EurActiv 2006年10月11日
REACH:EU 産業界
議会環境委員会の投票結果を懸念


情報源:EurActiv, 11 October 2006 Updated
Business anxious after REACH vote
http://www.euractiv.com/en/environment/business-anxious-reach-vote/article-158694

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/06_10_11_EU_business_anxious.html


概要:

 10月10日、欧州議会の環境委員会で有害化学物質の廃止が支持されたことで産業界団体には懸念が広がっているが、健康団体、環境団体及び労働組合からは歓迎されている。

 関連記事:
 Chemicals Policy review (REACH)
Parties unite on EU chemicals safety law (REACH)

背景:

 REACH (化学物質の登録、評価、認可)規制案は、化学物質の製造者及び輸入者は現在、EU 市場に出ている約3万種の化学物質について今後11年の間に健康と安全に関するテストを実施することを提案している。
 同法案は現在、欧州議会で重要な第二読会で討議されており、最終的な閣僚理事会の承認は年末には行われる見通しである

論点:

 REACH に関する議会の推進役であるイタリア社会党のギド・サッコーニは、議会の環境委員会で多くの支持を受け 63票のうち42票をの賛成票を得た。以下は委員会が合意した主要項目である。
  • 経済的及び社会的に受け入れることができる場合には、最も有害な物質の代替が必須
  • 認可された化学物質は最終的には代替されるよう、5年毎に見直し
  • 合理的にリスクを予見できる場合には、化学物質の製造者と輸入者が製品の安全性に責任を持つことを確実にするための一般注意義務
  • 製品がEUの法に準拠していることを消費者が容易に分るよう、REACH 承認後に欧州委員会によって提案されるべき REACH 品質ラベルの導入
  • 動物テストの代替推進
  • 中小企業の支援措置
立場:

 欧州化学工業協会(CEFIC)は、委員会によって採択されたような有害物質の代替は、”ある化学物質について明確な社会・経済的な便益があり代替が存在しない場合でも禁止をもたらすであろう。”

 ”このような状況では多くの製造者がヨーロッパから出て行くことになる”と CEFIC は警告した。

 しかし、CEFIC はまた、”今は REACH が最終的に採択されるべき時である”と信じており、”調停(conciliation)を避けるために”、社会党の理事会と議会への呼びかけに参加した。

 CEFIC にとって、鍵はいくつかの定義を明確にすることにあり、それはすでに今月初めの EurActiv とのインタビューでギド・サッコーニによって提案されていたことである。

 ”有害物質の’適切な管理’の概念と有害物質の’安全な代替’の定義をもっと明確にすることが、実行可能で健康と環境の保護を改善する最終的な解決の道を開くことになる”と CEFIC は述べた。

 欧州の雇用者の組合である UNICE は、委員会が閣僚理事会の”適切なリスクの管理の概念に基づく”代替に関する見解を無視したことに”失望した”と述べた。

 UNICE はまた、立法者が交渉のテーブルに着くよう要求した。”欧州議会、理事会、及び欧州委員会は、本会議でコスト効果のある実行可能な REACH を達成するための努力を続けなくてはならない”と UNICE の代表エルネスト・アントニ・セリイエールは述べた。

 洗剤、石けん、及び食品分野で有名なオランダの会社ユニリーバーは、REACH は”既存の化学物質の法体系を簡素化し、消費者に化学物質への自信を与える”と述べて、投票結果を歓迎した。

 ユニリーバーは、議会と理事会のEU立法者が欧州の消費者の利益に真にかなう REACH の最終版に向けて合意を見いだすよう促している。

 小規模化学物質製造者と製品中で化学物質を使用する川下製造者を代表する欧州中小企業協会 UEAPME は、投票結果の一部だけを評価した。

 ”UEAPME によれば、環境委員会は、中小企業による REACH の実施に役立つコストの共有と提案承認に関する条項を明確にすることによって欧州の中小企業に対する配慮を示した。さらに、議員らは適切にもデータ自由化の期限を10年から15年に延ばすという危険な案を回避した(訳注:データの著作権の期限が長くなると、著作権を持たない中小企業はそれだけ長い間、著作権を持つ大企業に著作権料を払わなくてはならない)。”

 しかし、UEAPME は、委員会は、”同様な物質を登録する時に登録料を共有することを強いる一物質一登録(OSOR)システムからのオプトアウト(訳注:抜けること)について独立した評価を行う要求を拒絶することによって、中小企業にとって重大な問題を見過ごした”と付け加えた。

 ”UEAPME は、欧州化学物質庁は最終的にはこの一物質一登録(OSOR)システムへの例外を評価することに責任を持たないということを遺憾に思った。”

 一方、中小企業は、登録料が OSOR (一物質一登録)の下で共有する方法が”明確にされた”ことに”満足をもって歓迎”した。委員会の採決の結果、化学物質の製造量又は輸入量が多ければ、それだけ分担する金額も高くなる。

 ”今日の REACH の投票結果は、ヨーロッパの中小企業にとっていくらかの前向きな要素を伴っているが、我々が望んだほどに完全ではない”と UEAPME 環境政策ディレクターのギド・レナは述べた。 UEAPME は特に、”少量生産物質については、手続きの煩雑さがその利益を無にし、ヨーロッパでの中小企業の化学物質のビジネスにさらに負担をかける”と述べた。

 欧州労働組合連合(ETUC)は、”代替原則は完全に発ガン性物質指令 Directive 2004/37/EC に一致するものであり、この指令は雇用者により安全な代替が入手可能なら、これらの有害な物質を代替するよう求めている”として、委員会の投票結果を支持すると述べた。

 環境団体である WWFグリーンピースは、女性健康、及び消費者の団体とともに、この投票結果を”化学物質汚染から健康と環境を守る方向への重要なステップである”として歓迎した。

 彼らにとってこの投票結果は、”非常に高い懸念のある化学物質(SVHC)は可能な限りより安全な代替物質に替えるべきであるとする強いメッセージを閣僚理事会に送り返す”ものである。彼らは、そのような代替を法的に義務付けることは、”革新を推進する”だけであり、産業活動を妨げることはないと述べた。

 WWF はまた、委員会が日用品中の化学物質について消費者のためにもっと多くの情報を再度求めたこととともに、化学物質製造者にその製品の安全性についての責任を持たせるために”一般注意義務(duty of care)”原則を含めたことを歓迎した。

今後の予定:
  • 2006年11月14日:本会議での採決
  • 2006年12月4日:(競争力)理事会での予想される採決及びREACHの最終的承認
  • もし議会と理事会が合意に達しなければ、特別調停委員会が意見の相違を解消するために開催されることになる。
リンク:

EU公式文書:
関係団体の立場:

訳注1:
議会第一読会の妥協修正案と理事会共通見解における認可の相違
(出典:The International Chemical Secretariat (ChemSec) ChemSec Press release 15 September 2006)


訳注2:関連情報
ChemSec ニュース 2006年10月10日/欧州議会 環境公衆健康安全委員会での REACH 投票結果の分析 (当研究会訳)

EACH:欧州、環境・健康・消費者・女性団体による欧州議会第二読会への要求事項/2006年3月版(当研究会訳)

グリーンピース報告書2006年4月23日/REACH:リスクの影響閾値と”適切な管理” 認可に対する理事会意見の致命的な欠陥(当研究会訳)

WWF 2006年4月19日 REACH 第54条(f) 認可 概説 ”同等の懸念”ある化学物質をどのように認可に含めるかに関するWWFの見解(当研究会訳)

国際化学物質事務局(ChemSec) ニュース/2005年12月13日 EU閣僚理事会 REACH 取引で合意到達(当研究会訳)



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