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(2003年7月17日発行)



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防災警察常任委員会傍聴記


生田 典子




◇そもそもの始まりは
 1999年秋、次々と発覚された神奈川県警の「不祥事」でした。私たちは「これでいいのか神奈川県警」というシンポジウムを開き、その集会の中でも溢れんばかりに出てくる県警の「不祥事」に、県の防災警察常任委員会ではこれらの問題をどう取り上げ、どんな議論をしているのか知りたくなりました。そこで、早速傍聴申請をしましたが、理由も告げられず不許可になったのです。県議会広報誌「こんにちは県議会」にも「開かれた議会」という見出しをつけているのです。まさか常任委員会の傍聴を許可しないとは思いもしないことでした。それでも、3分間の冒頭陳述ができることを知り、私も含めて3人が3分間の陳述準備をしました。が、なんと3人で3分間だったのです。結局一人が3分間話した方が有効であると判断し、大川弁護士が陳述をしました。議員たちは聞いていたのかどうか。その際私たちは、出入り口近くの端に立ったままです。3分が過ぎたら、「ハイ終わり」と追い出されました。悔しいけれど単なるセレモニーで終わりました。それからは、会期ごとに傍聴を申請し続け、傍聴権侵害だとして横浜地裁に提訴もし、条例の改正を求める請願も提出しました。
 03年7月3日・8日、やっと傍聴ができるところまでこぎつけたのです。

◇入室するまでが大変
 傍聴ができるようになったと言っても、その前の事務手続きが大変です。朝10時までに、議会事務局へ傍聴申出の用紙を提出しなければなりません。8人の定員を超えた場合は、籤引きです。しかも籤に当たっただけではただの内定者なのです。委員会が始まり、委員長が一人ずつ傍聴希望者の住所氏名を読み上げて委員会に諮り、「異議なし」の声のあと、担当職員が私たちに伝えに来るのです。それまで、傍聴内定者は控室で待たされます。控室と言っても、8階の男子トイレの横、廊下のような場所です。壁際に椅子を並べてありますが、両側に座った人の間を通るときは足が当たるほどの狭さです。

 午後だけを傍聴したい場合は、12時半までに議会事務局へ行き、同様の手続きをしなければなりません。
 7月3日は朝から傍聴を希望しました。幸い定員を超えなかったので、上記の手続き後入室できましたが、8日は午後からの傍聴を希望したところ、定員オーバー(9人)となり、籤を引くことになりました。竹ヒゴの先に赤い色がついていたら当たりです。幸い私は当たり籤でしたが、外れた一人は、今回この広報誌に投票してくださった赤倉さんでした。申し訳ない!当たり籤の人がハズレの人と交代することは禁じられているのです。「抽選のときに不在だったら、その資格を失う」とか、やたらに厳しいんですよ。これは、どこの指令(意識)なんでしょう。

◇部屋の中は・・・
 7月3日の場合、入室は9時45分。3年前に陳述のために入室した部屋です。U字に並べられた議員席には、おやっ? 議員がいません。傍聴の可否を諮ったあと退出したわけ?
 ゆったりとした議員席と向かい合ってぎっしりと座っているのは、県警の本部長・各部課長とその補佐職員たちです。議員席の脇に県の職員席、その後ろ少し離れて記者席、そして傍聴席は出入り口のすぐ脇、赤いロープで囲まれた8席です。椅子は繋がっているために座り方も固定され、議員の方を見るために体を捩らなければなりません。傍聴者数は午前中4名、午後6名でした。

◇いよいよ傍聴本番
 県警の大木総務部長からの報告から始まりました。「○○ページをお開きください」とい言いながら犯罪の件数・検挙率の増減、犯罪の凶悪化、組織化、暴力団と暴走族の関係、外国人による犯罪などなどを、数字を述べながらかなり細かく説明していきます。傍聴者には資料が配付されてないため、耳をそばだてて聞いていてもメモをとるのが大変です。今、神奈川県下の市町村では、ほとんどの議会で資料を配付しています。分厚い資料の場合でも傍聴中に貸出して、傍聴終了時に返却するという方法をとっています。私たちは、議員の顔を見るために傍聴を希望しているのではありません(でも、今回、顔を見るのも態度を見るのも、とても役に立つことがわかりましたけどね)。議員先生方は、資料を開いてメモしている様子はありません。長い報告が終わるのをひたすら待っている、という感じです。眠っている人、タバコをすう人、やたらにコーヒーを飲む人を見ながら、これはセレモニーなのだな、と理解しました。それにしても、なぜ、議員だけがコーヒーやエビアンを飲めるのでしょう。禁煙・分煙の時代に、なぜ議員は平気でタバコをすうことができるのでしょう。それにしても30分近くの単調な報告は、なんとかならないのですかねえ。議員側も、報告側も、報告の仕方を改善しようとは思わないのが不思議です。学校の授業だったら、学級崩壊が起きていることでしょう。
 最初の報告後、県警本部長からの5〜6分ほどの説明で、直ちに休憩に入りました。午前中の委員会は、ただ報告を聞くだけだったのです。
 
◇午後の会議こそ議論が・・・
「時間を守らないのが議員」という言葉を聞いたことがありますが、午前も午後も定刻通りには始まりませんでした。遅れてくる議員が多いからです。
 やっと始まった会議は、まず、午後の傍聴の可否を諮ったあと、自民党議員の質問からです。県知事の出したマニフェストに記載されている警官1500人増に関して、しつこく「それをどう思うか」と迫ります。警務課長が警官数が不足しているので「心強く感じる」と答えるや、細かい質問になり、地域総務課長、交通指導課長、本部長と長いやりとりが行われました。聞きながら、これは、県民のために質疑応答をしているのではなく、事前に打ち合わせた内容をぶつけて、マニフェストがいかに意味のないものであるかを引き出したいだけらしいことが分かりました。答える県警サイドも、ボロが出ないように分かりにくい表現をし、傍聴している我々はストレスが溜まるばかりでした。自民党から順に各会派が同じような質問を繰り返していきます。最後にようやくネット犯罪や子ども110番など身近な問題に触れますが、時間が不足していることもあってか突っ込んだところまでいかないうちに終了です。この質疑応答方式は、あまりにも時間のムダが多く、また公平ではありません。各議員が自由に発言できず、議論もしない委員会ならば、形式行為に過ぎません。これでは、民主的な会議とは言えないでしょう。

 この状態は、7月8日の午後の場合も同様でした。「安全・安心のまちづくり」と言いながらも、3日のやり取りとほとんど同じ質疑応答なのです。手を変え品を変えて質問し、マニフェストがいかに思いつきのもので、おかしいという結論を引き出したかったようです。
 午後の前半は、防災局の職員と、地震時の高圧ガス、コンビナート、ハザードマップなどの質疑応答がありましたが、議員は質問するだけです。自分たちでも実際に街を歩き事前調査し、検討していたら、「あ、そうですか。安全確保によろしくお願い致します」と納得してしまわず、危機管理の弱点などを突くことが出来たのではないでしょうか。傍聴している私は、「よろしくお願いしちゃって大丈夫なのかなあ」と不安でした。

 休憩後は、3日にすでに質問した内容をまたまた繰り返すなど、マニフェストに絡めての質疑応答が多く、「県民の安全を護る部分でこそ、このくらいしつこくやってよ」と、ヤジを飛ばしたくなったほどです。県民の生活を護るためにどうすればよりよい警察になるのか、という視点がないんですね。きっと。これでは、防災警察常任委員会が、神奈川県警のチェック機関には、とうてい成り得ないでしょう。片や党利党略のためにしか質問せず、片や保身のためにしか答えないという「かたち」ができあがってしまい、それでよしとしている現状を目の当たりにして、議員の存在理由について考え込んでしまいました。実際に傍聴をすると、本当にいろいろなことが見えてきます。

 ちなみに、答弁する県警本部長が、青年のような若さだったことが非常に印象的でした。

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