BAN Toxic Trade News 2009年5月11日
IMO シップリサイクル条約は”難破の合法化”
活動家は有害なビーチング方式船舶解体の禁止を求める


情報源:BAN Toxic Trade News / 11 May 2009
I.M.O. Ship Recycling Convention Denounced as "Legal Shipwreck"
Activists Call for Ban on Toxic Ship Beaching

http://www.ban.org/ban_news/2009/090511_imo_legal_shipwreck.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月12日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/ban_090511_IMO_Convention_Legal_Shipwreck.html



 【2009年5月11日 香港】 人権、労働、環境団体は、今週、新たなシップリサクル条約を採択するために会議を開催する国際連合の国際海事機関(IMO)は既存の国際環境法を逆戻りさせる重大な措置を取ろうとしていることを本日警告した。世界の”懸念表明”(訳注1)が30か国、100人以上により署名された中で、市民組織のリーダーは本日、シップリサクル条約案を”合法的難破船”と呼び、IMO代表者らに、死の船舶解体方法”ビーチング”を禁止するよう要求した。

 ”IMO条約案は、現状のままでは、合法的難破が起きるのを待つものである”と船舶解体に関するNGOプラットフォーム代表イングビルド・ジェンセンは述べた。”それはインド、バングラデシュ、パキスタン、その他の開発途上国の海岸に輸入され投棄される有害船舶を唯の一隻も阻止することはできないであろう。我々は、世界の国々にその航路を変えるよう、そして少なくとも、持続的でない搾取的な海岸での有害な船舶解体を非難するよう、SOSを発信している”。

 世界の寿命を終えた船の80%は、バングラデシュ、パキスタン、インドの干潟で解体されているが、その軟弱な砂は重いクレーンや救急機器のような重要な安全機器を支えることができず、また、汚染物質が繊細な海岸地帯の環境に直接しみこみ生態系を損なう。先進国の中で、自国の海岸で船舶を解体することを許す国はない(訳注2)。先進国では、適切な技術と社会的基盤、そして強制力のある法規制の下に、安全でクリーンな方法で船舶を解体することができるのに、ほとんどの船主は、多大な利益を求めて彼らの船を危険なビジネスを管理するために安全防護と社会的基盤を供給する適切なリソースがない国々の、基準を満たさない解体現場に売り払うことを選択する。

 南アジアの船舶解体現場では、無防備な移民労働者や多くの子どもたちが、しばしば、靴も手袋もヘルメットも、そしてアスベストや有毒蒸気から肺を守るためのマスクもなしに、巨大で有害な船を手作業で解体している。国際労働機関(ILO)は、海岸での船舶解体は世界で最も危険な作業のひとつであるとみなしている。

 主に鋼材を回収するための廃船は国際法の下では有害廃棄物とみなされるが、その理由はそれらがとりわけ、アスベスト、廃油、PCB類、有毒塗料などを含んでいるからである。世界170国参加の下、その様な有害廃棄物を管理する国連の条約であるバーゼル条約はすべての有害廃棄物の途上国への輸出を禁じることを決定し[1]、船舶解体のための海岸の使用をやめることを求める船舶解体ガイドラインを採択した。しかし、IMO条約案は、バーゼル条約によって提供される環境保護と相いれず、それを掘り崩すものであり、国連のひとつの組織が他の組織に反する行動を正面切って取ろうと動いている。

 ”既存の国際法は、有害廃棄物を途上国に輸出し、最も貧しい人々に汚染を押しつけることは違法であるとしている”とバングラデシュ環境弁護士協会(BELA)の代表であり、バングラデシュへの有害船舶輸出を止めるための彼女の活動に対してゴールドマン環境賞を今年授与されたリズワナ・ハッサン[2]は述べた。”救命浮き輪を海運権益に投げ与えるのではなく、有害船舶を海岸から近づけさせないことにより、労働者と環境を救い、当初の義務を満たす機会をIMOはまだ持っている”。

原注記

[1]:欧州連合はバーゼル修正条項(Basel Ban Amendment)を履行しており、欧州旗艦の廃船を途上国又は非OECD諸国に輸出することを禁止しており、船舶のリサイクル特化したEU規則を策定中である。今年、EU議会の決議もまた海岸での船舶解体を非難した。
[2]:2か月前に 、バングラデシュ最高裁はバングラデシュ環境弁護士協会(BELA)の法的異議申し立てを受けて、バングラデシュでの全ての船舶解体は違法であると宣言し、すべての入港船舶は輸出前に有害物質の事前除去を行うことを求めた(訳注3)。

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連絡先

  • Media coordinator:
    Helen Perivier, +852 66711329, helenperivier@gmail.com
  • Spokespersons:
    ・Ingvild Jenssen, +32 485.190.920, ingvild@shipbreakingplatform.org
    ・Rizwana Hasan, + 880 1711526066, bela@bangla.net
    ・Jim Puckett, +852 53168655, jpuckett@ban.org

訳注1
船舶解体に関するNGOプラットフォーム 2009年4月27日 新たな IMO 船舶解体条約に対する懸念表明

訳注2
「シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン(案)」に関する当研究会意見と国土交通省回答

当研究会のビーチング方式禁止の要求に対する国交省の回答:

ビーチング方式でも、適正な安全対策等を取ることにより、労働者の生命、健康、安全及び環境を脅かすことなく解体することは可能と考えます。最近のインドのアラン地区におけるビーチング方式による解体は、労働安全面や環境面への対策が取られ、過去に比べて格段の改善が見られます。ビーチング方式による解体で問題が生じている国があることは確かですが、それをもってビーチング方式を完全に禁止することは適切ではないと考えます。

(当研究会の反論)
ビーチング方式はクレーン等の重機、搬送機器、救急設備などの重機を船側に近付けることができず、すべて人手作業となり、極めて危険である。確実な安全対策は到底取れない。また有害廃棄物が解体中にそのまま海に排出されて環境汚染、生態系の破壊を起こしている。このようなことがなぜ許されるのか?日本の海岸でビーチング方式の解体が許可されないのに、国際条約で禁止することがなぜ適切でないのか?

訳注3
BAN Toxic Trade News 2009年3月18日 安全な作業と環境の勝利 高等裁判所 バングラデシュ海岸の死の船舶解体をとめる


化学物質問題市民研究会
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