Solar Star Party 2025.6月
太陽のための観望会、重鎮たちが集合!  2025年6月22日

  公開:2025年6月26日〜
更新:2025年6月27日 内容を追加訂正中


  佃さんが始めた混合ダブルスタックは、本当に太陽望遠鏡の革命だ。原理等の詳細は、天文ガイド2025年5月号に塩田さんが解説しているので、これは必読! それの発展形とも言えるものも登場してきて、これは集まろう、と4月に企画したが天候に恵まれず、6月22日まで延期となった。まるで梅雨明けしたような猛暑の中、朝6時半頃から集まって3時間ほど。

 発展形混合ダブルスタックについては、ここをご参照ください。従来のダブルスタックは、エアーギャップ・エタロンを二重に重ねて半値幅を狭くする手法だけれど、佃式は、エアーギャップ・エタロンとソリッド・エタロンを組み合わせた混合ダブル・スタック。異なる エタロンのFSR特性を組み合わせることでHα中心波長をすっきりと抽出し、コントラストを上げている。発展系は、通常の天体望遠鏡を用い、これにソリッド・エタロンとエアーギャップ・エタロンを組み合わせて見る、というもの。高価な太陽望遠鏡を必要とせず、いつも使っている望遠鏡が活用でき、しかも、従来では望めなかったもの凄い像が得られる。

 私は当初、異なる特性のエタロンの組み合わせでコントラストが上がる、程度にしか認識していなかったが、佃さんと塩田さんにより、なぜこのように良く見えるのかの理論が体系づけられた。良く見えるのには、ちゃんとした理由があった訳だ。そして、この2大巨頭に加え、実践巨頭、山崎氏も加わった3大巨頭が、再び集まったのであった。 早速前回同様、この歴史的・記念的記事に、両巨頭からサインをいただいた。 論文の価値は長さでは無い。わずか数ページの論文でノーベル賞受賞となったものある。この記事は、大変に価値のある画期的な論文だ。


会場風景(機材は一部)

 この催しを聞きつけ、大阪からfmasaさんも参戦。彼は、最近もの凄い鏡筒を入手した、とのことで、これも楽しみだ。以下は機材紹介。会場奥から順に

佃さん


機材1: 鏡筒:TOA-130 (口径130mm, 焦点距離1000mm, F7.7) + Baader BBHS + DayStar QUARK Chromosphere + Rafcamera Lunt 40mm adapter + Lunt 40mm エタロン + Lavendura 40mm。D-ERFはBaader製でTOA-150と兼用。経緯台:Rainbow Astro RST-300、三脚:SUPER MOUNT CYG-54G + Level Foot
機材
2: 鏡筒:Lunt 8cm + Baader BBHS + DayStar QUARK Gemini + MAXBRIGHT双眼装置 + TeleVue プルーセル32mm。上記と同架。
 *重複する部分があるので、詳細は、前回の報告を参照のこと。

 1. 佃さんと交流のあるヨーロッパの天文の仲間達が佃式混合ダブルスタックを知る。
 2. もっと
大口径で写真を撮りたい、とLunt 4cmのエタロンを利用してアプローチ。やってみたら、凄い、と。
 3. ハウジングは3Dプリンターの手作りだったが、温度変化に対応できず。
 4. 山崎さんも同じアプローチを行っていて、
2023年のSolar Star Partyで披露している。
 5. RAFCAMERAが、このアダプターを製作。
 6. fmasaさんが、このアダプターを購入、良い、と。佃さんも購入。
 7. 私も追従して購入。
 8. 太陽望遠鏡+Quarkの場合は、前にBaader 3.5nmのHαフィルターを入れていたが、TOA-130で
発展形混合ダブルスタックの場合は7nmにしている。
 9. 総合F値は現在33。
できたらQuark とLunt 40mmエタロンの間1.2〜1.3×のテレセントリック・バーローを入れて、 エア・スペース・エタロンへの入射光束の
   F値を40前後に上げたい。
10. アイピースに偏光フィルターを装着。
回転させて光量をコントロールしている。
11. Lunt 8cm混合ダブル・スタックの双眼装置・Quarkの位置は、架台の影になるようになっている。
11. どちらも標準原器ともいうべき、理想像。これを見ずして太陽望遠鏡は語れない。
 

K Nebuka

機材1: TOA-130による発展形混合ダブルスタック。詳細は、ここを参照
機材
2: Lunt LS60MT エアスペース・エタロン異種メーカー混合ダブル・スタック。詳細は、ここを参照

 1. 前回もそうだったけれど、Quarkに電源を入れて1時間位はよく見えているが、その後コントラストが低下していき、皆に見てもらう頃には像がしょぼくなってしまう。
 2. 熱によるものと思われ、朝、自分で見るときは良いが(概ね短時間)、観望会では熱対策が必要。
 3. その後、この問題をどうしたかは
ここを参照
 4. Lunt LS60MT は、鏡筒の先にCORONADOのダブルスタック・ユニットを接続したもので、いわば ”親子どんぶり” だ。
  5. Lunt太陽望遠鏡のエア・シリンダーは、時々解放してセットし直す必要がある。観望会の時は、もちろん朝行うけれど、その後気温がかなり上がった後でも
     そのままだった(他の方の機材ばかり見に行っているので)。これはもっとまめに行っておく必要があった、と反省。

 

fmasaさん


左の写真は佃さん提供 (私の機材だけの写真より、こちらの方が良かったので)

機材: 鏡筒:ADGEMA Optics  AGEMA SD 150 (口径150mm, 焦点距離1200mm, F8) + Baader BBHS + DayStar Gemini + Rafcamera Lunt 40mm adapter + Lunt 40mm エタロン + Lavendura ED 34mm。ERFはアルタイルHα。大きなフードにも対応した3分割型。架台:DiskMounts DM-6 + 純正8インチ延長筒、三脚:Supe Mount CYG48B。

 1. この鏡筒はwebsiteで見つけ、画期的だと思い注文した。
 2. 3年待って、15cmは日本第一号。
 3.
1面が非球面、1群と2群の間、エアー・ギャップがかなり開いている。
 4.
2枚目がフローライト。3枚玉の光学系と同等以上の球面収差。
 5.
価格はTOA-150と大差ない。
 6. OTA 重量 12.8 kg
 7.
フォーカサーは、ラック&ピニオン。
 8. 以前、佃さんがTOA-150と見比べて同等だった、という評価。
 9. とても素晴らしい像。やや目の位置がシビアと感じる時もあった(
発展形混合ダブル・スタックはF7〜8位がちょうど良い。F10までくるとダメ)。
10.
Geminiの後に、RAFCAMERAのティルト・ホルダーにBaaderの偏光フィルターを入れて装着。
11. これで変化が見られた時とそうでない時があった。T-2接続部分に偏光フィルター入れて回転させた方が良いのではなか、と佃氏の意見。

12. 最後に、ハーシェル・プリズム用に持ってきたApollo 11 と Ethos SX 4.7mm (109×, 255×)で鉄塔を見せてもらった。ほれぼれする像に感激。
13. 以前、彼がApollo 11を購入した、と聞き、何と物好きな、と思ってしまったことがあったが、これは彼の先見の明があったことの証明となった。今回の鏡筒も同じで、参りました。
12. わざわざ大阪からの参戦だけれど、こういった嗅覚と行動力はさすが! 情報通もさすが!
 

山崎さん

機材1: 鏡筒:Asker 185口径185mm, 焦点距離1295mm, F7) + GSO Quartz天頂ミラー + TeleVue Powermate 4× + DayStar ION + Rafcamera Lunt 40mm adapter + Lunt 40mm エタロン + Lavendura 34mm。架台:Rainbow Astro RST-300、三脚:SUPER MOUNT CYG-48P + Level Foot。
 *重複する部分があるので、詳細は、前回の報告を参照のこと。

 1. Asker 185のOTA重量は14.9s、総重量17.2s。
 2.
ERFはエアリー・ラボ製。セルは日本で特注。230mm用のを200mm用にしていて、それを185mmに絞っている。
 3. 今日はシーイングが悪いので、さらに175mmまで絞っている。
 4. 前回、あまりの素晴らしい像に驚愕、釘付けとなったが、この時はさすがTOAだ、自分にはこれは縁が無いなあと思っていたら、一番の要因は、この
発展形混合ダブルスタックだった。
 5. 今日は最近には珍しいシーイングの悪さで、185mmの口径は生かせなかった。とはいえ、さすがの像。

機材2: Sky-Watcher ヘリオスター76Hα + アイピース:Lunt 8mm Flat-Field Eyepiece (FMC 8mm)、架台:Rainbow Astro RST-135E + Zitzo カーボン三脚

 1. 口径:76mm、焦点距離:630mm、アクロマート、OTA重量は、わずか3.8kg。
 2. シングルなのに、
半値幅:<0.5Å。
 3. シングルなのに、良く見える従来のダブルスタックと同等以上の驚愕の像(ただし全景。拡大像は見ていない)。
 4. ばらつきは無いらしい。ある、という報告もある。
 5.
遮光板も付属。
 6. 欠点は、フォカサーが少しちゃっちい。途中で引っかかる。
 7. ブロッキング・フィルターを換えてもほとんど像は変わらなかった。
 8. Qualkを接続して見たら、全然見えない。

 この望遠鏡を巡り、交わされた会話: Coronadoが、なぜばらつきが無いのか、というのがweb公開されている。エアーギャップ・エタロンは、ガラスに蒸着。それが、いかにきれいにできるか。反射率を高めて沢山蒸着してもブツブツができてしまう。これがきれいに行えるのがCoronadoの技術で確立している、と。Quarkのようなソリッド・エタロンは、基板のマイカの両側に付ける。すると、反射面は、マイカの表面になる。蒸着が多少でこぼこしていても反射面はマイかだから、より狭い半値幅ができる。エアーギャップの場合は、いかに反射面をきれいに仕上げるか。シングルだと0.7Åが限界。ヘリオスターは0.5Åだから、きれいな蒸着面を作る技術があるのではないか。Coronadoの技術は1980-90年代のNASAを技術を引っ張ってきた もの。David LuntNASAの蒸着膜の技術者だった。そこから進歩していない。Luntは、Davidの息子のAndy Luntが起業。真空技術の技術者。だから、エアー・プレッシャー。Luntは今、いろいろ焦ってアプローチしているはず。
 

長岡さん

機材1: 鏡筒:Kenko スカイエクスプローラー SE120L(口径120mm, 1000mm F8.3) + TeleVue Powermate 4× + Qualk コンボ + Lavendura 40mm。架台:ZWO AM5N 波動歯車架台、三脚:ZWO TC40

 1. 普段は撮影が主
 2. 唯一のQualk単独だったけれど、しっかり見えていた。

顔が識別できないよう、小さく掲載

  怒濤の3時間。やはりこれだけの人が集まるから、情報量の多さと濃さはもの凄い。 自分の機材の問題点も明らかになってきた。今回は快晴だったけれど、久々にシーイングが悪かった。けど見えている像はとんでもなくハイレヴェル! また秋に集まりましょう、と散会となり、私と佃さん、fmasaさんは佃さん行きつけのイタリアンへランチ。それにしても、ご参加いただいた方々に感謝! 感謝!! 勉強になるなあ。

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