EACH:欧州、環境・健康・消費者・女性団体による
欧州議会第二読会への要求事項

2006年3月版

European Environment Bureau, EPHA Environment Network, Eurocoop,
Friends of the Earth Europe, Greenpeace, Women in Europe for a Common Future, WWF

情報源:REACH 2nd Reading
Key priorities of Environmental, Health, Consumer and Women’s NGOs
Version March 2006
http://www.eeb.org/activities/chemicals/2nd-ReadingNGOs4key_priorities-March2006.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年5月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/NGO/06_03_NGOs_2nd_Reading.html


 REACH は、EUにおける化学物質の安全性を確保する機会を無駄にするのか、あるいは、最も危険な化学物質から人の健康と環境を保護する第一歩となるのか? これは欧州議会の議員が今後、数ヶ月で決断しなくてはならない選択である。NGOs は、すでに当初の提案から大きく弱体化されてしまっているが、市民と環境に対する最低限の保護を確保するために、REACH 立法において守られるべき下記4点を要求する。

1. 安全を確保する: より安全な代替が存在する場合には、有害な化学物質を代替すること。
 REACHは、より安全な代替を体系的に促進する必要があり、それらは、がんを引き起こし、遺伝子や生殖系に影響を与える化学物質、あるいは、我々の体内や環境中に蓄積するもの、又はホルモン系をかく乱するものを適切に代替する。最も危険な化学物質が継続して使用(認可)される場合:
  • より安全な代替物質が入手可能できず、かつ、その使用が社会にとって非常に重要である場合にのみ、認可は与えられること。(欧州議会の提案の通り)
  • より安全な代替品の革新と開発を促進するために、認可期間は最大5年に限定すること。(欧州議会の提案の通り)
  • 第三者機関によって提供される代替情報はもとより、申請者によって提出される代替案と具体的な実施の分析を考慮すること。(欧州議会の提案の通り)
2. 情報は信頼をもたらす:有害な化学物質とより安全な代替を特定できるよう十分な安全情報を提供するすること。
 登録プロセスを通じて得られる透明な安全と使用(暴露)情報は、会社と当局が、化学物質の安全な管理に関する情報に基づく決定を行い、より安全な代替を特定することを可能とするために本質的である。REACHの下では、会社は:
  • より高い生産量帯域(10トン/年以上)において生殖毒性を含む長期的な影響に関する情報を提供すること。(欧州議会の提案の通り)
  • 高品質の使用及び暴露情報(シナリオ)を提供すること。(理事会の提案通り)
  • 化学物質安全報告書で要求されるスク管理措置は、1トン/年以上のものに対して適用すること。(欧州議会の提案の通り) さもないと、安全情報は実際的な改善をもたらさない。
3. 法的保証:製品の安全に対する化学物質産業の責任を確実なものにすること。(一般注意義務)
 化学物質物質製造者、輸入者、及び使用者は彼らの製品の安全性について責任を持つこと。(欧州議会の提案の通り) 彼らは、これらの製品が人の健康又は環境に有害影響をもたらさないことを保証すべきである。明確な法的条項が、製造量に関係なく、全ての化学物質に適用されなくてはならない。それは産業側の既存の自主的な約束を単に成文化するだけである。

4. 消費者製品の透明性:市民の知る権利を確立すること。
 化学物質使用者と消費者が情報に基づく選択をすることが可能となるよう十分な情報が公開され入手できなくてはならない。情報は、小売業者と消費者が製品中の有害な化学物質について特定できるようサプライチェーンに供給されなくてはならない。
  • 市民は、彼らが購入するEUで製造された製品中及び輸入された製品中に存在する物質について質問する権利を持っている。非常に高い懸念を有する化学物質を含む全ての成形品はラベル表示される必要がある。(欧州議会の提案の通り)
  • REACHにおいて機密情報ではないリストは、オーフス条約に従って環境と人の健康に関連する全ての情報にまで拡張される必要がある。
  • 産業側は情報を企業機密とする場合には、常に透明な正当性を示す責任がある。
背景:
 5年前に市民団体は、REACHをヨーロッパの化学物質政策を改革する絶好の機会(a once-in-a-lifetime opportunity)であると呼んだ。今日、産業側に大幅な譲歩をした後では、その機会はほとんど残っていない:
  • 低生産量化学物質のほとんど(REACHでカバーされる物質数の3分の2、又は17,500 物質)には基本的な健康安全情報が提供されない。
  • 発達毒性や生殖毒性のような毒物学的影響の適切な評価なしに登録されるかも知れない高生産量化学物質についても、同じことが言える。
  • その結果、化学物質製造者は自身の製品の安全性についてほとんど責任を負わないことになる。
  • 多くの重要な決定は技術的機関に委任され、又は、コミトロジー手続き(注)で行われ的たが、そのことは、議会による民主的な監視を排除するものである。
    訳注:コミトロジー手続とは欧州委員会が加盟国の代表等からなる専門委員会のようなものを設けて、事実上その場で内容を決定し、欧州委員会指令として採択するプロセス。手続き的に議会や理事会の審議プロセスを経ない。)
  • 化学品機関、その仕事を適切に実施しているかどうかどうかの評価が行われず、官僚的体質が増えている。
 積極的に評価できる点としては、現在、一貫した認可手続きが少なくとも生体蓄積性及び残留性化学物質に適用されることとなっており、そのことが日用品中からそのような化学物質の使用を削減し、より安全な代替品に向けての革新を推進することになる。しかし、これは、化学物質の健康への脅威がますます明らかにされている時に、現在40ほどあるとされている法を一つの法に置き換えるためには、あまりにもわずかな前進である。したがって、我々は政策決定者に対し、REACHの重要な部分の文言を改善し、REACHが人の健康と環境を確実に保護できるようにすること要求する。

NGOsの4つの重要要求

  1. 安全を確保する: より安全な代替が存在する場合には、有害な化学物質を代替すること
  2. 情報は信頼をもたらす:有害な化学物質とより安全な代替を特定するために十分な安全情報を提供するすること
  3. 法的保証:製品の安全に対する化学物質産業の責任を確実なものにすること(一般注意義務)
  4. 消費者製品の透明性:市民の知る権利を確立すること

詳細についての連絡先:
  • Mecki Naschke, European Environmental Bureau, tel +32 2 289 10 94, mecki.naschke@eeb.org
  • Lisette Van Vliet, EPHA Environment Network, tel + 32 2 233 3877, lisette@env-health.org
  • Javier Calvo, EURO COOP, tel + 32 2 285 00 76, jcalvo@eurocoop.coop
  • Aleksandra Kordecka, Friends of the Earth Europe, tel +32 2 542 61 08, aleksandra.kordecka@foeeurope.org
  • Nadia Haiama-Neurohr, Greenpeace, tel +32 2 274 1913, nadia.haiama@diala.greenpeace.org
  • Daniela Rosche, Women in Europe for a Common Future, tel +31 6 2295 0027, daniela.rosche@wecf.org
  • Ninja Reineke, WWF, tel +32 2 740 0926, nreineke@wwfepo.org


化学物質問題市民研究会
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