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(2003年7月17日発行)



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「警察調書があかす警察の犯罪」
を読んで


赤倉 昭男



――組織防衛の実態に衝撃―― 
保身に走るトップ群像たち

 「面白かった!」読み終わった時の感想です。この本は、神奈川県民にとっては忘れることが出来ないあの平成8年に発生した覚せい剤違反事件を、県警本部がどのように隠ぺい工作をしたか、という記録ですが、どんな才能をもった小説家も、これほどリアルに緻密な人間心理と犯罪の構成を創作することは出来ないのではないか。私はこれが実在する日本の警察組織が実際に起こした犯罪であることが信じられず、大きな衝撃を受けました。
 この本は、事実を素材としてストーリーを組み立てたドキュメンタリー小説ではなく、犯人(県警本部の警部補)と不倫関係にある愛人が警察に出頭したときから、本部長が隠蔽を決意する経緯、隠ぺい工作の中身、マスコミ対策、将来この事件が明るみにでた場合の対策など、全て関係者が実際に口にした言葉によって明らかにされています。情報公開はここまで許されているのかと驚くばかりです。
 この隠ぺい工作により有罪となったトップは、県警本部長はじめ、警務部長、監察室長、生活安全部長たち。彼らの供述調書にみられる弁解や思惑、ピラミッド型の組織における人事・命令権、部署間の確執、そして保身に身を粉にする姿には、860万人の県民の安全を守る気概を見ることは出来ません。
 私たちは日ごろ、裁判の判決文や被告人の弁護士による弁論、被告人の検察官に対する供述書、または公安委員会による県警への監察指示とか監察実施の内容など、お目にかかることはありませんが、本書によって全て知ることができました。
 編著者である警察見張番のメンバーは、2年半に及ぶ関係書類の閲覧と筆写(コピーは不許可)を根気強く実施してきたそうです。その労力と熱意がこの書物の刊行を可能にしたと思うと、頭が下がる思いです。自分だけが知って満足するだけではもったいないと思いあえて投稿し 、一人でも多くの市民がこの事件の真相を知り、警察組織への監視をおろそかにしないことを願っています。

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