EHN 2012年12月13日
EPA 科学者らの懸念に対応、
低用量、ホルモン様化学物質に新たに取り組む


情報源:EHN December 13, 2012
EPA responds to scientists' concerns, initiates new effort
for low-dose, hormone-like chemicals
By Brian Bienkowski, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2012/epa-low-dose

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年12月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/121213_EPA_new_effort_for_low-doses.html


 積み重なる科学的証拠に拍車を掛けられ、米環境保護局は、低用量のホルモン擬態化学物質が人の健康に有害かどうか、そして化学物質テスト手法が徹底的に見直されるべきかどうかを検証するための新たな取り組みを立ち上げている。
 EPAは、3月に発表された12人の科学者からなるチームによる報告書に対応して、食品、化粧品、農薬、及びプラスチック中の微量の化学物質が人の発達と生殖に影響を与えるかどうかを評価するために、他の連邦機関と協力して作業を行なう。
 そのレビューの一部として、彼等は現状のテストがホルモン様作用に関連する多くの影響をとらえているかどうか、そしてEPAはそのリスク評価手法を変更するべきかどうかについて検証するであろう。
 連邦政府の科学者らは、”最先端の科学”論文を2013年末までに完成させるであろう。3月に発表された報告書の中で科学者らは、連邦政府の数十年古い化学物質テスト戦略−すなわち、実験室でげっし類に高用量で曝露させたデータを現実のヒト曝露に外挿する−を批判した。
 彼等は、ホルモン様化学物質は、高用量では起きないが低用量では起きる’非単調用量反応’でヒトに健康影響をもたらすことができるので、この古いテスト戦略は人々を守るためには不適切であると述べて改革するよう促した。
 ”私は彼等がこのことを再検証するということにぞくぞくしている”とミズーリ大学の科学者フレデリック・ボンサールは述べた。”それに時間がかからず、我々が低用量影響があるかどうかということに煩わされることなく、低用量影響という事実に早く基くことができるようになることを願う”。


 積み重なる科学的証拠に拍車を掛けられ、米環境保護局は、低用量のホルモン擬態化学物質が人の健康に有害かどうか、そして化学物質テスト手法が徹底的に見直されるべきかどうかを検証するための新たな取り組みを立ち上げている。

 EPAは、3月に発表された12人の科学者からなるチームによる報告書に対応して、食品、化粧品、農薬、及びプラスチック中の微量の化学物質が人の発達と生殖に影響を与えるかどうかを評価するために、他の連邦機関と協力して作業を行なう。そのレビューの一部として、彼等は現状のテストがホルモン様作用に関連する多くの影響をとらえているかどうか、そしてEPAはそのリスク評価手法を変更するべきかどうかについて検証するであろう。

 連邦政府の科学者らは、”最先端の科学”論文を2013年末までに完成させ、次に、伝えられるところによれば、全米研究評議会(NRC)によりレビューされるであろう。

 EPAのウェブサイトによれば、”最先端の科学論文の成果は、化学物質の安全性がどのように評価されるのかを伝えるのに役立てるために情報を提供するであろう”。

 ”EPAは、低用量外挿法の全ての面に関心があるが、この短期間の取り組みは、直ちに実施すべき科学的政策の必要性を満たすよう設計されている”。

 科学界には、エストロゲン(女性ホルモン)、テステストロン(男性ホルモン)、その他のホルモンの作用を擬態する又はそれをブロックする物質への曝露がヒト健康影響をもたらすかどうかに関して積年の意見の相違がある。

 しかし、3月に発表された報告書は、小用量曝露が大きな影響を持つと結論付けた。3年間、研究者のチームは内分泌かく乱化学物質の影響に関する数百の研究を検証し、彼等の報告書は”低用量は無視することができないということを明確に示す”証拠があることを明らかにした。

 報告書の科学者らは、ほとんどの化学物質をテストするのための連邦政府の数十年古い戦略−すなわち、実験室でげっし類に高用量で曝露させたデータを現実のヒト曝露に外挿する−を批判した。彼等は、ホルモン様化学物質は、高用量では起きない健康影響を低用量でもたらすことができるので、この古いテスト戦略は人々を守るためには不適切であるとして改革するよう促した。

 EPAはその新たな取り組みの中で、”非単調用量反応”と呼ばれるこの現象を評価するであろう。

 ”現状のテスト規範は、ヒトの健康のための重要で敏感なエンドポイントを見逃している”と、科学者らはジャーナル「Endocrine Reviews」に発表されたその報告書の中で述べている。”低用量の影響は高用量で観察さる影響からは予測することはできない。したがって、ヒトの健康をまもるために化学物質テストと安全性の決定には根本的な変更が必要とされる”と、この報告書の上席著者であるピート・マイヤーズは述べた。彼は、Environmental Health News (EHN) の創設者であり Environmental Health Sciencesの主席科学者である。

 共著者であるミズーリ大学教授フデリック・ボンサールは、政府が低用量を真剣に取り上げるべき時であると述べた。”私は彼等がこのことを再検証するということにぞくぞくしており、それは絶対に必要なことだ”と、げっ歯類でビスフェノールA(BPA)の低用量影響を研究しているボンサールは述べた。”それに時間がかからず、我々が低用量影響があるかどうかということに、もう煩わされることなく、低用量影響という事実に早く基くことができるようになることを願う”。

 ボンサールは、EPAと米食品医薬品局(FDA)が現在、食品缶詰の内面コーティング、ポリカーボネートプラスチックやある種の紙のレシートなどに見出されるBPAのような化学物質への曝露について、”驚くべき想定”をしていると述べた。

 ”あなたが毒物をテストするようには、ホルモンをテストすることはできない。既にあなたの体の中にあるホルモンに加えたり減じたりするひとつの化学物質は、低レベルで影響を持つ”。

 ボンサールは、連邦政府機関は長年、内分泌かく乱化学物質の安全性を低レベルでのテストをせずに安全性を決定してきた。”内分泌かく乱物質については安全であるというようなレベルはない”と彼は述べた。

 化学会社を代表する米国化学工業協会(ACC)の報道担当は、水曜日(12日)には新たな研究プログラムを十分にレビューする時間がなかったので、コメントしないと述べた。

 しかし、同協会は3月に、ミシガン大学の毒性学者ミカエル・カムリンが2007年の論文の中で述べた低用量影響は証明されておらず、現実世界の条件とヒト曝露に適用されるべきではないという言葉を引用した。

 EPAが新たに発表した取り組みは、3月の報告書及び内分泌かく乱作用研究の強化を指示した2009年の成立しなかった法案にある程度拍車を掛けられた。

 3月報告書の主著者であるタフツ大学のローラ・バンデンバーグは、新たな連邦政府の取り組みは正しい方向への第一歩であると述べたが、しかし彼女は、二つの概念:低用量と”非単調用量反応”が一緒くたにされることを懸念していると述べた。EPAのウェブサイトは両方を含んでいる。

 ”非単調”用量反応は、必ずしも、ヒト又は動物の化学物質への反応が用量が高くなったり低くなったりする時にだけ生ずるということではない。その影響はどのようなレベルの用量であっても起こりうる。低用量影響とはある値より以下での影響を意味する。

 ”それらは二つの非常に異なることがらである”とバンデンバーグは述べた。”私は彼等がその両方の問題に目を向けることを望むが、しかし別々に対応すべきである。EPAのウェブサイトからは彼等がどうしようとしているのか不明確である”。

 同報告書の共著者でもアルカリフォルニア大学バークレー校のタイロン・ヘイズは、化学物質のテストは、”ある用量範囲を見るべきである。あるものは低用量で影響を持つかも知れないが、もっと低用量又はもっと高用量にすれば、もっと強い影響、又は一緒に異なる影響を見つけるかもしれない”。

 この研究に取り組むに当り、EPAは、FDA、国立環境健康科学研究所(NIEHS)、国家毒性計画(NTP)、及び、国立子どもの健康と人間発達研究所(NICHD)と共同で作業をするであろう。EPAは、全米研究評議会(NRC)の委員会が、来春遅くに発表予定の”最先端科学”報告書をレビューするよう求めた。

 ”疫学研究の結果は、内分作用化学物質の環境的(’低用量’)濃度と、人の生殖又は発達影響との間にひとつの関連があることを示唆している”とEPA担当官はそのウェブサイトで述べた。”これらの影響はすでに検証されており、広範な動物研究で様々な結果が報告されている”。

 ”EPAはその決定を適切な科学に基き、開かれた公衆が参加する透明性のあるプロセスでこの先端科学報告書を開発することを約束する”と、EPAは述べている。

 今週、EPAはまた、もうひとつの議論ある問題、ナノテクノロジー、特にナノ物質が人の健康と環境に害をもたらすかどうかについて取り組むと発表した。(訳注5

 ナノ物質は、人の髪の毛の巾より約10万倍以下の非常に小さなサイズの粒子からなる物質であり、衣料品、化粧品、電子技術、建材などでの使用が増大している。EPAは、ナノ物質が製品から放出されるかどうか、そして人や環境とどのように相互作用するかを検証するために、米・消費者製品安全委員会(CPSC)と共同で作業するであろう。

 ”これらの小さなナノ物質は衣料品から日焼け止めまで広い範囲の製品中で使用されているが、それらがどのように消費者に影響を与えるのかに関するさらなる研究と知識の必要性は非常に大きい”とCPSC のナノテクノロジー・プログラムのプログラム・マネージャであるトレイ・トーマスは述べた。

EHNの3月報告書に関する記事:
Low doses, big effects: Scientists seek 'fundamental changes' in testing, regulation of hormone-like chemicals
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2012/low-doses-big-effects


訳注:関連情報
  1. ピコ通信/第171号:世界の内分泌かく乱物質政策の動向と低用量曝露と非単調用量反応:パラケルススの"毒は用量次第"ではない
  2. Nature News 2012年10月24日 毒性学:用量反応曲線
  3. EHP 2012年4月号:論説 環境化学物質:低用量影響の評価 リンダ S. バーンバウム 米・国立環境健康科学研究所ディレクター 米・国家毒性計画ディレクター
  4. Endocrine Reviews 2009年6月号 内分泌かく乱化学物質に関する内分泌学会の科学的声明
  5. EPA ニュースリリース 2012年12月11日  EPAは、消費者製品安全委員会(CPSC)とナノ物質の健康影響研究で協力する


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