ChemSec ニュース 2006年10月10日
欧州議会 環境公衆健康安全委員会での
REACH 投票結果の分析

情報源:The International Chemical Secretariat (ChemSec)
ChemSec News October 10th, 2006
Analysis of the REACH Vote in Environment, Public Health & Safety Committee
http://www.chemsec.org/documents/061010_ChemSec_Analysis_ENVI_Vote.doc

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/News/chemsec_061010_Env_Committee.html


 欧州議会環境委員会は本日(10月10日)投票を行い、昨年の REACH 提案に関する第一読会で確立した立場の多くを保持した。議会での REACH 報告者ギド・サッコーニが示した優先項目に基づき、環境委員会は有害物質の代替、動物テスト、一般注意義務、そして低生産量化学物質の化学的安全報告(CSR)に関して強い立場を堅持した。賛成42、反対12、棄権6で採択された今回の修正報告書をもって、環境委員会はサッコーニ氏に対し、彼が閣僚理事会及び欧州委員会と協議する際にとるべき立場を明確に委託した。
 認可に関しては、賛成41、反対17、棄権3で採決された。同委員会は、適切な代替が存在する場合にはいつも、いわゆる非常に高い懸念のある物質(SVHC)を代替する義務を超党派で支持したと述べた。これらは、発がん性、生殖毒性、及び生体蓄積性が知られる物質(CMRs)を含む。議会案は、そのような物質は、適切な代替がない場合、社会経済的便益がリスクに勝る場合、そしてリスクが適切に管理される場合にのみ、その使用が認可されるというものである。さらに、認可された後その認可が見直される期限を5年とすること、及び、認可に当たっては常に代替計画が用意されているべきことを採択した。

 サプライチェーンでの情報に関しては、成形品中の物質に関する情報伝達の義務を採択した。(染色織物のような製品のユーザーのようなサプライチェーンの外の受領者、及びこの情報を得る最終消費者を除外するという理事会の立場を削除) 情報伝達すべき義務として、有害物質の製造者又は輸入者は、要求があれば川下ユーザーに人の健康又は環境にに与える物質の影響を評価するための情報を提供しなくてはならない。この情報要求は、サプライチェーンにおける川上及び川下の両方に適用される。成形品中の物質に関する安全データシートもまた、製品受領者に渡されなくてはならない(消費者を除く)。しかし、消費者は製造/輸入される成形品中の物質に関する情報について製造者/輸入者に質問する権利を有し、製造者/輸入者は個々の消費者に対し決められた期限内に安全と使用に関する完全な情報を与えなくてはならない。

 製品中の物質に関し、同委員会は、もしその物質が成形品中で均一重量0.1%以上の濃度で存在する場合には、成形品中の物質を届け出る(notify)ことを義務付けることを採択した。このことは、この濃度限度は、製品全体ではなく、製品の離散要素にも適用することを意味する。同委員会はまた、成形品の全サイクルを通じて公衆又は環境への暴露を遮断することができないなら製品中の物質の届け出を行うことを確保した。

 一般注意義務(Duty of Care)に関しては、同委員会のメンバーは、化学物質製造者、輸入者、及びユーザーには製品が人の健康と環境に有害影響を与えないことの保証を含んで製品の安全性に対する法的責任があるとすることを採択した。議会は、物質又は調剤の製造者/輸入者/川下ユーザーが、これらが人の健康又は環境に有害影響を与えることを知っている又は合理的に予見できる場合には、そのような影響の防止、制限、又は矯正をするために合理的に求められるどのような努力をも払わなくてはならないとする新たな条項を求めている。責任ある団体は適切な情報伝達と情報交換、技術的な支援を確実にしなくてはならず、それはリスクを記述し、報告し、届け出る義務を含む。サッコーニ氏はまた、引き続く記者会見で議会の法務部門は議会が用いた用語の有効性は理事会のものより優れていることを確認したということに言及した。

 最後に、非動物テストの推進は全体的な目標として含まれ、動物テストは代替が可能となり次第、自動的に置き換えられる。


訳注:(参考情報)
EurActiv 2006年10月11日/REACH:EU 産業界 議会環境委員会の投票結果を懸念(当研究会訳)
EurActiv 2006年10月6日 更新/REACH:EU は有害な化学物質の撤廃に慎重 (当研究会訳)

今後の予定:
  • 2006年10月4日:議会内環境委員会での討議
  • 2006年10月10日:議会内環境委員会での採決
  • 2006年11月14日:本会議での採決
  • 2006年12月4日:(競争力)理事会での予想される採決及びREACHの最終的承認


化学物質問題市民研究会
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