発展形混合ダブルスタック その1
最強の太陽望遠鏡! これを見ないなんてありえない!

  公開:2025年6月26日〜
更新:2025年6月29日 ネック・クーラー2号機 を追加


 佃式混合ダブルスタックは、太陽望遠鏡の革命だ。私は当初、異なる特性のエタロンの組み合わせでコントラストが上がる、程度にしか認識していなかったが、佃さんと塩田さんにより、なぜこのように良く見えるのかの理論が体系づけられた。良く見えるのには、ちゃんとした理由があった訳だ。そして、この2大巨頭に加え、実践巨頭、山崎氏も加わった3大巨頭が、再び集まったのであった。 早速前回同様、この歴史的・記念的記事に、両巨頭からサインをいただいた。 論文の価値は長さでは無い。わずか数ページの論文でノーベル賞受賞となったものある。この記事は、大変に価値のある画期的な論文だ。

 さて、佃さんと交流のあるヨーロッパの天文の仲間達が佃式混合ダブルスタックを知り、もっと大口径で写真を撮りたい、と いうことになり、Lunt 4cmのエタロンを利用してアプローチを始めた。で、やってみたら、凄い、と。エタロンのハウジングは手作りだったが、RAFCAMERAが、このアダプターを製作し、販売を始めた。しかし、山崎さんも同じアプローチを行っていて、2023年のSolar Star Partyで披露していた。この時、あまりの素晴らしい像に驚愕、釘付けとなったが、この時はさすがTOA-150だ(ただしERFは130mm)、自分にはこれは縁が無いなあと思っていたら、一番の要因は、この発展形混合ダブルスタック であった。そしてfmasaさんが、このアダプターを購入し、良い、と。佃さんもこれを購入し、良い、と。こうなったら試さざるを得ない。佃先輩からご教授いただき、一式注文したのであった。

 アダプターはRAFCAMERAで売られているが、Lunt 4cm用と、ダブルスタック用と2つある。ダブルスタック・ユニットなら本体を購入するより安く入手できるが、現在品切れ、と。で、本体とアダプターを購入した。Lunt 4cmは写真の通り、かなり小さい。この先端を外してアダプターに入れる。アダプターはT-2規格なので、まずは Baader T-2/31.7mm ノーズピース 2458106 とBaader ClickLock アイピースホルダー 2458100 を求めた。これをQuark の後に接続する。また、後日Quark のT-2アダプターを求め、ここの接続が短くなった。

 

 まずはFOT104で見てみた。何というコントラストと解像度! やはり単純に光学性能が如実に出て、差は歴然だった。では、と愛機五藤で見てみた。実はこれが本命の組み合わせだった。ところが、視点がもの凄くシビアだし、視野ももの凄く狭く、全く実用にならなかった。

 五藤はF9.6だ。どうやらこの発展系混合ダブルスタックはF7〜8辺りが最適で、F9位から視点がシビアになり、F10は実用にならない(向かない)ようだ。期待がもの凄かったので、かえずがえすも残念でならない。もちろんFOT104は良いのだけれど、F7〜8位のもっと口径の大きい鏡筒があれば、Lunt 15cmを超えられるのではないか? では、これを売って鏡筒を準備しよう。とすると、選択肢はTOA-130しかない。NSで十分だし、今は在庫もある。重くて、そして種々な理由で避けてたTOAだったけれど、ついにオーナーになってしまった。

 昔、ミューロン250で双眼望遠鏡を作ろう、と求めたことがあったが、新品工場出荷なのに光軸は狂っているし、ミラー交換調整後でも銀ミラーのORION 30cmには及ばず、すぐに手放したことがあった。今回のTOAは文句なしの像で一安心。まずはハーシェル・プリズムで見てみた。

 ため息が出る程の黒点周囲像。特に小さく密集しているところはもの凄い! しかし、13cmで長時間は危険なので、誘惑を断ち切って、そこそこで切り上げた。では、まずQuarkで一通り見た後(これでも良く見える)、そして発展形混合ダブル・スタックへ。ERFはAltairにトライバンドの在庫があり(Hαは在庫切れ)、これを注文していた。


 見た瞬間、やった〜!と歓喜の声が出た。全周のスピキュールはLunt 23cm でしか見られない、と思っていたが、これがしっかり見えたのである。大きく吹き上がったプロミネンスは一部宇宙空間に放たれ、漂っている。黒点周囲の半暗部の詳細な構造、プラージュ、明るく活動の活発なフレア、そしてリムに伸びているダークフィラメントの立体像にすっかり驚喜してしまった。これは革命とも言うべき手法ではないか。Chromosphere、Gemini のProminence, Chromosphere 各モードで見比べてると、それぞれ良さはあるけれど、Chromosphere 単独の像が一番コントラストが良かった。ただし、この個体は他よりは暗い。アイピースは、基本Lavendura 40mm とLavendura ED 34mm。シーイングが良ければTPL 18mm(239×)位まで。 なお、エアーギャップ・エタロンとソリッド・エタロンの接続の順番を逆にすると、ろくに見えなかった。

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
TOA-130 130mm 7.7 1000mm            
DayStar 4.3× Barlow   33.1 4300mm            
Lavendura     40mm 108 0.39° 42° 20mm 1.2mm  
ED Lavendura     34mm 126 0.34° 43°* 20mm 1.0mm  *推測
TPL     25mm 172 0.28° 48° 18mm 0.8mm  
Pentax XW     20mm 215 0.33° 70° 20mm 0.6mm  
TPL     18mm 239 0.2° 48° 13mm 0.5mm  
                   

 双眼装置でも見てみた。基本、素晴らしいのだが、目のゴミが目立って見えるので、見ていて楽しくない。ただ、この辺りは偏光絡みのからくりがあるので、装着角度、回転等で改善するポイントが見つかるかもしれない。
 なお、いつもは松本製EMSを使用しているが(銀ミラー2枚)、本機のような拡大像、出始めたフレアでは銀
ミラー1枚の
Baader BBHSの方がコントラストが良かったので、こちらを採用。出窓の6cm(鏡像)、8cm(正像)、本機(鏡像)と混在しているが、仕事では、鏡像、倒立像、正像を常時扱っていて、毎日これらを頭で構築・整理しているので大丈夫。

T-2クイック・リリース

 Quarkは、Lunt 8cmのと共通。毎回ねじ込み接続は面倒くさいし、電源ケーブルが抜けてしまう危険もある。そこで、Baader クイック・リリースを挟むことにした。佃さんも最初に推奨。まずは手持ちのもの(Baader双眼装置付属)で対応した。強化型も出ていたので、これは発注(納期約1ヶ月で、また到着していない)。

熱対策

  

  手っ取り早く温度を下げるにはアイスノンとかを接触させることだけど、温度差が大きいので結露を発生させるだろう。町中で皆が使っている小型ファンかネック・クーラーをアイピースに引っかければ良いが、さらに冷感タオル(別に普通のハンド・タオルとかハンカチでも何でも良いだろうけど)を配備すれば、もっと効率よく温度が下がる。写真上右のものは、水を含ませて110gだった。ファンは気化熱効果を上げるだけでなく、観望者にも恩恵を与える。ネック・クーラーはAmzon で見ると、とんでもない数がヒットするが(誇大表示ばかり)、購入したもの風向き可変、240g、¥2380 なので、とりあえずはこれで対応してみることにした。また、以前購入していた忍者レフ。これで太陽光線からQuarkを守るため採用。実際の様子は

 何だか炎天下のスポーツ観戦のような...  Quarkは厚手のビニール袋を被せて、その上にタオル。触れてみると、温度は上がっていないようで効果あり。理系思考だと、では、外気温何度の時、表面温度は何度に下がったのか? 経時的変化をグラフで示せ、測定時の湿度は? 1回の測定ではなく、複数回測定し... と延々と続くが、ここでは文系脳にて省略。

発展型混合ダブル・スタックの欠点

 とにかくシーイングに依存する。薄雲があっても、エアーギャップ・エタロンや佃式ダブルスタックはそこそこ見えるけれど、この発展型混合ダブルスタックは、まずほとんど見えない。全景も見えないので、結局これ1台だけでは無理で、何らかの汎用機を用意する必要がある。とはいえ、シーイングが良いときの像は物凄いので、試みる価値は十分あると思う。

このネック・クーラー、粗悪品!

 今朝テストして午後さわってみたら、もう片側が緩んでグラグラしている。回転できるので選択したがダメだった。1回の使用で返品。

ネック・クーラー、2号機

 Amazonで見ると、とにかくインチキ表示のものばかりで、選択が大変。この夏で売り切ってしまおう、が見え見えだ。首の金属板だって、ただ板があるだけで冷却機能が無いのは明らかなのに。今回は回転・角度可変は避けて、とりあえずシンプルに風が出る物を選択した。¥2490。今回もできるだけ静音のものを選ぶけれど、それでも微振動はそれなり。Quarkに引っかける時は、タオルを厚めに折り返した所の上に置くようにしている。

   *続く....

太陽を見ないなんてもったいない。だって一番近い恒星の活動を直に見られるのですぞ。

ご感想・問い合わせ等はこちらまで.

INDEX