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(2003年2月27日発行)



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ここで、ちょっとブレーク!
立ち喰いそば屋にて

弁護士    鈴木 健



 弁護士の食生活は、普通のサラリーマンの方々の家庭に比べれば恵まれていると想像される方が多いと思う。確かに、「お金が足りなくて食べたいものを食べられない」ということは少ないかも知れないが、裁判所や他事務所への打ち合わせに忙しく動き回るため、「時間がなくて食べたいものを食べられない」ということは大いにある。結果、駅構内などにある立ち喰いそば屋を利用させていただく機会が多い。私も、立ち喰いそば屋愛用者の一人である。

 先日、よく利用する立ち喰いそば屋に立ち寄ったところ、珍しい光景を目にした。年の頃は20代後半から30歳くらい、黒っぽい質素な服を身にまとったお母さんらしき人が、幼稚園児くらいの兄弟2人と見える子どもを連れて、いくつかある4人掛けの席のひとつに座ってそばを食べている。

 ここで、「若くして離婚したお母さんで、養育費も満足に取れず、本当は子どもをファミレスにでも連れて行ってあげたいところ、それもままならないので、立ち喰いそば屋でお昼を食べている」姿を想像してしまうのは、恐らく職業病なのだろう。

 何となくそちらの様子が気になりながらこちらもそばをすすっていると、そのお母さんが店員に対し、恐る恐る「フォークは置いてないですか」と尋ねた。店員の答えは、「すいませんねえ、うちには置いてないんですよ」。それはそうだろう。幼稚園児が駅の立ち喰いそば屋に来る可能性など、恐らく皆無に近い。

 それでも、2人の小さい子は、不便そうにしながらも、割り箸を使って一生懸命そばを食べていた。よくある同年齢の子どものように騒いだりすることもなく、かといって萎縮しているような様子もなかった。よくしつけられている子たちだな、という印象を持った。
 この子たちに「本当はファミレスに行って、もっとおいしいものやデザートを食べたい」という気持ちがないわけではないだろう。しかし、恐らくこのお母さんは子どもたちのために日々一生懸命頑張っている人で、それがこの子たちによく伝わっているのだろう、この母子の間には強い信頼関係がある、と思った。目を輝かせながら立ち喰いそば屋のそばを、お母さんの方を見ながら嬉しそうに食べている姿は、きっと
その現れであるに違いない。
 「恐らくこの子たちは、立派な大人に成長するだろう――」
 いいものを見させてもらったと思いながら私は、次の裁判所へと、立ち喰いそば屋を後にした。
 (本当に弁護士気質が出てますね。鈴木健弁護士は、若いのに人間ができているんですよ。いつも感心しています。はい。――編集子)

◇◇◇

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