
     
  9. Perez, F., et al. Environment International 59 (2013): 354-362.
     
  10. Danish Ministry of the Environment. “Short-chain Polyfluoroalkyl Substances (PFAS). A literature review of information on human health effects and environmental fate and effect aspects of short-chain PFAS.”
    http://www2.mst.dk/Udgiv/publications/2015/05/978-87-93352-15-5.pdf. Accessed Oct. 17, 2016.
     
  11. Appleman, T., et al. Water Res. 51 (2014): 246-255, Eschauzier, C. et al. Environ. Sci. Technol. 46.3 (2012) 1708-1715
     
  12. Blaine, A. C., et al. Environ. Sci. Technol. 48.24 (2014): 14361-14368, Blaine, A. C. et al. Environ. Sci. Technol. 47.24 (2013): 14062-14069

訳注1:マドリード声明
Green Science Policy Institute 2015年5月1日 ポリ−及びパーフルオロアルキル物質(PFASs)に関するマドリード声明



化学物質問題市民研究会
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