ストックホルム条約プレスリリース
COP4 ジュネーブ2009年5月9
各国政府結束
世界のDDT依存を低減
新たな9化学物質を国際条約に加える


情報源:Stockholm Convention Press release COP4 - Geneva, 9 May 2009
Governments unite to step-up reduction on global DDT reliance
and add nine new chemicals under international treaty

http://chm.pops.int/Convention/Pressrelease/
COP4Geneva8May2009/tabid/542/language/en-US/Default.aspx


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月 9日
更新日:2009年5月13日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/090508_Press_POPs_nine_new_chemicals.html


ジュネーブ、スイス 2009年5月9】 本日、9種の残留性有機汚染物質(POPs)がストックホルム条約の下にリストされた。160以上の政府が、人に対して最も有毒であると知られている化学物質のあるものを撲滅するための世界の取り組みを強化するという実際的な決定をもって一週間の会議を今、終えた。

 加盟国会議(COP)は、ストックホルム条約にとって歴史的な一週間を記録した。第一に、条約は9種の新たな化学物質を含めるために修正された。これらの多くは、農薬、難燃剤、及び多くの他の商業用途で、今日まだ使用されている。

 ”ジュネーブにおけるこの会議は、ストックホルム条約にとって重要なこの日に最高潮に達した。その意義を過少評価することはできない。我々は今、世界中の政府がそのような有害化学物質によってもたらされるリスクに対して真剣に対処するという明確な合図を出した。条約に9種の新たな化学物質を加えることによって、これらの物質の人の健康と環境に及ぼす途方もない影響が本日、確認された。この動きは、そのような物質は削減し最終的には世界の共同体から廃絶する必要があるとする国際的な懸念を反映している”と国連事務次長でUNEP事務局長アキム・シュタイナーは述べた。

 他の動きには、ストックホルム条約が、ストックホルム条約の姉妹条約である有害化学物質と廃棄物に関するロッテルダム条約及びバーゼル条約と連携して、相乗効果を得る画期的な決議が満場一致で採択されたことである。この勢いは、2010年2月に開催が予定されている国連環境計画(UNEP)管理理事会世界閣僚環境フォーラム特別会議で足並みを揃え、その直後に臨時COP会議が開催されるであろう。引き続くCOP会議において、拡大会議が初めて化学物質と廃棄物に関する3つの条約を対象とするであろう。

 また、画期的な決議がDDT世界パートナーシップの是認に関して合意に達した。DDTは最終的な廃絶が目標とされるが、条約はいくつかの国では彼らの市民をマラリアとその他の疾病から保護するために、この殺虫剤を使い続けるであろうことを認識する。

 PCB廃絶ネットワーク(PCB Elimination Network)もまた是認された。諸国は現在、これらの有害な物質の環境的に適切な管理と処分で国々を支援する協力的枠組みを通じてポリ塩化ビフェニル(PCB)を廃絶するための取り組みを強化している。このネットワークは、主要なデータを確立し、PCB類の使用が実際に低減しているかどうか評価することを任務とするであろう。

 会議はまた、条約のPOPs削減の有効性を評価するためのプロセスを見直した。様々な国や地域の監視システム上に構築する世界監視プログラム(global monitoring programme)は、環境中と人体内の POPs の量とタイプについての世界の傾向を示すであろう。

 会議のメッセージは明確である。”POPsのない未来のための挑戦”なくしては、これらの有毒物質による化学物質の足跡を拭うことはできず、人の健康と環境に及ぼす影響を最小にするための世界の取り組みは失敗するであろう。大きなステップを踏み出し、世界の政府は今週、化学物質の問題を世界の議題のトップに上げるためにストックホルム条約の下で結束した。

記者への注記

 ストックホルム条約は人を殺し、神経と免疫系を損ない、がんと生殖障害を引き起こし、正常な幼児と子どもの発達を阻害することができる、ある有害な農薬と産業化学物質を目標としている。

 9種の新たな化学物質が今回、ストックホルム条約の下にリストされた。
  • α−ヘキサクロロシクロヘキサン(付属書 A:廃絶)
  • β−ヘキサクロロシクロヘキサン(付属書 A:廃絶)

     α-HCHとβ-HCH の殺虫剤としての意図的使用は数年前に廃止されているが、これらの化学物質はリンデンの非意図的副産物としてまだ製造されている。α-HCHとβ-HCH を含むそれらの異性体がリンデン1トンの製造で約 6-10 トン生成される。

  • ヘキサブロモジフェニルエーテル及びヘプタブロモジフェニルエーテル(付属書 A:廃絶)
  • テトラブロモジフェニルエーテル及びペンタブロモジフェニルエーエル(付属書 A:廃絶)

     ブロモジフェニルエーテル同族体は、有機物質の燃焼を妨げる又は抑制する臭素化有機物質であり、難燃剤添加物として用いられている。臭素化ジフェニルエーテルは主に商業用混合物として製造され、いくつかの異性体、同族、及び少量の他の物質が存在する。

  • クロルデコン(付属書 A:廃絶)

     クロルデコンは、合成有機塩素化合物であり、農業用殺虫剤として主に使用されていた。1951年に最初に製造され、1958年に商業的に導入された。この化学物質の現在の使用又は製造は報告されていない。

  • ヘキサブロモビフェニル(付属書 A:廃絶)

     ヘキサブロモビフェニル(HBB)は、主に1970年代に難燃剤として使用された産業用化学物質である。既存のデータによれば、HBB はほとんどの国で最早、製造されておらず、新規又は既存の製品中で使用されていない。

  • リンデン(付属書 A:廃絶)

     リンデンは種子及び土壌の処理、葉への散布、樹木及び木材処理、及び家畜と人の寄生虫対策用の殺虫剤として広範に使用された。リンデンの製造は近年、急速に減少しており、ほんの少数の国だけがまだ製造している。

  • ペンタクロロベンゼン(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)

     ペンタクロロベンゼン(PeCB)は、PCB製品、染料担体、抗菌剤、難燃剤、及びキントセンの製造ような化学物質中間体として使用され、現在でもこの目的で使用されているかもしれない。PeCB はまた、熱または産業プロセスにおける燃焼中に非意図的に製造される。溶剤や農薬のような製品中の不純物としても存在する。

  • パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩類、及びパーフルオロオクタンスルホンフッ化物(付属書 B:制限)

     PFOS は、意図的な製造物及び関連する人工化学物質の非意図的な分解生成物の両方である。現在のPFOSの意図的な用途は広範であり、電子・電気部新、消火用泡剤、写真画像、油圧液、繊維製品などに見出される。PFOS は今日でもまだいくつかの国で製造されている。
 条約でカバーされる最初の12のPOPsは、下記に示す9種の農薬と2つの産業化学物質と非意図的な副産物である。
(訳注:付属書の分類は下記経済産業省ウェブページによる
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pops.html

農薬(9種)
  • アルドリン(付属書 A:廃絶)
  • クロルデン(付属書 A:廃絶)
  • DDT (付属書 B:制限)
  • ディルドリン(付属書 A:廃絶)
  • エンドリン(付属書 A:廃絶)
  • ヘプタクロル(付属書 A:廃絶)
  • ヘキサクロロベンゼン(付属書 A:廃絶)
  • マイレックス(付属書 A:廃絶)
  • トキサフェン(付属書 A:廃絶)
産業用化学物質(2種)
  • PCB(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)
  • ヘキサクロロベンゼン(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)
非意図的副産物(2種)
  • ダイオキシン類(PCDD)(付属書 C:非意図的生成物
  • フラン類(PCDF)(付属書 C:非意図的生成物)
更なる情報については下記にコンタクトしてください。

Nick Nuttall, UNEP Spokesperson/Head of Media, on Phone: 254-20 7623084, Mobile in Kenya 254 (0) 733 632755, Mobile when travelling 41 79 596 57 37 or e-mail nick.nuttall@unep.org

Ms. Maureen Shields Lorenzetti, GEF Spokesperson on Phone: 1 202 473 8131 or e-mail: mlorenzetti@thegef.org

Nada Osseiran, Communications Officer, World Health Organization (WHO), on Phone: 4122 7914475, Mobile: 41 79 4451624 or Email: osseirann@who.int

Ms Ravini Thenabadu, Communications Officer, Global Malaria Programme; Tel. direct: 41 22 791 2339, Mobile: 41 79 500 6549; email: thenabadur@who.int



訳注:関連情報
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