欧州委員会プレスリリース 2011年10月18日
”ナノ物質”とは何か?
欧州委員会 共通の定義によって新たな局面を開く


情報源:EUROPEAN COMMISSION Press Release
Brussels, 18 October 2011
What is a "nanomaterial"? European Commission breaks new ground with a common definition
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/11/1202&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年10月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/eu/111018_EC_nano_common_definition.html

【ブリュッセル 2011年10月18日】 本日、欧州委員会によって採択された勧告(訳注0)によれば、”ナノ物質”は、その主要構成要素が1〜100ナノメートル(1nm=10億分の1m)の寸法を持つ物質である。この発表は、どの物質が特定の法律で、特別の処置を必要とするかを明確に定義しつつ、市民の健康をよりよく保護することに向けた重要な第一歩を記すものである。

 欧州環境委員ヤネス・ポトチュニックは、次のように述べた。”私は、EUが始めて全ての規制目的のために使用されるべきナノ物質の横断的呼称を申し出たということに満足している。我々は、科学的な情報と広範な協議に基づいて確固とした定義を持つにいたった。産業界はこの重要な経済的分野において明快な規制の枠組みを必要としており、消費者はこれらの物質について正確な情報を受けるに値する。それは、この新たな技術がその可能性に応えることができるとともに、環境と人の健康への可能性あるどのようなリスクにも対応する重要な第一歩である”。

 ナノ物質は、練り歯磨きからバッテリー、塗料、衣料品に至るまで、数百の応用と消費者製品ですでに使用されている。これらの革新的な物質を開発することは欧州の競争力のための重要な推進力であり、それらは、医療、環境保護、エネルギー効率のような領域での進展に著しい可能性を持っている。しかし、それらが及ぼすリスクについて不確実性があるので、適切な化学的安全性の規則を適用することを確実にするために、より明確な定義が必要とされている。その定義は、異なる分野で現在使用されている様々な定義に一貫性をもたらすので、産業界の団体を含む全ての利害関係者に役立つであろう。この定義は技術及び科学の進歩に照らして、2014年に見直されるであろう。

 この勧告はまた、2009年に欧州議会に対してなされたナノ物質に関連する全てのEUの法律に広く適用可能な単一の定義という約束を果たすものである。

 本日採択された定義はハザードやリスクよりも、物質の構成要素をなす粒子のサイズを考慮するアプローチに基づいている。その表現は、非束縛状態(in an unbound state)、又はアグロメレート(agglomerate)又はアグリゲート(aggregate)の状態で、1又はそれ以上の外形寸法が1nmから100nmの範囲にある粒子の数の分布が50%以上であるような粒子からなる天然、非意図的、又は工業的物質であると述べている”。

訳注:
1.欧州委員会の勧告にはさらに次のことが含まれる。
 ”1又はそれ以上の外形寸法が1nm以下であるフラーレン、グラフェンナノフレーク、及び単層カーボンナノチューブはナノ物質とみなされるべきである”。

2. NGO の中からは、”ナノサイズの上限が100nmは低すぎること”、及び”粒子の数の分布が50%は高すぎること”に批判が出ている。(訳注1


 この定義は、新規の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)(訳注2)及び共同研究センター(JRC)(訳注3)からの科学的助言に基づいている。定義の草案(ドラフト)はパブリック・コンサルテーション(訳注4)にかけられた。

背景

 ナノ物質は現在、EU及び国レベルで様々な法的文書によって律されている。しかし、定義は1件ごとに開発され分野ごとに異なり、産業には不必要な負担をかけ、これらの物質のリスクと便益についての公衆の議論の妨げとなっていた。この勧告は、EUの法律制定者にナノ物質の法的根拠を与えるものである。

 EUの化学物質の全体的規則であるREACHにおける最初の登録期限(2010年11月30日)の経験は、会社はナノ物質に関する彼等の責任についてもっと明快さを必要とすることを示した。REACHは、化学物質としてのナノ物質の特性についての情報を生成することに主要な役割を持っている。この採択された定義により、会社がその製品をナノ物質であると考えるときに、正確に彼等の登録書類一式を評価し、正確に決定するのを容易にするであろう。

更なる情報

訳注0
欧州委員会2011年10月18日 ナノ物質の定義に関する勧告(ドラフト)

訳注1:世界のステークホールダーの意見
訳注2
2010年7月6日 新規の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)”ナノ物質”という用語定義のための科学的根拠 パブリック・コンサルテーション用 エグゼクティブサマリー

訳注3
2010年7月2日 EC/JRC プレスリリース サイズが問題:新たなJRC レポートはナノ物質に関する将来のEUの規制のための基礎となる

訳注4
欧州委員会文書 パブリックコンサルテーション 2010年10月21日 ナノ物質という用語の定義に関する欧州委員会勧告(案)



化学物質問題市民研究会
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