ラマツィーニ協会 プレスリリース 2013年6月13日
ラマツィーニ協会
内分泌かく乱化学物質(EDCs)と欧州連合における
化学物質安全政策に関する公式見解を発表


情報源: Collegium Ramazzini Press Release 13 June 2013, The Collegium Ramazzini Releses an Official Position on Endocrine Disrupting Chemicals (EDCs) and Chemical Safetey Policy in the European Union
http://www.collegiumramazzini.org/download/2013_06_13_Collegium_Ramazzini_PR_EDCs.pdf

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年6月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/130613_RAMAZZINI_Press_Release_on_EDCs.html


 バロッソ 欧州委員会議長、タジャニ、ポトニック、及びボルジ欧州委員会委員への書簡は、内分泌かく乱化学物質(EDCs)についての厳格なハザード・ベースの評価基準と、これらの化学物質の深刻な有害性(ハザード)から一般公衆と労働者を守る予防的アプローチを強く求めている。

 世界35か国の環境と労働衛生の専門家である180人の科学者からなる国際的な学会であるラマツィーニ協会は、化学物質をテストする新たな方法と、リスク管理への現在のアプローチを修正することを求める声明を発表した。

   EUの化学物質政策、特に内分泌かく乱化学物質(EDCs)に関連する政策についての差し迫った決定は、国際的な科学界に深刻な懸念を提起している。欧州の人々は、有害健康影響を引き起こすレベルで天然及び合成両方のEDCsに暴露している。それらの有害影響には、精巣がん、乳がん、膳立腺がん、精子数の減少、妊娠損失(pregnancy loss)、性成熟異常、生殖器奇形、神経系障害、糖尿病、肥満のような深刻な障害がある。最近の研究は、EDCの影響は将来の世代にも及ぶことがあることを示唆していている。

   REACHの認可に関して、ラマツィーニ協会は、現在は安全閾値を決定することができなテスト手法について、改善されたテスト手順及びEDCsの特定を可能とするための拡大されたテスト要求を勧告している。したがって、REACH 第60条3項[訳注1]の範囲は、すべてのEDCsをデフォルトで非常に高い懸念がある物質(高懸念物質 SVHC)であるとするよう拡大されるべきである。このプロセスにおいて、 優良試験所基準(GLP)に準拠した研究だけをリスク評価のベースとするのではなく、高品質の全ての学術研究を考慮しなくてはならない[訳注2]。この方法によってのみ、欧州連合(EU)は、一般公衆と労働者を深刻な有害性(ハザード)から守るであろう予防的アプローチの要求を満たすことができる。

   ラマツィーニ協会の会長であり、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学 Global Health and Ethel H. Wise の学部長、教授であり、予防医学部議長であるフィリップ J. ランドリガン( MD, MSc)は次のようにコメントした。”特に、胎児、新生児、及び小児期の発達を含む生命初期段階は、特にEDCsに脆弱であるという証拠を考慮して、EDCへの暴露は抑制されなくてはならない。生命初期段階でのEDCsへの暴露は、小児期及びその後の人生での病気発症の引き金となり得る”。ランドリガンはまた、マウントサイナイ医科大学子ども環境健康センターのディレクターであり小児科教授でもある。

 ラマツィーニ協会のフェローであり、サザーン・デンマーク大学環境医学部議長であり教授であるフィリップ・グランジェーン(MD)は、次のように述べた。”ラマツィーニ協会の以前の声明は、2008年の農薬規制、また2010年の殺生物剤規制に関連して、EU政策立案者に化学物質の安全性についての重要な証拠を提供した。我々は、政策立案者ら国際的な科学者の立場を再度、考慮するよう促す”。

   ラマツィーニ協会は、疾病を防ぎ、健康を促進するために行動するという考えの下に、産業医学及び環境医学における重要な問題を検証する国際的な科学的協会である。この協会(Collegium)の名前は、「産業医学の父」と呼ばれ、1600年代後半から1700年代の初頭にモデナ大学及びパドヴァ大学で医学部教授を務めたベルナルディーノ・ラマツィーニに因んでいる。同協会は、35か国からの180人の医学者と科学者からなり、それぞれは選挙によりメンバーとなる。同協会は商業的権益から独立している。

   ラマツィーニ協会の The statement Endocrine Disrupting Chemicals In The European Union (2013)(欧州連合における内分泌かく乱化学物質声明(2013))は、ラマツィーニ協会のウェブサイト(http://www.collegiumramazzini.org/)で入手できる。

   関連するマツィーニ協会の見解には下記がある。
Press contact: Collegium Ramazzini or Kathryn Knowles to collegium@ramazzini.it


訳注1:REACH 第60条3項
第2 項は、以下の物質には適用しない。(訳注:以下の物質は認可されない)。 (a) 第57 条(a)、(b)、(c)又は(f)の基準に該当する物質であって、附属書Iの6.4 節に従って閾値を決めることができないもの
(b) 第57 条(d)又は(e)の基準に該当する物質
(c) 第57 条(f)で特定された物質のうち、難分解性、生体蓄積性及び毒性、又は極めて難分解性で高い生体蓄積性を有するもの

REACCH 第57条
附属書 XIV に含まれることとなる物質
以下の物質は、第 58 条に定める手続きに従って、附属書XIV に含まれうる。
(a) 指令 67/548/EEC に従って発がん性区分1 又は区分2 の分類基準に該当する物質
(b) 指令 67/548/EEC に従って変異原性区分1 又は区分2 の分類基準に該当する物質
(c) 指令 67/548/EEC に従って生殖毒性区分1 又は区分2 の分類基準に該当する物質
(d) 本規則の附属書 XIII に定める基準に従って難分解性、生体蓄積性及び毒性を有する物質
(e) 本規則の附属書 XIII に定める基準に従って、極めて難分解性で高い生体蓄積性を有する物質
(f) 内分泌かく乱性を有するか、又は難分解性、生体蓄積性及び毒性を有するか、又は極めて難分 解性で高い生体蓄積性を有するような物質であって、(d)又は(e)の基準を満たさないが、(a)から (e)に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせるような、人又は環境に対する深刻な影響 をもたらすおそれがあるとの科学的証拠があり、かつ第59 条に定める手続きに従って個別に特 定される物質

訳注2:GLP基準への準拠の問題
 米国FDAがボンサールらの研究をGLPに準拠していないという理由で、BPAの安全性評価の論文から排除したことが背景にある。
 EHN 2008年10月30日論文解説 ビスフェノールAに関するFDAの決定案には重大な欠陥がある(解説:ジョン・ピーターソン・マイヤーズ)

 


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