船舶解体に関するNGOプラットフォーム 2009年5月15日
新たな"シップ・リサイクル"条約は
貧しい国の海岸での有害船解体を合法化する
”大きな後退”


情報源:NGO Platform on Shipbreaking May 15, 2009
NEW "SHIP RECYCLING" CONVENTION LEGALIZES
SCRAPPING TOXIC SHIPS ON BEACHES OF POOR COUNTRIES
"A major step backwards"
http://www.shipbreakingplatform.com/index.php?option=com_content&view=article&id=130:imo.shiprecycling.convention&catid=51:breaking news

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/NGO_Platform_090515_major_step_backwards.html


【2009年5月15日 香港】 国連国際海事機関(IMO)会議の午前中に、人権、労働者、環境団体は、新たに採択されたシップリサイクルに関する国際条約は世界の最貧国の海岸で行われる危険で深刻な汚染をもたらす船舶解体を永続させる一方、より安全でグリーンなシップリサイクルへの転換を阻害するものであり、失敗であると非難した。

 ”本日採択されたシップリサイクルに関するこの新たな条約は、一隻の船も途上国の海岸で解体されることを止めることはできないであろう”と船舶解体による人権と環境の搾取を止めるために活動する非政府組織(NGOs)の世界的な連合である船舶解体に関するNGOプラットフォームの代表イングビルド・ジェンセンは述べた。”この条約は、インド、パキスタン、バングラデシュの悪名高い船舶解体現場を合法化し、実際に、これら搾取的な活動には報い、より安全でクリーンな実施に投資してきた会社を懲らしめるもでのである”。

 今週、IMO加盟国は世界中の環境と人権に関わる107の団体によって支持された致死的で汚染の激しい海岸での解体を廃止するよう求めた提案を拒絶した[1]。その代り、新たなシップリサイクル条約は寿命を終えた有害船が貧しい国に流れむことを奨励し、合法であるとするゴム印を押すことになる。NGOプラットフォームは条約の下記の点に落第点をつける。
  • 有害物質を事前に除去せずに寿命を終えた有害船を途上国に輸出することを会社に許し、有害廃棄物貿易に関する国際法であるバーゼル条約の原則を支持していないこと[2]。
  • 海岸で有害船を解体する致命的に欠陥のあるビーチング方式を合法化していること。この方法は先進国で決して許されていない方法である。
  • 船舶の建造時に有害物質をより安全な既存の物質に代替するための条項を無視したこと。
  • 汚染者のコストを内部化し、より安全でよりクリーンな解体を支援するために、義務的に船主が資金提供するような基金制度を拒絶したこと。
 ”途上国の労働者と環境が絶望的に救命浮き輪を求めているのに、IMOは彼らに役に立たない紙(訳注:新条約)を投げ与えた”と、2009年度ゴールドマン環境賞を授与されたバングラデシュ法律家協会のリザワナ・ハッサンはNGOプラットフォームの最後のスピーチで述べた。”船舶解体の問題は、IMOは世界の廃棄物管理も労働安全衛生の問題も取り扱う能力がないことを彼らが証明したのだから、この問題はIMOから取り上げてしまうべきである”。

 NGOプラットフォームは、今年の暮れにシップリサイクルに関するEUの法案を提案する予定となっている欧州連合(EU)[3]及び他の進歩的な諸国に、この問題を持ち込むことを誓った。NGOプラットフォームはまた、グリーンで安全なシップリサイクルを推進し海岸での船舶解体を避けるために、リサイクル及びその他の産業の指導者らとパートナーシップを構築するであろう。

 ”海運業の中での環境正義のための戦いはまだまだ続く”とバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”政治的リーダシップが世界レベルで我々に役に立たない現在は、顧客をグリーン・シップ・リサイクラーに送り込むことによって市場に圧力をかけ、死の解体方式を孤立させる時である”。


原注
[1]:世界の寿命を終えた船舶の80%がバングラデシュ、パキスタン、及びインドの干潟で解体されているが、軟弱な砂地は重いクレーンや救急装置を支えることができず、汚染物質が繊細な干潟環境に直接しみこむことを許す。先進国で自国の海岸で船舶の解体を許している国はない。
 先進国では、適切な技術と社会的基盤、そして強制力のある法規制の下に、安全でクリーンな方法で船舶を解体することができるのに、ほとんどの船主は、多大な利益を求めて彼らの船を危険なビジネスを管理するために安全防護と社会的基盤を供給する適切なリソースがない国々の、基準を満たさない解体現場に売り払うことを選択する。
 南アジアの船舶解体現場では、無防備な移民労働者や多くの子どもたちが、しばしば、靴も手袋もヘルメットも、そしてアスベストや有毒蒸気から肺を守るためのマスクもなしに、巨大で有害な船を手作業で解体している。国際労働機関(ILO)は、海岸での船舶解体は世界で最も危険な作業のひとつであるとみなしている。

[2] :主に鋼材を回収するための廃船は国際法の下では有害廃棄物とみなされるが、その理由はそれらがとりわけ、アスベスト、廃油、PCB類、有毒塗料などを含んでいるからである。世界170国参加の下、その様な有害廃棄物を管理する国連の条約であるバーゼル条約はすべての有害廃棄物の途上国への輸出を禁じることを決定し、船舶解体のための海岸の使用をやめることを求める船舶解体ガイドラインを採択した。

[3]:欧州連合はバーゼル禁止修正条項(asel Ban Amendmen)を履行しており、有害な寿命を終えた船の途上国、非OECD諸国への輸出を禁止している。欧州議会決議もまた今年、海岸での船舶解体を非難した。



訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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