IPEN及びArnika 2020年1月22日 プレスリリース
欧州連合(EU)は POPs 条約における有害な
難燃剤含有廃棄物のリサイクル免除の登録を取り下げる


情報源:IPEN and Arnika Press Release 22 January 2020
EU Withdraws its Toxic Recycling Exemption
https://ipen.org/news/eu-withdraws-its-toxic-recycling-exemption

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年1月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/
200122_IPEN_Arnika_PR_EU_Withdraws_its_Toxic_Recycling_Exemption.html


環境及び健康関連団体は、EU が禁止されている難燃化学物質がリサイクルの流れ及び新製品中に入り込むことの容認を取り下げたことを歓迎している。
【ヨテボリ、スウェーデン】欧州連合(EU)はリサイクルを浄化する方向への重要な一歩を踏み出した。EU は、世界的に禁止されている PBDEs という名前で知られている有害な難燃剤(訳注1)を含む物質をリサイクルすることを最早許さないであろう。研究者らは、ヨーロッパ中で禁止されている有害な難燃剤及び関連する化学物質−それらは主に廃棄された電子機器に由来する−が、リサイクルの流れ及びリサイクルされたプラスチックから作り出される新たな消費者製品を汚染していることを明らかにした。環境及び健康関連団体はこの EU の決定を称賛し、 PBDE のリサイクル免除を主張する残りの 6か国も EU に続くよう働きかけている。

 甲状腺機能をかく乱し、子どもたちに神経系障害や注意欠陥を引き起こすことが知られている PBDE 難燃化学物質は 10年前にストックホルム条約で世界的に禁止された。しかし、同族の化学物質は、EU 並びにブラジル、カナダ、カンボジア、日本、韓国及びトルコが、禁止された化学物質のリサイクルを容認したストックホルム条約の抜け穴を利用して、その使用を長引かせる免除を要求したので、そのようなリサイクル・プラスチックから作られる消費者製品を汚染し続けている。

  Arnika、IPEN、及びその他の公益 NGOs の研究者らは、リサイクル・プラスチックから作られた子どものおもちゃ、台所用品、及びその他の消費者製品の有害難燃剤による汚染を明らかにした研究を通じて(訳注2)、有害リサイクルと PBDEs 免除の問題に注意を喚起した。高い可視性があり、厳密で多国間にわたるその研究はリサイクル免除には弁解の余地がないことを示した。

 ”この危険な抜け穴をふさぐことで、EU は公衆の健康のための重要な第一歩を踏み出した”と、Arnika の有害化学物質に関する専門家で、IPEN のダイオキシン、 PCBs 及び廃棄物作業グループの調整者であるイトゥカ・ストラコーバ(Jitka Strakova)は述べた。”有害な禁止化学物質から子どもたちと家族を守ると主張する政府は、おもちゃの中の有害物質を許す政策を見逃すことはできないはずだ。それがリサイクル免除がしていることである。EU の PBDEs のためのリサイクル免除を取り下げるという前向きな決定は、世界の政策の教訓として役に立ち、リサイクル及び廃棄物中の POPs を終わらせる政策を円滑にする助けにきっとなる”。

  POPs であると特定されている PBDEs のような物質は非常に長い期間にわたって有害である。POPs 物質は特定され、破壊されるべきであり、更なるダメージをもたらす経済循環への戻りは許されるべきではないと Arnika の有害物質・廃棄物プログラムの代表ジンドリッヒ・ぺトリックは言う。”EU はリサイクルに関するこの責任ある決定を称賛されるべきである。次は、クリーンな循環経済のための真のリーダとなることであり、EU は、禁止されている化学物質を含む電子廃棄物の国際的な輸送と投棄をいまだに容認する廃棄物政策に目を向けるふさわしい政策措置をとるべきである(訳注3)。 EU はまた、リサイクルチェーンに入り込み、製品中に出現すること許す微量の汚染物質としての難燃剤デカ BDE のための閾値を非常に高くすることに目を向けるべきである”。

 ”有害物質をリサイクルするということは、有害化学物質が新たな製品に入り込むことにドアーを開くということである”と、IPEN の上席科学技術顧問ジョー・ディガンギは述べた。”そのことは単純に正当化できるものではなく、緊急に止める必要がある。我々は、ブラジル、カナダ、カンボジア、日本、韓国及びトルコがもまた、2021年のストックホルム条約第10回締約国会議で彼らの有害リサイクル免除を取り下げることができる”。

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 編集者及びジャーナリストは、インタビューまたは更なる情報のために、Jitka Strakova (jitka.strakova@arnika.org / +420 777 266 386)又はKarolina Brabcova (karolina.brabcova@arnika.org / +420 731 321 737) にコンタクトしてください。

 IPEN は、有害物質のない将来を求める 121か国、500以上の参加組織を擁する世界的な非政府ネットワークである。更なる情報: www.ipen.org

 Arnika はチェキア(チェコ共和国)に拠点を置き、自然保護、有害物質、及び廃棄物管理、並びに環境問題に関する意思決定への公衆の参加に焦点を当てる非政府組織である。 Arnika は、有蓋物質及び有害化学物質、又は産業施設からの安全ではない環境汚染及び廃棄物と戦っている。https://english.arnika.org/


訳注1
訳注2

訳注3
ストックホルム条約の廃棄物処理に関連する条項
第六条 在庫及び廃棄物から生ずる放出を削減し又は廃絶するための措置
(d)廃棄物(廃棄物となった製品及び物品を含む。)が次のように取り扱われるよう適当な措置をとること。
  1. 環境上適正な方法で取り扱われ、収集され、輸送され及び貯蔵されること。
  2. 国際的な規則、基準及び指針(2の規定に従って作成されるものを含む。)並びに有害廃棄物の管理について規律する関連のある世界的及び地域的な制度を考慮して、残留性有機汚染物質である成分が残留性有機汚染物質の特性を示さなくなるように破壊され若しくは不可逆的に変換されるような方法で処分されること又は破壊若しくは不可逆的な変換が環境上好ましい選択にならない場合若しくは残留性有機汚染物質の含有量が少ない場合には環境上適正な他の方法で処分されること。
  3. 残留性有機汚染物質の回収、再生利用、回収利用、直接再利用又は代替的利用に結びつくような処分作業の下に置かれることが許可されないこと。
  4. 関連する国際的な規則、基準及び指針を考慮することなく国境を越えて輸送されないこと。



化学物質問題市民研究会
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